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第三十九話「福の神」(近世百物語) |
2009年7月2日 14時0分の記事 |
◎近世百物語・完全版 第三十九話「福の神」 高校生くらいの頃……道端で……福の神のようなものに、出会いました。 その日は、雪が降っていました。 学校からの帰りに歩いていると、足跡が、深く雪に残って行きます。 十勝平野に雪が降ると……普段よりは……いく分、暖かい感じがするものです。 厳寒と呼ぶにふさわしい寒さの日は、空も凍りつくのか……雪は降りません。ただ、空気中の水分が凍って、キラキラと、光を反射するだけです。これは、ダイアモンド・ダストと呼ばれています。こんな日は……息をしても、鼻に細かな氷しか、入って来ません。 あの日の夕方は……雪がしきりに、降っていました。 私は、学校の帰り道の……公園の近くを、歩いていました。 その日、何があったのか……については、あまり覚えていませんが……ただ、とてもイライラして、腹を立てていました。 その最悪な気分のまま……しかも、降りしきる雪の中を歩いています。 すると、道の向こうから、大きな荷車を引いた老人が……ゆっくりと、こちらに向かって来ました。 十勝平野は田舎《いなか》なので……荷車は、それほど珍しくありません。 しかし、それに積んでいた物が、少し奇妙な感じがしました。 ……と、言うのは……サンゴだとか、大きな袋のようなものが、見えたからです。 「むかしの絵にある、宝物の荷車のような感じだな。」と、その時、思いました。 時代は、もう、江戸の……でもありません。 テレビはカラーになり……最初のパソコンが、そろそろ売られる頃のことです。 ですが……それを見てしまったのです。 その荷車の老人は、どんどん、私に近づいて来ました。 深いワダチが、雪の中についています。 「この、おじぃさんは、どこから来たのだろう?」と思い、顔をあげると……その人と目が合いました。 すると、そのおじいさんが、 「おお、ひどい、雪じゃのぉ。」と、少し、口ごもるような感じで、つぶやいたのです。 その声は、東北弁のように聞こえましたが、古語のような気もしました。 つづきをご購入いただけます(200円) 購入方法はこちら |
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[カテゴリ:近世百物語・完全版] |
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