トンキン湾事件 | |
[日本の政治] | |
2018年1月20日 0時0分の記事 | |
現在の朝鮮半島情勢を考える上で、ベトナム戦争のトンキン湾事件は非常に有益な示唆を与えてくれるのではないでしょうか?
現状、朝鮮半島情勢は平和か、戦争かの間で揺れています。ただ、このような状況は、戦争を起こそうとするものがいて、それに対して戦争を阻止して平和をつくり出すものがいるというのが実相で、それ以外にはありません。したがって、戦争を起こすためには情報のねつ造は確実に生じます。 そのよい例がベトナム戦争の発端となったトンキン湾事件です。この事件は1964年8月2日と4日に米海軍の艦艇に対して北ベトナム軍の魚雷艇が攻撃したとされる事件です。 当時、現地では米軍が南ベトナムの北ベトナム沿岸への襲撃を支援したり、米海軍艦艇が領海を侵犯して北ベトナムの防衛能力を調査していたりしていました。そういう中で、北ベトナム軍が米艦艇を南ベトナム軍と間違って攻撃したとされているのですが、まず8月2日に北ベトナムの攻撃があり、その後4日にまた北ベトナムの攻撃が生じたと言うことで、事態はエスカレート、米国議会では大統領に無制限とも言うべき戦争遂行権限を付与するトンキン湾決議が採択され、ジョンソン政権の米国はベトナム戦争に突入していきます。 しかし、後にジョンソン大統領と対立していたマクナマラ国務長官が、4日のトンキン湾での事件はでっち上げと告白し、1971年、ニューヨークタイムズがペンタゴンの機密文書を暴露してもいます。 その明らかとなった内容は、攻撃された米艦艇は南ベトナム軍による北ベトナム攻撃に随伴していたこと(実際には事件の半年前から米軍による北ベトナムへ情報収集、破壊活動、沿岸施設の砲撃などの秘密作戦が決行されている)、米国議会で採択されたトンキン湾決議の文書及び北ベトナムへの攻撃目標リストは、この事件以前にホワイトハウスで用意されていたことです。つまり、ホワイトハウスが戦争を起こすために情報をねつ造したと言うことです。これが、あれだけの犠牲と悲劇を生みだし、米国のトラウマになったベトナム戦争の実相なのです。1970年、トンキン湾決議は取り消されています。 戦争というのは、プロ野球中継のように実況中継されるものではありません。ほとんどが見えないもので、その状況は政府の報告しか情報源はありません。それが、ベトナム戦争の場合、政府そのものが戦争を行なうためにその発端をでっち上げたのですから、大変な問題です。もちろん、このようなことは戦前の日本でも当然生じています。だからこそ、戦争に関する情報というのは批判的に慎重に見なくてはならないのです。それはまさに命に関わることだからです。 現在の朝鮮半島情勢を見れば、米韓合同軍事演習や北朝鮮への制裁のために船舶の検査などが言われていますが、状況はこのトンキン湾事件の時と様相が重なる部分が多くなっています。戦争を起こすものの意図を常に考える必要が、残念ながら今あるのです。 また、戦争を起こそうとするものは、近代以降、国境を越えていることは忘れるべきではありません。しかし、それは特定の国を指すものではありません。 来月発売のザ・フナイ3月号では、1868年からの近代日本の実相を書きました。その本質は一言、国境を越えた戦争とお金の構造にあります。世のタカ派と呼ばれる自ら保守と自称する右翼のほとんどは戦争の実相を知らないと考えます。同時に反戦運動の人々もあまりこのことに気がついていないように思います。ただし、反戦運動において反戦・平和を叫ぶのは相応の意味があります。なぜなら、上記のトンキン湾事件を見れば一目瞭然ですが、戦争とお金の構造にある戦争を企画する人々は、世間において脅威を作り上げるとともに、戦争を始めるために必ず大衆の同意を必要とするので、扇動・プロパガンダを行なうからです。 この「戦争を始めるために必ず大衆の同意を必要とする」ことに戦争とお金の構造の本質が実はあるのです。だから、必ずそのために情報統制がなされ、間違った情報が流布されるわけです。それが必ず戦争に付きまといます。したがって、あくまでも平和を求める姿勢をつらぬかなければ、平和は訪れないということですし、その姿勢自体に意味があると言うことなのです。 そして、とにかく戦争においてはいかにお金が動いたかと言うことを徹底して追求する必要があります。戦争とお金の構造ですから、そこに必ずポイントがあります。必ず誰かが儲かるようになっているわけです。ベトナム戦争も他の戦争もみなそうです。そして、そのために大衆の同意と命を必要とすると言うことを忘れるべきではありません。 | |
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