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問題なのは思考?
[日本の政治]
2019年8月31日 23時55分の記事

8月31日、TBS『世界ふしぎ発見!』で、「森山未來が探る 神秘の国 イスラエルの秘密」とイスラエルの特集をしていました。イスラエルがそもそも神秘の国なのかとは思います。歴史の舞台と言った方が正確で、その方が良いでしょうし、イスラエル自体は、開拓の国です。番組を観ていて、内容とそのスポンサーということをとても考えてしまいますが、ちょっと目にした番組の中で、ユダヤ教の安息日のことを伝えていました。この場面を見て、改めて日本とユダヤの社会とは全く違うなと思いましたし、日ユ同祖論なんてことはないなと改めて思いました。

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ユダヤ教において安息日があるのは、労働に価値を置くためと番組で解説されていました。因みに、この番組で紹介されていた安息日の他に安息年というのがあって、5年、7年に一度、一年中、有給で休みをとることが現代でもごく一部であると『ユダヤ人の発想―不確実性時代を生き抜く条件』(1978年 徳間書店 M.トケイヤー8〔著〕、 加瀬 英明〔翻訳〕 71頁)に書かれています。この安息年はもとは作付けをやめたり、負債を免除するとあります。
番組でのこの安息日についての内容と解説を観ていて、現在の日本で問題となっている過労死やコンビニの問題、労働者に対する搾取の構造を考えると、日本は労働に価値を置いている文化とは全く言ません。ユダヤ教的に言えば、現在の日本は労働を蔑ろにしている文化の典型ですし、それでは良い仕事ができるわけもありません。労働時間が長く、安息日がないのは使用者側の非常識と反社会性だけではなく、被雇用者側にも使用者に媚びを売り、保身のために長時間労働、休日出勤をする人もいるでしょう。同じ職場で働いている者からすればそういう人は大抵は嫌なやつになるでしょうが、そのような人の存在を考えても、文化的に日本が安息日とは無縁の社会で、日ユ同祖論なんて言うのは、世迷い言であるのがよくわかります。
安息日はユダヤ人社会におけるもっとも神聖な儀式・行事のひとつですが、その伝統や痕跡すら日本のどこにも見当たらないのですから、日ユ同祖論などということはないでしょう。ユダヤ人とは基本的にユダヤ教を信じる人たちですから、その教義がもっとも大事で、根本であるわけです。つまり思考の問題なのです。文化とは思考なのです。だから、日本の文化にその教義の痕跡がなければ日ユ同祖論は成り立ちません。日本の歴史において安息日という概念はないと考えます。ひとつやふたつ同じようなものがあっても、そのような類似性はどの文化にもあるのです。
また、ユダヤ人の母から生まれた子どもは、自動的にユダヤ人になりますが、そのような血統の考えも、日本の文化には見当たりません。少なくとも有史以降、特に近現代には。

ユダヤ教とは文字と歴史の記録及び分析の集積
イエス・キリストはユダヤ人社会に生まれ、育ち、その改革運動に立ち上がった実はユダヤ人であるわけです。そのユダヤ教の根本とは、文字とそれで綴られた歴史の記録及び分析の集積です。それがトーラーやタルムードであり、だからこそキリスト教も旧約聖書(ユダヤ教)と新約聖書(キリスト教)がセットになるわけです。
そして、ユダヤ教では文字と歴史の記録及び分析の集積をもとに、ユダヤ社会を維持するために一人一人が常に考え、議論していくことが必要とされ、また要請され、だからこそ議論の民とユダヤ人が言われるわけです。つまり、神から与えられたものとは文字と歴史の記録及び分析の集積なのです。そして、その営みから戒律が生まれ、律法となり、それらは神聖なのです。日本にはそもそもそのような文化は痕跡すらありません。
したがって、ユダヤ教は社会の出来事を文字で記録し始めたときから始まります。なぜ、そのようにしたのかといえば、社会を崩壊から救い、維持するため、人々を危機から救うためです。つまり、一度、崩壊しかけ、亡びかけたからこそ、二度と同じ過ちを犯さないために、記録をし、再発防止のために分析をするわけです。旧約聖書を読めばそういうことが沢山書かれています。その最初はモーセの十戒でしょう。そして、そのような営みが、西洋における法制度や政治システムと発展していくわけです。
ユダヤ教の本質が文字と歴史の記録及び分析(歴史学)の集積であるのに対して、日本人の生態や文化はその真逆で、基本は自然信仰です。だからこそ無文字文化で、これが日本の文化の根底です。この違いは極めて大きいのです。
文字があるから歴史学が成り立ちます。文字というのはコミュニケーションのためですが、それは時間を越えたコミュニケーションも可能とするのです。それが歴史学で、歴史の集積と分析は、社会の維持、サバイバルのためにあり、だからこそ神聖なのです。日本にはそのような歴史学の文化はありません。そもそも、自然の摂理の中で生きることがポイントになるので、自然との対話が主になります。そして、文字が必要になるほど厳しい状態に置かれることもなかったわけです。ですので、基本的に無文字文化となるのも仕方がないわけです。これが日本文化の最大の特徴であり、最大の弱点です。実際、日本語の時制の表現も英語と比較しても非常に単純ですが、そういうことろにも日本の特徴はよく出ています。

自然信仰と都市の宗教
また日本の根本が自然信仰であるのに対して、ユダヤ教は基本的に都市の宗教で、人間社会の中で成り立ち、人間社会という前提があって始まるものなのです。紀元前1000年ころ、日本は縄文時代で人口は全国で推定10万人ほどであったのに対して、ユダヤの社会(ダビデ王の時代)は推定人口500万人と言われています。だから、社会を維持するために文字と歴史(社会の成り行き)の記録及び分析がその柱となり、またその柱をもとにそこまで大きくなったわけです。
そして、現在のイスラエルを見てもよくわかりますが、都市の宗教は自然を克服することにポイントが置かれます。あの荒涼とした地を見ればわかりますが、生きるためにはその自然を克服していかないといけないわけです。イスラエルの都市にいくと木々などの緑がありますが、それらは自然の意志ではなく、人間の意志で砂漠に育てられた緑であるわけです。全く日本とは違うのです。
一方、日本の自然信仰は自然の摂理の中で生きることにポイントがあります。その自然の摂理の中で人が生きることを許されているからです。だから、自然との対話と言うことが生じるわけです。神道、神社というものは本来そういうもので、そこに近代的な政治思想などと言うものはありうるはずもなく、近代になって頭の悪い誰かが勝手につくったに思想に過ぎないのです。それが国家神道ですが、これは日ユ同祖論も同根と考えます。
このように、サバイバル、生きる、社会を維持すると言うことを主眼として全く真逆の対応が両文化であるわけです。そして、日本の文化の中にユダヤ教の痕跡はありません。むしろ近代以降の神道思想は、ユダヤ教の痕跡があると考えます。

種族の問題
人種的に日本人の祖先を辿れば、それは人類の起源は同じという意味で古代ユダヤの民と同祖であるのは間違いないでしょう。しかし、それは日ユだけの問題ではないわけです。現在のユダヤ人の多くはアシュケナジーと言って、黒海周辺や中央アジアの白人が中心です。英語で白人をコケイジアン(Caucasian)と呼ぶことがありますが、それは黒海沿岸のコーカサスのと言う意味で、この地域の人々がユダヤ教に改宗したことがアシュケナジーの起源であり、古代ユダヤの民とは違うわけです。イスラエルにいけば、東欧、ロシア系の白人が多いことがよくわかりますが、それはこのような歴史的過程があるからです。
日本人のルーツを考えれば、中央アジアからの流れがありますから、そういう意味でアシュケナジーの祖先が地域的に近い、もしくは同じという可能性はあります。しかし、それは古代ユダヤ人と同祖と言うことではないわけです。古代ユダヤの民は、現在のパレスチナの人々の方が圧倒的に近いでしょう。
「問題なのは思考?」(2019年9月1日)へ続く。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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