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南スーダンから自衛隊は即刻撤退すべき
[日本の政治]
2017年2月11日 23時58分の記事

南スーダンPKO派遣部隊の日報がなくなったり、見つかったり、はたまたその日報に自衛隊が陸自派遣部隊が活動するジュバ市内で昨年7月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記され、その「戦闘」という表現は、憲法9条違反になるから「衝突」と言い換えたなど、南スーダンPKO派遣については防衛相をはじめ政府側から様々なおかしな対応が起きています。

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この政府側の対応を見ていると原発に対する行政と全く同じものを感じます。おかしな対応を指摘され、批判されてもごまかし続け、史上最悪の事故が起きてもまだごまかし続け、結局は忘れた頃に真実の一端が出てくるということそのものです。そして、総じて見れば指摘され批判されたことが正しかったといういつもの落ちですが、それは政権延命や利権構造の温存など、国民の手から政治が離れている現在の政治の実像を示していると考えます。

PKO派遣地域で戦闘が行われていると、憲法違反の状態になるので、衝突と言い換えているの明らかです。現実を変えることはできないので、言葉を換えて政治的責任を回避するというあり得ないことを防衛大臣はしているわけで、これは明らかに国民を欺く行為、即刻辞任すべきでしょう。彼女には防衛大臣をする資格も能力もないと考えます。
また、戦闘という表現で現地情勢が報告されていると、日本において政治的問題になって困るから一度、日報が『なくなる』わけで、なぜか、マティス国防長官が来日したあとに日報が見つかったわけです。昨年、この日報が表にでると南スーダンへのPKO派遣について責任問題が浮上し、正当性がなくなるので、日報が『なくなった』と考えるのが自然でしょう。しかし、この日報がなくなった時点で、政府の管理能力には明らかに問題がありますから、自衛隊は撤退すべきだったと考えます。

本ブログ「資本の論理」(2017年1月31日)で申し上げたように、南スーダンに関して安倍政権の武器輸出の姿勢に対してオバマ前政権のパワー前国連大使から批判されています。当時、米国は南スーダンに対して武器輸出を禁止するコンセンサスを国連で作っていたにもかかわらず、日本はその米国の姿勢に反対をし、当時の国連大使に批判されたわけです。パワー前大使は日本政府の姿勢に対して「武器禁輸は南スーダンの人々だけではなく、PKOの隊員を守る手段でもある。隊員の安全を守る方法が、武器禁輸を支持しないことというロジック(理屈)は非常に疑わしい」(2016年12月21日 朝日新聞) とごく当たり前のことを言っています。
一方、そのことに対して稲田防衛相は、国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣するなか、政府と反政府軍の武器のバランスが崩れ、治安の悪化を招きかねないと懸念するという理由で、「南スーダンの平和と安定にとって何が適当か。すなわち自衛隊が安全を確保して有意義な活動ができるにはどうすれば一番適当かという観点から検討すべきだ」(同上)と述べている訳です。言っていることは学校の生徒会レベルの発言です。
しかし、今となって明らかなのは、件の南スーダンでは既に戦闘が起きていたわけで、米国の主張する形でしか、状況を好転させることはできなかったわけです。実際、昨年の11月、国連部隊と南スーダン政府軍が一時交戦すらしているのです(「南スーダン『国連部隊と政府軍、一時交戦』情報相が認識」2016年11月4日 朝日新聞) )。そしてやはり、この時、自衛隊は撤退をしなくてはならなかったわけです。

これまで何度も申し上げてきましたが、武器輸出というのは戦争の構造の最も根本的な原因です。米国は南スーダンの戦闘状況が悪化するから、その根本的な要因を取り除く国際的なコンセンサスを作ろうとしていたのに、日本政府・安倍政権・稲田防衛相はそれに反対をしていたわけです。一方で日本国民に対しては、現地の状況を報告する日報がなくなったと公に言い、現地で戦闘が生じていることは国民に伝わらなかったわけです。明らかに戦闘状態が生じている南スーダンに武器輸出がさらにされる状況を温存し、そこに自衛隊の部隊がいる状況を日本政府・防衛相はつくり出しています。それも言葉のごまかしで。
戦争の構造は資本の論理で行われるものです。私から現在の日本政府・安倍政権・稲田防衛相の南スーダンPKO派遣に関する対応を見たら、資本の論理が自衛隊員の命より先行していると見えます。
現在の自衛隊PKO派遣部隊は、戦死してはならない存在です。そういうリスクを負わない地域に派遣されることが大前提です。私はそれで良いと思いますし、自衛隊の存在を高めるなどとがんばる時代は既に去っています。そういう自衛隊を、戦闘が生じ、武器輸出を日本政府が承認している南スーダンへ派遣することは極めて問題があるものと考えます。憲法違反ですし、これは他国であっても問題ある状態と考えます。戦争の構造そのものです。実際、米国は批判していたわけです。即刻、自衛隊を南スーダンから撤退させるべきなのは言うまでもないことです。

原発に対する日本政府の杜撰でおかしな対応を見れば、それは日本に原発管理能力がないことを示しています。そして、この原発管理(核管理)能力の欠如は、日本の軍事管理能力の欠如を示しています。今回の南スーダンPKO派遣の防衛相や政府の対応は、それを非常に鮮明に示すものと考えます。軍事管理というのは極めて厳密に行わなくてはならないのです。それは軍事とはとても危険だからです。そのことを日本は既に経験済みのはずです。日本にはまだ軍事管理を行えるだけの政治的成熟度、インテリジェンスがほぼ全くないと考えます。

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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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