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ミュオグラフィ観測/洞窟/断層破砕帯/古代遺跡など
 
2017年6月28日 7時19分の記事







(2020.8.14 改行)



先進地視察(糸魚川ジオパーク)  http://www.bandaimuse.jp/itoi09.7.htm

陥没ドリーネ http://happy-man.jp/engineer/?p=752


原爆投下秘話 一通の手紙 http://www.slownet.ne.jp/sns/area/culture/reading/
kansanyoroku/200708090922-9592430.html



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『素粒子で地球を視る 高エネルギー地球科学入門』2014/田中宏幸/竹内薫

(5.3 未発見の洞窟探査)

 すでに発見されている洞窟周囲には未発見の洞窟が隠されている場合が多い.その多くは入口が崩れたり,外敵の侵入をふせいできた.たとえば,フランスのラスコー洞窟やスペインのアルタミラ洞窟には旧石器時代の洞窟壁面が残されているが,その周囲に,未発見の洞窟があるかもしれない.また,カルスト地形の下には数千年〜数万年にわたって,外界から閉じた自然洞窟があることが知られている.このような洞窟の内部では独自の生態系が存在している可能性がある.

すでに発見されている洞窟周辺に存在するかもしれない閉じた自然洞窟の探査には ミュオグラフィが適している

 カルスト地形は分厚い石灰岩層の上に形成される.石灰岩の主成分である炭酸カルシウムが地下水にわずかに含まれる炭酸に溶けこんでいく影響で,この石灰岩層は少しずつ侵食されていく.特に地層の割れ目で侵食がよく進むので,割れ目上部にはドリーネ(すり鉢上のくぼ地),そして地下には鍾乳洞が発達していく.こうしてできる鍾乳洞は,メインとなる主洞窟の周囲に多数の小洞窟が広がる複雑な構造をしていると考えられている.たとえばイタリアにあるグロッタギガンテ(Grotta Gigante)は典型的な主洞窟である.洞窟を進んでいき,地下115mの地点に達すると,突然巨大な空間(105㎥)が現れる.1995年の夏,ここで,ミュオグラフィ観測が行われた(Caffau et al.,1997).

グロッタギガンテ洞窟で試用された検出器はガス検出器
有感面積が1×1?の平板型システム

検出器用のガスタンクは洞窟の外に設置され
長いホースを使ってガスが検出器へと送られた

ホースはもう1本あり ガスによる洞窟内の汚染を防ぐため
ガスを洞窟外に排出するのに用いられた

この観測では,洞窟内部の地形図があまり正確ではなかったため,正確なミュオグラフィを行えなかったが,ドリーネ底部の赤土の堆積層の効果をとらえることができたことが特筆すべき点だ.赤土は通常,石灰岩よりずっと低い密度を持っているため(1.3-1.4g/cm³ ),この効果をとらえるのは容易である.

イタリアグループの先駆的実験をきっかけとして,2012年ハンガリーのグループがミュオグラフィによる洞窟探査に再チャレンジした(Barnafoldi et al., 2012)

ハンガリーのグループが使用したのも やはりガス検出器で

彼らの検出器は角度分解能が高いため,未知の洞窟や小部屋を探し当てることができるはずだった. 141

ハンガリーにあるアジャンデック(Ajandek)洞窟は
三畳紀(約2億5100万年前に始まり 約1億9960万年前まで続く地質時代)の石灰岩でできた山体に多数存在する鍾乳洞の主洞窟と考えられている

その洞窟は1998年に探検家カルストによって発見された一連の洞窟群のうち最も上部に位置する洞窟で 洞長は1000m
アジャンデック洞窟以外にも確認されている洞窟は網の目構造をなしていて 全部足し合わせると1万5000mになると試算されている

彼らのミュオグラフィの目的はアジャンデック洞窟周辺に隠された洞窟があるかどうかを探ること 143

ハンガリーグループのシステムは検出器の上部60mの位置に直径4mの洞窟があれば,十分な精度でこれを検出することができるスペックを持っている.

ブダペスト市内の地下トンネルを使って リガード(REGARD)と呼ばれる彼らの検出器の位置分解能をテストした

直径1m 長さ10-20mの鉛直吹き抜け孔に 位置敏感な面を向けて さまざまな条件でミュオグラフィ撮影を行った
(図から)リガードが高い位置分解能を持っていることがわかる

イタリアグループと異なり,ハンガリーグループの観測では,洞窟上部の地形図はGPSデータを用いてつくられた.等高線の不確定性はわずか±0.8mである.

GPS…全地球測位システムと日本語訳され 人工衛星を用いた測位システムで地表において高精度な1決めができる

検出器は急傾斜の洞内を手で運ぶ必要があったため,入り口からわずか70mほど下ったところで,すでに検出器の搬入には困難を極めた.ガスと電力供給用のバッテリーについてはイタリアグループの方法を踏襲した.

GPSから得られた地表の地形情報から洞窟内部の地形の効果を考慮して,岩石の厚み分布をプロットしてみると,最も薄いところで50-60m,もっとも厚いところでは130-140mあることがわかった.この厚み情報に均一密度を仮定して計算できる透過ミュオンフラックスは,観測で得られたミュオンフラックスとぴたり一致した.つまり,彼らの努力もむなしく,新たな空洞を発見することはできなかったのである.

ミュオグラフィ観測によって発見された洞窟は 残念ながら今のところないが 洞窟周囲の鉱床をイメージングすることに成功した例が最近報告された

洞窟内のミュオグラフィは未発見の洞窟探査だけに使われているわけではない

未発見の鉱床探査にも使えるはず

ミュオグラフィによる鉱床探査が行われた洞窟は,カナダのプライス(Price)鉱山内部の坑道である.この鉱山が選ばれた理由としては,現在採掘活動を行っていないこと,比較的浅く,鉱床の下に水平孔が掘られていること,水平孔には物資運搬用のレールや商用電源が整備されていることなどが挙げられている.ミュオグラフィの鉱床探査能力のテストを行うには格好の観測環境だ.

坑道上部には一様な密度約2.7g/cm³の岩盤中に平均密度3.2g/cm³の鉱床があることが,ボーリング調査の結果から見積もられている.この鉱床のイメージングを目指して,カナダグループが2011年ミュオグラフィ観測を開始した(Liu et al.,2012).彼らが使用したのはシンチレーション検出器だ.ボーリング調査から推定された鉱床の規模は14.5キロトンである.さて観測結果はというと,ミュオグラフィ観測から計算された鉱床の規模は12.3キロトンであった.鉱床の広がりもボーリング調査,ミュオグラフィ調査ともに水平方向に3-5kmの範囲で広がっていると推定され,両者の数字は20-30mの精度で一致している. 145



(5.4 断層破砕帯の調査)

  地震などで地下の岩盤に大きな力が加わって割れた面がずれ動くことでつくられる断層には,断層破砕帯と呼ばれる地質構造が見られることが多い.断層破砕帯では断層面周辺の岩盤が破砕されることで,岩石の破片の間の隙間が多い状態となっている.この隙間には大量の水が含まれ,地下水の通り道となっていることが多い.そのため,断層破砕帯はトンネル工事で大量出水事故の原因となる地質構造としても有名だ.また,大雨時には破砕帯中を流れる水量が大幅に増え,今のところ,地表に顔を出している断層から外挿するか,ボーリング調査で直接サンプルを取り出すか以外にこれを調べる方法はない.
  ミュオグラフィの欠点は検出器位置より下部の情報を得ることができないことだが,地形の起伏を使えば,可能性はある.窪地に検出器を置けば,眼上に断層破砕帯をのぞむことができるからだ.実時間モニタリングができるミュオグラフィは,断層破砕帯の研究にとってこれまでにないまったく新しい情報をもたらしてくれるかもしれない.
  糸魚川静岡構造線(ISTL;Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line)は,新潟県糸魚川市から諏訪湖を通って静岡県静岡市に伸びる大断層線である.ISTLの北部と中央部は活断層領域と考えられている(たとえばOkumura et al.,1994).UNESCO世界ジオパークに認定されている糸魚川市のフォッサマグナパーク内では,ISTLの断層露頭(地表にむき出しになっている断層)を確認できる.西側の古生代の変はんれい岩と東側(フォッサマグナ側)の新生代中新世中期の安山岩が,断層破砕帯を境に接している.これまでの地質学的調査で,断層破砕帯の右側は1600万年前の安山岩で,左側の変はんれい岩は2億6000万年よりも古いものであることがわかっている.また,この断層は少なくとも4回の地震を経験したこともわかっている. 145

 フォッサマグナパークの断層露頭はミュオグラフィ観測に適している.それは,断層が丘陵地帯の南斜面に位置しているため,断層より低い位置に検出器を設置することが可能だからだ.この断層に対して,2010年,東京大学と糸魚川ジオパーク推進室の共同研究チームがミュオグラフィ観測を行った(Tanaka et al.,2011).設置された平板型システムの有感面積は0.4?で断層露頭からの距離は6mである.
 観測の結果,断層破砕帯の密度は周囲より20%程度低いことがわかった.ここを水はどのように流れるのだろう?大雨直後の透過ミュオンフラックスの日変化を見ると,それがわかる.それは岩石の隙間に雨水がとらえられると,密度が上昇するはずだからだ.断層上部は谷地形となっていて,効率よく雨水を集め,破砕帯の密度を有意に上昇させることが期待できる.

(図から)大雨と透視画像との間に時系列的な応答があることがはっきりとわかる

大雨直後にはいったん破砕帯の密度が上昇するが,その後,岩石の隙間にたまった雨水が徐々に抜けていき,平均密度が低下していく様子が見て取れる.まさに水が地下に向かってしみこんでいく様子がイメージングされているのだ.この観測結果は,ミュオグラフィが断層破砕帯を流れる流体解析にも利用できる可能性があることを示している.

断層破砕帯は地震だけでつくられるわけではない

基盤岩の上をすべる上盤が引き起こす,いわゆる地すべりも,破砕帯をつくる現象の1つである.断層面(岩盤のすべり面)に水が浸入すると,摩擦が低下して,すべりが誘発されることが知られている.特に,大雨が降ると,破砕帯を流れる水量が増加して,断層面を濡らすことがある.これが大雨と地すべりの因果関係である.逆にいうと,地すべりを防ぐためには,断層面を濡らさないようにすればよい.そのため,特に地すべりを防ぐ必要性が高い地域では水抜きトンネルを掘って,破砕帯から効果的に水を抜き取るような工夫がされる.しかし,突発的な大雨では断層破砕帯を流れる水が断層面に到達することがある.そこで,断層破砕帯を流れる流体のモニタリングは重要な意味を持ってくるのだ.

フォッサマグナパークでのミュオグラフィ観測の成功を機に
静岡県浜松市内で地すべり地帯の実時間ミュオグラフィへの応用が始まった(Tanaka and Sannomiya,2013)

検出器を水抜きトンネル内部に設置し,その上部に位置する断層破砕帯中を流れる水をモニタリングしようというのだ.大雨によって,破砕帯内部で水位があがると,破砕帯の密度が上昇し,透過ミュオンフラックスは減少する.その後,岩石の隙間にたまった雨水が徐々に抜けていき,平均密度が低下していくので,透過ミュオンフラックスは上昇する.原理はフォッサマグナパークのときと同じだ. 147



(5.5 古代遺跡の調査)

  ミュオグラフィは古代遺跡の調査に用いられたこともある.ご存知ルイ・アルバレがその第一人者である.残念ながらピラミッド

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