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ミュオグラフィ観測/システムとデータ処理技術
 
2017年5月20日 19時39分の記事

『素粒子で地球を視る』より

6.7
(4 地球を透かす素粒子)
4.4 ミュオグラフィと他の構造探査手法との比較  123〜

重力測定

重力はミュオグラフィと同じく対象物体の積分密度を測定する手法

ミュオグラフィが ほぼ水平方向の積分密度を与えるのに対して
重力は ほぼ鉛直方向の積分密度を与えるところが相補的である

そのような理由から
重力データとミュオグラフィとの比較が試みられてきた

たとえば 西インド諸島(La Soufriere)にある溶岩ドームの密度構造のモデルを得るために重力測定データとミュオグラフィ結果とが比較され 両者が調和的であったことが報告されている(Lesparre et al.,2012).


比抵抗測定

地層を流れる電流の抵抗値を測定する方法

含まれる水の量,風化の程度,孔隙率などの地下の物性を推定するのに,1950年代から積極的に使われてきた.この手法を用いると,抵抗値の低い泥や水を検出することが可能になることから,熱水活動や断層などの存在を推定できる.ミュオグラフィと比抵抗測定法を比較する場合,密度と抵抗値を1点1点比較することは難しい.しかしそれらは相補的であるともいえる.まったく違う物理量を比較することになるからだ.たとえば熱水地帯において,低い密度と低い電気抵抗の組み合わせは,熱水流体が強い噴気作用を引き起こしている層や,熱水変質した物質の層を示しているかもしれない.あるいは,低い密度と高い電気抵抗は,流体が抜き去られた,空隙率の高い物体かもしれない.一般的には,地層内部の構造は非常に複雑なので,比抵抗値は地層構造の影響を大きく受ける.そのため,実際の比抵抗断面は本当の抵抗分布からゆがんだ形で得られる.ミュオグラフィは,比抵抗測定から得られるモデルを制約するのに有用なのだ.


岩石コアサンプリング

掘削を行い 試料(岩石コア)を地下から取り出すことで
地層の物性を直接調べる方法
掘削孔のことをボアホールとも呼ぶ

1本の掘削では情報は1次元的にしか得られないので,複数本掘ることで,周囲の地質学的見識を組み合せて,3次元的な構造を推定する.ボアホールの本数が多ければ多いほど,その精度は向上するが,1本の掘削に多額の費用がかかることから,あまりたくさん掘れないのが現状だ.

ミュオグラフィ 岩石コアサンプリングともに 直接密度を測定する手法であることから 両者のコラボレーションが期待される 124


31
5 素粒子で地球を観測する/5.1 ミュオグラフィによる野外観測

野外の観測では 検出器の 持ち運びやすさ 使いやすさ
安定などが重要課題

野外の厳しい環境下では,たとえばノートパソコンを持参してデータを吸い出す作業ですら,ユーザにとってはあまり現実的でない.システム自体にモニターを装備する,ウェブサーバーを組み入れなどの工夫が必要だ.


屋外

屋外観測では平板型のミュオグラフィ検出器を使用することが多い

これは,検出器を格納するプレハブの形が直方体であることから,理にかなったデザインだといえる.また,温度/湿度依存性が少ないシンチレーション検出器の方が,扱いが容易だ.

屋外の観測では システムにソーラーパネルを組み込むことが可能

これにより,商用電源によらない独立したシステムが構築できる.ソーラーパネルの最大出力とシステムの総電力消費量の比を安全因子と呼ぶが,安全因子は十分大きく取っておく必要がある.たとえば雨季には給電がまったく行われない機関が何日も続くことがあるからだ*.また,ソーラーパネルの上に雪が積もると,発電ができない.積雪地域ではソーラーパネルを十分高く設置し,大きな斜度をつけ,雪が落ちる仕組みが必要である. P126 (27夜などに うちこみ 28 8:47:17 exciteサーバーに送付)

* 特に,多雨地域の気象条件では,ソーラーパネルによる連続した運転を行うためには,通常,安全因子を20としても足りないことがある. *


6.1
洞窟内部

洞窟内部は気温変化が少ないため ガス検出器も選択肢に入る

自然洞窟では,洞窟の入り口自体,近づくことが難しく,商用電源が入り口まできていることはまずない.洞窟内部ではソーラーパワーは使えないので,バッテリーで駆動することになる.仮に5Wの消費電力だと,標準的な12V,50Ah(アンペアアワー)のバッテリーで120時間以上の連続運転が可能だ.

ガス検出器を使う場合 ガスタンクも必要

あらかじめ決められた割合で混ぜてつくった混合ガスは,圧力と流量をモニタリングしながら,洞窟の入り口から検出器に送り込むことになる.必要なガス流量は毎時1.5Lから5L程度なので,たとえば10Lタンク(150 bar)を用いると数十日間の連続観測が行える.だが,観測期間がこれ以上長期にわたるとガスタンクの交換が必要だ.

洞窟内の測定で一番問題になるのは 湿度

ガス検出器には1000Vを超える高電圧が印加される.しかし,多湿環境下では放電が起きやすい.この問題を回避するため,検出器を密封容器の中に格納し,その容器内でガスを循環させる.陽気が密封されていることで,回路からの排熱も湿度を低下させることに寄与する*.

* Barnafoldiらは,湿度100%の洞窟内でも,この方法により密封容器内の湿度は30-50%に抑えられたと報告している(Barnafoldi et al.,2012). *

環境に左右されやすいガス検出器を使う際には,信頼性の高いデータを収集するために,周辺環境,つまり湿度,気圧などのモニタリングおよび記録が常に必要である.ガス検出器は,周囲の気圧や気温にも,敏感なので,これらをモニターしながら機器を自動調整するようなシステムも必要だ.


掘削孔内部

掘削孔(ボーリング孔あるいは,ボアホール)を用いた観測では
孔の断面形状から 円筒型の検出器が用いられることが多い

孔内は,ある深さ以深は地下水で満たされていることが多いので,検出器は耐水性の容器に入れる必要がある.掘削孔という非常に狭い環境でミュオグラフィ観測を行うためには,シンチレーションファイバー等を利用した検出器のダウンサイジングが不可欠だ.一方,ボアホールの径が小さいほど,有感面積を確保するため,検出器は長くする必要がある.たとえば,10cm径のボアホールでの観測では,検出器の長さは1m以上ないと,実用的な観測は難しい.

耐水容器の内部には,電子回路の排熱がこもりやすいため,熱センサーなどで温度モニタリングを行うとよい.また,掘削孔内部では,検出器の方向が地表からはわからないので,方位磁石を容器に要れ,検出器の方向を,北からのずれとして決定する.検出器を方位角方向に定期的に回転させれば,チャンネルごとの個性からくる系統誤差を抑えることができ,より精度の高い観測が可能だ. 127


イメージングの下準備

ミュオグラフィ観測では 
あらかじめ対象となる物体の幾何学的形状を検討しておくとよい

観測点を決める際に,地形による影響ができるだけ少ないところや,ミュオン透過経路ができるだけ短くなるような観測点を選択できるからだ.ミュオン透過経路を短くすることで,山体を透過できるミュオンのイベント数が増えて,統計的に有利になる.

対象から検出器までの距離に応じて 
ミュオグラフィシステムの構成も少し変える必要がある 127

誤った情報を持つ粒子はノイズ源となるので 取り除く必要がある

その方法としては,重量物(鉄や鉛ブロック)で吸収させるか,重量物で意図的に多重散乱させ,散乱した成分のみを取り除く方法が有効だ*.ただし,重量物の追加はシステム全体を重くするので注意が必要である.

* 思い切って発想を逆転させてみよう.電子は物質中を通るときに,曲がって,数を増やす.この迷惑な振る舞いを逆手にとってミュオンと電子を区別するのだ.方法は以下の通り.まず,厚い鉄板や鉛の板を用意する.そこを電子が通ると,電子は曲がったり,数を増やしたりする.それらの電子は位置敏感な面内にある多数の正方形を通過する.一方,ミュオンは厚い鉄板や鉛の板を通っても曲がったり,数を増やしたりしないので,位置敏感な面内の,ある一つの正方形のみを通過する.つまり,位置敏感な面内にあるピクセルを通過した粒子のうちで,複数のピクセルを同時に通過したものが電子で,一つのピクセルしか通過しなかったものがミュオンなのだ. * 128


『素粒子で地球を視る 高エネルギー地球科学入門』2014/田中宏幸/竹内薫


素粒子は 地球を透かす

光と影/ベータ崩壊




『素粒子で地球を視る』/ 4 地球を透かす素粒子


4.2 野外におけるミュオグラフィ観測システム 108〜

ガイガーカウンター/原子核写真乾板/シンチレーション検出器/ガス検出器/チェレンコフ検出器


シンチレーション検出器  109〜

検出システムには幾何学的分類による平板型と円筒形のシステム
そして用いるシンチレーターが固体であるか液体かの違いによる それぞれのシステムがあり

取り扱いの便利な固体システムが野外のミュオグラフィに用いられている


 ・平板型システム

システムは2枚以上の平板型の検出器で構成され
それぞれの平板は水平方向と垂直方向に各々 Nx個および Ny個の細長い棒状のプラスチックシンチレーターを並べることで構成され
そのようにして できる画素数は Nx × Ny個

まず細長いプラスチックシンチレーターを1枚用意する
ミュオンがシンチレーターを通過すると 光電子増倍管がそれをカウントするが ミュオンがシンチレーターのどこを通ったかはわからないので もう1枚 同じ形のシンチレーターを用意して 前のシンチレーターに直交するように重ねる
(重なった部分はシンチレーターの幅を1辺とする正方形になる)

ミュオンが各々のシンチレーターを通るたびに光電子増倍管はカウントするが,カウントするタイミングはてんでばらばらである.ところが,2つの光電子増倍管から同時に信号が出れば,ミュオンが2つのシンチレーターの重なった正方形の部分を通過したということになる.シンチレーターを多数横に並べたものを2セットつくり,一方を90度回転させて重ね,同様に多くの正方形(ピクセル)をつくっても,同じ原理で,どのピクセルをミュオンが通ったかを知ることができる.つまり,シンチレーターの重なっている部分がミュオンに対する有感領域,そしてその面積が有感面積となる.たとえば幅5cm,長さ100cmのシンチレーター40本を使って,平板型の検出器をつくれば,その検出器の有感面積は,1?となる.有感面積はシンチレーターの長さと数を変えることで,自由に調節可能である. 110

ただ それだけでは 面内のどの位置にミュオンが飛び込んできたかはわかっても どの方向から飛んできたのかまではわからない

そこで,今度は前述した平板型の検出器(位置敏感な面と呼ぶ)を2枚用意して,距離を離して配置する.そうすると,2面でそれぞれどのピクセルをミュオンが通ったかを知ることができる.2つのピクセルを直線で結んでやれば,ミュオン飛跡の角度を知ることができる.
(図 4-3 平板型システム概念図…長方形の装置はプラスチックシンチレーター,円筒形の装置は光電子増倍管を各々示す.平板間に配された電子回路によって,飛跡情報が記録される,数字はミュオンカウント数を示す.) 111

ピクセルを小さくして ミュオンの飛来角度を精度よく決める

ピクセルの大きさが有限であることに伴う角度の決定精度を角度分解能と呼ぶ.ピクセルのサイズはシンチレーターの幅より良くすることはできない.とにかくこのようにして決まったミュオン飛跡の角度を観測対象の方向へまっすぐ延ばしていけば,そのミュオンが対象物体内部のどこを通ってきたかがわかるというわけだ.

ミュオンは物質通過中にほとんど曲がらない 112


 ・円筒形システム

シンチレーションファイバーや細長いプラスチックシンチレーターをらせん状に配置し 円筒面をつくるのが一般的

シンチレーションファイバーは直径1mm以下と細く,面内で高い位置分解能を実現できる.一方,有感面積を増やすためには大量のファイバーが必要なので,シグナルはマルチアノード光電子増倍管などを用いて1度に大量に読み出すのが一般的だ.

ファイバーは層構造をなすように円筒に巻きつけ
最も内側の層にはらせん状に配列されたファイバー群(第2,3層)に加えて,円筒の軸に平行に配列されたファイバー群(第1層)が存在する.ミュオン飛跡の再構築法は平板型のシステムと少し異なり,以下の手順で行われる.

(1)第1層を用いて,ミュオン飛跡を含む平面(円筒軸に平行な成分)を決定する.
(2)次に第2層,3層でシグナルを出したファイバーを同定する.
(3)第1,2,3層間でシグナルを出したファイバーのの交点を求める.実際には交点はたくさん求まるので,その中で一直線に並ぶものだけを取り出す.ここでは最小2乗法が採用される.有感面積は平板型システムと異なり*,いずれの方位角に対しても同じであるが,仰角方向では水平が最大となる.角度分解能などその他の特徴は平板型システムに準ずる.

* 平板型システムの場合,アクセプタンスは検出器面と垂直な方向(0,0)で最大になる. *


最小2乗法:自然科学のあらゆる分野で使われる手法 113

…ところで,なぜ「2乗」の和を最小にするのであろう.実は,ちょっと考えればわかるように,単なる和であると,プラスのずれとマイナスのずれが偶然,相殺されることがあるからなのだ.

データからモデル式を求めるため 幅広く応用が利く 最小2乗法だが 適用限界もあり 誤差が正規分布でない場合や系統誤差が無視できない場合などは注意を要し

(統計学の専門書等で)適用限界を確認した上で使うべきである 114


 ・液体システム

プラスチックシンチレーターは取り扱いがやさしく,長期にわたってメンテナンスを必要としない.一方,極端に検出効率の低いニュートリノを現実的な時間でとらえるには,検出器の有感面積を増やすほかないが,プラスチックシンチレーターを巨大化するには費用の面から限度がある.

液体のシンチレーターをタンクに流し込むだけで巨大なセンサーをつくれる


 ・シンチレーション光の読み出し

光増倍管などの光センサーが用いられるが
意外と電力を消費するため 野外観測の場合 特に光センサーの低消費電力化が必要

光電子増倍管には,1000Vを超える高い電圧をかける必要がある.この電圧を普通の電圧変換器を使って得ようとすると,巻き線の電気抵抗によるジュール損(負荷電流の2乗にほぼ比例する損失)が大きく,エネルギー効率が悪い.

コッククロフト・ウォルトン回路(交流またはパルス状の直流を高電圧の直流に昇圧する回路)の実装により その電圧変換器をシステムから取り除くことができる

一方,光センサーとして半導体センサーの利用も可能だ.半導体センサーには,光に対する感度に優れたものがあり,ミュオグラフィを進化させる可能性を秘めている.半導体センサーは大変小さく(数mm角),消費電力も10万分の1ワット程度とほぼ無視できる.

目下解決しなければいけない課題は,半導体センサーのノイズレベルである.これが野外でのミュオグラフィ観測を行う上で障壁となる.センサーの温度を一定に保てば,ノイズの影響を最小限に抑えられるが,温度を一定に保つために電気を大量に使っては意味がない.

半導体センサーのメリットが薄れないよう 工夫が必要 115


ガス検出器

専ら洞窟内の観測に用いられてきた
湿度が高いということはあるが 内部の気温は1年を通してほぼ一定
温度依存性が大きいガス検出器に適した環境

ガス検出器は数mm程度の高い位置分解能を実現できるため,一定の温度環境下で使う限り,ガス検出器はシンチレーション検出器とくらべて重さ,コスト,位置分解能の点で優れた検出器である.しかし,どうしても避けられないのがガス交換だ.検出器内部を新鮮なガスで常に満たしておく必要があるため,長期間にわたるミュオグラフィ観測ではガスタンクそのものも定期的に交換しなければいけない. 116


チェレンコフ検出器

チェレンコフ検出器をミュオグラフィ検出器として用いた例は 装置評価用のテスト実験…Super-Kamiokandeを用いたもの…で
観測対象の近くまで巨大な検出器を動かすことは 困難

小型のチェレンコフ検出器を低エネルギーミュオンのフィルターとして利用すれば より解像度の高い画像を得るのに役立つだろう

0.4GeV以下のミュオンのエネルギー損失レートは非常に高く,物質中で何度も散乱するため,再構築されたミュオンの飛跡は,実際の飛跡と大きく異なることがある.チェレンコフ検出器は相対論的ミュオンだけをとらえるため,これを低エネルギーミュオン除去に利用すれば,ターゲットボリュームの通過経路の同定精度が上がる. 116



4.3 ミュオグラフィ観測におけるデータ処理技術

データ収集技術

ミュオグラフィ検出器のデータ収集部はその役割から前段部と後段部に分けられる.光センサーが出力する信号はいわゆるアナログパルスで,そのままでは処理することができない.そこで,前段部では定められた閾値より大きなアナログパルスを矩形波に変換する.矩形波が立ち上がっている時間は,次にくる信号と重ならない程度に十分短くなっている必要がある.この時間は通常,1億分の1秒程度である.後段部では,矩形波を時系列的に解析することで,ミュオン飛跡を決定する.また,シリアルポートやLANを通して,データ収集コンピュータに解析結果を送る役割も果たす.

ミュオグラフィ観測システムのデータ取得部分は,従来,極端に電力消費が大きな部分であった.これを大きく改善することで,電子回路を用いるいわゆるリアルタイムミュオグラフィがようやく実用的なものになった.

データ取得部分の低消費電力化,小型化のための有効な手段は,データ収集部を1つの集積回路(チップ)上に実装することである.そうすれば,同一チップ内の信号伝達距離が短くなるため,信号伝達に使用する電力を抑えられる.

集積回路の開発には費用と期間が要る

商用チップの場合は量産化による費用回収が可能だが ミュオグラフィ観測で集積回路を新たに開発するのは 非現実的

Field Programmable Gate Array…FPGAチップ(技術)
プログラミングすることができるLSIのうち再書き換え可能であるものを指す

FPGA内にはウェブサーバを組み込むこともでき
インターネットを介して情報を読み出すことも可能


ミュオントラッキング技術

ミュオン飛跡の決定法には アナログ デジタル そしてアナログとデジタルを合わせたハイブリッド方式の3つの方式があり
アナログ方式は シンチレーション光などが光電子増倍管に到達する時間差を利用して位置決めをする方式
デジタル方式は 光学的に分割されているシンチレーターの組合わせで位置決めを行う方式

ミュオグラフィで用いられるアナログ検出器は,プラスチックシンチレーターの1枚板で,分割されていない.
(たとえば図4-6にあるように,シンチレーターのどこをミュオンが通ったかは,シンチレーション光が4隅に取りつけられた光電子増倍管に届く時間差から求める) 117

アナログ方式では,粒子通過時のタイミングの精度を向上させることによって,位置分解能を上げることができるが,ミュオンが通過したタイミングを常に精度よくモニタリングしなければいけないといった問題も併せ持つ.

一方,デジタル方式では,シンチレーターが物理的に分割されているので,位置きめに不確定性がまったくない.また,シンチレーターの幅を狭くすることで,位置分解能を上げることができる.しかし,ニュートリノ検出器のように巨大な有感面積(体積)が必要なシステムでは,ほとんどの場合,アナログ方式が用いられる.これは,重さ数千〜数万トンにも及ぶ大量の液体シンチレーターや水を工学的に分割することが現実的ではないためである.

一方,アナログ方式とデジタル方式のハイブリッドは,両方の利点を組合わせる方式だ.デジタル方式では難しかった,シンチレーターの幅よりも良い位置決め精度を出せる方法である.ハイブリッド方式はデジタル方式と同様,シンチレーターが物理的に分割されているが,シンチレーターの断面が三角形であるところが違っている.

ミュオンがシンチレーターを通過すると
シンチレーション光は両方の三角形で同時に発生する

ミュオンのシンチレーター内での経路長の違いで,生成されるフォトン数が異なることから,隣り合うシンチレーターで発生したフォトン数の比を測定することで,ストリップ内のどこをミュオンが通ったかがわかる.この位置決め技術をチャージシェアリング技術(電荷をシェアするという意)と呼んでいて,これまで数mmの位置決め精度を得ることに成功している. 119


ミュオグラフィ観測における誤差

どのミュオントラッキング技術を使っても 無限に精度の良い位置決めはできない…それはある精度以上でミュオン飛来角度を決定できないことを意味する

ミュオン飛来角度をしっかり決められないと,ミュオンが通過してきた厚み(密度長)も正確に決められない.したがって,ミュオン経路を単一のもので代表させてしまうと,得られる(経路に沿った平均)密度値も実際のものとは異なってくる.このような透過経路長の過小(過大)評価による誤差を透過ミュオンフラックス推定誤差と呼ぶ.

透過ミュオンフラックス推定誤差を抑えるためには,ミュオン経路の長さとして「平均経路長」を用いなければいけない.

(…対象物体の理論的経路長を仰角 方位角の関数として離散的に求め 角度ステップを検出器の角度分解能よりも充分に小さくしておく…)

対象物体の平均経路長の分布をデータ解析に用いることで,より正確な結果が得られる. 120

ミュオグラフィ観測誤差を誘引する要因として
東西効果も挙げられる

鉛直方向のミュオンには ほぼ東西効果がないことが Hansenらによって報告されている(Hansen et al.,2005)

東西効果とは1次宇宙線や2次宇宙線(大気ミュオン)が地球磁場の影響を受けて,方位角方向に異方性を有する現像である.しかし,水平方向のミュオンの場合,磁束密度の高い領域を長距離飛行することになる.

結果 東西効果の影響を受けるため 水平方向のミュオンを使ったミュオグラフィ観測を行う際には注意が要る 120



…ミュオン以外の余計な粒子はバックグラウンドノイズと呼ばれ,測定屋から嫌われる存在である.ミュオグラフィ測定の歴史はこのバックグラウンドノイズを取り除く歴史ともいえる.・・・ 121

バックグラウンドノイズ 120〜

密度の非一様性がつくるミュオンフラックスの変化を見づらくしてしまうため できるだけ落とす

宇宙から地球の大気に飛び込む1次宇宙線はミュオン以外にも家電粒子をたくさんつくるが,私たちが検出したいのはミュオンだけなのだ.つまり,ミュオンとそれ以外の荷電粒子を区別しなければならない.だが,そもそもミュオン(とニュートリノ)以外は数十m以上の岩盤を通過できないはずだ.対象物体を投下できる粒子はミュオンしかないのでは? ところが,意外なことに,かなりの偽ミュオンが計測される.

その 偽ミュオンのせいで 密度が見かけ上低く求まる

実際に得られる観測量はミュオンと偽ミュオンの和

偽ミュオンの割合が無視できる程度に少なければ,観測に支障はないが,経路長が長くなり,透過ミュオンフラックスが減ってくると,偽ミュオンの効果が際立ってくる.

偽ミュオンの主たる原因は
鉛直方向から飛来する荷電粒子がつくる偶発的同時イベント

この偽トラックの数は検出器の有効面積に比例するので,あとでデータから差し引くことができる.そうすることで,原理的にはミュオンだけを残すことが可能だ.しかし実際には偽ミュオンイベントにも統計的な揺らぎがあるので,偽ミュオンがあまりに多すぎると,見たい構造がこの揺らぎに埋もれてしまう.

クリアなイメージを得るためには 偽ミュオンを除去できる検出器が必要

偽ミュオンを効率良く取り除くために,よく利用されるのがリダンダント(余計なという意味)カウンターだ.この方式では2枚の必要最低限な平板の間に,複数の平板型検出器を挿入する.仮に,偶発的同時イベントがすべての面で検出されても,それらの検出点が一直線上に並ぶ可能性が低い.

ミュオンがつくる直線的な飛跡だけを取り出す

その方法では挿入するリダンダントカウンターの数が多いほど偽イベントは着実に減少する

だが,これだけでは,偽ミュオンを100%取り除くことはできない.
その原因の1つは電子の散乱である.ミュオンは物質通過中にほとんど曲がらないが,電子は結構曲がるのだ.仮に電子が対象物体を通り抜けられなくても,空気中で曲がり,あたかも対象の方向から飛んできたかのように振舞うのである.また,粒子の飛来方向に感度がない検出器は,対象を通り抜けてきたミュオンと,対象と逆方向から検出器に入ってきて散乱した荷電粒子と区別がつかない.ミュオン以外の荷電粒子は十分な厚みの鉛ブロックを使って止められる.

荷電粒子の入射方向が対象方向からなのか 
その逆方向からなのかを 区別するための

粒子の飛行時間 …time of flight… TOF 測定

まず,プラスチックシンチレーターを光が伝わる速度はミュオンが空気中を飛ぶ速度より遅い.そのため,片読み(シンチレーターの一端だけに光電子増倍管がついている)のシステムではミュオンの飛行方向を測定することは難しい.ミュオンがシンチレーターを通過した点が光電子増倍管から離れるに従い,ミュオン測定のタイミングが遅れるからだ.TOFを測定するには,シンチレーターのどこをミュオンが通ったかの情報が必要になるのだ.たとえば,前節で述べた,アナログ方式ではミュオンの飛跡を決定するために,まずプラスチックシンチレーター内のどこをミュオンが通ったかを計算するので,TDFが可能だ.また,デジタル方式でもシンチレーターのサイズが平板間の距離よりも十分小さいとき,TOFが可能となる.


原子核乾板やガス検出器を用いたミュオグラフィに独特なバックグラウンドノイズは 岩石から放出されるベータ線である

特に火山地帯では,火山岩に含まれる放射性同位体(特にカリウム)の放射性壊変によりベータ線のフラックスが高い.

それらのベータ線はある一定以上の厚みのプラスチックシンチレーターは貫通できないが
写真乾板やガス検出器であれば間単に貫通する

検出器に侵入してきたベータ線は長期間の測定でバックグラウンドとして記録され,見たい像のシグナル/ノイズ比を著しく損ねる.
122

原子核乾板を用いたミュオグラフには,もう1つ気をつけなければいけない独特なバックグラウンドノイズがある.それは宇宙線ミュオンそのものである.宇宙線ミュオンは24時間絶え間なく降り注いでいる.したがって,フィルムは測定対象の場所に持っていく間にも絶え間なくミュオンの飛跡を記録し続けることになる.この飛跡も放っておけば,シグナル/ノイズ比を損ねることは明らかだ.この問題を解決するため,観測直前までフィルムを別々に持っていき,観測直前にフィルムを2枚重ね合わせ,2枚を一直線で貫通するイベントだけを観測開始後のイベントとして解釈する方法が一般的にとられる.逆に飛跡がつながらないものは,持ち運び時に記録されたミュオンだと区別できる. 123

『素粒子で地球を視る』2014/田中宏幸/竹内薫



あとどれくらいか・・ 数ページか?

と 読み返して終わりそうな 個人能的 なんかすごく
「時間」かかりますし それなりに そのように と思われたりも・・
していたのは 21


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