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kai/luciferase/circadian rhythm
 
2017年3月4日 11時27分の記事

〜5


生物は概日時計により環境変化をさきどりすることで
環境適応を実現しようとしてきた

環境変化に対応する機構を反応的ホメオスタシス
概日時計を利用した機構を予測的ホメオスタシス
とよぶこともある

多くの遺伝子発現はその二つの「制御を受けることが一般的」
前者は不可欠な制御 後者はそうではない

自然環境下では 後者の制御は長い時間ののちには 少なからぬ影響をもつものとされている

この概日時計の効果の自然条件下での定量的解析は一般に困難だが,シアノバクテリア(藍色細菌,ラン藻)の二つの周期変異体を使った生育競争実験により,概日時計の環境適応的機能が示されている.この方法では,同一試験管内で二つの系統が世代を繰り返すので外部環境は厳密に同じであり,個別の生育測定では得られない精度を持っている.さらに,光や栄養塩類を競合することによりわずかな生育の差が増幅される. 3


“シアノバクテリアの系統発生”

太陽の光エネルギーを利用 水を分解 還元力
光合成の開発 (大発生) 酸素に富む環境
原核生物  あらゆる水圏に生息

「生命進化の道」を開いたといわれ

シアノバクテリアは細胞内に植物の葉緑体とよく似たチラコイドをもち 葉緑体の祖先だと考えられている



“概日リズムの発見”

最初にシアノバクテリアで見いだされた概日リズムは 窒素固定

窒素固定では大気中の窒素分子を一連の反応でアンモニアに還元するが,この反応を触媒する窒素固定酵素は酸素により不可逆的に破壊されてしまうので,シアノバクテリアは光合成により不可避的に生じる酸素から窒素固定を守る必要がある.このため,糸状性シアノバクテリアはヘテロシストとよばれる光合成機能をもたない窒素固定細胞を分化させ,光合成と窒素固定を空間的に分離している.しかし,単細胞のシアノバクテリアではこの戦略は不可能であり,窒素固定を夜間にのみ行うことで時間的に光合成と窒素固定を分離する方法をとっている.従来,この制御はもっぱら光による直接の制御と考えられていたが,1986年になって,二つのグループが単細胞性シアノバクテリアにおいて窒素固定活性リズムが連続明条件下でも持続することを見いだし,この時間的分業が概日時計によっても制御される反応であることを示した.
Golden SS,Ishiura M,Johnson CH,Kondo T(1997)Cyanobacterial circadian rhythms.Annu.Rev.Plant Physiol.48:327-354



“細胞分裂と概日時計”

概日リズムが細胞分裂中も持続するかどうか

いくつかの真核生物では細胞周期が概日周期より短くなると明確な概日リズムが消失し 細胞分裂は概日時計を中断させてしまうと考えられていたが

シアノバクテリアでは 10時間で分裂する細胞も分裂をほとんど停止した細胞とまったく同じ概日リズムを示す

それは 原核生物では概日時計が細胞周期からまったく独立し てり 娘細胞にも位相(時間)が伝達されることを示す
Kondo T,Strayer CA,Kulkarni RD,Taylor W,Ishiura M,Golden SS(1997)Circadian rhythms in rapidly dividing cyanobacteria.Science 275:224-227



“ルシフェラーゼによる概日時計のモニター”

概日時計の分子機構解明のモデル系としての シアノバクテリア

いくつかの系統は遺伝子組換えがきわめて容易で全ゲノムサイズも大腸菌より小さい

こうした系統のひとつ,Synechococcus elongatus PCC7942(以下では,単にシアノバクテリアとよぶ)で,概日時計に制御されているプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を接続しこれを「人工の時計の針」として機能させることで,ほかのモデル生物では得られない高精度で能率のよい解析が可能となった.発光リズムは2週間以上持続し,暗パルスによる位相変位や,25〜36℃の条件下での周期の温度補償性も備えている. 4
Kondo T,Strayer CA,Kulkarni RD,Taylor W,Ishiura M,Golden SS,Johnson CH(1993)Circadian rhythms in prokaryotes:luciferase as a report of circadian gene expression in cyanobacteria.Proc.Natl Acad.Sci.USA 90:5672-5676



kai遺伝子群のクローニング”

「発光」シアノバクテリアでは寒天培地上の1万個以上のコロニーの概日時計の同時測定が可能
これを利用し,変異源エチルメタンスルホン酸で処理したシアノバクテリアから,14時間から60時間におよぶさまざまな周期変異型,無周期型,低振幅型など,あらゆるタイプの時計異常を含んだ100種以上の変異体が分離された.
Kondo T,Tsinoremas NF,Golden SS,Johnson CH,Kutsuna S,Ishiura M(1994)Circadian clock mutants of cyanobacteria.Science 266:1233-1236

次に,野生型ゲノムライブラリーによる遺伝的相補を利用してこれらの変異の原因遺伝子がクローニングされ,三つの連続した遺伝子,kaiAkaiB,および kaiC が同定された.kai遺伝子群のコードするアミノ酸配列には既知のタンパク質と相同性は見いだされなかったが,顕著なリズム異常を示す50個以上の変異が kai遺伝子群内に確認された.

また,kai遺伝子群全体,あるいは,いずれの遺伝子を破壊してもリズムは完全に消失し,遺伝子破壊体に kai遺伝子群を再導入すれば完全なリズムが回復することも確認されたので,kai遺伝子群のコードするタンパク質がシアノバクテリアの概日時計機構における中心的な分子であることは明らかである. 5
※7 Ishiura M,Kutsuna S,Aoki S,Iwasaki H,Andersson CR,Tanabe A,Golden SS,Johnson CH,Kondo T(1998)Expression of a gene cluster kaiABC as a circadian feedback process in cyanobacteria.Science 281:1519-1523



kai遺伝子群の発現制御に基づく振動発生”

kaiA遺伝子,kaiB遺伝子,kaiC遺伝子のそれぞれを大腸菌の誘導性プロモーターを使い過剰発現させると いずれもリズムは消失するため それらの遺伝子の発現抑制が振動発生に重要であることが示唆された

ルシフェラーゼ遺伝子を利用した実験から,kai遺伝子群はkaiA遺伝子とkaiBC遺伝子の二つに分かれて転写されており,二つのプロモーター活性,PkaiAとPkaiBCは,周期や位相は同じだが波形の異なった概日リズムを示すことが明らかになった.さらに,PkaiBCの活性はkaiC遺伝子の過剰発現で完全に抑制され,kaiC遺伝子の発現がその産物 KaiC により強い負のフィードバックを受けており、この制御がシアノバクテリアの概日振動を発生させていると考えられた.逆に,kai遺伝子の過剰発現はPkaiBCの活性を増加させ,kaiA遺伝子の不活性化はPkaiBCの活性を低下させてしまう.すなわち,KaiA はPkaiBCの促進因子である.kaiA遺伝子の発現はゼロになることはないので,kaiBC遺伝子の転写はつねに活性化され KaiC レベルが上昇する.この KaiC はなんらかの操作によりkaiBC遺伝子の転写を抑制し,kaiBC遺伝子の転写が低下すれば KaiC のレベルも低下する.すると,転写抑制が弱まり,kaiBC遺伝子の転写は KaiA によって再び上昇に転ずるだろう.このモデルに従えば, KaiC 量もしくはkaiBC遺伝子転写活性が振動の進行を直接に規定しており,もしこれらを外部から一時的に撹乱すれば,処理を行った時間により異なった位相変位が予測される.

事実 kaiC遺伝子の発現を一時的に上昇させると処理位相に応じた位相変位が誘導され そのことは モデルを支持している 5、6 
※7



…シアノバクテリアの概日時計は kai遺伝子群発現の自己制御が基本…

真核生物においても原核生物においても,「時計」という生命には奇異にみえた現象が生命活動の基本原理,すなわち,遺伝子の発現制御で実現されており,さらに,時間を刻む遺伝子が生物群ごとに進化の過程で選ばれていることは興味深いことである.

自己制御ループの理解のためにはさらに未知の分子の同定が不可欠
振動発生機構の構成要素を同定しただけでは不十分だろう

もうひとつの大きな課題は,振動の周期が焼く24時間と長く,しかも温度補償され,さまざまな代謝条件の変動を受けにくい,といった概日振動の特質(概日特性)がどのようなしくみで可能なのかを分子レベルで説明することである.幸い,シアノバクテリアでは「 KaiC の単一アミノ酸変位が大幅に周期の変化をもたらす事実は, KaiC の生化学的機能が周期決定の重要な要因であることを示唆している. 6



“Kai タンパク質群の細胞内動態”

遺伝子発現から予測されるように KaiA KaiB KaiC のタンパク質量は いずれも mRNA のリズムに比べ8時間ほど遅れた位相で振動する
その Kai は出芽酵母内や試験管内でさまざまな組み合わせで相互作用することが確認された
Iwasaki H,Taniguchi Y,Ishiura M, Kondo T(1999)Physical interactions among circadian clock proteins.KaiA,KaiB,KaiC,in cyanobacteria.EMBO J.18:1137-1145

さらに,細胞抽出液で抗KaiC抗体による免疫沈降反応を行うと,KaiA,KaiB,SasA(後述)ともに,KaiC と夜間に強く相互作用していることが明らかになった.また,ゲルろ過法により,Kaiタンパク質群とSasAは夜間に分子量400,000〜600,000の大きな高次複合体を形成し,昼間に分離することが示された.さらに,遺伝子欠失変異体の解析から,KaiCがこの複合体の中心的な分子になっていることや,KaiA と KaiB が共役して KaiC を含む複合体と相互作用することなど,この複合体の動態が明らかになった. 6
Kageyama H,Kondo T,Iwasaki H(2003)Circadian formation of clock protein complexes by KaiA,KaiB,KaiC,and SasA in cyanobacteria.J.Biol.Chem.278:2388-2395



“KaiA による KaiC のリン酸化”

ウェスタンブロット解析では KaiCは二つのバンドになるがホスファターゼ処理により高分子量のバンドが消失するため
KaiC は細胞内でリン酸化されていることがわかる

このリン酸化レベルは概日振動を示し,いくつかのリズム変異体ではこのリン酸化が異常となるので,概日振動の過程に KaiC のリン酸化が重要なステップであることが示唆された.

一方,KaiC 上に KaiA と結合する二つの領域が特定されたが,この領域には多くの時計変異がマップされ,結合の強さが変異により変化する.また,kaiA遺伝子のリズム変異の抑制変異が kaiC遺伝子のこの領域に見いだされている.これらのデータは,KaiA と KaiC のあいだの相互作用が概日振動の性質に大きな影響をもつことを示している.さらに,KaiA によるkai遺伝子群の発現促進に KaiC が必要であることも示され,この二つのタンパク質が協同してKaiBC遺伝子の発現を促進しており,振動持続のための正のフィードバックをも担っていることが示された.最近,細胞内においても試験管内でも,KaiC のリン酸化が KaiA により大きく促進されることが示され, KaiA と KaiC の協同作用が KaiC のリン酸化により制御されると考えられている. 7
Iwasaki H,Nishiwaki T,Kitayama Y,Nakajima M,Kondo T(2002)KaiA-stimulated KaiC phosphorylation in circadian timing loops in cyanobacteria.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:15788-15793



“KaiB の機能”

KaiA は KaiC のリン酸化を促進するが KaiB は逆に抑制する
また KaiB の細胞内分布を解析すると 主観的昼には膜画分に多く 主観的夜の後半に KaiA KaiC に遅れて細胞質画分蓄積する

これらの結果から,シアノバクテリアでは Kaiタンパク質群の局在が KaiC のリン酸化を調節することでその活性を制御し,概日振動が生まれるというシナリオが考えられる.すなわち,朝の早い時間には KaiC のレベルは低いが,昼になるにつれて KaiC が細胞質に蓄積してくる.この KaiC の蓄積とともに KaiC のリン酸化レベルも上昇する.主観的夜になると安定した KaiA-KaiC複合体が形成され,KaiC のリン酸化は KaiA によってさらに増加し,夜の半ば(CT16)に最大となる(CT:概日時刻,恒常条件において,主観的昼の始まりをCT0およびCT24とする時刻主観的1日を24で割って表しているので,CT1単位は60分とはならない).KaiB は夜の遅い時間(CT20)になると細胞膜から細胞質へ移動し,KaiC と複合体を形成できるようになる.KaiB は KaiA-KaiC 複合体に結合して KaiC のリン酸化と Kaiタンパク質複合体の形成がKaiBC遺伝子の発現を制御し,概日振動を発生させていると考えられる. 8
Kitayama Y,Iwasaki H,Nisiwaki T,Kondo T(2003)KaiB functions as an attenuator of KaiC phosphorylation in the cyanobacterial circadian clock system.EMBO J.9:2127-2134



“Kai タンパク質群の生化学的機能”

KaiCの配列は重複構造をとっていて おのおのの対応する位置にATP/GTP 結合モチーフ(Walker's P-loop)が見いだされており
そのモチーフによってATPと結合することも確認されている
また ATP/GTP 結合モチーフへ変異を導入するとATP結合能も概日リズムも消失する
さらに 試験管内で KaiC がそのセリン/スレオニン残基を自己リン酸化することも見いだされている
Nishiwaki T,Iwasaki H, Ishiura M,Kondo T(2000)Nucleotide binding and autophosphorylation of the clock protein KaiC as a circadian timing process of cyanobacteria.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:495-499

しかし その活性が細胞内での KaiC およびその複合体の活性としてどのような意味をもつかについて リン酸化部位の決定とその制御機構についてさらに解析が必要

一方 Kai タンパク質群の構造についての解析も進み
示唆に富む情報も得られている

まず,既知のタンパク質との配列比較から KaiC の構造が RecA やヘリカーゼと類似していることが報告されている
Leipe DD,Aravind L,Grishin NV,Koonin EV(2000)The bacterial replicative helicase DnaB evolved from a RecA duplication.Genome Res.10:5-16

その類似性は KaiC と DNA の相関を期待させる
Kaiタンパク質群の立体構造についても研究が進展している
Mori T,Saveliev SV,Xu Y,Stafford WF,Cox MM,Inman RB,Johnson CH (2002)Circadian clock protein KaiC forms ATP-dependent hexameric rings and binds DNA.Proc.Natl Acad.Sci.USA 99:17203-17208
Ditty JL,Williams SB,Golden SS(2003)A cyanobacterial circadian timing mechanism. Annu.Rev.Genet.37:513-543


KaiA については NMR およびX線回折により「構造が決定され,KaiC については電子顕微鏡による観察により ATP存在下で六つの単量体が環状に配列した六量体を形成することが明らかとなっている.

それらの時計タンパク質は多様な複合体として機能していると予測され 構造解析からその機能の説明に至るためには
個々のタンパク質の構造情報のみでなく 時間とともに変動するさまざまな複合体の解析が不可欠 8


『時計遺伝子の分子生物学』2004


同書P5の図「kai遺伝子群発現のフィードバック制御により機能する概日時計」と
repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/110062/1/KJ00004706348.pdf
のP169 図1「kai遺伝子の発現制御による概日時計」は(特に図に関しては)ほぼ同じかと思われる(書中からの引用部分 pdf. いずれも 近藤孝男氏によるもの)




10年以上経っていますが そちらから ちょこちょこ足していきます
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ルシフェラーゼ (luciferase)   Wikipediaに聞いてみる
発光バクテリアやホタルなどの生物発光において、発光物質が光を放つ化学反応を触媒する作用を持つ酵素の総称である。 発光酵素 とも呼ばれる。

ウェスタンブロッティング (Western blotting; WB)
電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し 任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法
別名ウェスタンブロット法(Western blot analysis)
サザンブロッティング(南)、ノーザンブロッティング(北)の流れから、半ばジョークで命名されている(ちなみに様々な手法に「イースタン」と名付けられているが、確立したものはない)。前二者は核酸どうしの相補性を利用しているが、本法は抗体の特異性によって目的のタンパク質分子を区別している。よってイムノブロット (immunoblot; IB) とも呼ばれる。生命科学の研究者の間では、単に「ウェスタン」といえばこれを指す。 Wikipedia


ホスファターゼ ? kotobankに聞いてみた  (phosphatase)

…有機燐酸エステル・ポリ燐酸を加水分解する酵素の総称。フォスファターゼ。脱リン酸化酵素。…

…酸性に至適pHをもつものとアルカリ性にもつものが区別される場合が多い.リン酸エステル化されたタンパク質の脱リン酸を触媒する酵素はタンパク質ホスファターゼ.… とか とか  kotobank






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