第11話「トテッポのこと」 | |
[播磨陰陽師の独り言] | |
2018年10月29日 19時0分の記事 | |
播磨陰陽師の独り言 第11話「トテッポのこと」 その昔、十勝には『トテッポ』と呼ばれる小型の蒸気機関車が走っていました。 砂糖用のビート工場から、どこかに向かって走っていたらしいのですが……それがどこなのか、私は知りません。 たぶん、帯広駅につながっていると思いますが……どこか夢の国につながっていて欲しかったです。 トテッポは、従姉妹《いとこ》の家の横を走っていました。 従姉妹の家へ遊びに行くと、通り過ぎるトテッポに……みんなで手を振っていました。 従姉妹の家から、トテッポの向こう側の辺りに、10メートルくらいの崖がありました。 急な崖なのですが、細い木々をつかみながら登ると……大きなグランドと、その向こうに広大な畑が広がっていました。 この場所は、旧陸軍の演習場があったところで、私が子供の頃は、刑務所の畑とグランドになっていました。 受刑者は、自分たちの食べる野菜を、ここで育てていたのです。 受刑者と言っても……殺人事件などの凶悪な犯人ではなく……主に交通事故の人達らしく、外で自由に作業していました。 この場所には、奇妙な噂がありました。 グランドであるにも関わらず……誰も、野球をしているのを、見たことがないのです。 そして、 「夜中に自衛隊が来て、実弾射撃の訓練をしている」とか、 「あの自衛隊……制服が、旧陸軍の軍服だ」とかの噂が……はては、 「新月の夜だけ、手足の欠けた軍人さんの幽霊達が、あそこで戦っている」と、囁かれてまでいたです。 その話は、とてもリアルにイメージすることが出来ました。 当時、駅前など、人の集まるところへ行くと、必ず、旧陸軍の軍服を着た、手足の欠けた人々が、募金を集めていました。 彼らの手前にある大きな鍋には『救世軍』の文字が書かれていました。 十勝平野の真ん中にある帯広は、戦時中は軍都と呼ばれ……軍事工場や、軍の施設が、たくさんありました。 私の子供の頃には、それらの多くは廃墟と化して……近所の子供達の遊び場になっていました。 その中には……都市伝説のような怪談話も、多く含まれていたのです。 霊的な思い出については、『近世百物語』の中に書いていますので、興味のある方は、そちらを検索してご覧下さい。 播磨陰陽師の独り言 前回の話◀︎[もくじ]▶︎次の話
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