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生物の中にある「時間」
 
2017年2月25日 9時9分の記事



脊椎動物各群の発生過程(エルンスト・ヘッケルによる)
今日では画像の不正確さ(特に左側の魚、サンショウウオ、カメ、ニワトリの初期の胚の画像)が指摘される

反復説
動物胚のかたちが受精卵から成体のかたちへと複雑化することと
自然史における動物の複雑化との間に並行関係を見出したもの   Wikipediaより


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(25朝から昼ころ と 夕方)

『生物のなかの時間 時計遺伝子から進化まで』2011 より
西川伸一/倉谷滋/上田泰己


まえがき (の はじまり)

  自慢話をします。今回対談に参加した西川、倉谷、上田が所属する理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)のお話です。  1998年、国から新しい再生医学の研究所を計画してほしいという話が突然持ち込まれました。京都大学再生医科学研究所の設立を機に再生医学がブームになり始めたころです。 3

竹市雅俊センター長をはじめ設立に関わった7人が
「理想と興奮を共有し準備に奔走」 3

「7人の侍」が何よりも力を注いだのが 研究者のリクルート
当時少し長く滞在していたエジンバラのホテルに、200通を超す研究員応募書類が詰まった段ボール箱が二箱も送られてきて、フロントに訝しがられたのを今でも覚えています。

倉谷/脊椎動物の形態や生物学の歴史について深い知識がある
上田/応募時 27歳 大学院生 某創薬メーカーの研究所に独自のラボを構えていた 4

鼎談の司会 構成 科学雑誌「サイアス」の編集長だった柏原精一 5

最後になりましたが、この本は柏原さんとの出会いなしには実現しませんでした。この出会いは、CDB発足からずっと付き合ってもらった朝日新聞の大岩ゆりさんのおかげです。ありがとうございました。 6 「まえがき」の終わり



(*5 システムバイオロジー systems biology)

(*6)羊膜類 Amniota
胚の時代に胎子と羊水を包む羊膜をつくることで、陸上での発生を可能にするように進化、適応した四足動物(Tetrapoda)のこと。具体的には、脊椎動物のうちの哺乳類、鳥類、爬虫類を指す。 24


(動的平衡は化学的にもつくりうる 25〜27


生物学は部分と全体の問題がほとんど 27〜29
西川「生命というのは、それが単細胞のものでも、自己として個体性を持つ」
たとえば地球と火星とが独立して存在しているとか というのは難しい問題」
少なくとも生命が持っている個体性みたいな独立のしかたとは違うと思う そういうイメージでいいと思う

上田「たとえば、『アバター』という映画の中に出てきた、惑星全体を覆っている植物ベースの、何とかニューロンネットワークみたいなやつとか」 27
倉田「『マトリックス』にも似たようなヤツが登場してた……かな?」
上田「今ひとつ、リアリティには欠けますけど」 28

(…略…)
西川「そういう大問題を解きうるのか、という問いから考えなくてはいけないわけですよね。世界の初めとか、時間の始まりとか、哲学問答になりかねない。哲学は、この形而上学の根本命題から離れてしまったけど、科学は今もそれにある程度の答えを求め続けている」 28
上田「僕らがアプローチしているのは、分子の部品からなぜ時計や時間ができるのかとか、それを設計、制御できるかとかいったことです。器官全体とか、長い時間のスケールみたいなことを正面から扱おうとすると、遺伝子のほんの一部を変えることぐらいしかできない今の遺伝子工学のレベルでは太刀打ちができない。(略)ただ、遺伝のような数階層にまたがる問題には、この5年ぐらいでは、たぶんまだ行けない」 29



(生物とほかの存在との絶対的な違い 29〜32

半分生きている存在 クマムシ 32〜37

「(略)タンパク質分解酵素の中に放り込めば、たぶん死ぬはず」西川 34
上田「つまり、ある種の付加逆性はあるわけですね。だけれど、温度とか、ほとんどの考えうる非常に強い環境変化にはめっぽう強い。そういうシステムなんですね」
西川「同じことが、ウチの若山照彦さんがやった実験にもいえる。20年間フリーザーに放置していた動物の核を未受精卵に移植してクローンマウスをつくるんですが、通常の組織からの細胞核は情報として壊れていてだめなのに脳の細胞核は死んだ細胞の場合、凍結して、マイナス20度の条件下でも、情報は壊れないで維持できているということ。すなわち、生命の情報の完全性は細胞の生き死にとは全く関係ないわけなんですね。精子も、死んだように見えても、ある状態が維持できればまだ使える。たぶんクマムシも同じこと」 〜35
(略)



発生では、時間が空間化する 47〜52
時間イコール空間って最も感じるのはオトシブミの揺籃
(竹市雅俊センター長が自分のセミナーでいつも話す)
一定の距離の範囲でやらないかんことがパターン化されていて、時間そのものが完全に空間化されている。「落し文」をつくる過程そのものが時間の単位になっている。 西川 47
48


温度が下がる前から冬が来ることを ある意味「予想」している 常緑広葉樹(ツバキ)
凍結して組織が破壊されないように不凍タンパク質をつくる
そのタンパク質をコードした遺伝子は 秋が深まるころに発現する
キーになるのは 気温ではなく 日照時間 倉谷 55

タンパク質の時間
温度を鍵に使うプログラムも開発できただろうけど、重要なのは、木枯らしが吹いてからじゃ手遅れだということです。不凍遺伝子の発現と日照時間との間には、本来的な関連性も必然性もないけど、そこには偶発的に適応的なリンクが成立してしまっている。
倉谷 56
(構造的ネットワークは そうしたものの集積じゃないかな)



(*7 トロフィム・ルイセンコ 64Trofim Denisovich Lysenko:1898〜1976


(たとえば)胸腺をつくるには
咽頭の内胚葉が鰓の形になり
そこへ神経堤細胞が移動してやってきて
相互作用を起こし 細胞分化の結果胸腺の雛形となり
リンパ球の前駆細胞がトラップされて 最終的な分化を経る 139

一定の誤差の範囲内で、適切に出会いが成立する胚とそのゲノムだけが生き残り、淘汰を重ねて安定化し、器官発生のタイムテーブルが予想可能で、かつ画一的なパターンのものへと進化していったんだと思う。(倉谷)
発生は時間のプログラムで起こるように見えるけど、まったくそうではなくて、空間的なプロセスが先にあって、それに応じる形で時間が紡がれていくという話でいいんやね。(西川)
―むしろ、時間の方が後追いしていくイメージ?(柏原)
上田さんたちのやってる概日リズムは、本当に時間なわけね。細胞の中にちゃんと時間分子がプログラムされる。同じく「時間」という言葉でいい表すしかないけど、発生の時間というのはそれとは本質的に違うものだということは、きっちりおさえておきたい。(西川) 140


*三胚葉
胚発生が原腸胚まで進み、後に消化管となる原腸ができると、体の内と外が明確になり、外側の細胞列と内側の細胞列は別の道を歩き始める。クラゲやサンゴの仲間を除いた真正後生動物では、さらに内外の列の間に、外側の列から性質の異なるまた別の細胞列が誘導される。この三列に分かれた細胞のまとまりを、外から順に外胚葉、中胚葉、内胚葉と呼び、その後さまざまな器官や組織を分業的につくっていくための土台となる。
  外胚葉からは神経系や体表を覆う皮膚などの組織、中胚葉からは心臓や血管・血液といった体液の流通に関わる器官、内胚葉からは肺や消化管など空気と食物の通り道となる器官が導かれる。中胚葉を加えて三胚葉体制となったことが、生物の構造の複雑化を可能にしたと考えられている。 142

*神経堤 neural crest
脊椎動物の胚に、後に脳や脊髄となる神経管が形成される時期に、神経管と後に表皮となる背側外胚葉の境界部分に一時的に出現する細胞集団をいう。その細胞は可塑性に富み、自在に動き回って神経や筋肉、骨格などの多様な細胞に文化、神経胚が完成するころには消滅する。「第四の胚葉」と呼ばれて発生研究で重要視されている。神経冠と呼ばれたこともあるが、神経管や神経幹細胞と発音が同じになってしまうため、あまり使われなくなっている。 142


「後付け」にしないと複雑化できない (142〜151)
(サッカー ラグビー)最初は前方へのパスは反則だった
前へのパスを認める見返りにできたのがオフサイド


後で付け加わったルール
(発生の話と何か関係あり? -西川)
倉谷「大ありです。角とかリンパ球の分化とか、発生過程には受精卵の段階では何もできておらず、ある状況ができたときにはじめて「オン」になるルールがある。細胞がどれだけ分裂したらこうするって予定しておくんじゃなくて、経緯や系譜にかかわらず、特定の状況の実現でもって活性化するプログラムを次々に追加してきたような印象がある。特定の状況がスイッチを入れ、複数の細胞種を使って遂行される発生プログラムがとくに脊椎動物には多い。
  それと、発生プロセスの中で、待っていればいずれは実現するような特定のパターン、「定石」というのかな、そんなものが進化的に積極的に利用されてきたのだと思う。初期発生には新しいプログラムを挿入しにくいけど、いずれこういった細胞の出会いが成立するはずだから、それを確実につかんで新しい遺伝子発現プログラムを発動させればいい、という感じですかね。特定の上皮と特定の間葉細胞の出会いを基盤につくられる歯とか、胸腺とかの器官はそうやってできている気がする。
  球技の進化も似ていて、卓球は相手が打てないところへ飛ばしたら勝ち。オフサイドなんてない。複雑さからいえば、卓球がホヤ的な動物段階で、サッカーは脊椎動物といえるかも……。」
西川「前方へ投げるパスなども採用して、その代わりルールを組織化したのがアメリカンフットボールじゃないですかね」
倉谷「それはどういう動物に当たるのか。いずれにせよ、僕のいう後付けルールというのは、それが生まれる状況にパターンがある。いつ起こるかわからないが、いつかは必ず起こる状況に対応するものだということです。だから、ルールになったんです」144

西川「(略)脊椎動物になって顎とともに胸腺やリンパ球ができるという具合に、いろいろなものが後から加わるプロセスを考えると、因果の連鎖が順番に続くタイムキーピングの基本が三胚葉にあって、そこに新しいものが付加されるという過程になるやろうね」 145
(西川)「僕が10年近く細々と研究している抹梢リンパ球の発生も、本来、リンパ球を局所に集めるのに関わる分子メカニズムが、組織形成に転用されている後付の例。リンパ球はサメからあるけれど、抹消リンパ組織は哺乳類にしかなく、外的の侵入に備えておくために新たに獲得した基地みたいなものと考えればいい。最近やウイルスが侵入したところに、さまざまな細胞が集まって始まる一種の局地戦争が炎症なんやけど、普通は刺激がなくなると集まった細胞もいなくなって戦場はもとに戻る」
慢性疾患 結核やリウマチなどのような長期戦では「炎症は組織化して元の組織には戻らない」「戦場に塹壕やトーチカができるようなものかな」 145、6

(西川)「同じような組織化が発生過程で生じるのが抹梢リンパ組織。パイエル板やリンパ説ができる過程を見ると、炎症と同じように、まず局所にリンパ組織の誘導細胞が集まる。しかし、ある時期からは、炎症にしか見えない単純な細胞集合が、プログラムに沿って組織になっていくのがわかる。生成に関わる分子にも、炎症が生じた際に使われる分子がほぼ使い回されている」 146
倉谷「どんな付け加え、取り外しが可能かという問題はあるにせよ、後付けルールができる最大の条件は、そのルールが活性化する状況が待っていれば必ず起こるということです。
 ヒトの場合は一度鰓をつくって、それがいろいろな器官になる。ヒトの胚の鰓、正しくは咽頭弓と呼ぶんですけど、これが、中耳腔とか、胸腺や副甲状腺、鰓後体とかすべて何か別のものになる。哺乳類の胚は、魚のように見えても、やっぱり哺乳類としての発生に最適化されていて、むだなものはつくらないようにしてある。とはいっても、鰓をベースに進化した胸腺などはつくらなきゃいけない。後付けで進化したものを生かすために、結局は、祖先が持っていたベースをそのまま遂行することになる。発生は往々にして進化を反復するように見える理由もこうした機構にあるんだろうと思っています

上田「球技のルールもある意味進化してきたものであるとするならば、ルールとして残ってきたものは、選ばれてきたという意味ですべて後付けといえる気もするんですが」
西川「新参者がルールをつくることは、基本的にはない」
倉谷「新参者がいるからこそ、彼らを生かすために昔のルールを守っているという感じですかね。昔からのやんごとない形質だから残さなきゃ、みたいな日本人的発想はあまり発生の進化にはないんですよ。むだなものはとにかくなくす。なくさなきゃ競争に勝てない
西川「新参者がつくったルールを、既存の仕組みが採用するケースってあるの。リンパ球の誕生に伴ってできた新しいルールがあれば、周囲もみな新ルールに合わせる形になるの?」
倉谷「具体例は難しいけど、そうでないと進化できないと思います。新しいものができるというより、新しいものも含めた複数の構造が互いに新しい関係を築くことが進化の本質でしょう。独自のパターンを持つ哺乳類の中耳も、使われているのはもともと顎や鰓の構成要素だった三つの骨で、ゼロから新しく発明されたものではないんです。新しいのは、それら要素の連関の仕方。その連関は、古いルールから変形可能な範囲、既存のボディプランと互換性がなくちゃだめなんです。天使の羽がいきなり背中に生えるような、無茶苦茶な進化はそもそもない。しかし、できる範囲ではいろいろシフトする
西川「といっても、フィールドの大きさやプレイヤーの人数は変えられんやろ?」
倉谷「一度決まった胚の基本形がなかなか変わらないのと同じことでしょう。基本的なルール、傾向といった方がいいのかもしれないけど、新しく進化した形質は、発生過程の終わりの頃に付けたほうがいいということを一つ付け加えておきたい。初めの方を変えたら、そこから先全部に手を加えなければならない。それは、安全なやり方じゃない。「進化的な発明は、発生プログラムの最後に付け加る」とヘッケルがいった気持ちはよくわかる。その傾向は確かにある
西川「発生と時間の問題は難しい。発生の初めから終わりの時間までは、種によってかなりしっかり決まっているんだけど、それが何によって、どういう形でプログラムされているのかを完全にイメージすることは、まだ僕らにはできないね」 150


(胚はルールブックの「後付け部分」を読んでいない 157〜8


倉谷「細胞性粘菌が多細胞体制をつくるときに使うcAMPの波は、ある意味、言語とはいえませんかね」
西川「言語とは思わないけど、神経系のルーツになった可能性はあるかもしれない」
倉谷「だからそこでのテーマって情報ですよね」
西川「神経系は自身で行動パターンをつくりえる。それが抽象化で、最終的に言語に昇華した――そんな感じかな。それを可能にする頭の構造変化を人間は獲得していて、それが脳の中の回路が持つ物語をつくる能力の源泉になっている。DNAは、文字への置き換えは可能でも、それ自体に抽象化の能力はないから、嘘はつけない。そこが決定的に違う」
倉谷「偽遺伝子というのがある」
――生物全体に広く見られる擬態だとか、他のものになりすまして免疫系から逃れる微生物みたいなものも嘘つきといえば嘘つき。 232

(*10) 偽遺伝子 pseudogene
一見遺伝子のように見えながら、実は遺伝子としての働きをしていないDNA配列をいう。
突然変異で機能を失ったり 重複で不要になったりした遺伝子がゲノムにそのまま残った「化石」のような存在だと考えられているが 転写されたRNAが一定の機能を担っているような例も見つかっている 234


いろいろな声を真似できる「百の舌」223

『生物のなかの時間』    色字は記入者によるもの



「必要」と思える文字などを 読んだ部分から引かせていただきました
記入しなかった部分・・ 一目で「記憶」風のものも




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