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外交官は愛人がいるのが当たり前。あなたには、一流の外交官と二流の違いがわかりますか?一流の外交官は取材に訪れた女性記者を愛人にします。(1)
[森羅万象]
2018年5月14日 16時54分の記事


『官僚村生活白書』
横田由美子  新潮社    2010/6



<すでに、「霞ヶ関解体」は絵に画いた餅になりつつある>
・なぜか。私がこの本で言いたかったことは、表面的に仕組みを変えたところで、官僚村で脈々と受け継がれてきたしきたりと精神を根本から変えない限り、霞が関は決して変わらないということだ。官僚たちはアメーバーのように姿を巧みに変えながら、戸惑いを感じながらも、確実に彼らの生きる場所を見つける天才だ。そして、米国のように2大政党制が確立されているわけでもなく、各々シンクタンクを持っているわけでもない日本では、官僚機構を巧みに使う以外に政治も行政も円滑に進めることなどできない。

<かすみがせき婦人会>
・防衛省には通称「美鳩会」と呼ばれる「防衛官僚夫人の会」がある。職員の夫人たちで構成される組織だ。

・つまり、会の事実上のトップは、第二分会会長職である現事務次官夫人ということになる。
 第一分会はOB夫人を中心に組織されているが、美鳩ではOBはあくまで数あわせに過ぎない。先に触れたが、1954年と発足が遅い防衛庁には長いこと生え抜きのキャリアが少なく、他省庁からの出向組が多くを占めていたからだ。
 そうすると全体のメンバーは実質5〜60人に考えてよいだろう。

・美鳩会で、守屋武昌次官の妻が頭角をあらわし始めたのは、夫が官房長に抜擢されたころからだという。ここで疑問がうまれる。組織図の序列では、官房長夫人であった彼女の地位は、事務次官や制服組トップである統合幕僚会議議長(当時)夫人の下である「支部長」にすぎない。なぜ支部長クラスが会の中で実権を握ることができたのか。それは、防衛省の歴史など夫の世界と絶妙にリンクしている。

・つまり上司はよそ者だ。官房長夫人が実権を握るのも当然の流れだった。確実に取り巻きを増やし勢力を拡大していった新官房長夫人のもとで、次第に会の性格も変わっていく。

・力のある他省から「役職は参事官といっても、秘書も個室もつきますから」といって出向してもらう。以前は出向参事官の夫人たちは自動的に「美鳩会」の所属となった。妻同士の接点ができ上るうちに、彼女たちは官僚夫人たちの世界を知っていく。

・髪に白髪の交じる元メンバーの女性は、懐かしそうに思い出をたどる。
「守屋さんの奥さんが会に参加しはじめたのは確かに防衛政策課長夫人の頃だったと思います。目立たない存在でしたね。防衛庁は省になっても変わらないけれど、軍人社会ですから、序列は外務省以上に厳しい。彼女が目立たなかったのは、ご主人がまだ若く、末席に近かったからというのもあるかもしれませんが、いずれにしてもこの序列の厳しさが、逆に守屋さんの奥さんに必要以上に権限を持たせてしまったような気がしてならないのです」
 背広であろうと制服であろうと、妻たちは専業主婦であることが多く、狭い宿舎の中で各々グループをつくる。人間関係が面倒なので、会には入りたくなかったと打ち明ける妻もいるが大方は、「美鳩会のメンバーになれる日を指折り数えて待っていた」と頬を上気させた。

・序列が厳しいので、職階で座る位置まで決まる。妻組織である美鳩会が、外務省以上に整理区分されているのはそのためだろう。妻たちも夫のポジションで明確な序列がつく。トップにその器でない妻がついたとしても、逆らえない仕組みが出来やすい。
 実はこの美鳩会は、外務省にすでにあった婦人会をモデルにしてつくられたといわれている。

・外交官夫人たちの間には、大きく二つの会が存在する。会の主目的は、妻たちの親睦に加え、国際交流や福祉活動などである。二つの組織以外にも、在京の外国大使館夫人との交流を目的とした会がいくつかあるが、最大組織はなんといってもOBと現役の外交官夫人でメンバー構成されている「かすみがせき婦人会」だ。

・「奥さんたちは、『夫婦揃って外交が成り立つ』という言葉を好んで使うでしょう。実際、婦人会と外務省は表裏一体の組織であると考えていいんですよ。婦人会は、決して表には出ない組織ですが、省内でも誰もが存在を知っている。奥さんたちは夫のあらゆる<仕事>に密接に絡んでくるし、組織化したことで強大な発言権を得ているのも事実です。外では偉そうにしている局長クラスだって、ことぶき会員の夫人などから見れば息子のような年齢。僕の妻も、もちろん婦人会に入っていた。僕が外交官を引退した時には自分も引退すると決めていて、今では参加を控えている。僕たち夫婦は婦人会の必要性を強く認めています」

・2008年7月、外務省経済局の官僚が、都内のホテル宿泊代1500万円を支払っていなかったことが報じられた。この官僚は准キャリア的存在の外務専門職員だったが、06年6月から07年4月までの293日間、セミスイートルームに宿泊して、外務省に出勤していたという。

<三層社会>
・庶民妻が増えてはいても、やはり外務省は特権階級の世界だ。網の目のように広がる「閨閥」が外務省を中心に明確に存在している以上、そのサークルの中に入り込んで生きていくことが、外交官として出世する最良の道だろう。

・恋愛結婚が主流になったことや外交官試験の変化で、外交官妻には中流の庶民妻が増殖した。中流と言っても幅広い。外交官妻たちのヒエラルヒーで「最下層」に近いのは、非正規公務員と呼ばれるアルバイト出身で、名家の出ではない女性たちである。外務省で、キャリア、ノンキャリアの身分制度が確立されすぎているのは周知の事実で、問題視もされているが、そもそも非常勤の国家公務員は、官僚社会ではほとんど「透明人間」だ。
 30代半ばにも満たないキャリア外交官ですら、気を許すと普通にこんな発言をする。
「外交官は愛人がいるのが当たり前。あなたには、一流の外交官と二流の違いがわかりますか?一流の外交官は取材に訪れた女性記者を愛人にします。情報を取りに来た相手を寝返らせ、自分に都合の良い情報を流すことができるからです。二流の外交官は、省内の部下を愛人にします。さて、三流の外交官はというと、非常勤などバイトの子に手をつけて結婚するパターンでしょう。どんな顔が可愛くても、性格がよくても、何のメリットもない結婚だからです」
 そして彼は、最近の外交官は勉強ばかり出来て、学生時代に遊んでおらず女性に不慣れだ。だから、バイト嬢に簡単に引っかかって結婚をする事例が増えているのだと事態を憂慮し始めた。

・政界では世襲批判がかまびすしいが、官界にも二世、三世などの「世襲官僚」が多くいることはすでに見てきたとおりである。そして、その中でも目を見はるほど世襲の数が多いのは、外務省である。外務省には外交官ばかりが輩出している一族も珍しくない。外務省の持つ閉鎖性や純血主義的傾向は、「霞が関村」でも異様だ。

・外務省では事務次官よりも駐米大使のほうが上だと述べたが、加藤良三・前駐米大使は、法眼晋作・元次官の夫にあたる。加藤前大使は、ブッシュ政権と強いパイプを持ち、安倍元総理から深い信頼を得ていた。娘を嫁がせる相手に他省では「将来の事務次官候補」を探すが、外務省では「将来の駐米大使候補」を探すと言った方が正確かもしれない。法眼家も外務省を舞台に広がる華やかな血脈の家柄だ。1972年に事務次官に就任した法眼の息子はふたりとも外交官になった。ひとりは早世したが、もうひとりはカナダ大使を務めた。

・外務大臣や駐米大使、事務次官といった「印籠」を持つ者はいないが、どこまでも外交官血脈が広がっていく家柄のひとつに大鷹家がある。大鷹家では、外交官は「家業」に近い感覚なのかもしれない。大鷹正人・現タイ大使館参事官の父は大鷹正・元総理府迎賓館長。伯父は、李香蘭の芸名で知られる元女優で参議院議員の山口淑子の夫である大鷹弘・元ミャンマー大使。もうひとりの叔父も元フィンランド大使である。祖父は大鷹正次郎・元ラトビア公使で、大叔父には伊藤直樹・現インド兼ブータン公使と、外交官だらけだ。
 何か不祥事が起きる度に、外務省の感覚が一般庶民と大きくかけ離れていると批判されているが、それも仕方のないことかもしれない。このような環境では、庶民感覚など持てるはずがない。

<政略結婚復活論>
・恋愛はもともと貴族の楽しみと言った評論家がいたが、外交官夫人の中には、「政略結婚を復活させる以外に、現在の外務省を正す方法はない」
と、心の底から信じている人たちがいる。
 庶民外交官夫妻が、厳格に守られてきた外交官夫人たちの風紀や秩序を乱れさせているだけでなく、破壊しかけていると強い危機感を抱いているのだ。

・「それに、女性外交官を増やそうとしている。これがすごく問題なのです」
 男女共同参画でポジティブ・アクションを積極導入していることから、女性外交官の採用数を増やさなくてはいけないのはもちろんのこと、彼女たちを管理職に登用しなくてはいけない。今後は女性の大使もたくさん生まれるだろう。
・「全体の外交官のうち女性が4分の1強を占めるフランスでは、すでに外国に赴任した時の制度が出来上がっています。夫が休職しても雇用や一定の賃金が保障されている。日本でも早急に外国赴任中の女性外交官の夫の立場をどうするのか。法を整備することが必要。でなければ、私たちは一生独身か、運良く結婚できても離婚の危機から逃れられないじゃないですか」と、女性外交官のひとりは憤慨した様子で語る。

・フランスでは、大使クラスで10パーセント、局長クラスで27パーセントの女性外交官が存在するという。配偶者の雇用や手当も明確に規定されている。妻について行ったところで、夫が失職する心配はない。
 とはいえ、外交官夫人たちが脈々と受け継いできた、ノウハウや仕組みをまさか女性外交官の夫が引き継ぐわけにもいかない。

<霞が関官僚>
・一見、霞が関は悲惨な状態に見える。「天下り」という将来の「人参」はなくなり、給与カットと人員削減からは逃れようもない。
 だが、それはある意味まやかしである。若い頃から法案のドラフトを掻き続けてきた彼らは、法の抜け穴を探したり作ったりという意味でも、超秀才であることを忘れてはいけない。



『週刊金曜日  2018.4.27(1182号)』
<セクハラが前提の取材現場という異常  元『朝日新聞』記者・林美子さんに聞く>
・財務省の福田淳一事務次官が起こした「セクハラ問題」をめぐり、さまざまな議論が起きている。

<財務次官のセクハラ問題で被害者を孤立させないために>
・いま、被害者に対するバッシングも起きていますが、セクシュアルハラスメントをする方が100%悪いんだということは、はっきりさせたい。

<「寝てでもネタを取れ」>
・私は、1985年に朝日新聞社に入って、31年間働きました。そのほとんどが記者やデスクの仕事。「女を使ってネタを取れ」という圧力がある一方で、特ダネを取ったって「あいつは寝て取ったんだろう」と言われる板挟みの中に、女性記者が置かれている状況は見聞きしていました。私自身も、1990年代当時、経済部の男の先輩記者から「取材先と寝てでもネタ取ってこい」と言われた。

・取材される省庁、組織の側は合わせ鏡のようなもので、結局、どちらもセクハラ体質なわけです。マスコミの側にもその体質が沁みとおっているので、取材先のセクハラを「そんなもんだよ」と言って受け入れているし、取材される側はそこにつけ込んでいる。記者はネタがほしいから、夜に呼び出して来るものだと。多少の暴言は仕事のうちだろうと思っている。こうしたことが前提になっている取材現場というのは異常なんだということをこの機会に認識させて、女性がセクハラを気にせずに取材ができる環境をすべての場所で整える必要があります。

<特ダネは一対一で取る>
・どんな仕事でもそれぞれの特殊性があるものですが、今回の被害者に対するバッシングは、記者としての特殊性が理解されていないことも関係していると思います。夜9時に呼び出されて、一対一で会うなんて信じられないという批判もその一つです。しかし、原則的に、特ダネは一対一で取るもの。

・今回のことを、「個人的なこと」とする声もあります。ですが、「個人的なことは政治的なことである」というのが、フェミニズムの主題です。

・こうした土壌を変えていくためには、男性と女性の記者の割合を半々にする必要があると思います。いまはメディア全体で女性記者が2割ほどしかいません。ただ、最近の採用では『毎日新聞』が女性記者を5割ほど、『朝日新聞』も4割超採ったという話を聞いています。ですが、今回のようなことがあると、記者を目指す女性が減りかねない。



『なぜ日本の外交官は世界からバカにされるのか』
海藤彬光  学習研究社   2002/10



<外交とは非常に特殊な世界であり、必ずしも世間一般の常識は通用しないと聞く>
・外務省が「腐りきった組織」であり、外務省員が「非常識」であることは、いまや世間一般の常識となった。この常識には、それなりに裏づけがある。端緒を開いたのは機密費横領事件。

・マスメディアによる外務省バッシングも激しく、事件が起こるたびに、外務省の呆れた実態が明らかにされた。また、特に事件がないときでも、外務省員の呆れた行動や言動が次々に暴露された。

<「閣下=うんち」という称号>
・「閣下」といえば、一連の外務省バッシングにおいて、「各国に駐在する日本大使は自分のことを「閣下」と呼ばせて威張り散らしている」という批判があった。公僕の分際で「閣下」を名乗って悦に入り、主権者である一般国民を見下すとはなにごとか、というわけだ。そういった批判を受けて、今回の外務省改革では、「大使を『閣下』と呼ぶのはやめることにしよう」というような提言がなされている。

 たしかに、やたらと威張り散らす大使が存在するのは事実だ。また、「閣下」という称号に異常にこだわる大使が存在するのも事実である。

・威張り散らすかどうかはともかくとして、外務省員も大使まで出世すれば、一国の大統領と同じく「閣下(Your Excellency)と呼ばれるようになる。これは外交慣例に則ったものであり、公式の場では大使は必ず「閣下」と呼ばれることになっている。これは趣味の問題ではなく、絶対に「閣下」と呼ばなければならないのである。

<無能な通訳? 有能な通訳?>
・B大臣のような政治家ならば、挨拶慣れしているのが普通であり、どのような場面でもソツなく挨拶をこなすものである。それでも、突発的に挨拶を頼まれると(しかも外国で)、陳腐な決まり文句を適当に繋いでお茶を濁してしまうことが多い。もちろん、決まり文句を羅列しただけの挨拶でも、日本語なら適当に恰好はつくだろう。しかし、実質的な内容は何もない挨拶なので、そのまま外国語に翻訳しても意味不明なのだ。これでは、通訳をさせられる外交官はたまったものではない。

 しかし、そこをうまく切り抜けてこそ、有能な外交官ともいえる。その意味では、C書記官は無能な外交官だった。英語にも挨拶の決まり文句はいくらでもあるのだから、仮にB大臣の挨拶の内容とは違うものになったとしても、適当に決まり文句を羅列して体裁を整えるべきだったのだ。それができれば、一人前の外交官であり、それをしたにもかかわらず、B大臣の挨拶と通訳のズレをだれにも感じさせなければ、有能な外交官といえよう。

<新米外交官の厳しくもツライ通訳修業>
・外交官にとって、通訳はきわめて重要な任務である。そして、きわめて難度の高い任務でもある。
 外務省では、外交官の語学力について、次のようにレベルを設定している。

レベル1:その言語で高度な通訳ができる。
レベル2:その言語で高度な外交交渉ができる。
レベル3:その言語で通常の大使館業務がこなせる。
レベル4:その言語で日常会話ができる。
レベル5:できない。

 ここで、「高度な外交交渉」よりも「高度な通訳」のほうが上位にランクされていることに注意してほしい。高度な通訳とは、首脳会議や外相会談など、高度な外交交渉を通訳するということだ。要するに、自分自身で外交交渉をするよりも、他人の外交交渉を通訳するほうが高度な語学力を必要とする。

・「さほど重要ではないお客さん」とは—―あまり具体的に例示するとカドが立つのだが――実は観光が目的の地方議員研修団、実は予算消化が目的の出張者、実はただの観光客なのだが、国会議員に「よろしく頼む」と頼まれたので日本大使館で面倒を見なければならない人物などである。

・毎年、夏休みの時期になると、「さほど重要でないお客さん」が
毎日のように日本大使館を来訪する。そのお世話が、新米外交官の任務となるわけだ。こうして、新米外交官の大使館勤務1年目は、ほとんど通訳兼ガイドに明け暮れることになるのである。その仕事内容は、基本的には旅行会社の観光ガイドと変わらない。

・「ちょっと、このホテルの部屋、西日が入るし、狭すぎるわ。もっといい部屋に替えてもらえない?同じ値段で」とか、「日本大使館だといえば、もっと安くなるんじゃないの?高い買物してやるんだからさ。大サービスしろといってやってよ」とか、「来るときの飛行機はエコノミーだったから、すっかり身体が痛くなっちゃったよ。帰りの便はファーストか、せめてビジネスにしてもらえないかな。同じ値段で」というような、下品な要求に応えなければならないのである。
 ちなみに、ここで例示した程度の要求ならば、すべて完璧に実現させることが新米外交官には求められている。もし実現できなければ、「使えないヤツ」という烙印を押されることになり、外交官としての栄達の道は永遠に閉ざされることだろう。まあ、こういった要求を無難に通訳し、要領よく交渉をまとめるのも、新米外交官にとっては修業のひとつといえるのかもしれない。

・国会議員は、「海外事情視察」という名目で海外に出てしまった以上、遊んでばかりいるわけにもいかない。海外事情を視察しているフリをしなければならない。そこで、その国の国会議員と懇談したり、医療福祉施設を見学したり、核廃棄物処理施設を視察したりするのだが、その際の通訳を新米外交官が務めるのだ。

・むしろ、新米外交官にとって試練となるのは、こういった議員センセイの「夜の視察」における通訳である。「夜の視察」への意欲に燃えたセンセイが、新米外交官にそっと耳打ちをする。「おい、あそこの金髪の、なんとかならんか?」こういわれたら、なんとかなろうとなるまいと、なんとかしなければならない。センセイの大事な「夜の視察」を滞らせてはならないのだ。外交官として新米とはいえ、その語学力と交渉力が試されているのだ。とりあえず、なんとか話はつけた。あとは金額の交渉だ。「おい、もうちょっとまからんか?」とセンセイの要求は厳しい。またしても新米外交官の語学力と交渉力が試されるのである。
ようやく交渉が成立し、センセイと金髪美女は何処へか消える。そして、新米外交官は「高度な通訳」を成し遂げた喜びに打ち震えるのである。

・かつて、Yという外務省でも名うての英語の達人がおり、当然のことながら公式通訳官に抜擢されたのだが、「声がカン高い」というだけの理由で降板を与儀なくされたことがある。通訳の「相性」とは、そういうものだ。意外に繊細なのである。

<外交官は臨機応変の通訳を旨とすべし!>
・これについて、まずは低レベルな例から紹介することにしよう。
 国会の会期が明けると、前にも書いたように「外遊」という名目で国会議員が大量に海外に繰りだす。もちろん、海外事情を熱心に視察する議員もいるのだが、観光に熱心な議員もまだまだ少なくない。しかし、「外遊」という名目で海外に出てしまった以上、訪れた国の国会議員と懇談するなどして、「外遊」のアリバイをつくらなければならないのである。

 さて、現地の日本大使館のアレンジにより、A国の国会議員A氏と懇談することが決まった政府与党のB先生であるが、何を話ししたらいいのかわからない。そもそもの動機が観光なのだから、A国のことなどまったく知らないのである。

・ここで紹介したのは、決して極端な例ではない。たしかに最近では、B議員のような旧タイプの政治家は減少しつつある。しかし、まだまだ絶滅にはほど遠いのだ。こういった光景は、今でも世界各地で繰り広げられているのである。

・ここで紹介したB先生とC書記官の滑稽なやりとりは、まさに日本の政治家と官僚の関係を象徴するものであり、「官僚王国」と呼ばれる日本の実態を如実に示している。B先生がC書記官の書いたシナリオを棒読みするように、政治家が官僚の作文を棒読みしているかぎり、政治は官僚主導でありつづけるのだ。

<暴走する通訳――すぐにバレるとは、なんたるドジ!>
・人間関係のトラブルから、在外公館内で器物損事件や傷害事件が発生するのは決して珍しいことではない。意見が対立した同僚を脅迫・軟禁したり、命令に従わない部下を監禁したなどという事例もあるという。それどころか、在外公館内でレイプまがいの事件も発生しているというが、ことの真相は明らかではない。こういった事実が表沙汰になることは、まずありえないからだ。

・また、外交官が任国で自殺してしまったような場合、自殺に関連した事実は徹底的に隠蔽される。これは外交官が在外公館内で自殺しようと、自宅で自殺しようと同じことだ。自殺した外交官の仕事関係の物品はもちろんのこと、自宅の私物も徹底的にチェックされる。そして、自殺に関連すると思われる物品はすべて隠蔽されるのだ。だから、自殺した外交官の家族でさえ死の真相は知りえないという。日本国内であれば、決して許されない蛮行であるが、在外公館のナワバリで発生したことであれば許されてしまうのだ。
 ちなみに、こういった在外公館での不祥事は、できるかぎり在外公館内で処理するが、表沙汰になる恐れのある場合は本省にも報告するのだという。当然のことながら、「極秘」の公電で報告するのだそうだ。

<外務省の常識は世間の非常識>
<外務省の長い夜、そして長い昼>
・1か月の残業時間が百時間、二百時間は当たり前。ときには三百時間を超えることさえある。一か月に三百時間の残業というと、毎日午前3時か4時ごろまで働き、あるいは泊まりこみ、休日はまったくナシという生活になる。このような生活を続けていたら、だれでも過労死してしまいそうなものだが、外務省員が過労死したという話はあまり聞かない。となると、外務省員はよほど丈夫なのか、あるいは、外務省の仕事は時間はかかるが大変にラクなのではないか—―ということになるのだが、そのあたりの議論はひとまず置いておくことにしよう。

<外交官の本音――外交には癒着も必要だ!>
・一連の外務省不祥事件を受けて、外務省は一人の外務省員を一つのポストに長々と就けておかないようにすることにした。これは外務省改革の一環であるが、要するにポストを転々とさせることにより、特定の国家・団体・業者などとの「癒着」を防ごうというのである。これは万人の納得しうる改革であり、実に常識的な改革である。

・しかし、外務省の「常識」によれば、外交にはそれだけでは動かない面もあるという。癒着は必ずしも悪いことではない。むしろ癒着が必要な場合もある。キレイゴトだけでは、最大限の外交的効果をあげることはできないというのだ。

<世界の非常識――「非核」という名の夢>
・日本の政策や理念を外国に説明するのは外交官の重要な任務である。
しかし、日本の政策や理念のなかには、外国人に説明するのは難しいものが少なくない。
特に困難をきわめるのが「非核」という理念である。
 日本が「非核三原則」を標榜している以上、それを外国人に説明するのはきわめて重要である。重要なのはわかっているのだが、基本的にリアリストが集結している外交の世界で「非核」という「崇高な理念」を語るのはかなり難しいのだ。

<世界に嘲笑される日本外交>
・しかし、霞ヶ関の官僚というのは、その「日本人のやりかた」を極端なまでに貫き通すのである。外務省員は、その「霞ヶ関の常識」を背負ったまま、外交官として世界中で活躍してしまっている—―そして、笑われるのだ。

・本書の出版を目前に控えた2002年9月、外務省周辺がまた騒がしくなっている。日朝首脳会談にともない、拉致被害者の安否情報がもたらされたのだが、外務省がその一部を隠蔽・操作していたらしいのである。実に不可解な事態だ。これが外務省の常識と世間の常識のズレによるものなのか、あるいは何らかの高度な外交上の理由があるのか、今後の事態の進展を注視していく必要があるだろう。

・もし世間一般の常識が外交の世界における非常識だとしたら。そして、外交の世界における「非常識」に基づいて、日本の外務省を徹底的に改革してしまったとしたら。日本の外務省は外交の世界では通用しない組織になってしまうのではないか?
実は外務省関係者のなかには、こういった危惧を抱きつつ、現在の外務省改革を批判する人も少なくないのである。しかし、「外務省=腐りきった組織」「外務省員=非常識」という常識が席巻する世間において、そういった危惧の声はなかなか聞こえてこない。



『踊る日本大使館』
小池政行     講談社    2000/6



<中国と北朝鮮の外交官たち>
・私は彼女につきあって、フィンランド語の夜間成人講座なるものに顔を出していたが、見るからに異様な一団が聴講しているのが気になっていた。
 教室の最前列に戦時中の国民服のようなものを身につけた中国外交官の一団が、それこそ必死の形相で講義に耳を傾けていた。さらに、そのすぐ後ろに隠れるようにして、何人かの北朝鮮外交官が、これまた緊張しきった様子で座っていた。

・「中国の場合は配偶者がタイプが打てるとか語学に堪能だとかの特技があり、役に立つと判断されなければ、絶対に同伴など許されないんだ。それに我々は配属された国の言葉をある段階まで習得しなければならない。だから、勤務が終了したあと、必死でフィンランド語を学んでいるのだ」

<不思議な在外研修最終試験>
・この出来事の唯一の収穫といえば、彼女が問わず語りに「私、なんとかフィンランド語を覚えて、こっちで暮らしたい。できればフィンランド男性と結婚して永住権を取りたいと思い続けてきたの。今は幸福だわ」と語っていたことから、ロシア人のフィンランド観を知ることができたことぐらいだった。70年代の終わりには、彼女のように留学で西側の豊かさを知ったロシア人留学生の多くが、なんとかフィンランドで暮らしたいと思って、フィンランド人と結婚するケースが多かったのである。それはまた、フィンランドがソ連の従属国ではなく、市場経済と民主主義の、少なくとも物質的には豊かな国であることを端的に示すことであった。

<大使公邸新年会の大乱闘>
・自ら「ドサ回り」というだけあって、どこか投げやりな雰囲気があったが、私自身は、気さくで、そしてまったく尊大なところがないこの公使には、いまでも好感情を抱いている。しかし、在留邦人のゲストを大勢招待する大使公邸の新年会で、何かの拍子に公使が大使に向かって、「何もしないで公邸で寝てるだけじゃないか」と怒鳴ったのには驚いた。そしておたがいに胸倉を掴みだしたのを見て、あわてた館員たちが止めに入ったが、二人の揉み合いは収まらない。ゲストたちも最初は二人の揉み合いを遠巻きにして見ていたが、そのうち、「これはどうしようもないな」という空気がたちこめるようになり、誰かが「馬鹿馬鹿しい。さあ、みんな帰ろう」と声をあげたのを潮に、全員がさっさと帰り支度を始めてしまった。

・結局、最後までその場に残ったのは、私と電信担当の館員の二人だけになってしまった。見物人がいなくなると二人は、まるで張り合いをなくしたかのように揉み合いをやめ、「お前はクビだ」「なんだと」とおたがい捨てゼリフを吐きながら、左右に分かれていったのである。

・この乱闘騒ぎは、その後すぐ、本省の知るところとなり、帰国を命じられた公使は、ほどなくして選挙に出馬するのだという噂と共に、外務省を辞職した。一方の大使にも帰国命令が下り、東京に戻ったものの定年退官の時期にあった大使は、そのまま民間会社の顧問等に再就職することもなかった。

・私は18年間、外務省で北欧諸国、とくにフィンランドの専門家として勤務してきた外交官である。
 いや、正確には外交官だった人間である。在職中も職を辞してからも、私はしばしば外交官とは何か?役人とは何か?という疑問を抱き続けていた、それほど、外務省や日本大使館で私が見聞したことは、入省前の私が心に描いていた外交官のイメージとは、大きく食い違っていたのだ。

・私が二度のフィンランド勤務で接した大使たちの中には、人格者や仕事熱心な文字通りの能吏と呼べる人たちもいたが、反面、これが天皇陛下から「人格高潔、才豊かにして」との信任状を託され、任国の国家元首のそれを奉呈する大使のすることなのかと、愕然とさせられることも多かった。





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