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[日本の政治] | |
2019年8月3日 23時56分の記事 | |
安倍首相が、リーマンショック級のことは起らないとの見解を示し、予定通り消費増税をすることを説明したと8月1日の時事通信が報じています。 「安倍首相『リーマン級発生せず』=消費税増税、予定通り」(2019年8月1日 時事通信)
このことについては、本ブログ「自ら危機をつくり出すことを忘れている」(2019年8月1日)で取り上げましたが、ブログでは以下のように書きました。 それにしても、これだけのことを言っていて、増税が実施されてからリーマンショック級の危機が生じた場合、どうするのかという想定がなされていません。また、8月1日にこのような発言をして、翌日、起きたらどうするのかということも想定されていません。 実際、8月2日のNHK『ニュースウオッチ9』では、同日、世界の株価が軒並み落ちたと報じています。今後の状況は断定できませんが、確実に言えることは、上述の時事通信の記事で、安倍首相及び同首相と消費税増税について意見交換した浜田宏一内閣官房参与の見通しや判断力には疑問符がつくと言うことです。 浜田氏について、肩書きは大変に立派なのですが、基本的にブレーンとしての能力があるのかどうか疑問があります。 例えば、以下の2016年11月15日の日本経済新聞では、以下のように安倍政権のブレーンとしてその誤判断を認めています。浜田氏は内閣府参与を第二次安倍政権発足時の2012年からしています。 ――デフレ脱却に金融政策だけでは不十分だったということですか。 「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」 「アベノミクス4年 減税含む財政拡大必要 内閣官房参与 浜田宏一氏」(2016年11月15日) デフレ脱却を金融政策だけで解決できるはずがないことは、私でもわかりますが、それを4年も誤りを認められなかったというのは、ブレーンとしては確実に失格でしょう。 また、この記事では消費税増税について以下のように述べています。 ――財政の悪化に歯止めは要りませんか。 「私は食料とエネルギーを除く『コアコア』の消費者物価指数でインフレ率が安定的に1.5%に達したら、消費税率を1%ずつ引き上げてはどうかと提案している。逆にそれまでは消費増税を凍結すべきだ」 そして、今年になって「インタビュー:無理に物価2%目指す必要ない、消費増税に一定の理解=浜田参与」(2019年2月25日 ロイター)と言っているわけです。そして、以下のように述べています。 政府が10月に予定している消費税率の10%への引き上げについては「現在の良好な雇用環境の中で消費税が上げられないのであれば、どんな状況でも上げられない。一度は良いかもしれない」と一定の理解を示した。 非正規社員が4割いる状況で、雇用環境が良好というのはかなり実態を無視していると考えますし、本当に雇用環境が良好と言えるのかと現状でも考えます。 浜田氏については一貫したビジョンがなく、行き当たりばったりという印象が非常にあります。思考に軸がなく、国家の経済ブレーンとしては能力不足と考えます。竹中氏の構造改革を賞賛しているくらいですから、その本質が見えてきます。今やその構造改革路線の弊害が大きく社会にのしかかっています。 私から言わせれば肩書きに欺される典型と考えますが、そのような人が最近、政治家にも学者にも多数いると考えます。もちろん、肩書きだけで人を判断し、信じる方も悪いと思います。 実際、安倍政権に関わる経済ブレーンはそのほとんどが能力がないものと考えます。実際、第二次安倍政権以降、結局は経済的な成果は生まれていない、正確に書けば既に日本経済は悪い状況と言えます。 最近の記事だけを見ても三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの3メガバンクで3万2500人のリストラが報じられています。みずほフィナンシャルグループに至っては半分近くの人員がリストラの対象ですから、それを電子化のためと考えるのは無理があり、基本的な縮小もしくは後退の要因が本質と考えます。また、以下の記事のように三菱UFJ銀行と三井住友銀行がATM相互解放とありますが、一部拠点の廃止などもいわれ、人員削減とあわせて考えると後退の方向性が強いと考えます。 「三菱UFJと三井住友、ATMを相互開放。9月22日共同利用開始」(2019年7月5日 Impress Watch) 日産は2019年4〜6月期決算で営業利益が前年同期比98.5%減となり、グループ従業員の1割に相当する1万2500人規模の人員削減を発表しています。100%近い営業利益の減りと10%の人員削減です。会社の存続に関わる事態と考えるのが自然でしょう。 また、損保ジャパンは4000人規模のリストラ、富士通は2850人のリストラ、昨年ですがNECは3000人規模のリストラです。もちろん、シャープなどの日本の家電メーカーはかつてとは大きく異なっています。 さらに、以下のように経団連会長の日立も以下の記事のように子会社の状況は芳しくありません。 「日立、残された『上場4兄弟』はどこに向かうのか 売却か残留か、4つの子会社に『踏み絵』を迫る」(2019年8月2日 東洋経済) 日立 このように見ると、そもそも雇用環境は良好なのかという疑問符が当然つきます。そして、大手がこの状態ですから、記事にならないだけで、関連する産業や子会社や下請けなどに問題が波及していることが当然予想されます。 このような状況を観ると、現状はバブル崩壊期よりはるかに深刻であると考えます。バブルの頃は、社会環境にまだ勢いがありましたし、国際的には日本は東アジアでダントツで抜きん出ていました。しかし、いまや内部的状況は勢いを失い、国際的な状況でかつての地位はありません。それで、このようなリストラの嵐となっているわけですから大変に深刻と考えるのが自然です。 異次元の金融緩和をして、テレビでは毎日繰り返し日本はすごいすごいと言っている間に、トンデモナイ状況に至っています。そして、これがアベノミクス7年の成果と考えます。株価は高値にありますが、実際は公的資金が大量に投入されていますから、その値が実態を反映したものであると考えるにはかなりの無理があります。 このような状況を見ると、いざなぎ超えと言われたのが幻にしか思えませんが、以下の昨年末の朝日新聞の記事で、いざなぎ超えに実感があるかという記事は必然的なものです。そのようなものはそもそもなかったと考えるのが普通でしょう。そして、昨年末よりも現状はさらに悪化していると考えます。 「景気拡大長さ『いざなぎ』超え 実感ある?成長率1%台」(2018年12月13日 朝日新聞) 安倍政権下では勤労統計の不正もありました。これで労働環境は良好と言っているのですから、正しい経済運営を安倍政権ができると考えるのは無理がありますし、その悪い結果が様々な所に噴出するのは当然です。それで上述のような消費税増税の判断に至っているのですから、その結果は既に見えています。 もう一つ忘れてはならないのが、昨年末、TPPが発効したことです。つまり、現状はTPPの環境下にあると言うことですが、かつてTPPに加入すれば大変なメリットがあると様々なところで言われました。しかし、そのメリットを全く感じない人はかなり多くいると思いますし、実際、そのメリットは全く出ていないと考えます。現状、このようなところから見直す必要性が間違いなくあります。 TPPを担当した大臣は甘利氏、茂木氏などですが、どちらも経済再生担当という肩書きです。しかし、果たして経済再生ができたのか、そしてできるのかは検証の必要性が間違いなくあります。現状、その肩書きはあまりにも荷が重いと考えるのが自然でしょう。 このように見てくると、現状の日本における多くの問題点は経産省にその焦点があるものと考えます。原発行政も基本的に経産省マターです。 手段としては常套 安倍政権が意図しているかどうかは別として、このような明らかに良いとは言えない経済状況は、現状の日韓問題で覆い隠されています。この日韓問題は先の参院選中からありましたから、同じ効果が参院選であったことは間違いないでしょう。そして、参院選で問われるべき本当の争点が、別のものになったことも確かでしょう。このように人々から本当の問題点を隠すものが、本ブログ「根拠薄弱」(2019年8月2日)で書いたように根拠薄弱で、経産省の裁量に寄るのです。 国内で問題が山積しているときに、外に国民の目を向けるために他国との軋轢を演出するのは、古今東西、為政者がよく使う常套手段です。安倍政権がこのようなことを意図しているかどうかはわかりませんが、そのような効果が生まれていることは確かです。 社会においても、いまだ1990年代から2000年代初頭の日本の内外状態が頭の中にこびりついているようで、そのステレオタイプが韓国に対する反応に現われていると考えます。そこに安倍政権の対韓姿勢が被さっているので、非常に危険なことと考えます。実情に基づかない思考・行動は、多くの場合、予期せぬ結果を招きます。 今回の日本側の韓国に対する措置について、世耕経産相は以下の記事で「何かグローバルサプライチェーンに影響を与えるとか、日本企業に悪影響が出るということは基本的にはない」と考えを述べています。しかし、プラスになるものではないのも確かでしょう。経済がかなり悪い中で、今回の対韓措置は単にその悪い状況に拍車をかけるだけと考えます。いつものように末期になると玉砕のコースなのかと考えます。 「ホワイト国とは? 韓国を除外。世耕弘成・経産相『対抗措置ではない』」(2019年8月2日 HUFFPOST) パンドラの箱を開ける 1941年の真珠湾攻撃は、空母から飛び立った戦闘機から爆撃や雷撃をしましたが、これは当時としては画期的な戦術と言われています。ただ、そのようにすれば、同じことをされるのは当然です。 今回の対韓措置も同じと考えますが、それは単に韓国から同じことをされるということだけではありません。根拠薄弱でこのような措置をしたという前例を日本がつくったわけですから、当然、他の国も日本に対してできる措置となったわけです。このようなことは、日本の力が弱まったときに日本への有効な戦術として映ります。そして、同時に日本が伸びることはマイナスとなるから、それを押さえる手段としても使われるでしょう。まさにパンドラの箱を開けたのは日本ということになったと考えます。 最終編集日時:2019年8月4日 4時29分 | |
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