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カリスマを警戒せよ
[日本の政治]
2017年6月25日 23時59分の記事

私たちは、現在、本当に必要な政治を手にし、そして自らの手でつくり出しているのでしょうか?

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現状の日本の政治を考えていて、ふとP・F・ドラッカーの『新しい現実』に書かれていた「カリスマを警戒せよ」という一節が思い浮かびました。『新しい現実』の原書がどうしても見つからないので『[新訳]新しい現実』から引用します。ドラッカーは“政治リーダー”について以下のように書いています。

われわれにとって重要なことは、カリスマ性の有無ではない。重要なことは政治のリーダーが正しい方向に行くか、間違った方向に行くかである。しかも今日の状況下では、カリスマは間違ったリーダーシップを発揮せざるを得ない。新しい現実に向かってではなく、過去に向かって進まざるを得ない。(『[新訳]新しい現実 政治、経済、ビジネス、社会、世界観はどう変わるか』 2004年 ダイヤモンド社 P.120)

約30年前の本の一節ですが、“現在”の日本の政治・社会の現実とその問題点を見事に表現しています。ということは、現在の日本の政治と社会は“カリスマ(依存)社会”になっていると言うことです。
4月にある会が私に講演の機会を与えてくださいましたが、その会の主催者の方が、ドラッカーの本質は“社会生態学”であるとおっしゃっていました。その通りと思いますが、社会生態学と言うことは、即ち“現在歴史学”ということなのです。そういう視点から出された言葉は、やはり現実と人間社会の本質を見事に捉えます。
上記の一節の前に、実は以下の一節があります。

二〇世紀ほどカリスマに恵まれた世紀はなかったし、二〇世紀の四人の巨大なカリスマほど、政治的なリーダーが害をなしこともない。スターリン、ムッソリーニ、ヒトラー、毛沢東である。(同P.119)

なぜ、最初、この一節を省いて載せたかというと、「スターリン、ムッソリーニ、ヒトラー、毛沢東」とあるとどうしても自分たちとは関係がないと考えてしまい、多くの日本人にとってこの一節があることによって、最初に載せた一節が、自分たちの社会とは関係ないものとして受け取る可能性があると考えたのです。しかし、ドラッカーの言葉を要点だけをつまみ出して見ると、実に現在の日本の政治・社会の問題点を描き出しているのです。
日本が“カリスマ依存社会”になっていると言うことは、歴史の必然として、「スターリン、ムッソリーニ、ヒトラー、毛沢東」をいただいた社会と同じ命運をたどるということです。それは、現状、大変に危険な状況に私たちがあるということです。

日本における現在のカリスマは、メディアからの情報を介して、一般においてその像が形成されていきます。この形成過程には当然、権力も介在します。歴史を振り返れば、権力とメディアによってカリスマが形成された最も顕著な例はヒトラーですが、カリスマ形成の構造は、どこも同じでしょう。
このつくられたカリスマ依存社会は、現状、メディアにとっても一種のビジネスモデルになっているように考えます。カリスマをつくり出した方が、利害においてはプラスの面があるということですが、メディアがカリスマを作り上げ、そのカリスマとメディアが依存関係にあると考えます。そしてそのカリスマ像に社会も依存して、人々がその思考を停止していると言うことです。
しかし、それが、政治や社会を歪めていると今一度、考える時と思います。かつて日本ではドラッカーが一斉を風靡し、その期間も長く続きましたが、そのドラッカーの教訓はほぼ生かされていないと考えます。ドラッカーを読んだという自己満足だけしか残らなかったのかもしれません。

上記節には以下の一節が続きます。

ナポレオンは、一八一三年と一四年の戦いに破れた後でさえ、国境内におけるフランス皇帝の地位を保障する五指に余る提案の全てを拒否し、ヨーロッパ全体の主人の座にとどまることを要求したとき、もはや健全な精神を失っていた。現実は主人である。カリスマの公約、プログラム、思想に対し、現実の方が膝を屈することはない。(同P.120)

「現実が主人」、「現実の方が膝を屈することはない」というのは、まさにその通り、社会の生態の本質です。現実を虚飾で糊塗しても、その期間が長ければ長いほど、隠そうとした現実は大きくなり、いずれその為政者を食い尽くしていきます。しかし、同時に、その期間の分、それ以上、その政治の下にいる一般の人々の苦しみも続きます。
カリスマとは、ほぼ例外なく異常なナルシシストです。危険なカリスマを見分ける一番のポイントは、このナルシシズムにありますが、その異常なまでのナルシシズムは、必ず精神に異常をもたらし、最後に発狂させます。


ところで、6月21日のTBS『Nスタ』で、先の国会でのMVPに自由党の森裕子参議院議員の名が上がっていることを特集していました。私が国民新党にいた頃、一度だけ森議員とは電話でお話しをしたことがありますが、それ以外、私が自由党や森議員に関与しているわけではありません。しかし、この『Nスタ』の報道には心から同意しますし、何よりも、スポットライトが当らない小政党の良い政治家を評価するこの報道の視点、姿勢はとてもよいと考えます。
様々なところに有能な政治家はいますが、メディアによるスポットライトが偏っていて、その当然の結果として“安倍一強”ということが形成されていると考えます。メディアのスポットライトの当て方は明らかに一方向のものでしかありません。
この『Nスタ』の報道のように地道でしっかりと活動をしていて、地味でも上質な政治家を評価していくとういことにしか、次の時代を切り開くカギはありません。そういう政治家を評価していけば、視聴率などには即直結しないかもしれませんが、次の首相候補がいないと嘆いたり、脅迫めいた言葉を出すこともないでしょう。むしろそういう地道な評価が、多数で豊かな選択肢と安心感、そして次の展望を国民に見せることになります。人材がいないというのなら、探せばよいのですし、正当に評価していけばよいのです。ポイントはカリスマ性を考えるなと言うことです。そして、このような評価が、社会を、国を、そして未来をつくっていくと言うことなのです。おきまりの思考で物事を見ず、また肩書き・学歴や知名度で人を見ないで、自分の眼でしっかりと見て、評価していけば良いのです。カリスマ依存社会のというのは、自分の思考を失った社会でもあるのです。そして、その思考停止が危険な社会をつくり出していくのです。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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