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二年目 1 新しい顔ぶれ
[¶二年目 1 新しい顔ぶれ]
2010年8月23日 13時2分の記事


フィンスとヤッケルの画像がまだ、ありません…。

仕上がり次第アップ予定です。

【PR】占いシステムの開発なら経験と実績があります。


1 新しい顔ぶれ




 シェイルは周囲を見回した。
ぞろぞろ。と校庭であるその広場に人が集まり来る。
門から新入生達が、親元を離れその初々しい顔を期待と不安で落ち着かなさそうにその広場の人混みを見つめながら、おずおずとその歩を踏み出していた。

教練(王立騎士養成校)に入って二年目。
自分の去年を思い出すと溜息が洩れる。
入った途端、一斉に注目を浴び、その視線が喰い入るようで、パニックに成って三年だった義兄ローフィスの名を、叫んで探したっけ………。
でも人の視線は更に、集まるばかり…。

今迄はローフィスとその父…シェイルにとっては、母の再婚相手に当たるディラフィスと共に旅ばかりしていた。
けど旅先でこれ程の視線を…浴びた事なんか無かったから…。気づくと頬に涙が滴り…泣いていた。
ぶつかった体の大きな上級生に腕を掴まれ…殆ど抱き寄せられるように腰に腕を回されて、必死だった。
「大丈夫か?」
言葉は心配げだったけれど…見上げたその瞳は情欲を宿し、物見半分の好奇の視線で…丸で、この先自分のものにしてやる…。
そんな脅しが混じり、必死に…その腕から身を捩ってローフィスの名を叫んだ。

助けに入ってくれたのは、最上級生で学校中の尊敬を集めるカリスマ、ディアヴォロスだった。



「左の王家」…黒髪の一族の血を引き、二メートルを越す長身の……素晴らしく神秘的で男らしい美しさを称えた彼が何げ無く…掴んでいた男の腕を軽く取り、捻る。
男の力が緩んだ途端…その腕から逃げ出した。
そして…こちらに微笑を向ける、ディアス(ディアヴォロスの愛称)を見た。
圧倒的な魅力。
黒髪の細かな巻き毛を胸に流し、ブルーともグリーンとも…グレーとも取れる神秘的な浮かぶような瞳と、整いきった美しい顔立ちをしていて…何より、その存在感は学生の持つそれを、越えていた。
静けさすら湛えた彼が男の腕を放すと、男は止めた相手に突っかかろうと振り向き、それが…ディアスだと解ると途端、顔を歪め、言葉を引っ込め…顔を下げてすごすごとその場を、立ち去る。

ディアヴォロスがうっとりするような微笑を浮かべながらその長身の顔を傾けて見つめて来る。
すると…魔法のように、猛禽達の喰い付くような視線は、引いていった………。
ローフィスが、人並みを割って駆け付けたのは、そのほんの数分後だった………。



が、入学当初から護ってくれたディアヴォロスは卒業し、義兄ローフィスは最上級生でこの一年で卒業だと思うと、シェイルは気が塞いだ。

「何しけた顔してるんだ?」
同室のヤッケルが肩を揺らすように握る。
自分の人並み外れた美貌を気にもしない、気の良い彼がシェイルは大好きだった。
途端、ローランデが慌てて人並みを掻き分け、こちらに走って来る。



いつの間にか、ヤッケルの横にフィンスが居た。
明るい金に近い栗毛のヤッケルとは対照的な、暗い栗毛の落ち着き払った少年で、こちらに駆けて来るもう独りの友人、ローランデ同様、特別宿舎に居る大貴族だった。
ローランデが、息を切らし駆けて来ると、皆がローランデに一斉に視線を送る。
シェイルはまた、吐息を吐き出す。
その視線の意味は…自分の時とまるで違う。

去年、恒例行事の学年無差別の剣の対抗試合で、ローランデは上級生を押し退け勝ち上がり、最高峰であるカリスマのディアヴォロスと剣を交える栄誉を受けた。
ディアス相手に、殆どの相手が一撃で倒れたのに、最後に残ったローランデだけはその一撃をかわし、戦い続けた。
学校中の生徒が…果敢に攻めるその生意気な新入生を…熱く手に汗握りながら見守り、最後…剣神ディアヴォロスに破れはしたが、良く戦った。と会場中が、どよめくような喝采を彼に送った。

そう…それ以来、ローランデは誰にでも一目置かれてる。
例えそれが上級生だとしても。
誰の瞳にも、無敵。今世紀最強の剣士。
そして圧倒的な強さを誇るディアヴォロス相手に、決して諦めず止(とど)めの剣を避け続け、幾度も幾度も身を飜して挑みかかる、果敢な彼の勇姿が刻み込まれているから。

ヤッケルがその明るいわたあめのようにふんわりした栗毛をふってぼやく。
「ローランデとお前と一緒だと、学校中の注目、集めまくりだな」
フィンスも同意するように笑う。
途端…シェイルは項垂れた。
「俺が注目されるのは、尊敬されてるからじゃない。
ローランデと違って。
ただ…物珍しいからだ」
ヤッケルはシェイルが、自分の人並み外れた美貌を疎んじているのを知ってたから、肩を竦める。
「女だったら、他のやっかむ女共を尻目に、いい男を全部自分のものにして楽しめたのにな」
フィンスはそれを聞いてもっと、くすくす笑ったが。

ローランデがようやくフィンスの横に飛び込み、笑う彼を見つめる。
「そんなに、楽しい事?」
フィンスはローランデに笑顔で振り向く。
「いつもの、ヤッケルの軽口だ」
ローランデは途端、納得した。と微笑む。
シェイルはローランデを見つめると、いつもの彼の…落ち着き払った様子とそして…気品溢れ、誠実で頼もしい姿に見惚れる。
誰もが、ローランデを好きになった。
ディアヴォロスが去った後、学校一の有名人に成ったにも関わらず、彼が奢る様子を、見せた事が無い。
どんな事にも誠実で、誰にでも訳隔て無く親切だった。

大貴族。と呼ばれる、貴族の中でも身分の高い者の中には、たまにその身分をひけらかし、身分の低い者を卑下する者が居た。
そうで無くとも彼らは皆、特別寮。と呼ばれる、宿舎でも広く綺麗な個室を割り当てられていたし、大抵の者が召し使いを連れていて、続き部屋に彼らを住まわせ、身の回りの世話をさせている。
持ち物だって高価な物ばかり。
彼らは大抵同じ位の身分の者と連んでいて、一般宿舎の者とは近しくならないのが常識だった。
だから…平民に近い田舎貴族のヤッケルと、やっぱり…一領主の息子の自分が、大貴族のフィンスとローランデと一緒に、こんなに仲良く話してるなんて不思議だった。
が…ローランデは身分を気にしない。

けれどどうしたって育ちの良さ。や、北領地[シェンダー・ラーデン]の領主達を統べる大公子息。の気品が漂っていて、同じ人種に思えない程上品で、その仕草一つですら気品溢れてる。
フィンスも同様で、いつもいい香りのする上着を着け、こざっぱりし、乱れた服装や言葉使いを聞いた事が無い。
ヤッケルがこっそり
「あっちは気にしない。と言ってるがどう頑張ったって、違いは歴然だよな」
と質素な一般宿舎の寝台に寝転がって、りんごを囓りながらぼやいてた。
シェイルはローランデならそんな事絶対せず、ちゃんとお行儀良く食卓でりんごを食べてるな。とヤッケルに同意して笑った。

二人と近しく成ったきっかけは…入学当初、ディアヴォロスやローフィスの目の届かない所で散々、上級生に絡まれたし、小屋に連れ込まれそうに成った事もあって…。
ヤッケルは同室に成って以来、小柄なのにいつも気にかけてくれて、絡む上級生から自分を庇い、突っかかってくれた。
ローランデが、見かねたのだ。
ヤッケルのそんな態度に。
「下賎の身分の田舎ザルは引っ込んでろ!」
そう…突き飛ばされたヤッケルの背を助け、ローランデは割って入る。
ヤッケルよりは背が高いローランデだが、相手の上級生はガタイに物言わせる、長身のデカブツだ。
けど…ローランデは臆せず言い放った。
「無礼は貴方だ。
下級の見本と成るべき上級生が、その態度ですか?」
静かな威圧が相手のデカブツを包むのが解る。
ヤッケルと共に、息を飲んだ。
“気”と言う物が見えるとしたら…ローランデから圧倒するような気迫が静かに漲り、上級生の顔を、歪ませていた。
そのデカブツは、ローランデの気迫に引いた。
背を向け、去って行っのだ。

…信じられなかった。
自分は元よりヤッケルだって、あのデカブツに崩せない壁が押し迫るような恐怖を感じていたので。
シェイルはローランデを見た。
彼は優しく微笑んで、こう言った。
「困った事があったら遠慮無く、私を呼び出してくれ」
澄んだ…透明の清々しい“気”。
ローランデはいつもそれに包まれていたし、それは時には同学年には思えない程…崇高に見えてやっぱり彼は…特別なんだ。と皆に思わせた。
本人にその自覚は、丸で無かったけれど。

やがてローランデに追随するように、フィンスがローランデと共に助っ人に入ってくれるように成った。
フィンスは実直で真面目な性格の正義感の強い少年で、だが大貴族にはありがちな、体格良く、名家の誇りにかけて幼い頃から礼儀作法と剣技を徹底的に叩き込まれ、この年(14才)にして既に武人の風格を持っていた。
真っ直ぐの濃い栗毛。
迷いのない蒼の瞳。
横顔が整って美しく、だがいつも控えめで、けれど必要な時は決然とした態度を取れる男らしさがあった。

ヤッケルがぼやく。
「あいつに比べたら俺は丸でちんぴらだ」
やっぱり…その言いように吹き出したが。
だがローランデもフィンスも、気が良く、楽しいヤッケルが大好きなようで、いつもヤッケルの姿を見つけると笑顔で迎える。
彼らを
「お上品さん」と呼んで特別扱いし、距離を取っていたヤッケルも次第に、二人相手に気軽に軽口を叩くようになった。

ヤッケルは少し…義兄ローフィスに似ていた。
自分からしたら背が高い。と思うのに、ローフィスはいつも
「教練。ましてやその先進む近衛ではな。
小柄な域だ」
と自分の体格を嘆きぼやく。
親友に同学年で身長二メートルを越す体格のいいオーガスタスなんかが居るから、余計そう思ってるようだった。
でも“体格で劣るから”の理由で自らの主張を、引っ込める気なんか全然無い。
その分気概と…そして要領良く物事を、自分の望む方向に持って行くやり方を、知っていた。

ヤッケルもそうだった。
小柄(といっても自分と変わらないけれど)だけどその身軽さと戦術を使って、剣の試合では学年上位に食い込んでいる。
自分だって教練に上がるから。とローフィスにさんざ仕込まれて、それなりに使えるから、ヤッケルと並ぶ程の腕だ。
けど…練習以外で刃物を使うのは禁止。ましてや喧嘩では。
ヤッケルはたまに
「体格差を埋めるのに剣を使えれば、もう少しハンデが埋められるのにな」
とぼやいてた。
けど…学園生活は結局体格と腕力がモノを言う。
ディアヴォロスやローフィスも、気をつけて絡む輩から護っていてくれたけれど…授業の移動とかに現れるとお手上げだった。
だがヤッケルに続き、ローランデも…彼が居ない時はフィンスもが、ガタイのデカイ上級生の暴挙に立ち向かってくれる。
二人は自分だけで無く、他のやっぱり華奢で、上級生がいいなりに出来るような弱々しい同級生達も助けてた。

騒ぎが大きく成ると、ディアヴォロスが居れば彼が、そうでない時はローフィスか、もしくは彼の親友で学校ではその大柄な体に見合った大物。と皆に一目置かれているオーガスタスが姿を見せる。



おおらかなその赤毛の男がにこやかな笑みを浮かべ、長身の肩を揺らし、絡む上級生の前に立つ。
微笑はオーガスタスから消えたりしないのに、上級生は自分の目前の、自分より更にデカイ男に怯みきって、さっさと逃げ出すのが常で、オーガスタスは肩を竦め、朗らかな笑みを向けて毎度言った。
「弱いモノには強気なビビリだな。
今度来たら笑ってやれ」
彼は親しみ易い鳶色の瞳をし、そのガタイのデカさに関わらず、大勢のファンを持っていた。
信頼出来、大らかでいつも重い物を持ってる下級生の頭上から、ひょい。と荷物を持ち上げ、ウィンクして代わりに運んでくれたりする。
ディアヴォロスは王家の血を継ぐ大貴族で、あまりに気品があり近寄りがたかったけど、オーガスタスは親しみやすさで誰にでも好かれていた。

でもともかく…去年はそれでもディアス(ディアヴォロスの愛称)が居た…。
彼が姿を見せ、ジロリと睨むだけで、その場の暴挙は影を顰める程で、学校の秩序は彼が護っていた。
彼に逆らう者は誰一人居ず、どれだけの乱暴者でもディアヴォロスの登場に、その行動を控えてた。
けど………。

ローランデがシェイルの様子に気づき、ヤッケルもささやく。
「…ディアスが居ないもんな…」
フィンスがだが反論する。
「四年にオーガスタスが居る」

ヤッケルは顔を上げて落ち着き払った大貴族を不満げに見つめた。
「そりゃ、喧嘩となりゃオーガスタスは顔が利く。
だけどやっぱり四年に成った王家の血筋のグーデンは、いとこのディアヴォロスが居なく成って今度は自分が学校一身分が高い。と幅を利かせる気だ」
シェイルもそっとつぶやく。
「ディアヴォロスは身分も最高に高かったから…大貴族達だって誰も刃向かえなかったけど…オーガスタスの身分はあまり…高く無いだろう?
自分より身分の高い相手と喧嘩し、怪我でもさせたら…」
ヤッケルも頷く。
「ヘタすりゃオーガスタスは退学だ。
俺はオーガスタスの大ファンだから、彼に他人のせいで退学に成って欲しく無い!」
フィンスは呆れる。
「オーガスタスが保身の為に暴挙を働く奴を、見逃すと思ってるのか?
彼はそんな事しやしないさ」
ローランデが二人の顔を見てそっとフィンスにささやく。
「…だから…二人はこの一年で、オーガスタスが退学に成らないかを心配してるんだ」
フィンスは…少し項垂れた。
「…折角四年なのにな………。
三年にグーデンの弟のディングレーがいるだろう?
彼は兄貴と違って凄くマトモだし、兄を嫌ってるって」



ヤッケルは吐息混じりにぼやく。
「ディングレーが取りなして、オーガスタスの退学を取り消せるか?
…幾ら「左の王家」の者だって、ディングレーにそこ迄力があるとは思えない。
…まあ…ディアヴォロスに心酔してたから、今迄道理暴力振るって来る奴を見つけたら、蹴散らしてはくれるだろうけど。
でもディングレーって…」
シェイルもフィンスもローランデも、そうつぶやくヤッケルを覗き込んだ。
「血筋がいいせいかお坊ちゃん育ちであんまり気は回らないし、器用な奴じゃ、無いじゃないか。
直訴すれば聞いてくれるけど、すっごく…近寄りがたい」
これにはフィンスも頷いた。
「それは同感だ。
孤高の狼みたいで…しゃべりかけづらい」
だがローランデが口を挟む。
「けど話しかけると聞いてくれる。
見た目程近寄りがたくない気がするけど?」
ヤッケルもシェイルも吐息を漏らす。
「だって君は誰にとっても特別だろう?
そりゃ、君に話しかけられたら、耳を傾けるさ」
ローランデはだが真顔で言った。
「私が去年勝ち上がって上級生全部の顔を潰した。
未だに私の姿を目にした途端、苦虫噛みつぶした顔をする者も居る。
ディングレーは私に敗れたのに…けど話しかけると気良く、耳を貸してくれる。
彼は凄く気持ちが真っ直ぐなひがみ根性のない、いい奴だと思う」
だがフィンスが反論した。
「だが彼は凄く長身で体格はいいし…その…近寄るだけで、あちの方から『どうした?』と聞いてくれないと、なかなか言葉が出ない程迫力があるんだ」
ローランデは吐息混じりに認めた。
「それは…確かにそうだ」
ヤッケルが畳みかける。
「それに彼には同学年の大貴族がいつも取り巻いてるし、三学年では崇拝されてる」

がその時どよめきが起こり、皆一斉に何事か。とそのどよめきの先を見つめた。
一際長身の金髪が、人の頭の上に伺い見える。



「…新入生?」
そう…ローランデが尋ねる。
ヤッケルは知らない。と首を横に振る。
「…オーガスタス並に成るんじゃないのか?
14であの長身じゃ」
だが人の頭が途切れた時、どよめきの理由が解った。
癖のある金髪を額に、そして肩に垂らし、綺麗な鼻筋の整いきった美貌で、その瞳を伏せると優美そのもの。
紫の瞳が晴れ渡る青空に輝く陽を浴びて時折、きらりと輝く。
すらりとした長身で、しなやかな身のこなしをしていて、目を伏せると長い金色の睫が頬に影を作った。

そして…その容貌の美しさは人並みの中で、群を抜いていた。
暫く、殆どの者が彼の美貌に見惚れる。
ヤッケルがつぶやく。
「丸で去年のシェイル並だな」
シェイルの顔が曇る。
「俺より背があるしガタイもいい」
三人が揃ってシェイルに振り向き、ヤッケルが言った。
「お前…ひがんでる?」
言われてシェイルは頬を染めて俯く。
「別に…」

が、校門近くで新入生の名を確認していた講師が顔を上げて合図を送ると、鐘を持っていた講師がそれを振り、音色を轟かせ、皆一斉に足早に、所定の位置に付く。
シェイルが一瞬、動きかねてどちらに行けばいいのか、顔を振る。
途端、フィンスが腕を掴み引いた。
「こっちだ!」
校庭の真ん中に新入生らが並び、右横に二年。
左横に三年。
背後に四年が並ぶ。
正面の壇上に校長が立つと、全員が居住まいを正す。
だがその目立つ金髪の少年は、新入生の列に並ばず、校長の横の壇の下に立っていた。
「新しい講師?」
「あの若さでか?」
「どう見たってまだ十代だよな?」
ひそひそ声が飛び交う。
皆がその、金髪の青年に視線を注ぎ、校長の言葉を聞く者は誰一人居ない。
背に届く程の金の長髪。
綺羅綺羅しい顔立ちは整いきって美しく、その紫の瞳はあまりに印象的で、つい視線が吸い付いて離れない。
その紫の瞳が、彼が首を振る度きらり。と輝くと、皆がどきっ。とした。
切れ長の瞳。綺麗にすっと伸びた鼻筋。形の良い唇。
だが背が高く、良く締まった体付きをしていて俊敏そうに見える。

校長がこほん。と咳払いする。
そして、壇下の注目される美貌の青年を壇上に迎える。
「皆、気もそぞろで紹介が待ちきれない様子だ。
三年に編入の決まったギュンター」
校庭が、一気にざわついた。
編入。増して三年とも成ると、余程の腕の者じゃないと試験には受からない。
つまり彼はああ見えても猛者。と言う事に成る。
つい学校中の生徒は、『三年』と言う言葉に反応して、ディングレーに一斉注目する。
ディングレーは視線を感じ、不快そうに眉を寄せた。
学年一の実力者が、編入者と対決の様子を見せないので、皆の視線は徐々に引いては行ったが。

その注目株編入生ギュンターは、講師に伴われ三学年の列に足を運ぶ。
校長は全校生徒の視線が全て、移動するギュンターと講師に付いて行き、自分に戻る様子が無いのに諦めの吐息と共に、新入生への言葉を続ける。
新入生達は顔を引き締めて拝聴する振りをしながら、チラチラと左横の背の高い金髪の編入生を盗み見ていた。

ギュンターと講師の二人が横二列に並ぶ三年生のその真ん中、16才には成った背の高い三年達の中でも一際長身で体格良く、艶のある黒髪を背に流し、気品と尊厳溢れる顔立ちの整った「左の王家」の血筋、ディングレーに近寄る。
講師はだが、その近寄りがたい風格持つディングレーに微笑みかけて気さくに話しかけた。
「ディングレー。悪いが面倒見てやってくれ」
言われてディングレーは吐息を吐いてその金髪美貌の新入りを見た。

自分とほぼ同じくらいの身長。
肩幅は自分の方があった。が、ひょろりと背が高く見えるもののその胸元や腕、腰元はどう見てもひ弱とは程遠く
『編入生。特に高学年の。は大概近衛に上がって名を馳せる』
の謳い文句に匹敵する十分な実力派に見えた。
がその顔立ちを見つめると余りに優美な美貌で、どこかの大貴族の婦人のサロンで、可愛がられ、皆に見せびらかされるツバメに似つかわしく、つい
『本気で騎士に成って近衛に進む気か?』
と口から突いて出そうで、ディングレーは堅く口を閉ざす。

周囲が期待感満々で、新人の腕試しを自分に望んで瞳を輝かせていた。
そんなのに乗って、全校生徒の前で初日から派手な立ち回りなんか、やってたまるか。と自重する。
そりゃ全校生徒は自分と新入りが対決した方が、校長の退屈な訓辞よりずっと楽しいだろう。
だがこれから三学年、四学年と二年間もあるのに、どういう奴かも解らないこいつと初っぱなから諍(いさか)う気は無かった。
自分を敵に回せばこの男の二年は悲惨に成る。

三年一の実力者。と持ち上げられて以来、言動に気を使わなくてはならず、ディングレーは窮屈極まり無かった。
ちょっと不満を取り巻きに漏らすだけで、その不満の元は次の日顔を腫らして現れたりするから、もう愚痴すら言えなく成っていた。
取り巻きに問い正してもどうせ
「どっかで転んだんでしょう?」
とトボけられるのがオチだ。
どころかその瞳は
『貴方に楯突く奴は、俺達が居る限り誰一人居ない』
と得意げで、更に褒めて貰うのを待ち構えた忠実な犬のように輝いている。
…これをどう正せばいい?
ディングレーは面倒なので極力、取り巻く男達に本音を隠し続けた。

そして今又周囲は、この特級品の美形が鼻持ちならない事を期待している。
自分が一言でも不満を漏らせば、その優美な鼻をへし折って二度と騒がれない歪んだ醜い面に変えてやる。とばかり、期待を込めてこっちの出方を窺っていた。
更に講師の彼を自分に紹介する言葉を、三年のみならず少し離れた四年の列の者までが皆、聞き耳立てて伺っている。

「「左の王家」の血筋の、三学年一の剣士だ。
困った事があれば彼が何とかする」
講師の言葉に、ディングレーが唸った。
「俺を買いかぶり過ぎだ!」
ギュンターが、ぼそっと零す言葉を皆が、聞いた。
「王家の血筋?
敬わなくちゃ駄目か?」
ディングレーがやはり唸る。
「仰々しく頭なんか、俺に絶対下げるなよ!」
ギュンターが返答した。
「だが王家なんだろう?
それなりの作法があるんじゃないのか?
悪いが俺は宮廷礼儀はさっぱりの田舎者だ」
ディングレーは斜(はす)にその新入りを見つめる。
「礼儀なんか必要無い。
ここでは誰もが一生徒だからな」
ギュンターは笑った。
「普通でいいのか?」
当然だ。とディングレーは尊大に顎を上げて頷く。
がその新入りの美貌に目を止め、つぶやく。
「迫って来る不届き者が居たら俺の名を出すか、後で俺に教えろ。
お前が応える気があるんなら不要だが」
ギュンターが一瞬呆け、講師は彼の肩を叩いた。
「口ではああ言ってるが頼りに成る」
ギュンターは、頷いた。

校長の言葉は続いていたが、皆はその会話の内容を聞こえない端の者へ伝え、皆が次々に、彼らが何を言ったのかを伝い聞いた。

講師はディングレーに一つ頷くとその場を去り、ギュンターはディングレーの横に並ぶと、その尊大な『王家の血』を引く同学年一の実力者を見た。
そして小声でささやく。
ディングレーは聞き取ろうと、頭を下げて耳を寄せた。
「正直、俺は何も解らないが…。
貢ぎ物とかが必要なのか?」
ディングレーは暫く、そのままで固まった。
そして顔をすっ。と上げると、返答を待つその美貌の男を真正面から見る。
ギュンターは真顔だった。
ディングレーは声を顰める。
「それはどこの作法だ?」
ギュンターが肩を竦める。
「面倒を収めて貰う代わりに何か差し出す。
普通そうだろう?」
ギュンターがあんまり真面目にそう告げるので、ディングレーは少し俯いた。

そうか…。確かに兄貴のグーデンなら、要求しそうだ。
だから努めて冷静に、兄とは違う事をその男に、解らせようとした。
「俺には必要無い」
「面倒かけてもか?」
「好意で酒なら、奢られてやる」
ようやく、ギュンターが笑った。
「なんだ。それでいいのか」
がまた真顔に成る。
「で?俺が喧嘩したらあんたに報告が必要か?
実を言うと学校なんて初めてで、勝手が丸で解らない」

ディングレーは自分が他人の面倒を見るのが、凄く不得手だと知って居た。
気が、回らないのだ。
それで奴にべったり引っ付いて面倒見る事は、避ける事にした。
奴の好き勝手にやらせよう。と、ぼそっとつぶやく。
「別に、喧嘩したけりゃしろ。
どうせ絡まれるだろうからな」
ギュンターは頷く。
「俺の面が気に入らない。と突っかかる気なんだろう?」
そしてチラリ…と、四年の列に並ぶ猛者数人が、さっきからやる気満々の視線を向けているのに視線を送り、ディングレーに確認を取る。
「振りかかる火の粉は払っていいんだな?」
ディングレーが吐息混じりにささやく。
「助っ人が必要なら事前に俺に言え。
後は授業に遅れないように出る。
それ以外は好きにしろ。
俺に遠慮は必要無い」
ギュンターはまた、笑った。
「『王族』なんて初めて見たが、あんた話が解るな」

言葉のやり取りの苦手なディングレーも、自分が褒められたのだと言う事は解った。
その上『王族』だから。とやたら仰々しい態度を取ったり言葉使いが馬鹿丁寧な輩よりうんと、好感が持てた。
それで小声で奴の耳元に顔を寄せて言ってやった。
「俺も丁寧語は苦手だ」
ギュンターは頷き、顔を上げて笑顔を披露した。
やっぱりその美貌は煌めいて見えたが、ディングレーには奴の風体が、草原の爽やかな風のように瞳に、映った。

 シェイルは呆れた。
中央の新入生を挟み一番遠くの二年に迄、彼らの会話の内容が伝わって来たので。
皆が必死でその会話を次から次へと、隣の相手に伝言して行く。
「ディングレーが『迫って来る不届き者が居たら俺の名を出すか、後で俺に教えろ』
と言ったって。次は?」
「講師が、『口ではああ言ってるが頼りに成る』と…」
「…だって!」
つい、ローランデとフィンスと目が合い、ヤッケルは隣の肩を掴み聞き込む。
「それでお終いか?続きは?」

皆が皆、編入した顔の綺麗な猛者と学年一の実力者の対決が本当に無いのか。と興味深々なのだ。
が、新入生がぞろぞろと壇の前に、並び始める。
皆顔を校庭の上級生達に向けて。
ヤッケルが途端、ひそひそ声でささやいた。
「上級生らが、品定めしてるぞ」
だがどうやら、編入生ほどのインパクトのある容姿の者は居ず、皆がその新しい顔ぶれを見つめた。
名が次々に呼ばれ、列に並び行く。
シェイルは去年を思い浮かべ、独り言のようにつぶやいた。
「後に成る程身分が高かったっけ?」
ヤッケルは頷く。
「俺もお前も、さっさと呼ばれた。
最後に呼ばれたのはローランデだった」
…そして大抵最後に名を呼ばれる者が、その学年一の実力者と成る場合が多い。
四年の、グーデンの時は違ったが。
誰もが王族のグーデンより威風漂う赤毛の大男、オーガスタスをボスだと認めたので。

「アイリス」
その名を呼ばれた艶やかな濃い栗毛の美少年は利発そうで顔立ちも美しくそして…背も高かった。



皆が今度の一年のボスか。とその優雅でゆったりとした態度の美少年を見つめる。
シェイルは不思議に思った。
「彼も、凄く綺麗だ」
ヤッケルがシェイルの疑問にささやく。
「上級が目を付け、学校中が注目するのはペットに出来る、身分が低くて誰かにどうにかされ易い、小柄な美少年だ。
間違っても大公を叔父に持つ大貴族の、長身で毛並みの良さそうな美少年じゃない」
シェイルの眉間が一気に寄る。
「つまり去年の俺は、どんぴしゃなのか?」
途端、睨むシェイルにヤッケルは顔を背け、ローランデとフィンスはくすくす笑った。
フィンスがふて腐れてるシェイルにそっとささやく。
「…だがディアヴォロスとローランデのお陰で、お前にちょっかいかける命知らずは消えただろう?」
途端、ヤッケルが吐息混じりに唸る。
「今年はその、ディアヴォロスが居ない。
あの最悪に鼻持ちならない威張りたがりのグーデンが、大人しくしてると思うか?」
シェイルもそれを聞き、そっと俯く。
そして視線を、新入生に向けた。
少なくとも三人は…さっきヤッケルが言った条件に、当てはまりそうな美少年が居た。
黒髪で色白の華奢な少年は俯くと少女のようだったし、縦ロールの栗毛の少年は利発そうだったが、やはり数人の三年、四年のごろつくまがいの猛者が視線を送っていた。
そして明るい栗毛の可愛らしい顔をした少年は、一番小柄だった。
同学年の中にも、グーデンに組し、ローランデに反発するはぐれ者は三人は居る。

ローランデもそれに気づき、吐息を一つ、吐いた。
フィンスがそっと、隣のローランデに耳打ちする。
「ローズデルタに、今の内に釘刺すか?」
ローランデが吐息混じりにささやく。
「無駄だろう…。
出来るだけ、目を配るしか無い」
フィンスは同意するように、頷いた。



  2 三年宿舎に続く。














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