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世代と学生運動と
[日本の政治]
2018年8月12日 4時11分の記事

翁長沖縄県知事がお亡くなりになりましたが、様々なことを考えさせられました。

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もう一ヶ月ほど前になりますが、ケーブルテレビをザッピングしていたら1988年を舞台とした韓国のドラマが目に止まりました。題名は『恋のスケッチ 〜応答せよ1988〜』(2015年)。当時、高校生や大学生であった1970年前後生まれが主人公で、その青春時代を描いた2015年に放送されたドラマです。まさに私と同世代なのです。
1988年の韓国というと、ソウルオリンピックが開催された年でもあり、また学生運動が激しかった時期でもありました。このドラマを観ていて韓国のこの時代は、日本で言う1960年代中盤の東京オリンピックが開催され、学生運動も激しかった時期にオーバーラップしていると思いましたが、ドラマに出てくる町並みなどの風景も日本のその時代を彷彿とさせます。1988年と言えば、日本はまさにバブルの真っ最中ですから、日韓での時代のずれというものがあるように思います。
しかし一方で、ドラマでは80年代に流行ったルービックキューブやキャベツ畑人形、当時、世界的に流行った映画なども出てきて、時代の共通性も感じました。とても面白いドラマですが、驚いたのはこのドラマが中国でかなりの人気となったと言うことです。日韓とは時代の共通性がないのに、現在の中国で人気があるというのは、一つの興味深いポイントでしょう。もしかしたら、日本の1964年、韓国の1988年、そして現在の中国に、時代的に共通することがあるのかもしれません。もしくは、もっと深い意味で、日本人が気がつかない東アジアでの胎動のようなものがあるのかもしれません。私はこちらの方に意味を感じています。いずれにせよ、このことはまた考察しましょう。

さて、このドラマの中で1968年生まれのソウル大学の女子学生が出てきます。主人公の姉なのですが、彼女は当時激しかった学生運動に身を投じ、その結果、家族と同居する自宅附近で警察に追い詰められます。その追い詰められる模様を発見した女子学生の母親が、土砂降りの中、傘をかなぐり捨てて、娘にかけより、泣きながら必死に警察から娘をかばう場面があります。娘は普通の子なんだと、親思いの良い子なんだと訴えてかばう、とても泣かせる場面なのですが、この場面を見ていてふと私の学生時代に出会ったソウル大学の学生のことを思い出しました。

1988年か89年のどちらかだったと思いますが、熱海で開かれた国連大学主催の学生会議のようなものに参加したことがあります。名称などは忘れましたが、武者小路公秀さんもいらした、各大学から50人から100人くらいの学生が参加する催しでした。同じく参加していた同志社と東洋大学の上級生と私の3名はとても気が合い、全くの不真面目で、ホテルのロビーで夜通し大声で馬鹿話をして、昼は部屋で寝るという有様だったのですが、その3名に嬉しそうに関わっていた韓国人の学生がいました。李さんというソウル大学の学生で恐らく東大に留学していた方でした。上記ドラマの女子大生とほぼ同じ年代でしょう。李さんとはとても気が合って、実はロビーで4人で夜通し話していたのです。この催しの後も、手紙をいただいたりしたのですが、その後、そのままになってしまいました。下のお名前も忘れてしまいました。
上記ドラマを見ていて、この李さんのことをふと思い出したのです。そして、今は何をしているだろうか、どうしているだろうかと。そして、李さんと二人で話していた時に、私が彼に言った言葉を思い出しました。それは「韓国で学生運動が流行っているけど、学生運動なんて、やめた方が良いよ。何にもならないし、意味がないから。日本も昔、同じだったけど、何にもなっていないよ」と言うものでした。なぜかこの場面だけは今でも非常に鮮明に憶えています。李さんは何も言わず、苦笑いをしていたと思います。

1988(89)年。時代は正にバブルの真っ最中、バブルに対して批判的に見ていましたし、問題意識が希薄な当時の学生を批判していましたが、同時に私の前の世代のマルクス主義一辺倒の学生運動が現実離れをしているとも思っていました。そして、何も生み出していないと思っていたのです。米ソ冷戦の終末期、思想的にも混乱していた時代だったと思います。

それから30年ほどが経ち、私と李さんの世代はどちらも社会の中堅より上の責任世代になっています。韓国において文在寅政権を支えているのはこの李さんの世代です。日本においてはこの同世代は言論、政治、経済の中核を担っています。しかし、日韓において明暗ははっきり分かれていると考えます。

30年前の韓国で学生運動に走っていた李さんの世代は、その後の民主化運動の中核となり、最近では日本人のかなり多くが羨ましいと言うほどの民主化の政治的潮流をつくり出しています。その世代が支える文政権は支持率は落ちてきたとは言え、明らかに新風をふかせ、未来を創ろうとしています。南北融和の中で最低賃金を上げる施策を打ちましたが、これが時代の流れの中でどれだけの意味あるものか、韓国人自身もまだわかっていないでしょう。しかし、30年前に韓国の学生運動に身を投じ、社会を、民衆を真剣に考えた世代が、このことを打ち出したことは本当に意味がありますし、それがこれからの時代の歯車と噛み合って、非常に大きな意味と成果をもたらしていくと考えます。こんなことを言っても今の日本では到底理解はされないでしょう。

一方、30年前、ディスコでは狂乱、万札をひけらかしてタクシーを止め、トレンディを追いかけ、おしゃれとグルメに興じ、大学はレジャーランドと言われた世代が中核となっている現在の日本は、政治家のモラルはなくなり、行政府、立法府で嘘が当たり前のように横行し、与党国会議員が平気で基本的事件を無視する発言をしています。体裁をなんとか繕っているが、中味はボロボロ、何かこの5年で良くなったことと言い切れるものがあるかと言えば、何もありません。憲法は無視され、法律も何もかも形骸化しています。経済は停滞し、名だたる企業は凋落し、GDPは米国の4分の1、中国の3分の1に近づきつつあります。貧富の格差がひどくなり、エリートはエリートの仕事をせず、かつての日本の輝きは完全になくなっています。未来が見えません。

こういう日韓のギャップ、この30年の歴史の移り変わりを見ると、やはり学生運動は必要、学生が理想を掲げて立ち上がり声を上げることはやはり必要と心から思います。私が30年前に李さんに言った言葉は明らかに間違いだった、そう上述のドラマを観ていて思ったのです。

私より20歳くらい上の世代、現在70歳前後の世代までは学生運動が激しかった最後の世代です。やはりその世代は、学生運動に身を投じた人も、そうでなかった人も深い何かを持っているように思います。火焔瓶を投げたり、デモに参加したりしなくても、触発され若かりし頃に深く考えたことが、その後の人生に生き、社会に好影響していると思います。その世代が社会の中堅、それ以上にの年代になって、派手ではなくとも、それぞれの場所で、それぞれに考え、それぞれの責任を果たし、間違ったことをしない、そういうことが社会をしっかりと支えていたと考えます。今はそういうことができなないから、あらゆる所から不祥事がウジ虫のように湧いて出てくるわけです。はっきり言って人間力の低下なのです。
ちょうど20年くらい前までは、まだ社会がしっかりとしていました。しかし、21世紀初頭頃から、日を追うことに崩れてきたと思います。学生運動や労働運動が激しかった頃、社会も経済も伸びているます。そういうものがなくなって、社会や時代が閉塞しているということがあると考えます。そして各世代における学生時代の状況が、その後、社会を大きく左右すると考え得ます。20歳代の若者の行動が、その30年後に色濃く社会に現われ、その社会の浮沈を決定するとやはり考えます。
「世代と学生運動と?」(2018年8月13日)へ続く。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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