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特異なマユ
 
2019年2月10日 13時26分の記事



殆どそこで記入
上野/10午前11:04:20 撮影

11 少々足しました
🌫

『天の虫 天の糸』より

(12〜)
【煮た繭を広げる真綿掛け。極上の繭は力も必要。】

 使い込まれた木桶にはたっぷりお湯が張られていて、ふやけた数十個の繭が浮いている。その桶の縁に両手を固定しながらクルクルと繭を広げていく佐藤米子さん。この道50年の大ベテランである。

繭を広げる口はない

  繭の真ん中から親指を入れて、お湯の中でほぐしているうちに蛹が見えてくる。それを裏側から押すようにしてつまみ出し、最初は指で広げ、徐々に手を入れて、両手の甲を使って内側から押し広げるように3回ほど回転させると、あっという間に頭に被れるほどの大きさの袋ができあがる。途中「ギュッギュッ」と繭糸同士がこすれる綿鳴りの音。完全した袋真綿は薄い膜のように手の形をそのまま透かし、水から上げてピンと張ると、その濡れて光る様子はまるでフロストガラスだ。
12

木桶の中の繭
重曹を入れた湯で2時間ほど煮る
蚕が繭をつくるときに接着剤となるニカワ成分=タンパク質/セリシンを取り柔らかくする

昔はそれぞれの真綿掛けのおばちゃんの家で煮ていた
今は真綿問屋が煮て 朝 その人ができる分だけを配って回った

翌日に持ち越すと傷んでしまう
特に夏場は手早く作業をしないと 昼過ぎには悪くなってしまう 12

  今日佐藤さんが掛けているのは、蛹が羽化しないように生きたまま冷蔵保存してあった生繭(なままゆ)と、長期保存できるように熱風で完全に乾燥させてある乾繭(かんけん)が半々に混ざっている、中くらいの真綿である。それに対して生繭100パーセントの「生掛け」は極上クラス。生掛けの真綿からつくる糸はなんといっても強い。結城紬は経糸にも手紡ぎ糸を使い、しかも糸に撚りをかけないので、糸の丈夫さがものを言うのである。丈夫であれば糸を細くできる。一本が細ければ細いほど経糸の本数を多く、密にすることができる。そして、それだけ細かい絣が織れる。糸の強さは反物の価格にそのまま反映されるというわけだ。

繭を冷蔵保存できなかった時代には
生掛けの真綿はとても貴重だった

蚕は繭をつくってから10日ほどで蛾になり出てきてしまう

2006年春 千葉の養蚕農家から保原に届けられた初のプラチナの生繭は すべて佐藤さんの手で生掛けされた

プラチナは繭が薄い

  通常1枚の袋真綿には、繭5個分を広げて重ねるが、プラチナの場合は繭が小さく薄いので6個から7個必要になるという。そうするとその真綿1枚から同じ太さの糸を引いても、通常より1本に含まれる繭糸の本数が多くなるので「強くなる」ということだ。

  でも、生繭は強いのでお湯の中で広げるときに力がいるらしい。乾繭は、乾燥させるときに中の蛹の脂分が繭に付着して添加されるので、繭自体が「なめこく」なって、やんわりとした風合いに仕上がるが、「生は締まっていて引きにくい。だから手が切れちゃう」。佐藤さんは伸ばす時に袋の縁がちょうど当たる小指の付け根の外側をなでさする。

「あれは強いから光沢が出んなぁ、と思ったの。真綿で首を絞められる、って言うけど、柔らかそうだからすぐプツッと切れるかと思っても切れないんだよね。あれ、本当に締まるんだ。」佐藤さんは同じリズムで淡々と袋真綿をつくりながら笑った。
13


【織元としての縞屋。真綿を糸にする糸問屋。】(29〜)

  糸が細いと全体に使われる真綿の分量が少なくなるので、薄く軽い着物ができる。紬というと、やや厚みがあってブツブツと糸の節があるようなイメージを持っていたが、本当に上質の結城紬は羽二重のように薄く滑らかなのだそうだ。

細く平ら(均一)に引ける人が年々少なくなってきた
「それから糸は取る人によって白く上がる人と、若干汚れる人があるんですよ。なるべくツバ(唾液)で引いてくれ、って言うんですけど、年を取るとだんだんツバも出なくなるらしいんです。そうすると横に水を置いておいて、半分くらいは水をつけて引くようになる。水によっては鉄分が多いと黄ばんできたりするんですね」(水野)
32


【少なくても、好きなものを思いを込めてつくりたい。】(73〜)


【固定概念に疑問。化学染料なら、何色だっていいのでは?】74〜

  で、プラチナで何を織るか。実は田畑さんはもう心に決めた色と柄があって、実験的に織り始めていた。和室の縁側に置かれた機にかかるその反物は、なんとわさび色とエンジがかったピンクの格子柄! 縦縞と横縞が交差する四隅に小さな絣がポツポツと光って、女ものにしてもよさそうな、いやワンピースにしてもよさそうな明るいチェックである。

「ほら、貴乃花が宮沢りえとの婚約会見でピンクの着物だったでしょ。あれを見た時、やっぱりこういうのを着たいと思っている人もいるはずだ、と確信したんですよ。羽織の下にピンクっていうのもいいじゃない」

  そう言われてみれば、グレーのスーツに淡いピンクのシャツを合わせるひとがいるんだから、男ものの着物にピンクやオレンジがあってもいい。

  絣の色を泥か白か藍に限る必要はない、と田畑さんが思ったのは、白大島の絣が泥ではなくて化学染料の黒で染められることが多いからだ。泥じゃないなら黒である必然性はない。田畑さんは「ほら、見て」と、奥から白大島用の糸を持って来て見せてくれた。糊張りされた2種類の糸は一つが真っ黒で一つが真っ白。この先染めされた真っ黒い方の糸を括って防染し、括られていない部分を抜染して白泥で白く染めると、括ってあった黒いところが絣模様となるのだという(何度聞いても頭がこんがらがる)。

「ね? この黒は泥でもなんでもないんだから、何色だっていいじゃないか、と思う。絣はなんで十字じゃなくちゃいけないんだ、なんで黒じゃなくちゃいけないんだ、って、誰もそれを疑問に思わないのが不思議」

  大島はこういうもの、という固定概念が、消費者以上に産地の側にあるようだ。泥大島だから売れるのか、黒いから大島紬なのか。
75


【昔の技術に自分ならではの何かを足し、それを次に伝えたい。】(93〜)

例えば「うずらぎ小紋」縞の面白さは 地の光沢をわざと抑えて縞を浮き立たせるところにある
93

絹の光沢を消すのに使われているのは 卵の白身
縞を付けるときはふつうの糊を使い
地を染める時に卵白入りの糊を使うと縞の部分だけが光って凹凸ができる

「陽の光を当てるともっとよくわかる。表を歩くと何ともいえない味が出る」(藍田)
いったい何をきっかけに卵を入れることを思いついたのか というと 「ヒゲをそってて」
「ほら、よく血がシャツにつくとタンパク質が固まって落ちにくくなる、って言うじゃないですか。じゃ。いっぱいタンパク質入れちゃったらどうだろう?って。絹もタンパク質ですからね。それで卵を使ったらどうか、と。黄身を入れると黄色くなっちゃうから、白身だけにしてやってみたらこんな風に艶消しになったんです」

「うずらぎ」の名は ウズラのヒナが成鳥になって羽が生えそろった頃の「恋をする時期の美しさ」から来ている
96

『天の虫 天の糸』繭からの着物づくり
2007 長町美和子


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