日本は津波による大きな被害をうけるだろう  UFOパラレル・ワールド

経済学の観点から見て、現在の中国は経済危機というより、すでに経済恐慌に突入しているといえよう。3年間のコロナ禍と不動産バブルの崩壊は、中国人の生活水準を予想以上に大きく下げた。(1)
10/25 16:15





(2024/10/25)



『中国不動産バブル』
柯隆   文春新書    2024/4/19



中国不動産バブル
中国の不動産バブル崩壊が幕を開けた。それは貨幣的な現象に留まらず、金融、行政、政治システムへと飛び火し、やがては共産党統治体制をひっくり返す要因にもなり得る――。

<不動産バブル崩壊の幕開け>
<開発中の不動産プロジェクトが次々とゴーストタウン化>
・中国人は14億人の人口を有し、土地資源が極端に不足している。需要と供給を考えれば、不動産神話が崩れることは絶対にないと信じられてきた。しかし、現実問題として、主要大都市の不動産価格は大きく下落してきている。開発途上の不動産プロジェクトがストップし、ゴーストタウンと化す案件が増えている。

・これらの現象を見れば、中国の不動産バブルは明らかに崩壊したと言っていいだろう。

<マイホームに執着する中国人たち>
・だからこそ中国人富裕層は海外に移住して、まずはマイホームを買いたいと考える。多くの中国人は土地の権利書を手に入れた瞬間、なんともいえない感動を覚えるという。

・要するにマイホーム購入は、住むための手段を確保するというよりも、財産を蓄えるためという側面が大きいのだ。もう1つは、信用の問題だ。

<不動産開発は一石二鳥の戦略だった>
・この輸出依存のモデルは比較優位戦略と呼ばれる政策だが、輸出製造業の伸長は間違いなく中国経済の飛躍に大きく貢献した。

・1990年代に入り、朱鎔基首相は内需に依存する経済成長を強化しようと呼び掛けた。内需のなかでもっとも可能性を秘めているのは不動産に対する需要だった。不動産開発は人々の住環境を改善するだけでなく、経済成長を押し上げる効果が期待され、いわば一石二鳥の戦略であったのだ。

・地方政府は自らが設立した「融資平台」を救済したいだろうが、その地方政府の財政も赤字に転落している。彼らの運命は、中央政府が救済するかどうかにかかっている。

<マネーゲームと腐敗の進行>
・習政権になってから数百万人の共産党幹部が追放されているが、その多くは不動産開発関連の腐敗幹部といわれている。

・一般的に、土地使用権の入札には複数のデベロッパーが参加するが、どのデベロッパーが落札できるかは、入札を司る地方政府の幹部にどれほど賄賂を払うかによる。

・土地使用権の払い下げにおいてガバナンスが利いていないと、地方政府とデベロッパーによる不正が横行する。

<共産党統治体制をひっくり返す要因に>
・不動産開発は中国の経済成長を牽引することができるが、同時に共産党統治体制をひっくり返すこともできる、といえる。重要なのは法による統治の徹底と透明性の担保である。ガバナンスが利かない社会では、絶対的な権力を握る共産党幹部と役人は往々にして腐敗する。

<中国の不動産で何が起きているのか>
<2000年代からの不動産ブーム>
・さらなる経済成長を達成するため、政府は物流インフラの整備に取り組み、中国は高度成長期のピークに達した。中国の1人当たりのGDPが初めて3000ドルを超えたのは、2008年になってからである。

<誰もが「神話」を信じた>
・当時、中国の経済学者たちは、中国の不動産ブームは「剛需」(絶対に必要な需要)によって支えられている。14億人の中国人はみんなマイホームを購入したいと思っている。したがって、不動産ブームは長期にわたって続く、と主張していた。

・ちなみに、当時の住宅ローンの金利は6%以上だった。冷静に考えて、これだけの金利をカバーするマンションの値上がりが見込めなければ、マンション投資はできない。

・当時、大都市の不動産価格は、中国の勤労者家族の年収の20倍ほどに達していた。不動産ブームは明らかに不動産バブルへと変化しており、このまま持続できるとは思えなかった。崩壊しないバブルはこの世に存在しないからだ。問題は私の主張を聞き入れる中国人経済学者が1人もいなかったことだ。

<日本のバブル崩壊よりも深刻な影響が……>
・私の考えを大胆にいえば、中国が民主主義の市場経済だという前提に立てば、すなわち、政府が直接市場に介入できないということを前提として考えれば、中国は30余年前の日本と同じように不動産バブルが崩壊し、デフレに突入している段階だと断言できる。

・それに対して、中国のバブル崩壊は国有銀行に飛び火するだけでなく、地方財政にも飛び火し、深刻な社会不安を引き起こす恐れがある。それはサプライチェーンの再編と重なり、外国企業が工場をほかの途上国に一斉に移転すれば、中国は技術も失う可能性がある。

<幹部を接待するための「喜び組」>
・このようななか、多くのデベロッパーは経営の多角化を図っていった。不動産業は景気にもっとも連動する産業である。

・その1つが。土地の入札のために共産党幹部を接待する専用「会所」(プライベートクラブ)を作り、歌舞団を設立したというものだ。歌舞団をわかりやすくいえば、北朝鮮指導者の「喜び組」のような組織である。

・不動産バリューチェーンのなかで、これらの勝ち組の贅沢三昧の生活を支えているのは結局のところ、マンションなどの不動産を高価格で購入している無数の個人である。

・この2つの事例からは、中国の不動産市場が明らかにバブルとなっており、持続不可能な状態となっていたことが明らかだ。このような理不尽なバブルがはじけないはずがない。

<政府の救済はあるのか?>
・デベロッパーの経営難により、現在開発中のマンションや商業ビルなどの物件が未完成のまま、ゴーストタウンになるケースが増えている。

・不動産バリューチェーンにあるすべての企業と個人はなすすべがなく、政府による救済に淡い希望を抱きながら、景気が上向くのを待っている。

<一部の老人が年金難民に>
・中国の不動産バブル崩壊は銀行に飛び火するだけでなく、地方政府および年金生活者にも深刻な悪影響を及ぼす恐れがある。

・不動産バブルが崩壊して、地方政府の財源が枯渇し、それによって一部の年金生活者は年金難民になる可能性がある。

<政府による救済のプライオリティ>
・3年前からデベロッパーのデフォルトは相次いでいるが、中国政府はどこまで救済するか迷っているはずである。救済しなければ、バブル崩壊の影響が一気に広がってしまい、深刻な社会不安を引き起こす恐れがある。

・また現在、大手デベロッパーが相次いでデフォルトを起こしているため、中国政府はそれらを包括的に処理する政策を模索する必要がある。

<習近平「家は住むためのもの」発言が崩壊のきっかけに>
・ところが2021年、習近平主席が「家は住むためのものであり、投機の対象ではない」と呼び掛けたのをきっかけに不動産需要が抑制され、住宅購入制限や住宅ローン制限が導入された。そのうえ、3年間のコロナ禍により、不動産市場の過剰供給問題が浮上して、不動産バブルは崩壊してしまった。

<リターンを求めて不動産に流れ込んだ資金>
・中国の金融仲介は国有銀行を軸に行われているが、国有銀行は効率も業績も悪いため、リターンを求める家計にとって銀行に預金することは魅力がない。結局、人々はより高いリターンを求めて金や不動産などの投資に走ったのである。

<GDPの3割が崩壊し、中国経済は大失速>
・不動産バブル崩壊がマクロ経済に与える影響としては、中国の経済成長率を一段と押し下げる恐れがある。

・また、不動産バブルの崩壊は間違いなく、市中銀行に飛び火する。デベロッパーはすでに債務返済を延滞している。

・地方政府も影響を免れることはできない。中国の地方政府は地方債などを起債して、巨額の債務を抱えている。

・繰り返しになるが、中国の年金などの社会保障基金は各々の市政府が所管している。地方財政が破綻状態に陥れば、年金ファンドも資金が枯渇してしまう恐れがある。

<土地の公有制と戸籍管理制度>
<土地の公有制と経済自由化のジレンマ>
・中国において、憲法上で土地の公有制がはじめて定められたのは、1982年に改正された憲法でのことだった。

<ネズミが捕れなくても赤い猫>
・改革・開放の初期、中国には資本家も地主もいなかった。30年近く続いた毛沢東時代では、共産党高級幹部以外、大半の中国人が貧しい生活を送っていた。

・本書は中国の不動産バブルとバブル崩壊を考察することを目的にしているが、もっとも重要な問題は、共産党一党支配体制が存続できるかどうかということだ。

・経済の自由化は手段であり、目的ではない。とくに習近平政権になってから、イデオロギー的には完全に毛時代に逆戻りしているようにみえる。

<大きな政府か、小さな政府か>
・民主主義の市場経済国では、市場メカニズムによる資源配分がおこなわれ、もちろんそのなかで失敗が起こる。その失敗を補うのは政府の役割であると考えられている。市場メカニズムではできないことが、政府の仕事になるのだ。

・社会主義計画経済が持続不可能であることは、旧ソ連と毛沢東時代の中国ですでに実証されている。

<年々増え続ける公務員>
・では、なぜ多くの国では小さな政府はなかなか実現しないのだろうか。
 小さな政府に対する批判で多いのは、市場メカニズムによる資源配分によって所得格差が拡大しがちであるというものだ。

・では、中国の状況はどのようになっているのか。
 中国は社会主義体制を続けているので、大きな政府か小さな政府かとの論争が起きにくいが、改革・開放以降の40余年間を振り返るだけでも、公務員の人数は年々増え、政府の規模が拡大する一方である。

・中国共産党は一貫して、国有企業が担えるビジネスは民営企業に開放しない方針をとっている。

<都市化ボーナスは不発に終わった>
・習政権が誕生した当初から、生産年齢人口の減少はすでに見えていた。長年、中国経済を牽引してきた人口ボーナスが、少子高齢化により徐々にオーナス(負担)になることがわかっていたからだ。

<社会を分断する戸籍管理制度>
・中国で全国的に統一した戸籍管理制度が導入されたのは、中華人民共和国が成立した9年後の、1958年のことだった。

・一方の中国の戸籍管理制度は、社会を二分してしまうほどの強い力を持っていた。その1つは、農村戸籍の住民が戸籍を都市部へ自由に移転することができないということ。さらに、都市と都市の間の戸籍の移転も原則として禁止されていた。

<犠牲となった農民たち>
・開発経済学の観点からみれば、戸籍管理制度の導入には別の目的もあったといえる。

・たとえば、穀物などの農産物の買い付け価格を低く抑え、それを以て都市部で工業に従事する住民の生活を保障する。結果的に農民の生活レベルは下がり、想像以上の苦しみを生むことになった。生活に困った農民が都市部に仕事を求めようとしても、戸籍管理制度のために農民は都市部に移動できない。

・毛の最大の過ちは、工業のキャッチアップを急ぐあまり、農業生産を粗末にしたことだ。とくに1958年、毛は鉄鋼生産を増やすため、「大躍進」運動という史上最大の茶番劇をプロデュースした。全国民は家にある鉄製の道具などを持ち寄り、それを溶かして、鉄鋼生産量としてカウントした。農家も農作業を止めて、鉄鋼生産に従事した。毛がプロデュースした「大躍進」はすぐさま大惨事をもたらした。その後の3年間、農産物は不作になり、数千万人が餓死したのだ。政府共産党はこの史実を隠蔽するために、大飢饉の原因を「自然災害」だとした。しかし、当時の気象記録を調べた歴史家によると、大規模な洪水や干ばつが起きた記録は見つかっていない。この大飢饉は天災ではなくて、毛沢東による人災だった。

・問題は毛沢東の悪政の責任が、その後も徹底的に追及されなかったことである。3年間の大飢饉の責任を免れるために、毛沢東は1966年から文化大革命を発動した。

・経済建設は日に日に停滞し、人々の生活もますます困窮していった。毛は1976年に死去した。1978年に改革・開放へ舵を切られるまでの30年近く、住宅の建設はほとんど行われなかった。

<住宅が公共財から商品へと変化した>
・住宅開発が急速に進んだのは、住宅が福利厚生の公共財でなくなり、商品化したからである。デベロッパーが住宅を開発して商品として売り出し、売り上げをもってさらに新しい住宅を開発するという循環は、不動産ブームを作り上げた。そのうえに、投資や投機が積み重なって不動産バブルが起きた。

<マイホームはステータスシンボル>
・こうして不動産ブームは不動産バブルへと変化した。バブルに拍車をかけたのは、若者を中心に形成された「マイホームを持つことはステータスシンボルになる」という価値観である。

<地方政府と都市再開発>
<転機となった「天安門事件」と「WTO加盟」>
・1992年初頭、高齢の搶ャ平は香港に近い深圳に行って改革・開放の加速を呼び掛けた。民主化はおこなわないまま、なんとか経済の活性化を図ろうと考えたのだった。

・2001年、中国は念願のWTO加盟を果たした。このWTO加盟こそ、中国経済を高度成長期に導く重要な節目だった。

<中国の都市再開発に腐敗はつきもの>
・中国で都市開発に腐敗はつきものである。都市再開発が本格化してから、不動産開発関連でどれくらいの幹部が腐敗によって追放されたかについては正確な統計がないが、何千何万といった規模ではないはずだ。習近平政権になってからだけでも数百万人の腐敗幹部が追放された。そのほとんどは不動産腐敗と切っても切れない関係にある。

<地方政府とデベロッパーが結託して地上げ>
・中国の不動産価格はなぜこんなに高くなったのか、と不動産デベロッパーにインタビューすると、彼らは一様に土地が高いからと答える。なぜ土地が高いのかと聞くと、地方政府が地上げをしているからという。

<定期借地権という時限爆弾>
・地方政府が払い下げている土地使用権、すなわち定期借地権は宅地70年、商業用地50年と設定されている。

・一つの可能性としては、将来的に定期借地権を再契約し、期間を延ばすことも考えられる。しかし、そうなると、膨大かつ難しい作業が求められる。

・このように、不動産バブルは単なる経済問題に留まらず、中国の土地制度と政治システムにかかわる深刻な問題である。

<個人の住居を強制的に撤去>
・中国は社会主義体制といわれているが、この体制の最大の問題は、人権が恣意的に侵害されることである。その典型例は私有財産に対する侵害だ。2007年に制定・施行された「物権法」の第4条は、「国家、集団、個人の物権は法律によって保護される。いかなる組織および個人でもそれを侵害してはならない」と規定している。
 だが、共産党は法を凌駕しているため、法律が守られないことは日常茶飯事である。

<都市開発が文化と文明を破壊した>
・目覚ましい都市開発の裏で、犠牲となったのは一般の市民たちだった。

・しかし中国では、旧市街を完全に取り壊し、新しい街を作るのが一般的だ。旧市街に住む住民は強制的に退去させられ、あっという間にニュータウンが誕生する。この「中国的スピ―ド」は世界に賞賛されていた。工事現場で働くのは出稼ぎ労働者がほとんどであり、長時間労働のうえに人件費も安い。ちなみに、歴史学者である精華大学の秦輝教授は、中国型開発モデルの比較優位性は人権を無視できるボーナスであるとしている。

<「大きい=強い」という「美学」>
・2000年代に入ってからも、中国では次から次へと巨大なインフラ施設がつくられた。そのほとんどは必要以上の大きさになっている。大きすぎるというのは、逆に考えれば、土地やエネルギーなどの資源効率が悪いことを意味する。

・14億人もの人口を抱えている一方、実際に人の居住に適する土地はそれほど豊富ではないからだ。

・今、中国の農地がどれくらい残っているかは誰もわからない。最近は農業の専門家が、中国で食糧不足が起きる可能性があると警鐘を鳴らしている。

<「失われた30年」への道>
<急成長したシャドーバンク>
・中国で不動産バブルが大きく膨らんだ背景には、不動産開発にかかわるシャドーバンク(影の銀行)と、「融資平台」と呼ばれる地方政府設立の投資会社の存在がある。
 とくに注目すべきはシャドーバンクの「活躍」である。シャドーバンクとは、金融機関のバランスシートに計上されないオフバランス取引のことを指す。

・これらの仕組みは、中国の社会や産業に思わぬ弊害をもたらした。金融危機、「失われた30年」へとつながっていく恐れもある。

<自己責任の「理財商品」>
・2023年になって不動産バブルは崩壊したので、それにともない理財商品などのシャドーバンクのファイナンスも少し下火になる可能性はある。

<リコノミクスと脱レバレッジ>
・債務の膨張に危機感を抱いていた李克強前首相は、在任期間中、一連の経済政策を打ち出した。これらの経済政策はレーガノミクスとアベノミクスに因んで、リコノミクスと命名された。リコノミクスは安易な金融緩和を行わず、脱レバレッジと構造転換を柱としていた。

・習政権が正式に誕生したのは2013年3月だったが、それまでの30余年間、中国経済は奇跡的な高成長を成し遂げた。

・仮にリコノミクスがきちんと実施されていたら、中国は不動産バブル崩壊を免れたのかもしれない。しかし、習政権において権力の一極集中は予想以上に進み、李克強前首相はそれまでの歴代首相のなかでももっとも弱い首相となった。

・習政権は経済成長を不動産開発に頼っていたため、不動産バブルの崩壊は政権にとって致命傷になる可能性が高い。だからこそ、不動産バブルの崩壊を許すわけにはいかないのだ。

<不動産ブームの予期せぬ弊害>
・かつて最高実力者だった搶ャ平は改革・開放を進めたものの、社会主義路線と共産党指導体制は絶対に堅持すると後輩たちに繰り返し強調した。

・むろん、何事にも例外がある。1980年代の中国の自動車産業はほとんどが国有企業だったが、その後、民営企業の参入が認められ、今は官民混戦状態になっている。

<地道な努力をしなくなった>
・こうしたなかで、不動産ブームは中国の産業に思わぬ影響を与えることになる。2000年以降、不動産ブームは顕著になっていった。

・むろん、不動産バブルの崩壊後、中国経済が安定成長の軌道に戻るとは限らない。目下の中国経済をみれば一目瞭然だが、失業率が上昇し、すでにデフレに突入している。

・最悪のシナリオは、政府がバブル崩壊を心配するあまり、デベロッパーを救済し、中国版異次元金融緩和政策を実施することだ。それによって、バブルの本格的な崩壊は先送りできるかもしれないが、マクロ経済の生産性の向上には寄与しない。

<役人の無知と知識人の無恥>
・結局、中国共産党は一党独裁の体制を堅持しているが、政府共産党が万能であるということは決してない。

<バブル崩壊への備えはできているのか?>
・不動産バブル崩壊のメカニズムは必ずしも解明されていないが、バブルは突然崩壊するものである。

<デベロッパーの連鎖倒産による金融危機>
・政府にとってもっとも心配しなければならないのは、デベロッパーの連鎖倒産が起こることである。

・中国で不動産バブル崩壊のリスクが囁かれるようになって久しいが、政府、国有銀行、デベロッパーと個人はいずれもきちんとリスクに備えてこなかったようだ。

<失速する不動産業界の将来>
・これまでの20余年間、中国経済にとって不動産業は間違いなく力強いエンジンだった。だが2023年に不動産バブルが崩壊し、中国経済は失速してしまった。習政権も有効な経済政策を打ち出せていない。

<中国経済が直面する「失われた20年ないし30年」>
・それに対して、中国の不動産バブルとバブル崩壊は、政府の失敗が引き起こしたものだ。中国政府は不動産開発を経済成長の牽引役として位置づけた。

・不動産投資は個人の自由として法的に認められている。不動産投資が過熱したのは、地方政府やデベロッパーの不正行為に加え、個人にとって機会コストが安いからである。

・日本のデフレは30年間続いたが、輸出製造業は順調に日本経済を支えていた。それに対して、中国には米中対立とサプライチェーンの再編という壁が立ちはだかる。

・実際のところ、不動産バブルは崩壊して、経済が回復する力は弱くなっているはずだ。国家統計局が正しい統計を発表しなければ、ポリシーメーカーは正しい政策を考案する根拠を持てない。このままいくと、中国は失われた20年ないし30年を喫する可能性が高くなる。

<絶望する若者たち>
<少子高齢化が深刻な社会問題に>
・公的な介護保険が整備されていない中国で、独居老人の多くは介護難民になっている。

・実は、一人っ子政策の解除に抵抗していたのは、まさにこの「計画出産委員会」だった。委員会は全国組織で約650万人の職員がいるが、一人っ子政策が撤廃されたらこれらの職員は失業してしまう、という本末転倒の主張がされていたのだった。

・出生率を押し下げるもう一つの要因は、子育てのコストが年々高くなっていることである。

<マイホームがないと結婚できない>
・さらに出生率の低下に拍車をかけたのが、不動産価格の高騰、すなわち、不動産バブルである。中国の若者は結婚の条件としてマイホームの購入を挙げる。

・しかし、我が子を支援する経済力のある親はまだいいほうだが、経済力のない親も少なくない。その子供はマイホームを買うことができないので、結婚を断念せざるを得ない。こうして結婚したくても結婚できない若者が増えていき、出生率はさらに低下してしまっているとみられている。

・中国経済の高成長は長らく、若くて教育された豊富な労働力、すなわち人口ボーナスによって支えられてきた。ところが2013年3月の習近平政権誕生以降、その人口ボーナスがオーナスとなっている。

・若者の失業率は高止まりしており、また失業していなくても、賃下げが実施されているため、不動産の買い控えが目立つ。中国の不動産市場は需要不足が長期化する可能性があり、サプライサイドの調整も必要であると考えられている。このような状況下で、中国の若者たちは大きな絶望に直面している。

<なぜ賃貸マンションは敬遠されるのか>
・それに対して、中国では不動産バブルの崩壊以降も、賃貸に乗り換える人が少なく、公営住宅も整備されていない。低所得層は住む家がなく、大都市の一角がスラム化している。

・中国の都市部では公営住宅が整備されていないだけでなく、民間の賃貸マーケットも大きく育っていない。

<資産形成としての不動産購入>
・総じていえば、中国人は自分が住む家としてマイホームを買う志向が強い。

・それに対して、中国人はリターンを求める傾向が強い、個人の金融資産は直接的ないし間接的に不動産市場に流れていき、不動産バブルを拡大させたといえる。

<伝統的な家族観は崩壊した>
・中国人の伝統的な生活様式と家族意識といえば、大家族と親孝行である。伝統的な祝祭日といえば、春節(旧正月)、清明節、中秋節などであるが、いずれも家族団らんのためのものであると考えられている。

・しかし、40余年間の改革・開放を経て、中国人、とりわけ若者の生活は西洋化しており核家族化も進んだ。中国社会では、伝統的な生活様式は徐々に消えていっている。

・かつて中国では、親孝行が儒教の美徳とされていた。今は、親に支援を仰ぐ若者が増えている。

<共産党統治体制への絶望>
・こうしたなか、中国はコロナ禍に見舞われた。中国政府は厳格な隔離措置を軸とするゼロコロナ政策を3年にわたり実施した。

・中国のエリート層は政府に対し不信感を抱き、コロナ禍が終息する前に自宅マンションを含めて保有する物件をすべて売りに出し、海外へ移住した。

・アメリカに密入国しようとする低所得層の多くは英語ができないはずである。アメリカに無事に着いたとしても、どのように生活をするのだろうか。

<「我々は最後の世代だ」>
・どこの国でもそうだが、中小企業はもっとも雇用に寄与するセクターである。中国政府が2023年7月に発表した同年6月の若者(16〜24歳)失業率は21.3%と前代未聞の高水準だった。それでも、この公式統計の若者失業率は、実態よりも低い数字だとされている。同時期に北京大学の張丹丹副教授は、中国政府が発表した若者の失業率に、実家に戻って生活している失業状態にある若者(約1600万人)を加算すると、実際の若者失業率は46.5%に達すると推計を発表した。若者の2人に1人は失業している計算である。2023年8月、中国政府は定義に問題があるとして、若者の失業率の発表を停止した。2024年1月には発表が再開され、2023年12月の失業率は14.9%と改善されたように見えるが、失業の定義が変更されていた。若者の失業問題がなかなか改善されず、社会問題化するのを心配したのだろう。

<拡大するジェネレーションギャップ>
・インターネットの普及も、世代間の溝を深めている。スマホが普及した中国では、ネット・ユーザーは10億人を超えている。多くの若者はSNSを利用して、さまざまな情報に接している。

・中国共産党は学校教育のなかで愛国教育を強化しているが、インターネットが普及した今は、毛時代ほど効果がないはずである。

・中国社会のジェネレーションギャップは、諸外国と比べても非常に大きいものである。60代以上の高齢者は毛時代に教育を受けており、いまだにマインドコントロールが解かれていない者が多い。

<貯蓄・消費・投資の特殊性>
<中国人は借金をしない>
・一方、中国は2022年時点での1人当たりGDPが1万2000ドル程度、世界ランキング68位であるにも関わらず、不動産価格は世界トップレベルになっている。

・中国の銀行はほとんどが国有銀行である。国有銀行は個人はもとより、民営企業にもほとんど融資をしようとしない。それゆえ、中国ではいまだにクレジットカードが普及していないのだ。広く使われているのはデビットカードである。

・銀行から借金をして消費するというのは、中国ではまだ一般的ではない。ある意味、中国の国有銀行が個人に住宅ローンを組むようになったのは、大きな進歩だったといえる。

<貯蓄に対するリターンを求める>
・中国では株式市場の設立後、何回かブームは起きたが、そのあと大暴落した。とくに個人投資家の多くは大損してしまい、株式投資のリスクが周知徹底された。

<賄賂は中国社会の潤滑油>
・腐敗で追放された共産党幹部には、数十戸ないし100戸以上のマンションを所有している人が少なくないが、彼らの正規所得でこれだけ大量の不動産を買えるわけがない。

<搾取されるだけの低所得層>
・この社会では富が下から上へ吸い上げられるスピードが予想以上に速い。中国の消費を牽引し支えてきたのは一握りの富裕層と中間所得層である。低所得層は搾取されるばかりで、なすすべはない。

・むろん、庶民はこんな贅沢な生活とは無縁である。中国の農家のエンゲル係数(食費÷消費支出)は依然50%以上である。都市部の住民の平均エンゲル係数も40%以上だ。2023年10月に亡くなった李克強前首相は在任中の記者会見で、中国には月収が1000元前後の人口が6億人存在すると述べたことがある。習政権は共同富裕を提唱し、貧困はすでに撲滅したと豪語しているが、少なくとも世界銀行と国連の基準では、中国貧困問題はまだ深刻な状況にあると言っていい。

・最近の消費者物価指数はマイナス推移となり、内需が大きく落ち込んでいる。経済成長の失速に拍車をかけているのは、習政権による民営企業への締め付けの強化である。同時に反スパイ法が改正・施行され、外国企業は中国にある工場をほかの新興国へ移転している。これらの動きのいずれもが、失業者を増やすことにつながっている。

<資金調達は借金か地下銀行>
・中国人の投資行動の特殊性について説明しよう。中国の金融市場は国有銀行によって独占されている。民間のプライベートセクターには旺盛な資金需要があるが、よほど強い担保資産を持っていなければ、国有銀行から融資を受けることができない。

・中国で、地下銀行がもっとも発達しているのは、民営の小規模製造業が多い浙江省や福建省などの沿海地域である。

・中国では一部の民営企業がキャッシュフロー管理に成功した。吉利やBYDなどの自動車メーカー、アリババやテンセントなどのビッグテック企業、滴滴出行(配車アプリ)、新東方(進学塾)などは目覚ましい成長を成し遂げた。

<ネットファイナンスの急成長>
・中国人のお金の貸し借りについて、近年大きな変化がみられる。従来は地域密着型がほとんどだったが、2000年代に入ると、インターネットを介して資金の融通が行われるようになった。P2Pと呼ばれるネットファイナンスである。

<右往左往する投資需要>
・なぜ中国人はリスク管理を粗末にしてまで利益を最大化しようとするのか。中国人が欲張りだからといわれると、そうかもしれないが、これまでの成功体験が背景にあるのかもしれない。

<責任は誰にあるのか?>
・中国の不動産市場はバブルとなり、すでに崩壊してしまった。むろん、バブルの形成や潰れ方は日米欧のそれとは異なるものになっている。

・不動産開発、あるいは都市再開発を推進することは国土計画の一環といえるが、経済成長を牽引するメインエンジンと位置づけるのは明らかに間違った行為だ。

・開発で中国の都市面積はどんどん拡張していく一方、農地面積は急速に減少していった。中国は食糧不足という潜在リスクに見舞われている。

<習政権にとっての「灰色のサイ」>
・習主席は過去に何度か「灰色のサイを警戒すべき」と呼び掛けたことがある。灰色のサイとは高い確率で起きる大規模な潜在リスクのことである。

・不動産バブルへの崩壊は単なる経済の問題ではなくて、習政権の経済運営と政治システムの力量を試される試金石になる。

<マネーゲームと金融危機>
<チャイニーズドリームの実現>
・さらに不動産絡みの政財界の癒着が横行している。習政権は腐敗撲滅を掲げ、数百万人の腐敗幹部が追放されたが、いまだに腐敗の根絶には至っていない。
 中国では不動産の証券化が遅れていて、不動産投資や投機については手段が限られている。

<中国人社会の横並び意識>
・では、富裕層以外の人々はどうだろう。そもそも、不動産価格の上昇を下支えしているのは、個人によるマイホーム購入の実需である。

・1戸しか不動産を購入していない個人は、失業したり給料が減額されれば、必然的にマイホームのローン返済が滞ることになる。中国語で「断供」(ローンの返済ができなくなること)といわれるもので、そのリスクが日に日に現実味を帯びてきている。

<金融機関がバブルを助長した>
・この不動産開発と不動産投資のバリューチェーンのなかで、バブルを助長する役割を果たしたのは国有銀行を中心とする金融機関だった。

<人民銀行は政府に「忖度」する>
・だが、実際には人民銀行が、首相の政府活動報告が示す指針を踏まえ、政府共産党の政策方針に「忖度」することが往々にして起こる。

<中小零細企業の危機>
・失業率が上昇し、消費が冷え込み、需要が著しく委縮しているなかで、貸し渋りと貸し剥がしも増加している。

・中国でもっとも流動性不足に悩まされているのは中小零細企業である。中国では、中小企業信用保証制度が整備されていない。

<中国の金融政策が鈍い理由>
・日本銀行はFRBほどダイナミックな政策変更を行っていないが、アベノミクスの成長戦略を援護射撃するために、マイナス金利と異次元の金融緩和政策を実施してきた。それに対して、中国人民銀行の金融政策は想像以上に鈍い。

・問題はコロナ禍以降だ。中国の景気は予想以上に落ち込んだうえ、不動産バブルが崩壊した。にもかかわらず、大幅な金利調整が依然として行われていない。

<不良債権が生まれる構造>
・そもそも国有銀行のバランスシートは、絶えず不良債権が生まれる構造になっている。国有銀行の主な融資先は国有企業だが、国有企業は借りた資金を契約通りに返済せず、利払いが滞ることが多いのだ。

・たとえ国有企業の業績が悪いと知っていても、国有銀行は融資を行わざるを得ない。

・なによりも不動産バブル崩壊が原因で生じる不良債権について、政府は財政資金をもって直接補填することができない。結果的に、国有銀行の収益性が下がり、金融システムリスクが高まる恐れがある。

<情報統制で金融危機は防げるか?>
・局所的な金融危機は絶えず起きているが、中国の金融システム全体が危機に陥る可能性は今のところ高くないと思われる。

・このような中国政府の情報統制によって、金融危機は局所的なものに留まることが考えられる。もっとも危機に陥りやすいのは中小国有銀行である。

・重要なのはすでに不良債権になっている資産を処理して、新たな不良債権が生まれないように、金融監督を強化することである。しかし、それは簡単な作業ではない。国有銀行への融資は一定の割合で不良債権化する構造になっているからだ。

<イデオロギーの呪縛>
<誰もが貧しく平等だった時代>
・20世紀の三大暴君、毛沢東、スターリン、ヒトラーのうち、もっとも多くの犠牲者を出したのは毛沢東だった。犠牲者数もさることながら、毛の一番の罪は、その統治時代に中国の文化を根こそぎ破壊してしまったことだった。とくに最後の10年では、文化大革命が引き起こされ、学校の先生などの知識人が多数殺されてしまった。

・毛が死去した1976年の中国経済は破綻寸前にあったとされる。実際は破綻していたのだが。

・毛時代、人々の生活は想像以上に悲惨なものだった。極端な物不足に陥り、都市部では配給制が取られていた。農村では配給すらなく、芋などで飢えを凌いでいた。

<毛沢東は教祖だった>
・毛はマルクス主義を信奉する共産党指導者ではなくて、教祖のような存在だったのだ。

・1978年、搶ャ平をはじめとする長老たちが毛の政治を総括した際、毛を祭壇から下ろして政治指導者と位置付けた。政治指導者だからミスも犯したということにしたのだ。

・むろん、中国を強くするために、習主席は共同富裕の夢を実現して、貧困を完全に撲滅する必要があるのだが。

<搶ャ平の「猫理論」>
・40年前、改革・開放政策をはじめるにあたり、搶ャ平は「猫理論」を提唱した。「白猫だろうが、黒猫だろうが、ネズミを捕る猫がいい猫だ」とする、リアリストの搶ャ平らしい考えだった。

・晩年の毛は学校教育をすべて停止させ、大学に進学する若者は試験で合格者を選ぶのではなくて、労働者と農民出身の若者を推薦で選ぶことにした。

<中国経済がぶつかっている壁>
・中国経済がぶつかっている壁はまさに共産党指導体制と財産の公有制である。習政権は壁を回避しようとしているが、共産党指導体制を強化し、公有制を堅持していくと、かつての毛沢東時代と同じように経済成長は停滞していく。経済成長が停滞すれば、結局のところ、共産党指導体制が弱体化するというジレンマが生じる。

<習主席の「共同富裕」の夢>
・問題は、中国では生活保障を中心とする社会保障制度が十分に整備されていないことだ。本当の意味での共同富裕を実現させるものであれば、所得を単に平等にするだけでなく、低所得層の生活保障も強化しなければならない。

<富は権力に集まる>
・中国で格差が急拡大したのは、単に経済成長が速すぎたからではない。格差の拡大をもたらした本源的な原因は、富の配分が権力の中心を軸に行われていることである。権力の中心にもっとも近いのは共産党高級幹部だ。

・図14に示したのは、中国国家統計局が公表しているジニ係数である。ジニ係数は所得格差を表す指標で、0.3程度であれば、社会不安が起きないといわれている。0.4以上に達すると、社会は極端に不安定化する恐れがある。少なくとも中国社会の現在のジニ係数は、とっくに臨界点を遥かに上回っている。

<不動産市場の歪み>
・バブルの始まりは、中国の不動産関係が市場経済化したことだった。

・個人投資家と機関投資家は一攫千金の夢をみて不動産投資を行い、ルールを無視する特権階級は不正行為により大儲けした。そのなかで地方政府も巨額の財源を得た。

・したがって、開発が頓挫する可能性が高くなるのは、デベロッパーが資金流用などの不正行為をおこなった場合である。また、市場の需給を見誤り、物件の販売が思うように進まないのはやはり問題である。

<心配されるバブル崩壊の後遺症>
・これから心配されるのは不動産バブル崩壊の後遺症である。不動産バブルが崩壊すると、政府のバランスシート、国有銀行のバランスシート、デベロッパーのバランスシート、一般家計のバランスシートのいずれもが影響を受けることになる。経済成長の減速を習政権は認識しているはずだが、不動産バブル崩壊の後遺症の深刻さについては、十分に認識しているかどうか定かではない。

<共産党一党独裁と市場経済は両立できるか?>
・では、共産党一党独裁の政治体制と市場経済は両立できるものだろうか。今までの経験と理論的な分析を踏まえると、両者は水と油の関係にあり、両立できないことが明々白々である。

<統制と自由化の間で>
・中国経済はアメリカ経済に追いつき追い越すと、マスコミでは一時期話題になった。しかしながら、現在の習政権の政策運営を続けたままでは、中国経済がアメリカ経済を凌駕することはないだろう。

<コロナ禍が遺したもの>
<ゼロコロナ政策の混乱ぶり>
・コロナ禍化による人々の生活への影響についても、これからの分析が持たれる。とくに中国ではコロナ禍に対処するため、暴力的ともいえるゼロコロナ政策が3年にわたり実施されていた。

<海外に移住する中国人が急増>
・一方、富裕層、中所得層、低所得を問わず、海外へ移住しようとする中国人は急増している。中国の富裕層にはもともと、欧米諸国の永住権を持っている人が多い。彼らは複数の不動産を所有しており、物件を売りに出して、それで得た資産を海外に送金している。

・低所得層の人々の一部も中国での生活に失望し、限られた現金を持って海外に移住しようとしている。中国のパスポート保持者にビザを免除している中南米の国へ出国し、陸路でメキシコを経由しアメリカへ密入国することが多い。

<市場経済は「信用」の経済>
・統制された計画経済は、政府の権力の強さによって成り立っている。強権的な政府がなければ、経済計画の目標は達成されにくいと考えられている。

・中国は2001年にWTOに加盟したが、世界主要国はいまだに中国を市場経済国と認めていない。これについて、中国政府は先進国による差別だと反論している。

<契約関連のトラブルが多発>
・中国では賃貸のマーケットが育っていない。その原因も、契約がきちんと履行されないことにある。

・業界内でもトラブルが絶えない。デベロッパーからの、下請けの建設会社や工務店に対する支払いが滞ることが増えている。

・不動産開発および不動産取引をめぐるトラブルは、単なる不動産業の問題ではなく、中国社会に内在する信用危機の表れと理解されるべきである。中国では共産党一党独裁の政治が堅持されているため、野党が実質的に存在しない。マスコミは政治を批判することができないため、ガバナンスが機能していない。不動産関連の理財商品で大損を食らった人々は、裁判所や政府機関に訴えても聞き入れられることはない。マイホームを購入したものの、いつまで経ってもマンションが完成せず、途方にくれている人々もいる。不動産バブルの崩壊は中国の社会危機の縮図であるといえる。

<スマホを使った大規模な監視システム>
・中国はIT大国であり、インターネットの利用者は10億人を超えている。そのほとんどはパソコンではなく、スマホを使ってインターネットにアクセスしている。中国政府は地場のベンダーが開発したソフトを利用し、人々の行動を厳しく監視している。これほど大規模な監視システムの導入と実験は、人類史上はじめてのことである。

・政府部門にとって現場での混乱は重要なことではない。人々の行動さえ追跡できれば、それでいいと考えているはずだ。結果的にこの監視システムは、人々の行動を監視する意味では期待以上の効果を発揮した。

<「良薬苦口」を忘れてしまった習近平>
・習政権政権執行部から聞こえてくるのは毛時代のスローガンばかりである。とくに問題なのは、習政権のメンバーたちが現場の実地調査よりも、習主席の意向を重視していることだ。独裁政治でよく見られるが、指導者に対する「個人崇拝症候群」のようなものである。

<習主席が「安全維持」を連発>
・中国政府にとって一番の不安は、人々の不満が予想以上に増幅し、政府への抗議活動が起こることである。

・今の中国社会は乾ききった大草原のようなもので、少しの火花でも、大規模な山火事へと発展する恐れがある。前にも述べたが、中国で国防費以上に増えているのは社会治安維持費である。

<消費者は見捨てられる>
・それに対して中国では、消費者が法に訴えても、多くの場合は問題が解決されない。会社の経営者が共産党幹部や裁判所と結託しているからである。結局、中国人は法に訴える代わりに、北京の中央政府に「上訪」(陳情)する人が多い。

・民主主義国であれば、政府はまず個人を優先して保障する。しかし、民主主義の選挙が起こなわれていない独裁国家では、個人に対する保障は後回しにされがちである。社会はますます不安定化し、治安維持費は積み上がっていくだろう。

<バブルはつかの間の夢だった>
・マンション投資を行っていた人たちにとって、不動産バブルの崩壊は悲劇の始まりだった。これまでのサイクルが崩れて、新規のローンを返済できなくなったからである。

<すでに経済恐慌に突入している>
・不動産バブルの崩壊で苦境に陥ったのは、不動産投資を行っていた人々だけではない。大学を卒業した若者は毎日のように就職説明会に参加するが、どこからも内定をもらえない。大企業も人員削減を行っているとの情報が、SNSなどで広がっている。なにより、地方政府も公務員の賃下げを行っている。

・経済学の観点から見て、現在の中国は経済危機というより、すでに経済恐慌に突入しているといえよう。3年間のコロナ禍と不動産バブルの崩壊は、中国人の生活水準を予想以上に大きく下げた。

<習近平政権の正念場>
<同窓会で見栄を張る中国人>
・中国人社会のトラブルでもっとも多いのは、見栄を張ることに起因する嫉妬と恨みによるものである。

<習政権が進める腐敗撲滅>
・毛沢東の政治は中国の歴史において暗黒の時代だったと、歴史学者たちは結論付けている。

・そんな時代ももはや過去のことだ。習近平政権にとっての正念場は、中国人の見栄を張る国民性、とりわけ共産党幹部の贅沢三昧な生活態度との闘いである。

・不動産業界をみると、デベロッパーは土地の入札、不動産開発と販売、銀行との付き合いの過程で、共産党幹部への贈賄を続けている。共産党幹部に賄賂を贈らなければ、不動産開発を成功させることができないからだ。

・独裁政治の特徴は恐怖による支配である。毛沢東時代でも、今の中国社会でも、密告は奨励されている。

・中国の社会・経済・政治は、爆発するか滅亡するかの岐路に立っている。不動産バブル崩壊をきっかけに、中国人の真価が問われているといえる。

<すべての価値判断がお金になった>
・それに対して、中国では「愛国」を口にしないと、売国奴と罵られる恐れがある。学校や職場などでは盛んに愛国者教育が行われている。筆者が小中学校のころは、毎日のように「国を愛する、毛沢東を愛する」と教わった。

・一方、中国では、自分の給料を人にいうことにあまり抵抗がない。互いに相手の給料の金額を尋ねることもよくある。

・中国社会の富は上から下への配分が遅い。逆に、下から上には激しく富が巻き上げられていく。その結果、所得格差は年々拡大し、社会不安がもたらされている。

・日本では30年前に経済バブルが崩壊したが、日本政府はプライオリティを決めるのに時間をかけすぎて、スピ―ド感に欠けた対応をとっていたのが反省点だった。ここ数年の中国政府も、経済の減速ぶりに対して、政策決定のスピードが明らかに鈍い。

<失われたアイデンティティ>
・変化が起こったのは毛時代だった。文化大革命により、中国の古典文化は根こそぎ破壊され、人々は中国人としてのアイデンティティを失っていった。

・毛時代にはほとんどの古典文化が破壊されたが、実は一つだけ、重要な文化が生き残っていた。それは中国人の食文化である。

<お金、人材、技術が流出している>
・コロナ後も中国経済は回復せず、海外旅行に行く中国人は予想以上に少ない。一方、海外へ留学する中国人学生は増えている。

・現在、中国社会のほとんどのベクトルは海外へ向かっている。

・一方、中国では不動産バブル崩壊後、お金も人材も技術も、どんどん海外へ流出している。サプライチェーンが再編され、外国企業は相次いで工場を海外へと移転している。

<習政権の深刻な欠陥>
・まず、目下の景気減速は、政策ミスと構造的な原因によるところが大きいと思われる。具体的には、3年間のコロナ禍、民営企業に対する締め付け、反スパイ法によるサプライチェーンの中国離れ、米中対立によるデカップリングの加速などを挙げることができる。
 一方、不動産バブルが崩壊したにもかかわらず、北京のポリシーメーカーはそれにきちんと対処していない。

・さらに深刻なのは、当局が都合の悪い経済統計を公表しなくなったことである。

・オーソドックスな経済分析では、中国経済はここまで急減速しないはずだと考えられていた。中国経済のファンダメンタルズはさほど悪くなっていない。にもかかわらず、経済にここまで急ブレーキがかかっているのは、明らかに政策のミスと制度の運用面の問題によるところが大きいと思われる。

<中国は世界経済のリスクに>
・おそらく世界の習政権を見る目が大きく変わったのは、2018年の憲法改正がきっかけだった。

・中国市場はかなりのレベルで開かれた市場になっており、世界経済の一部になっている。中国がくしゃみをすると、世界経済は風邪を引くとされている。そのような事態をなんとか防ごうと、デリスキングが提案されている。

<斬新な技術革新が生まれない>
・2018年、米中貿易摩擦が勃発してから、米中デカップリングが進んでいる。長い間、中国はアメリカにとって最大の貿易相手国だったが、今はメキシコとカナダに抜かれて3番目に落ちた。アメリカがリスク低減を図った結果である。
 習政権はG7による経済制裁の影響を回避するため、外需が落ち込んだ部分を内需によってカバーしようと、国内循環型経済への移行を推進している。

<国際社会の連携が必要不可欠>
・習政権がもっとも恐れるのは、政権への不満と社会不安である。それを助長するのは経済成長の急減速だ。目に前にある一つのヤマは、不動産バブルの崩壊である。

・ここで強調しておきたいのは、米中が新冷戦に突入したために、国際機関の機能がほとんど低下してしまっていることだ。

<チャイナ・リスクに備えよ>
<不動産バブルは蜃気楼だった>
・最終的な結論をいえば、不動産バブルは蜃気楼のようなものだ。バーチャルリアリティーのようなものともいえるだろう。

・中国で膨らんだ不動産バブルも、同じような蜃気楼だった。36年前、海外へ留学する中国人は、中国銀行で50ドルしか両替できなかった。今は、1人につき1年間で5万ドル(約750万円)の外貨を買うことができる。

<習政権にとっての試金石>
・最後にもう一度、バブル崩壊後の現状を整理しよう。一部の家庭は不動産ばバブルの崩壊によって債務超過に陥った。多くのデベロッパーも債務超過に陥り、政府の救済がなければ倒産する運命にある。国有銀行を中心に、金融機関は巨額の不良債権を抱えることになる。地方政府は土地財政の財源を失って、社会保障基金の不足分を補うことができなくなるかもしれない。地方政府が設立した「融資平台」の多くは、債務超過に陥っているとみられている。中国政府は不動産バブル崩壊の後処理にあたり、その債務連鎖をどのように断ち切って、影響を最小限に留めるか、まだ答えを導き出せていない。

<中国史の「40年の呪縛」>
・結論をいえば、不動産バブル崩壊は40余年間続いた改革・開放政策の終わりの始まりを意味するのかもしれない。歴史家によれば、中国の長い歴史を振り返っても、繁栄期はほとんど40年を超えることがなかったという。

<日本もチャイナ・リスクに備えよ>
・問題は、日本企業は完全に中国から撤退する、いわゆるゼロ・チャイナを進めることができないということだ。

・したがって、日本企業はウィズ・チャイナの戦略、すなわち、中国市場でのビジネスを続けながら、中国市場の縮小を補うために、第三国の市場を開拓する戦略を強化する必要がある。

<あとがき>
・インターネットでの情報検索は日課になっているが、その情報の信憑性を確認するのにいつも苦労する。

・他方で、中国経済に対するニーズは高まっている。政財界から「中国経済はこれどうなるなるか」といった質問が多く寄せられる。そのニーズにどのようにして応えるか。研究者として毎日、苦悩している。




(2023/9/12)


『中国経済崩壊宣言』
石平、高橋洋一  ビジネス社  2023/8/1



<数字が証明する中国経済崩壊宣言!>
・劉教授は「ポストコロナ」において中国の経済回復は思うとおりに進んでいないことを認めたうえで、その問題点として次の「5つの20%」を指摘した。
@ 若年層失業率が20%を突破したこと
A 工業企業の利益が前年同期比で20%近く落ちたこと
B 地方政府の土地譲渡金収入が前年同期比で20%減ったこと
C 不動産の新着工面積が前年同期比で20%減ったこと
D 消費者信頼感指数が20%以上も落ちたこと
それらの問題点を根拠に、劉教授は「中国経済はすでに自己回復能力
を失っている」と分析し、中国経済の今後に対しては極めて悲観的な見方を示した。
彼のいうとおり、「中国経済はすでに自己回復能力を失っている」の
であれば、この巨大国家の経済沈没は最早避けられないのではないか。

・こうしてみると、現在の中国の経済状況といえば、輸出もダメ投資もダメ、失業者が溢れて消費が消失している最中であり、まさに絶対絶命的な状況に追い込まれ、崩壊の真っただ中にいるのである。

<崩壊しかない無残な中国経済の数字>
<簡単なごまかしさえ放置する統計局>
・石平:高橋先生との対談本は今回で4作目となりますが、先生には以前から「中国経済崩壊論をいうのは10年早すぎた」と言われていました(笑)。
高橋:そう、中国経済崩壊論じたいが間違いなのではなく、言うのが早すぎたということです。しかしここのところの中国経済を見ていると、まさしく石平さんの言うとおりになりつつある。今こそ中国経済崩壊論を唱える絶好のタイミングです。

・石平: 自分たちの数字のウソを辻褄の合うようにするという最低限のことさえやらなくなりました。

<中国財務省が23年第1四半期のマイナス成長と発表>
・石平:この一連の財務省の数字は国家統計局より信憑性があります。どう考えてもマイナス成長でしょう。
高橋:確かにマイナス成長っぽいですね。

<投資が中国のGDPの半分近くを占めるカラクリ>
高橋:中国の統計が異常なのは、消費税の割合が異様に低いことです。普通の国なら消費はだいたいGDPの6割。それが4割にも達しないことを中国は投資が大きいからと解説する向きがありますが、無理がある。
石平:中国ではこの20年間、消費率はずっと4割未満でした。
高橋:途上国の経済問題を分析する経済学の一分野に「開発経済学」という学問があります。途上国の貧困や飢餓、栄養失調、失業、低賃金労働、低教育水準、女性差別、乳幼児や妊婦の高い死亡率、HIVやマラリアなどの感染病の蔓延、環境問題や水問題、汚職、貿易政策や債務問題など、幅広いトピックを扱うのですが、この学問からすると、中国では国内消費が十分に育っていないと見なせるわけです。

・高橋:単純に一国が豊かになるということは国民の消費が増えることとイコールです。国民が貧しい国を豊かとは誰もみなさないでしょう。したがって、消費の割合はだいたい6割ないとおかしい。
石平:中国経済の持つ歪な構造がここでわかりますね。
高橋:だから中国経済は投資で持たせているように見える。
石平:22年の固定資産投資総額は57兆2130億元。全体のGDPに占める割合は約47%になっています。
高橋:投資のほうは普通の国なら2割ぐらい。消費も投資も割合が異様です。

・石平:現に中国の投資のなかでいちばん大きかったのはやはりインフラ投資。22年のインフラ投資は9.4%でした。ウソか本当かは別として、何とか中国経済を3%成長させようとすると、結局、インフラ投資に頼らざるをえないわけです。
高橋:とすると公共投資をがんがんやって無駄なものをどんどんつくっていることになります。本来、公共投資では社会便益が投資コストを上回るものしかやらないのが大前提です。

・石平:ゴーストタウン(鬼城)をせっせとつくっているわけです。

<中国経済の実態をつかむには貿易統計がいい>
・石平:中国では消費と投資と輸出の3つが中国経済を引っ張っていく「3台の馬車」と呼ばれています。

・高橋:輸出が大きくなることはときどきあるのでまだわかります。自国通貨安に誘導して輸出ドライブをかければいい。それはありえるとしても、やはり投資の割合がそんなに大きいのは、異常です。裏を返すと、消費がそこまで少ないということもありえません。
石平:構造的に見たら、やはり中国の消費が徹底的に不足している。

・高橋:いずれにせよ、中国の統計であっても輸出入の数字だけはけっこう信頼できる。というより、唯一信用できるのが輸出と輸入の貿易統計しかないということです。

<失業率の高さで成長率の低さはまる見え>
・高橋:GDPと深い関係があるのが失業率です。「オークンの法則」といって、経済成長がないと失業率が高まることを証明したのです。

・石平:共産主義の中国が「失業者」の存在を認めていることじたいが、前進だといえるかもしれません(笑)。

・高橋:やはり正しい失業率は発表できないと思いますね。中国では、GDPも失業率も国家統計局が発表していますが、失業の統計を出すセクションとGDPの統計を出すセクションを分けるのが国際基準です。

・高橋:GDPと失業率の場合、独立している別々の役所の発表する統計がオークンの法則で連動しているからこそ、どちらの統計も信用できることになります。中国の場合、GDPと失業率の数字はやはりオークンの法則からちょっとずれている。それで私は中国の失業率にはちょっと怪しいところがあると言ったのです。

<働き場を失った若者たち>
・石平:国家統計局は23年第1四半期の成長率を4.5%増だとする一方で、同時期の16歳から24歳までの失業率を19.6%、4月は20.4%と発表しました。4月の数字は2018年以降で最も高い失業率です。オークンの法則からしたら矛盾する数字です。
 さすがに中国政府も失業率に関しては、多少は真実に近づいている数字を発表するようになったのではないでしょうか。
高橋:それでもまだごまかしている感じがあります。とはいえ、20%前後の失業率は間違いなく高い。ごまかしてもそのレベルになっているとしたら、中国の失業はかなり深刻です。オークンの法則によれば、若者の失業率の高さからすると、成長率がマイナス成長になっていても不思議ではありません。

・石平:いずれにせよ近年、中国では毎年1000万人もの大学生が卒業していますが、そのうち就職できる大学卒業生はおそらくその3分の1になるかならないかというところです。

・石平:毛沢東時代なら失業の解決策として都市部の知識人や知識青年たちを農村で働かせるという「下放運動」が行われました。習近平自身も下放されたことは周知の事実です。
 実は今、広東省がこれを行っています。23年から30万人の若者たちを動員して農村に行かせる「下郷運動」です。
高橋:しかし若者が送られる農村でも失業問題に悩んでいる。
石平:むしろ失業問題が最も深刻なのが農村部なのです。農村部の若者たちは、ほとんど耕す土地もないため、いわゆる「農民工」となって大量に都会に出ています。農民工は今の数字でも2億5000万人くらいいる。

・石平:中国では再び「露店経済」が脚光を浴びてますよ。露店経済というのは、2020年にコロナ感染が始まって経済が悪化したときに、当時の首相だった李克強が言い出したことです。「失業者には仕事がないから、みんな勝手にどこかに露店を出して、何でも売って食べていけ」と。

・石平:露店経済は大量の雇用を生むこともないし、安定した収入や安定した仕事を保障するものではありません。だから、このままでは経済が落ち込んでいったら、中国では大変な社会的大動乱が起こるでしょう。

<粉飾統計は中国の国技>
<ソ連も6割水増ししていたGDP>
・石平:中国がGDPでいったんウソをついた以上、その後もずっとウソの上塗りをし続けなければならない。いわば無間地獄です。
高橋:共産主義国の実態を見破るのは非常に難しい。ソ連のときもそうでした。ソ連は70年間、統計をごまかし、それがウソだったことはソ連が崩壊してようやく明るみにでました。

・石平:逆に言うと、ソ連が崩壊するまでノーベル賞を取った経済学者ですら、統計の偽造がわからなかった。その意味では偽造は完璧だったわけで、ソ連が出した数字が全部ウソであっても、専門的にはウソの辻褄がきちんと合っていたということでしょう。
高橋:やはり偽造統計を見破るのは非常に難しい。騙されるのが普通ですよ。しかもソ連が行っていた偽造は半端なレベルではありません。ソ連が崩壊してみて初めてわかったのは、そのGDPは実は偽造統計の4割ほどしかなかったということです。つまり偽造統計の数字の6割減が正しい数字だったのです。
 ソ連の公式統計によると、1928年から1985年までの国民所得の伸びは90倍。ところが実際には6.5倍しかありませんでした。平均成長率に至っては8.3%も成長しているとされていたのに実際には3.3%しかなかったのです。こうした事実もソ連が崩壊して明るみに出たのです。

・高橋:ソ連のGDPは全部ウソだったため、ソ連の後継国家となったロシアにもソ連時代のGDPのデータが全くないのです。つまり、ソ連ではずっとGDPのデータはあったのにロシアではそれを全部消してしまいました。ロシアのGDPのデータは1992年以降のものしかありません。
石平:とすると、ロシアのGDPのデータは約30年分しかないわけですね。

<中国は偽造統計のやり方をソ連に学んだ>
・高橋:そのまま残ったソ連式のシステムの1つが統計のやり方です。中国は統計のやり方を社会主義国家の先輩であるソ連に学んだのです。
 当然ながら、ソ連の統計のやり方には偽造統計も含まれていた。

・石平:ソ連のように中国共産党による政治体制が崩壊しない限り、中国政府の発表するGDPがどの程度正しいのかはわからないということですね。

<ウソの統計で自らの首を絞める中国政府>
・高橋:中国の統計にはそういう数字の手直しがよくあります。コロナの統計でも患者の数などをいつもこっそりと直しているんですよ。しかもコロナ患者の集計方法もころころ変えます。本来、そんなことをしてはいけない。

・高橋:GDPに話を戻すと、中国の場合は6割増しをしている可能性が高いでしょう。10と言っているのが4だとすると、中国政府はGDPを倍以上に膨らませてきたのです。ソ連もそうでした。
石平:改めて言うと、統計では中国もソ連と全く変わらない。だから中国のGDPの成長率の数字はウソであって、当然、毎年の成長率で計算した中国経済規模もウソであるということですね。

<習近平に忠誠を誓う日本人・中国研究者の異常な反応>
・高橋:私は中国の統計がウソであることは以前からわかっていました。それで『中国GDPの大嘘』という本を書いて2016年4月に出版したら、抗議がどんどん来た。

<単身での訪中はハニートラップOKの合図>
・高橋:やはりハニートラップですね。私はいろいろなところで、中国のハニートラップに引っかかった日本人の話を聞いてきました。中国によく行っているのに中国の女性の話だけはしない人を知っています。だから私は、その人はハニートラップにはまっているかもしれない、怪しいと睨んでいるのです。

・高橋:また、自民党には中国人の女性を秘書にしている参議院議員もいます。その中国人の秘書は国会の通行証を持っているので、国会のほとんどの場所に自由に行くことができます。

<夜の明かりで中国のGDPのウソが見抜ける>
・高橋:中国の発表するGDPはウソだという話をしてきました。関連した話をすると、中国のような独裁国家が自己申告しているGDPの数字が正しいのかどうかが、衛星で測ったその国の夜間照明から判断できる、という研究も行われています。

・高橋:今も衛星から夜の地球を見ると、アメリカ、日本、韓国などが明るいのに対し、北朝鮮には全く光がなく、中国もそれほど明るくありません。

<不動産バブル、本当の恐怖>
<使用権だけで取引する異常>
・石平:去年の中国経済の異変では不動産投資が大幅にマイナス成長となったことが挙げられます。前述のように22年1年間の不動産投資は前年比で10%減でした。どうして不動産投資が減っているのかと言うと、特に住宅が売れなくなってしまったからです。
 国家統計局の発表では去年1年間で中国全国の住宅の販売面積は24.3%減、売上総額は26.7%減。どちらもいきなり20%以上減っています。これがけっこう大きいのです。
高橋:大きいですね。経済のマクロ的な崩壊かもしれないという感じがします。
石平:中国では不動産業が中国経済の支柱産業だと呼ばれてきました。
高橋:ただし中国の土地は全て国有ですね。だから中国の不動産業は土地の使用権の販売だけ成り立っています。

<日本とは全然違う不動産バブル>
・高橋:中国でも不動産バブルが起こりました。
石平:最初はみんな自分が住むために不動産を買ったのです。ところが、しだいにお金を生む道具として不動産をとらえるようになり、2軒も3軒も買い始めました。

・石平:中国の不動産市場が繁栄してきたのは、個人の家計がみんな銀行から借金して住宅を買うようになったからです。

・高橋:一応、中国の人口は14億人とされていますね。それなのに34億人分の住宅があるなんて、中国らしいと言えば中国らしい。しかし必ず限界が来てしまいます。

・石平:本当の土地の取引かどうか同じ不動産バブルでも中国と日本では様相がずいぶん異なりますね。日本ではいくらバブルが崩壊しても土地は残ります。中国はもうバブルそのものです。

・石平:しかし最近では新規分譲マンションがもう売れなくなってきました。同時に価格ももう上がりません。経済状況も悪くなって、値上がり期待で2軒、3軒も買っている人もそのローンを払いきれなくなっています。それで、仕方なく値下げして売ろうとしても、今度は誰も買ってくれません。
高橋:弾けるときが必ず来るからバブルなのです。

<全国民が「負債の時代」>
・石平:中国のバブルは債務問題の視点からも見ることができます。
 中国社会科学院の研究員で国内でも著名な経済学者が今年4月11日に、「今の中国経済ではデフレがすでに始まっており、これから衰退の局面に入る」と発言し、「全国で7億人が負債を持っており、中国が全国民の負債の時代になった」ことをデフレになる最大の理由に挙げています。
7億人の負債というのは老人や子供などを除いた普通のサラリーマンみんなが負債を負っているということです。
 また、彼は「今の中国の家計の負債率(収入に対する債務)は137.9%にも達している。負債が多いとされるアメリカ人でさえ負債率は90%程度だ」と述べています。

・石平:みんながどんどん借金をしてきたのも大半は不動産購入のためでした。それでも不動産価格はまだ非常に高い。だから負債に対する名目上の財産もまだあるわけです。しかし不動産価格が大幅に落ちてしまったら、もう負債だらけの世界になってしまう。
高橋:遅かれ早かれ、そうなりますね。

<バブルが弾けない理由>
・高橋:しかし不動産バブルを維持することは可能なのです。銀行のほうで不動産開発業者にずっとお金を貸し続ければいい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます。

・高橋:不良債権があっても中国政府が「不良債権など一切ない」と言い、銀行も「不良債権はない」と言い切るのであれば、砂上の楼閣がずっと続いていくはずです。

・石平:日本では背任になる方法でも中国では許されているから、それで何とかバブルを維持できるということですね。
高橋:維持できるはずですよ。

<マンション建て替えという不動産市場維持の苦肉の策>
・石平:実際、中国の不動産の新規の販売面積は激減しています。22年は前年比で19.9%、さらに23年1月から3月の販売面積は、前年比で26.8%も減少しました。もうみんな買わなくなってきています。

・高橋:新規の不動産がほとんどなくなると、GDPも減る。
石平:例えば2020年を例に取ってみても、1年間の不動産投資がGDPの14%をつくり出しました。波及効果も大きいわけです。

<土地譲渡金がなくなって地方政府の財政も大打撃>
・石平:中国の地方政府の大半が財政の半分以上を土地譲渡金で賄っています。不動産開発業者が不動産をつくらなくなると、当然、土地もいりません。土地譲渡金を払わなくなって、地方政府も破綻します。

・高橋:バランスシートの問題で、資産があれば債務が大きくても別に大したことはありません。資産と債務の差が問題であり、GDP比は重要ではない。けれども、たぶん中国の地方政府には資産がないでしょう。資産がなくて借金だけでGDPの3倍もあるとすれば問題です。

・石平:地方政府の財政収入に対してそれほどの債務があるうえ、さらに今後収入が大幅に減るのはやはり収入の大部分が土地譲渡金だからです。

・石平:中国でいちばん大きな税金である増加税のほとんどは中央政府が持っていきます。そうしたお金は中央政府が軍備拡大や治安維持などに使い、一方、都市の維持や最低限のインフラの維持、ライフラインの維持などの費用は全部、地方財政が負担しなければなりません。
 にもかかわらず、土地譲渡金が減少の一途となれば、地方政府の財政は火の車。今や地方政府が破綻したら中国全体が完全に行き詰まるというところまで来ています。

<卵を産む鶏を殺すような政策をとる地方政府>
・高橋:しかし地方政府を破綻させるかどうかも中央政府で決めることができてしまうのではないですか。これもバブル同様、地方政府が破綻していても破綻していないという言い方になるでしょう。おそらく中央政府はすでにそう決めていると思いますね。

・高橋:現に中国の企業には共産党員が派遣されています。はっきり言えば、地方政府はその共産党員を通じて民間企業から資金を召し上げる仕組みをたくさんつくれるわけです。

<外資からの収奪で延命>
・石平:ここまでの対談をまとめると、大事なポイントの1つは中国のGDPはウソであることがほぼ確定したということです。成長率自体もウソで、おそらく本当の経済規模は発表の数字よりも何割かは少ないのです。
 もう1つは中国は不動産バブルが支える経済で、そのバブルは日本と全く違う次元のものだということです。
石平:しかも経済を崩壊させないためにはバブルを維持する以外ないのに、その一方で不動産投資も完全にダメになります。あるいは14億人の、その打撃はさらに大きい。ならば、中国経済はほぼ永久にマイナス成長になるしかありません。

・高橋:確かに今までは外資企業が入って来ています。
石平:中国では目下、外資を含めて民間企業が中国の雇用の7割くらいを生み出しているのです。国有企業あるいは国家部門の雇用はせいぜい3割くらいなので、これから習政権の直面する最大の致命的な問題は大量失業ということになるでしょう。

<人口減少はごまかせない決定的証拠>
<中国人の利用急増で日本の国民皆保険が破綻>
・石平:中国の社会保障制度は1つが医療保険で、もう1つが年金です。ただし都市部と農村部でも違っていて、農村部には社会保障制度はほとんどありません。
高橋:医療での日本のような国民皆保険制度もないわけですね。
石平:医療保険に関しては、中国の体制内の人々、つまり社会主義体制の国家公務員や共産党幹部にはちゃんと適用されています。都市部の国有企業の従業員もそうです。

・高橋:不正利用は論外ですが、正規の制度でも、普通の国では、外国人の短期滞在者にはその国の公的保険を使わせるのではなく民間保険を利用してもらう。そうでない日本は、短期滞在の外国人に皆保険が食われています。
 恐らく今後、日本の皆保険目当てに安い航空運賃で日本に来る中国人がどんどん増えていく。

・高橋:日本でもそれがこれから問題になるでしょう。やはり他国のように外国人には民間保険に入って日本に来いと言うべきです。
 また日本では年々、社会保障制度の維持コストが重くのしかかっています。しかし社会保障制度が未熟な中国ではそれがかからないでしょう。イギリスは、外国人の社会保障制度利用が契機となって、EU離脱まで追い込まれました。日本も相当注視しないといけません。
石平:日本に比べると維持コストが軽いのは確かです。けれども中国には国家公務員や国有企業の社員、軍人にはそれなりに充実した年金制度があるので、この維持コストはバカにできません。だから、中国政府では年金の負担が重くなっているということで、なるべく定年の時期を伸ばす方向になっています。
 中国の民間企業については年金のプール自体があるのかどうかもよくわかりません。

<人口減少の速度は日本の4倍>
・石平:今後の中国の10年後、20年後がどうなるかを考えるとき、いちばん大きな問題はやはり出生数が激減している問題です。

・高橋:中国の人口は去年61年ぶりの減少になりました。それは多くの人々が死んだというよりも出生数が極端に減ったことが大きいのでしょう。
石平:そうだと思います。では今後、出生数が回復するかどうかと言うと、おそらく回復しません。1つの理由はやはり一人っ子政策を長年やってきたために、今の中国では一人っ子というものがもう文化になってしまったからです。

・もう一つの理由は、若者たちの失業率が高いために若者たちも将来に対して希望が持てなくなっている。となると結婚や子供をつくるどころではなくなっています。

・高橋:確実に人手不足になります。だから老人に働いてもらうしかないですよ。

・高橋:年金を手厚くして老人が働かなくても済むようにするというのが普通の国の考え方なのに、中国ではそうではないので老人は大変ですよ。
石平:中国の年金制度はもう確実に破綻するのです。
高橋:年金なしで働けと言われると同時に、公的医療保険も整備されていないのだから、中国社会は今後すごく不安定になりますね。

<出産一時金や児童手当は効果がない>
・高橋:子供を産むかどうかは個人の自由なので政府も誘導策しかできません。誘導策と言っても出産一時金や児童手当くらいしかないのはどこの国も一緒。

・石平:とはいえ中国政府であれば、また変なことをやらないとも限らない。例えば今、中国の一部の専門家が政府に提案しているのがコンドームの販売禁止です。

<もはや機械で代替するしかない>
・石平:今は若者の就職先がないから、農村では多少人気がありますよ。人民解放軍に入ると、とりあえず食ってはいけますから。
 また、通常は農村の若者は農村戸籍を都市戸籍には変えられません。しかし農村の若者でも戸籍を変えられる可能性のある方法が2つあります。1つが大学を卒業し都市部で就職すること、もう1つが人民解放軍に入って幹部になることです。

・石平:いや、弱いですよ。人民解放軍に入るためには高額の賄賂を払わなくてはいけません。賄賂を払って軍に入ったような人間がまともに戦うことなどできないでしょう。戦うことよりも賄賂の元を取ることのほうがはるかに大事なんです。

<中国に大衝撃を与えた婚姻件数の激減>
・石平:中国では習政権が発足した11年前から婚姻件数の減少が大きな社会問題になっていきました。

・婚姻率は2013年は9.9%でした。しかし2021年には5.8%へと大きく減りました。現象としては、どういうわけか、習政権になってから若者は結婚しなくなったのです。

・石平:最近、中国でよく言われるのは若者たちの「不恋愛・不結婚・不生育」です。この「恋愛しない、結婚しない、子供をつくらない」という「3つのしない」が一種の価値観となって中国社会に定着し常態化し始めています。

<オフィスビルの空室率上昇に表れた香港の衰退>
・石平:ブルームバーグが今年6月5日、香港全体のオフィスビルの空室率がすごく上昇しているという取材記事を掲載しました。

・石平:香港のデモ鎮圧と一国二制度の破棄のために外国企業が香港からどんどん離れていっています。それによって空室率が3倍以上にも跳ね上がってしまったのです。

・石平:もともと香港には資源もないし大した産業もありません。それでもこれまで資本と人材の2つがあったから、国際金融センターおよび貿易センターとして成り立ってきたのです。
 ところが今、香港の資本と人材の両方が徐々に失われつつあります。

<習近平一強体制がトドメの一撃>
<共産党一党独裁から1人独裁に>
・石平:いずれにしても、彼の終身独裁政権の道が開かれてしまいました。今回、わざと後継者もつくらなかったので、3期目に終わるつもりも全くないし引退するつもりもありません。
高橋:対抗勢力も中国共産党内にはいなくなってしまいましたね。

<中央財経委員会と国務院の合体で迷走する経済政策>
・石平:李強はもともと浙江省で習近平の部下でした。だから彼に抜擢されて上海トップを2年間勤めたのです。しかしその2年間で上海は完全に沈没しました。というのも、特にゼロコロナ政策で2ヵ月間ロックダウンしたことが大きな打撃となったからです。

・高橋:いきなり国の運営に携わるというのは、ちょっとあり得ません。外電によれば、李強は「ミスターマイナス13.5」と言われていると聞いています。上海時代の成長率がマイナス13.5%だったからです。それは象徴的なことです。

・石平:今回、李克強を追い出して子分の李強を首相にしたとき、当初は多くの人々は、習近平が中央財政委員会の主任を李強に渡して仕事を全部任せるのではないかと思いました。
 ところが、5月に中央財経委員会の会議が開かれたら、相変わらず習近平が主任で、李強はその下で副主任を務めるという形になったのです。この会議で最初に持ち出された経済運営の方針は、共産党の経済に対する指導を強化するということでした。そんな方針で経済を運営できるはずがありません。

<習近平にただ従うのが官僚の仕事>
・高橋:中国の政治構造の特殊性は共産党の下に政府があることです。政府が共産党の下にくっついている。とはいえ他国との交渉もやらなければならないから、実務的にはそこそこの力がないと政治運営などできない。

・高橋:そんなことをしていたら国の経済を回すことなどできないですよ。経済官庁の財務部などは現実に基づいて動かないとダメなのに、現実を無視して共産党の指導だけに従って動くことになったら、ソ連が崩壊したときと同じような状況になります。
 本当に今回、国務院のいろいろな部署を共産党の下にくっつけたのはちょっと信じがたいですね。中央銀行や財政部門、金融部門のような専門性の高いところは、政府のなかでもある程度独立させて専門的にやらせるというのが国際水準ですよ。

<愚か者がトップになる最悪な独裁制>
・石平:しかし習近平にとっては成長よりも分配のほうが大事なんです。
高橋:それは本当に「角を矯めて牛を殺す」ことであり、経済を全部ダメにしてしまいます。逆に、成長すればいくらでも分配できる。こんな当たり前のことが、彼にはわかっていないのでしょう。

<日本はデリスキングへの流れに用心せよ>
・高橋:先端半導体は軍事にも直結しているため規制は緩められません。
 ただしトランプ政権は「デカップリング」と言っていたのに、バイデン政権は「デリスキング」という言い方をするようになりました。デカップリングが「分断」なのに対し、デリスキングは「リスク軽減」ということです。

<親中派をスパイで拘束し自滅>
<ある日突然スパイ容疑で拘束される外国人>
・石平:習政権は2014年に「反スパイ法」を施行しました。これにより「国家安全」を名目にした外国人の取り締まりを一貫して強化してきました。

・高橋:中国で活動している日本人は、いつ何時拘束されるかわかりません。本当に大変ですよ。

<親中派ほど当局に捕まりやすい>
・高橋:日中青年交流協会の理事長はその立場から言っても親中でした。アステラス製薬も中国が発展して規制緩和があるというので中国への投資を積極的に行ってきました。拘束された社員はもとよりこの企業自体も親中なのです。
 石平さんの言うように、やはり中国人との接触が多い親中の人ほど中国では危ない。親中の人ほどスパイ容疑のターゲットとされやすいと言えますね。

<何でもかんでもスパイ容疑にできる改正反スパイ法>
・高橋:これまでの反スパイも酷い法律でした。ところが、それを改正して酷さがバージョンアップした改正反スパイ法が成立しましたね。

・石平:例えば外国企業が中国でビジネスのために資料を収集したりデータを集めたりする行為もスパイ行為と見なすことができるのです。

・石平:改正反スパイ法に基づくと中国にいる日本人を含めた全ての外国人は「誰でも、いつでも、どこででも」スパイとして拘束されても不思議ではありません。

・石平:さらに第16条では、スパイ行為の通報・密告を全国民に義務付けると同時に、通報・密告用の電話番号、メールボックス、ネットワーク・プラットフォームの開設と運用を国家安全機関に求めています。しかも通報・密告者に対する表彰・報奨・保護の規定も付け加えられました。
 これは明らかに「反スパイ人民戦争」の発動とその恒久化を図ったものです。しかし、嘘の通報に対する処罰を定めた条項はありません。
 となると今後、報奨金目当て・ライバル潰し・恨み晴らし・嫌がらせなどの邪な動機による虚偽の通報・密告が全国で多発することも予想されます。

<投資の誘いとスパイの摘発という大矛盾>
・石平:李強はあちこちで外資に「中国はこれからも開放します。どんどん入って来て投資をしてください」と呼びかけています。しかし一方で習政権は改正反スパイ法によって外資を脅かしているのです。

<中国外交には日本も相互主義で対抗せよ>
・高橋:外交の世界では「相互主義」というものがあります。相手がやっていることと同じことをやる、ということです。ざっくばらんに言えば、「やられたらやりかえす」。この相互主義は外交の世界では当たり前なのに、日本政府はほとんどやったことがありません。

・高橋:ところが、日本では相互主義が非常にやりにくい。というのは、どこの国にもスパイ防止法があるのに、日本にはないからです。

・高橋:ただし日本でスパイ防止法をつくろうとすると、親中の人たちがさらに激しく抵抗するでしょう。日本には親中の人たちがたくさんいます。日本政府もよほど腹を決めないと、スパイ防止法を成立させるのは難しい。

<第三世界のATMと化した中国外交>
<AIIBと一帯一路は完全に失敗>
・石平:鳴り物入りで登場した「一帯一路」構想と「AIIB」は今や見る影もありません。世界経済における中国の凋落を象徴しています。

・高橋:AIIBはダメだという見通しは当りました。私は日本国には全然悪いことを言っていません。日本はAIIBのような地雷を踏まないで本当によかった。

<共産党体制では絶対に人民元通貨圏の拡大はできない>
・高橋:中国は人民元の販路を拡大したくても一帯一路もAIIBも行き詰まってきているから難しくなってきています。

・高橋:国際決済取引での人民元のシェアは3%程度にすぎません。

高橋・要するに、資本取引の自由化については中国が社会主義体制である以上、全くできません。だから人民元も国際通貨に絶対になれないのです。

<半導体産業も崩壊に向かう>
・石平:米中対立による先端半導体のサプライチェーンを中国から切り離すという動きになっています。半導体関連の外資も中国から出ていくのは間違いないですね。

<台湾のTPP加盟を早く進めよ>
・高橋:日本としては台湾のTPP参加をできるだけ早く進めることが重要でしょう。

<暴言を吐いた中国の駐日大使をなぜ国外追放しないのか>
・石平:中国のネット上では普段、「日本が我らの祖国統一を妨害したら、日本列島全体を火の海にしてやる!」「台湾解放のついでに大和民族を根こそぎ滅ぼしてやろうではないか」といった過激な言論が溢れています。
 しかし中国の外交官でしかも駐日大使が公然と「日本民衆が火の中に」と発言し、日本国民全体に対して大量殺戮のニュアンスの軍事恫喝を行ったのは前代未聞ですよ。

<中国の戦略は西側の切り崩し>
・高橋:政治の観点では今日でも(合従連衡策は)通用する話ですね。
石平:十分に通用します。この故事が21世紀の我々に伝える最大の教訓とは、現代の秦である中国の連衡策に乗せられて西側の団結が乱れたら、災いが我々全員に降りかかってくるということです。

<どの国も本音は中国はATM>
・石平:特にアフリカ諸国の首脳はみんなわかっています。彼らにとって習近平は自動ATMのようなものなので、暗証番号まで知っている。すなわち、「1つの中国を支持する」「台湾独立に反対する」という暗証番号を入れたら、中国からどっとお金が入ってくるのです。

<中国にロシアとウクライナの仲介は不可能>
・高橋:もともと中立的ではない中国に、ウクライナとロシアの仲介役などできやしません。

<平和が破壊される確率は高い>
<戦争のリスクを避ける「平和の3要件」>
・高橋:「民主主義国は戦争しない」という非常に素朴な理論です。哲学者のカントの主張にも通じています。

・高橋:統計分析の結果、まず平和を保つ要素には3つあることが明らかになりました。「自国と相手国の民主主義度を高くすること」「相手国との相対的な軍事力の差を小さくすること」「有効な同盟関係を結ぶこと」です。そのうえで、各要素ごとに戦争のリスクを避けられる確率を出すと順に33%、36%、40%となりました。
 この3つの要素は「平和の3要件」と呼べるでしょう。

<軍事力のアンバランスが戦争を誘発>
・高橋:互いの国の軍事バランスが取れなくなってくると、均衡状態が崩れて戦争発生のリスクが高まってしまいます。

<子供でも分かる強者の論理>
・高橋:最後の「有効な同盟関係を結ぶこと」は2つの国が同盟関係を結べば他国から攻撃される可能性が低くなるということです。

<日米同盟の強化につながった安倍首相の平和安保法制>
・高橋:安倍首相は多大な労力をかけて平和安保法制を制定しました。それによって米国との間での集団的自衛権の一部を実現したのです。集団的自衛権は同盟を強くするための基礎なので、平和安保法制によって日米の同盟関係が強化されたことになります。

<ウクライナが侵攻されるのは必然だった>
・高橋:米国との間で核シェアリングまですると、かなり強くなります。だから私は安倍首相に「核シェアリングをしてください」と言ったのです。今のところ、残念ながら核シェアリングは実現していません。

<憲法9条改正で軍隊ができれば日米は完全な同盟となる>
・高橋:私は平和安保法制は日本の戦争の確率を減らすと一貫して説明してきたし、巻き込まれ論の人には「巻き込まれるのではなく、強い国と組んだらちょっかいを出されることがなくなる」という言い方をずっとしてきました。

<米軍原潜を買うか借りるか>
・高橋:日本の核シェアリングのいちばん簡単な方法は、退役した米軍の原潜を日本が買うか借りるかだと思います。原潜を自前で開発するのはすごく大変なので、退役した原潜を買うか借りるのが合理的なのです。借りる場合は乗員込みで借りればいいでしょう。

<崩壊の道しかない中国は台湾有事を起こす>
・石平:かつて搶ャ平は、改革開放で経済を発展させようとしたのです。ある程度は成功するのではないかと思われた矢先、習政権が出現して改革開放は逆行してしまいました。それで今や中国経済は落ち込んでいます。

・石平:しかし習近平は搶ャ平路線を止めて、かつ中国経済を先祖返りさせているのです。
高橋:そのお陰でわかりやすくなったじゃないですか。だから、これからは中国には本当に崩壊する道しかなくなってきました。こういうときには海外に活路を求めるしかなくなるというのが人類の歴史なのです。
石平:中国は台湾有事を起こすということですね。

<台湾が「戦わずして負ける」可能性>
<突然全面的に大転換した中国の農業政策>
・高橋:台湾有事ですね。今は「台湾有事がいつ起こってもおかしくない」と言う人も増えてきました。

・石平:前提から話すと、胡錦涛政権時代から農耕地の開発をやりすぎて自然が破壊され大洪水などが起こるようになりました。そこで今から20年前に始められた政策が「退耕還林・還草」(農耕地を森林・草原に戻す)です。あちこちで農耕地をやめて森林に変えていくというもので、これによって再び緑地が増えていった。
 また、当時は穀物をつくっても全然お金にならなかったため、お金になる換金作物の栽培も奨励されたのです。それで農民は田圃を潰して花を植えるなど経済価値の高いものをつくるようになり、現金収入も増えていきました。
高橋:緑化で地域の災害を防ぎ、農民の所得を増やすというのは真っ当な政策ですよね。
石平:ところが、23年になって突然、習政権は全国で退耕還林・還草とは正反対の「退林・退草還耕」政策を全面的に始めたのです。今まで植えた木を全部伐採して再び農地に戻させ、農民たちは、今までつくってきた換金作物を全部捨てさせられ穀物の米や小麦をつくらされることになりました。しかも、かつての大躍進政策と同様に行政命令によって強制的にやらされています。
高橋:大躍進政策は、毛沢東の主導で1958年に実施した鉄鋼、農作物の大増産運動ですね。しかし餓死者が2000万人前後も出たとされ、大失敗に終わりました。

・石平:となると、ただでさえ農村は貧乏なのに、換金作物が禁じられてますます貧困化してしまいますね。
高橋:貧困化はどんどん進むでしょう。共同富裕どころか、まさに共同貧乏ですよ。

<戦争に備え食糧輸入を拡大>
・石平:習政権が退林・退草還耕を実行する理由に挙げているのが食糧の確保、つまり食料安全保障なのです。

・石平:中国は爆食しているのだから食糧を止められると非常に苦しい。それで国内は食糧危機に陥る危険性があります。

<自衛隊、1個師団全滅という危機 ⁉>
<共産党エリートの最大の悩みは海外の個人資産の凍結>
・高橋:中国人は、家族とか資産とか個人的なところが弱い。中国に対しての制裁では個人的なところを突くことが欠かせません。米国は金融の力が強いので資産凍結もできます。

・高橋:死活問題の前では祖国統一の大義名分などどうでもよくなります。だから、みんなの目の前のお金でけっこう動くことがあります。台湾人にとっても食うことが優先されるという話をしました。中国の本土の人だって同じ。食うためにはお金が何より大事なのです。

<それでも最後に勝つのは民主主義>
・石平:台湾有事になると日本にも戦争が迫ってきます。それなのに日本の政界や経済界には危機感があるようには見えない。
高橋:防衛費をGDPの2%に上げるというところで政界には危機感が出始めています。

・石平:民主主義には何をやるにも時間がかかりますね。
高橋:仕方がないですね。民主主義では物事はゆっくりゆっくり進み、しかも障害を1つずつクリアしていかないといけません。しかし、民主国家のほうが、経済成長も達成でき、戦争を妨げる可能性が高いのです。

<おわりに>
・今世紀に入ってから多くの日本人が中国崩壊論を唱えるようになった。特に勢いを増してきたのが2010年をすぎてからである。

・とすれば中国崩壊論が現実味を帯びてくるのはまさにこれからだと言える。それでも何せ巨大な国だから崩壊まで短い期限を定めるべきではない。少なくとも10年くらいは時間的な余裕を持たせておいたほうがいいと思う。

・ウクライナ戦争を見てもわかるようにウクライナ人が必死に戦っているからこそ、軍事同盟を結んでいないため派兵できる国はないものの、多くの国が兵器や支援物質をどんどんウクライナに送っているのである。同様に日本人が頑張らないと米軍が来るはずがない。
 だから自衛隊は単独で人民解放軍と戦うことになる。それで自衛隊が1個師団くらいの犠牲者を出したときに初めて、日本政府の求めに応じて米軍が参戦することになる。1個師団の兵力は数千人だ。
 なお、中国には自国が崩壊する前に台湾を併合するというインセンティブも生まれ得る。台湾併合で中国経済も多少は持ち直すかもしれない。台湾有事は中国経済とも深く関係しているのである。


(2020/8/28)


『新型肺炎 感染爆発と中国の真実』
中国五千年の疫病史が物語るパンデミック
新型コロナウイルスはなぜ中国で発生し拡大したのか
黄文雄  徳間書店  2020/2/29



<2020年1月末の春節から感染が拡大し続けている>
・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。

<新型コロナウイルス「COVID-19」が中国で発生、拡大した歴史背景とは>
・中国発パンデミックを警告し続けてきた著者が、疫病の発生・拡大を繰り返してきた中国五千年の社会・政治・民族的宿痾を解説。世界の歴史を動かしてきた中国疫病史をもとに、新型肺炎感染拡大の行方と影響を分析する。

・私は2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的流行を見せた際、『中国発SARSの恐怖』(光文社)という書籍を上梓し、中国の隠蔽体質や事実捏造を告発した。本書の執筆にあたり、17年前のこの著書を読み返したが、当時の中国政府の対応は驚くほど今回と酷似している。

・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。為政者にとって都合の悪い情報は絶対に出てこない。

・だが、このような体質が、中国国内はもとより世界への感染拡大を招いている。中国人も世界の人々も、中国共産党の被害者なのだ。だが、情報統制をやめれば、それは一党独裁の終わりを意味する。中国共産党にとって、言論の自由は絶対に容認できない。いまなお1989年の天安門事件すら公には語ることができないという事実が、それを証明している。

・本書では、中国が歴史的につねに疫病の発生地であったこと、その感染拡大が世界の歴史を大きく動かしたことについても解説している。なぜ中国から拡散した疫病が厄介なのかということについても、歴史、民族性、文化、政治など、さまざまな観点から考察している。

<感染拡大が止まらない新型肺炎の脅威>
・そもそもウイルスとは、生物の細胞内でのみ増殖する感染性の病原体である。植物性ウイルス、動物性ウイルス、細菌ウイルスと感染する生物ごとの分類と同時に、遺伝情報である核酸によってDNAウイルスとRNAウイルスに分類される。
 コロナウイルスは人や鳥などに感染する動物性で、冬の軽い鼻風邪の原因となるものなど、従来からいくつかの種類の存在が知られている。有名なところでは広東省で発生し、2003年にはアジア各国に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)や、2012年に中東で発生し、韓国にまで拡大したMERS(中東呼吸器症候群)などが挙げられる。
 SARSのときは、野生動物を食べる習慣のある中国・広東省が発源地となった。ウイルスの起源として、当初はハクビシンが疑われていたが、その後の調査で、自然宿主はキクガシラコウモリだということが判明し、そのフンを媒介してほかの動物に伝染し、それが人間に感染したことが判明している。
 一方、武漢肺炎では、武漢の華南海鮮卸売市場がウイルスの発生源とされた。この市場では、通常の加工肉のほか、鶏、ブタ、ヒツジなどに加えて、ロバ、ラクダ、キツネ、アナグマ、タケネズミ、ハリネズミ、ヘビといった動物が食用として生きたまま売られていたという。

<やはり中国は情報を隠蔽していた>
・しかし、武漢で最初に原因不明の肺炎患者が報告されたのは、2019年12月8日だったが、当局はそのことを公表せず、12月30日に内部文書がネットに流出したことで、ようやく新型の肺炎が拡大していることが噂にのぼるようになったのである。
 しかも新型肺炎の情報を流したネットユーザー8人が、「デマを流した」ということで警察当局に逮捕されている。

<中国で疫病が発生、拡大する9つの理由>
・加えて、中国ならではの事情が、歴史的にかの国を疫病の発生源にし、また、世界中にパンデミックを拡散し、歴史を変えてきたといえる。その理由や原因については本書で述べていくが、項目をあげると以下のような点になる。
@ 希薄な衛生観念
A 儒教からくる家族主義・自己中心主義
B ニセモノ文化
C 多すぎる人口
D 何でも食べる食文化
E 農村などでの人畜共棲
F 秘密主義、情報隠蔽
G 皇帝制度、一党独裁
H 不完全な医療制度

・もちろん、ニセモノ業者がニセモノをつくるのは儲けるためであるから、そのニセモノによってどのような被害が出ようと知ったことではない。だからニセ薬による死者が多発するのだ。
 水道水が飲めない中国では、ミネラルウォーターを購入する家も多いが、得体のしれない湧き水や川の水を汲んで入れただけのニセモノも多い。

・また、中国では人口増加を抑えるために、1979〜2015年のあいだ、一人っ子政策を行ってきた。子供を二人以上もつと罰金や昇給・昇進の停止などといった罰則があるため、二人目の子どもが生まれても出生届けを出さなかったり、人身売買業者に売ったりしてしまうことが頻発した。
 こういった子供は戸籍をもたない「黒孩子(闇っ子)」と呼ばれるが、当然ながら、医療は受けられない。中国政府はこうした黒孩子の数を1300万人と推定し、彼らに戸籍を与える制度を推進しているが、実際には把握できていない黒孩子の数も多いとされている。こうした黒孩子の存在も、疫病を拡大させる一因となっている。

・2003年にSARSが流行した際には、ウイルスの宿主であるキクガシラコウモリから感染したハクビシンが市場で売られ、それを食べた中国人が感染したと考えられている。
 また、MERSもヒトコブラクダから人に感染したとされているが、中国の食品市場ではこうしたラクダも売られている。

・とくに現在において、中国共産党は「絶対無謬」の存在であり、憲法でもすべてを「党の指導に従う」と明記されている。その絶対無謬の共産党にとって、「疫病被害の拡大を防げなかった」という失態は、絶対にあってはならないし、あっても人民に知らせてはいけないことなのだ。だから実態は隠蔽しなくてはならない。それが中国の「国のかたち」なのである。

・そして、Hについてだが、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低い。たとえば、日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進むが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になる。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのだ。

・さらに、中国の医療保険制度はまだ未整備状態で、基本医療保険加入者は都市・農村合わせて8億7359万人(2017年末)であり、約5億人がまだ未加入である。
 加入者にしても、たとえば北京市では診療費の自己負担率は45%と高い。とくに農村部の農民や都会で働く農民工は、掛け金を惜しんで加入していないケースがまだまだ多く、加入していても、前述のような自己負担率の高さから、病気になっても病院に行かないことが多い。そのため、疫病が拡大してしまうのだ。
 以上のように、現代中国には「闇」の部分が数多く存在し、それが結果的に疫病の発生と拡大を招いているのである。

<各国の対応と遅すぎる日本の処置>
・訪日中国人も、2003年は44万9000人だったものが、2019年は959万4300人と、こちらも20倍以上に伸びている。
 世界のグローバル化、そして中国人が豊かになるにつれ、中国人海外旅行者数は年々増加している。

<中国人の衛生環境>
・衛生管理がよくない地域からさまざまなウイルスが各都市へ運ばれて蔓延する危険性は、なにもいまに始まったことではない。
 そのなかで、ウイルス感染の主因とされているのが、食用の野生動物である。

・2003年に流行したSARSの場合も、野生動物を好んで食べる習慣がある広東省から感染者第1号が出て拡散した。卸売市場には「家禽蛇獣総合市場」があり、50種を超える食用動物が生きたまま売られている。
 それから17年後の2019年末に発生・拡散した新型肺炎も、感染源とされる華南海鮮卸売市場から新型コロナウイルスが多数検出されており、ここで売られていた野生動物から人へと拡散したことがほぼ裏付けられている。

・加えて、中国の公衆衛生において、大きな問題となってきたのがトイレである。中国式の公衆トイレといえば、扉も囲いもなく、隣でしゃがむ人と顔を合わせるため、「ニーハオ・トイレ」と呼ばれてきた。また、水洗ではなく、いわゆる「ボットン式」が多いことから、外国人には非常に不評であった。
 上海では、1988年に約30万人がA型肝炎にかかったことがある。これはA型肝炎にかかった人のウイルスが排泄物とともに垂れ流され、それを食べた魚介類をさらに人間が食べたことで被害が拡大したといわれている。

・また2015年には、日常業務で人民元札を数えている銀行員が、手を洗わないままトイレに行ったことで、性病に感染するという事件もあった。露天の公衆トイレなどでは、手を洗う場所がないところも多く、紙幣を媒介にしてさまざまな菌が全国に運ばれていると考えられている。
 とくに、農村部では人と家畜の排泄物の衛生問題が深刻化しており、農村部で発生する伝染病の8割が糞便や飲料水が原因とされている。
 そこで習近平国家主席は2015年から国家観光局に指示し、観光都市にきれいなトイレを整備する「トイレ革命」を行ってきた。2015年から2017年にかけて16億4000万元を投じて、観光地などのトイレ7万カ所以上を新築・改修。さらに2019年には70億元を投入して全国3万の村で1000万世帯のトイレを改修する計画を打ち出した。

<台湾をWHOから排除する中国の姑息>
・もちろんWHOのこうした態度の裏には、台湾をあらゆる国際組織から追放することを公言している中国政府の力が働いている。中国は「あらゆる国際組織」、台湾が加盟するスポーツや文化に関する国際組織でも、台湾の名義を恣意的に改名させている。

・だが、前述したように、パンデミックは中国だけの問題ではない。むしろ政治的理由で感染国を国際機関から除外する姿勢こそが、感染を拡大させている元凶なのだ。

<言論統制の国としての歴史と実態>
・2003年のSARS隠蔽をめぐる世界の非難と共産党内部の力関係の変化もあり、新型肺炎の流行にあたって、あからさまな嘘だけはなくなった中国だが、それでも国民は政府の言うことを信用していない。

・そしてそれは、悲しいかな、中国を抜きがたい人間不信社会へと育ててきた。国民は政府も国内のマスコミも信用しない。政府も国民を信用しない。だから、政府に不利になるような報道はしない、させない。この悪循環が繰り返されている。中国ではネットですら指導者批判は禁じられていて、指導者支持の発言は、実は批判の裏返しだとさえいわれている。

<中国政府の情報隠蔽体質が絶対なおらない理由>
1、 銃以上に人心を掌握することが重要だが、この国の場合、その人心掌握と人間操縦をする手段が、情報統制によるマインドコントロールなのである。
2、 「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」というのが、孔子以来の伝統的な愚民政策である。
3、 中国人の思考様式のもっとも典型的なパターンが「戦略的」であること。
4、 中国は人間不信の社会であり、極端な場合は夫婦でも互いに信用しない。
5、 中国は軍事絶対優先の社会であり、教育も衛生も置き去りにされている。
6、 現体制の権力構造は、利益誘導型にして政策迎合型。かつての「大躍進」時代の数字捏造がいまでも続いている。
7、 中国の民族性のもっとも大きな特徴の一つは、「馬々虎々(マーマーフーフー)(でたらめ)」といわれるいい加減な性格で正確性が乏しく、しかも誇大あるいは夜郎自大の傾向があることだ。

 以上、述べてきた七つの理由から、私は、中国の情報隠蔽の体質は、少なくとも21世紀中に改善されることは絶対にありえないと断言するのである。

<中華の中原は世界の疫病拡散地>
・中国における疫病の流行は、中華帝国の歴史よりも長い。有史以前あるいは信史(確実な歴史)以前から、中国には疫病が存在していたのである。

・これだけ長い疫病の歴史をもつ中国だが、医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのことである。清末、立憲君主制への移行を目指す変法派の官僚によって、義和団事変以後の1902年に天津に衛生総局が設立されたが、医療衛生制度化の始まりだった。
 やはり、この当時も疫病が大流行しており、その対策のために医療が制度化されたのだ。このときはやっていたのはペストである。

・1918年秋、全世界でインフルエンザが猛威をふるった。通称「スぺイン風邪」と呼ばれたそれは、1917年に中国の南方で発生したものであり、最初は中国に駐在していたアメリカ人が感染し、ヨーロッパに従軍後に発病したことでフランス軍が感染し、その後ドイツ軍にも感染、そして全世界に拡散されたものであった。 
 感染者は5億人以上で、当時の地球の人口の20〜40%にも達し、感染からわずか4カ月で2000万人が死亡した。最終的な死亡は5000万〜1億人、死亡率は約2.5%であった。

・インフルエンザの病原菌は、1933年に確認されたものの、現在に至っても有効な治療薬はまだ開発されていない。
 中国では、1930年に国際連盟の援助を受け、政府が各海港に設けていた検疫機構を接収し、検疫権を得て対外的な衛生管理を「制度化」した経緯がある。しかし、近代になっても、中国は疫病の拡散地のままでありつづけている。
 国内で疫病を発生させては、周辺諸国、そして世界へと疫病をばらまいているのだ。19世紀末にはペストやコレラを、中華人民共和国成立後の1950年代にはアジアインフルエンザを、1960年代には香港インフルエンザをまき散らしてきた。
 ことに香港インフルエンザは、世界的に大流行し、それによる死者は計400万人にものぼった(アジアインフルエンザでは死者約7万人)。そして2000年代に入ってからはSARS、鳥インフルエンザ、さらに新型肺炎の拡散である。これまで、中国がいったいどれだけ世界に伝染病を拡大してきたかは、人類の疫病史が如実に物語ってくれている。

<中国の疫病による死亡者数は「無算」>
・日本ではやった疫病の多くは、中国から渡ってきたものである。元寇の襲来以来、日本は中国からくる伝染病にしばしば悩まされたものだった。

<中世ヨーロッパを襲ったペストの伝染病は中国だった>
・ヨーロッパにとっても中国大陸にとっても、歴史上もっとも大きな悩みだったのは黒死病(ペスト)の蔓延だった。

・その後、ヨーロッパの人口は社会の成熟とともにだんだん増加していき、1300年には7300万人にまで膨れ上がった。中世ヨーロッパ社会は、これから迎えるべき大航海時代に向けて、すべてが順調にいっていたかのように見えた。
 しかし、ここでヨーロッパの人口が激減する出来事が起こる。1348年のペストの大流行である。あっという間にヨーロッパを襲った恐るべき伝染病ペストは、1351年までの3年間で、人口の3分の1を死に至らしめたのである。
 ヨーロッパに大打撃を与えたペストが、ヨーロッパに伝わった経路については諸説あり、北インドから伝わったという説もある。しかし、もっとも現実的で有力な説は、中国大陸から伝わったという説だ。
 まず、中国の南宋王朝で流行し、それがモンゴル軍へと伝わった。

・近代に大流行したペストの発源地は、中国の雲南省がほとんどだった。1855年の雲南軍の反乱を征伐した清国軍は、ペストについてはまったく無知であったため、感染した状態で帰還した。

<海を渡って大陸から日本へやってきた大疫>
・どちらにしても、歴史を振り返れば、疫病は中国からやってくるものと考えていいだろう。その証拠に、古代日本では、中国や朝鮮との窓口になっていた福岡の大宰府が疫病の発源地だった。

<戦後の台湾を急襲した中国の「疫病神」>
・国府軍が入ってくる前から、台湾人はすでに日本統治時代を通じて衛生観念をもっていたが、野卑な中国人は衛生観念などという近代的なものはもちあわせていなかった。そんな中国人が台湾に入ってきたことから、疫病はいっきに全島に拡散したのである。
 台湾ではすでに絶滅していたコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアなどといったあらゆる伝染病が、中国人と一緒に再び台湾に入り、爆発的に広まったのだ。このときは、国連の指導と救援で、なんとか疫病撲滅に成功したが、被害はじつに大きかった。

<水・旱・疫・蝗の循環が中国の歴史をつくった>
・日本の歴史上の大規模な自然災害といえば、地震か台風が多かった。天明の「大飢饉」のような飢饉が起こったこともあったが、その原因は火山の噴火によるもので、ごくまれな例である。
 一方、中国や朝鮮半島では、飢饉が周期的に起こっており、中国ではそのつど数万から数百万、場合によっては1000万人以上の餓死者を出していた。
 これは、島国である日本と大陸である中国との、自然条件の違いからくるものだろうか。もちろん、中国でも地震、雹、大雪といった天災もよく見られるが、それよりも頻繁で被害が大きいのは水害、旱魃、大疫、蝗害である。
 この四つは周期的に、そして連鎖的に起こるものである。水害のあとは疫病が大流行し、旱魃に見舞われれば、蝗が異常繁殖して人に害を及ぼすというように、悪循環の繰り返しである。

・前1766〜1937年までの3703年間のうち、中国で起こった水害、旱魃、蝗害、雹、台風、地震、大雪などの天災は、合計5258回もあっという。
 これを平均すると、6カ月に1回の割合で何かしらの天災が起こっていることになる。旱魃だけでも、3703年間で1074回も起こっており、平均3年4カ月に1回の割合である。

<疫病史が語る中国歴代王朝衰亡の悲劇と惨状>
・世界史における文明衰亡の原因は、異常気象による自然災害の発生か、あるいは疫病の大流行ということが多い。ことに中国史では、「大飢」や「大疫」によって王朝が滅亡するという例が多い。

・そして、中華帝国の人口は、1200年には1億3000万人といわれているが、ペストの大流行によって、1331年の時点ではその3分の2が失われてしまった。さらに1393年には6000万人にまで減少し、最盛期の人口の約半分になっている。
たしかに、元来のユーラシア大陸では、全体的に異常気象が続き、大疫病と大飢饉が猛威をふるっていた。これらによる被害と食料危機が、元の衰亡を決定づけたのである。

・西ヨーロッパでペストが猛威をふり、4000万人の人々が倒れたのも、モンゴル帝国がペストに苦しんでいたころとほぼ同時期の14世紀であった。

<明王朝滅亡の原因は連年の大疫だった>
<孤立無援の皇帝に追い打ちをかけた疫病>
・明王朝の衰亡は、万歴の時代からそうなる運命だと決まっていたともいわれている。明王朝は、崇禎帝が嘆いていたような政治腐敗のほかに、「大疫」や「大飢」に間断なく襲われ、病死者や餓死者があふれていた。流民、流賊、流寇も暗躍していた。
 このような社会背景があったからこそ、李自成は農民軍を引き連れ北京に入城することができたのである。
 明王朝末期の万歴・崇禎の間(1573〜1644年)、華北地方では疫病が猛威をふるい、少なくとも1000万人の死者が出た。ペストや天然痘、コレラが主だったという。明王朝は、この大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではなかった。

<中国を待つ大破局の悪夢>
・中国はいま、人口過密と過剰開発によって自然が崩壊しつつある。山河の崩壊ぶりは前世紀以上に加速度的なものであり、黄河の断流や長江をはじめとする各大水系の大洪水が頻繁に起こっている。

・清朝末期と多くの点で共通する中華人民共和国。新型コロナウイルスの出現は、中国崩壊の予兆となる可能性が大きい。

<疫病の猛威が突きつける中国の文明史的課題>
<中国発疫病への警告が現実に>
・著者は、2003年のSARS騒ぎの際にも、「今回のSARSをきっかけに中国人の衛生観念が改善されなければ、今後また同じことが繰り返されるだろう。これは、中華文明の大きな課題のひとつである」と書いたが、結局、新型肺炎というさらに強力な疫病の発生と拡大を招いてしまった。

<世界は中国を切り離しはじめた>
<あらためて確認されたチャイナリスク>
・すでに米中貿易戦争で進んでいた各国の脱中国が、さらに加速していくことは避けられない。

<外国企業にとっては中国撤退の好機となる可能性>
<中国経済の致命的な弱点が一挙に露呈>
・共産圏には絶対にないといわれた売春も、いまでは中国大陸のどこでも盛んであり、人民解放軍のなかにさえホステスや売春婦がいるという。
 さすがの中国政府も汚職や不正行為の摘発に乗り出したが、いずれも一時的なもので終わっている。2012年に最高指導者に就任した習近平は、汚職追放運動を展開し、5年間で25万4000人の全国の公務員と、120人を超える閣僚級以上の幹部を汚職事件で立件したと強調している。

・習近平政権は、今後、感染拡大を防ぐ方策を講じると同時に、経済上の大打撃と政治的な失策について対処しなくてはならない。まさに国家存亡の危機を迎える可能性がある。

<悲鳴があがる観光業界>
・中国の場合、立派な観光施設ほど外資との合弁や借金に依存しての先行投資であるから、この騒動が長引けば長引くほどその損失は大きくなる。2015年に習近平が「トイレ革命」の大号令を発したのも、海外からの観光客を増やすためだった。

<欧米を恐怖に陥れる新型コロナウイルスという名の横禍>
・黄色人種の勃興で白色人種が禍害を被る……日清戦争が終わったあと、ドイツの皇帝・ヴィルヘルム2世が唱えた「黄禍論」。いわばアジア全体への差別的な感情で、以降も何度となく消えては表れてきた。
 新型肺炎をめぐる欧米諸国の反応も、この意識とまったく無縁ではないようだ。

<軌道修正を迫られる中国>
・ここ十数年、軍事力も経済成長も、中国政府の正式発表では驚異的な伸び率を示していた。それが中国国民の誇りと国家の威信に直結していただけに、新型肺炎による精神的、経済的打撃は大きく、国際関係も従来の強気一本から軌道修正を迫られることは確実である。

<エマージング感染症と人獣共通感染症>
・21世紀の感染症を語るキーワードとして、「エマージング感染症」がある。これは、環境や生態系の変化などにより、人や動物の集団に突如として表れた感染症、あるいは以前から存在していたものが急激に発生、増加、拡大する感染症であり、そのほとんどがウイルスによるものだ。
 こうしたウイルスを「エマージングウイルス」というが、エボラ出血熱、ラッサ熱、SARS、MERS、そして今回の新型コロナウイルスもその一種ということになる。
 また、エマージング感染症以外に人獣共通感染症というキーワードもある。人獣共通感染症は、もともと動物にある細菌ないしウイルスがなんらかのきっかけで人間にうつり、生物学的、政治経済学的に大きな被害を起こす感染症である。
 エマージング感染症と人獣共通感染症の両者には概念のオーバーラップがあるが、前者は病気出現の速度と様相を重視したもので、後者は動物間種を超える感染症を強調したものである。
 人獣共通感染症には古くから狂犬病、ペストなどがある。狂犬病、ペストは世界から絶滅したわけでなく、アジアでは日本、台湾など島嶼国のみが絶滅に成功しているが、インドや中国など大陸国では風土病として根づいており、WHOが引きつづき調査・監視している。
 比較的新しい人獣共通感染症には、マールブルグ病、エボラ出血熱、ハンタウイルス肺症候群、鳥インフルエンザなどがある。

<「陰謀説」の裏側>
・軍関係施設からウイルスが流出したという説は、SARSのときにもあった。

・真実がわからないにしても、疑惑の火が消えないことは事実だ。では、それはどこからくるかといえば、中国人のBC兵器への関心の高さだろう。中国毒殺史から見るかぎり、毒盛りは中国の歴史と同様に古い。戦場や宮廷内部をはじめ、日常生活でも毒盛りが盛んだ。毒殺は中国文化の一大要素と言って過言ではない。

・日中戦争時、日本軍がもっとも悩まされたのは、中国軍がソ連軍から提供された細菌兵器による攻撃だった。当時の中国軍がもっとも常用していた生物兵器はコレラ菌、炭疽菌、腸チフス菌、パラチフス菌などである。もちろん、それらが使われるのは戦場だけではない。現在でも中国社会では、政敵、商敵、情敵に対する毒殺がはやっており、これによる死者は年間6万〜7万人ともいわれている。ことに夫婦や三角関係の情敵に対する毒殺事件は多い。

・2002年9月には、南京の食堂で殺鼠剤中毒による死者40人を超える「南京大毒殺」が起こっている。この事件は当局の隠蔽工作もあり真相はよくわかっていないが、水道水にネコイラズが混入された疑いがあり、台湾では中毒被害者は1000人以上、死者も100人近く出たと報じられた。
 疫病が起こるたびにもちあがる「BC兵器説」は、中国の「毒殺文化」の理解からくる疑惑であると言えないだろうか。

<疫病が出たら村ごと「清郷」>
・ところで、中国では瘟疫流行は日常的である。すでに史前からあり、甲骨文はその瘟疫の吉凶についての占いから生まれた神のお告げでもある。だいたいにおいて瘟疫はかわるがわるはやるので、もっとも手っ取り早い手段が「清郷(チンシャン)」だ。清郷は「村つぶし」として政治的解釈は多いが、疫病が発生する場合にも見られ、古代から現代まで続いている。
 清郷は山西や陝西などの西北地方に多い。村に瘟疫が発生すると、まず政府は情報を封鎖する。そして、人民解放軍が村を包囲して焼き打ちをかけるほか、村自体を地下深く埋める場合もある。手荒な方法と思われるが、中国は社会安定が最優先の国であり、それは民族の生存権を守ることでもあるのだ。

<同じことは何度でも起こる>
・つまり、中国は情報公開ができないということだ。国内の情報管理によって、ようやく国家としての存在が守られているからだ。公開すれば、それだけでも「亡党亡国」の危機に陥る。現在の中国は、まさにこのようなジレンマのなかにある。
 世界は、中国発の新型肺炎にどう対処して克服していくのか。その鍵は、まさに中国にこそある。
 同時に、新型肺炎が終息しても、中国の抱える問題が解決されたわけではないことを、世界は肝に銘じるべきである。中国がこのままの体制であるかぎり、同じことは何度でも起こる。
「21世紀は人類が中国問題に直面する世紀となる」と私はつねづね主張してきたが、今後の世界は中国をめぐり、米中対立、香港・台湾問題、南シナ海・東シナ海問題、ウイグル人の人権問題などに加え、疫病問題のリスクにも備えなくてはならないことが明らかになったといえるだろう。

<疫病拡散の温床となる中国の社会風土>
<いまだに劣悪な中国の社会環境>
・一方、中国人の寿命が短いのは、医療制度の遅れと改善されない生活環境、人体に被害を及ぼすほどの自然破壊など、さまざまな人的要因が挙げられる。

<九大苦に蝕まれる中国農村社会の断末魔>

・多くの農民は、都市に出稼ぎに行っている子弟の送金でなんとか生活しているのが現状だ。中国の農民には「九大苦」があるとよくいわれ、その苦痛は世々代々続いていく。農村の九大苦とは次のとおりである。
 一つめの苦痛(一苦)は、党の支配や、政府組織による搾取と略奪の構造だ。村役場に大量にあり余る党の役人を、農民が養わなければならない。
 二苦は、教育を受けるのが難しいことだ。
 三苦は、移動や移住が難しいことだ。
 四苦は、社会保障がないことだ。
 五苦は、時代や世界に関する観念が落後しており、変化についていけないことだ。
 六苦は、資源の欠乏である。
 七苦は、地域間あるいは同業間での意思疎通が難しいということだ。
 八苦は、創業や貯金が難しいことである。
 九苦は、つねに凌辱されているという悲哀だ。中国の農民は無学・無知であるがゆえに、優越意識をもつ都市住民によって差別され、蔑視されてきた。農民は、中国最下層の水呑百姓として凌辱されるべきで、不可触賤民として虫けらのように扱われているのだ。
 政府は、中国が目下抱えている最大の問題は農業、農村、農民問題の改善だと認めていながら、それを解決する手段を見つけられないでいる。これだけ、問題が深刻化してしまうと、さすがの中国共産党も手も足も出ないのだ。

<死に神が手招きする「一窮二白」(すかんぴん)の中国農村>
<環境汚染がもたらす中国国民の自家中毒>
・中国人は5000年の歴史を通して、絶えず自然環境破壊を行ってきた。そして、近年の改革開放路線がそれに拍車をかけ、凄まじい勢いで環境破壊が進んでいることは、すでに世界の常識となっている。
 北京では2000年代後半からPM2.5によって、昼でも真っ白なスモッグで視界不良となる日が年間を通して何日も続くようになった。

・大気汚染同様に中国社会で深刻化しているのが水質汚染や土壌汚染だ。こちらも工場排水が垂れ流されてきた結果だ。

<新型肺炎での暴動を恐れる中国政府>
・その実態は、日本人が想像しているようなものでは決してないということを、日本人もそろそろ認識したほうがいいだろう。中国の農村は牧歌的なものではなく、役人の腐敗はもちろん、窃盗や強盗が跋扈し、農村対農村の殺し合い「械闘(かいとう)」も頻発している。

<儲けのためなら死者が出ても構わないニセ食品の商人>
・中国では、「無奸不成商」という格言がある。「奸悪でなければ商人にはなれない」という意味だ。これは中国人の自称であるが、中国に進出している外資のビジネスパーソンたちの多くが抱いている、中国商人観でもある。

<とまらないニセ薬の被害>
・人命に関わる可能性のある薬品でさえ、中国ではニセモノがよく売られている。台湾の観光客はよくニセ薬を買って帰るが、健康被害などが頻発するため、台湾政府は繰り返し注意を呼びかけている。

<疫病輸出国としての中国脅威論と崩壊論>
・中国脅威論や中国解体論は、現時点では現実性がないように思えるかもしれないが、歴代の中華王朝が繰り返してきた衰亡の誘因が重なれば、社会主義中国の体制崩壊も例外ではなく現実のものとなるにちがいない。新型肺炎も、そのきっかけの一つとなる可能性がある。

<グローバリズムの終焉>
・感染拡大だけではなく、各方面への影響が収束するにはかなりの時間を要するだろう。
 とくに中国経済の減速に拍車がかかることは避けられない。また、チャイナリスクを目の当たりにした世界は、中国離れを加速させていくだろう。
 ただでさえ、米中貿易戦争の余波から、西側諸国は中国との関係見直しや中国からの企業撤退、サプライチェーンの再構築を進めようとしていた。その矢先の新型肺炎の感染爆発である。



『新型コロナウイルスは細菌兵器である!』
泉パウロ   ヒカルランド 2020/4/30



<衝撃検証  狙いはどこにあるのか? >
・この世界的パンデミックは9.11同時多発テロ(2001年)と3.11東日本大震災(2011年)に引き続き、イルミナティカード(1995年発売)に完ぺきに予告されている「災厄」である!

・終わりの日に向かって着々と歩をすすめる者たち!その計画は『聖書』が下敷きであり【イルミナティカード】そのほかで律儀にも予告しながら実行されている!

・メディアは武器だ!矢継ぎ早に伝えられる事件劇場。この刺激の中で正常な思考を奪われて、われわれが連れていかれるその先は大惨事世界大戦である!沈黙の兵器の巨大体系の中に叩き込まれても魂を明け渡してはならない!自らの魂の輝きに焦点し、学び、備えよ!

・新型コロナウイルスのパンデミックは何年も、何十年も前から計画されていた。その狙いは? 私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、力、この暗闇の世界の支配者たち、また、天にいる諸々の悪霊に対するものです。

<コロナ騒動は、やはり予告通りに起こされていた!>
<ディーン・R・クーンツの小説『闇の目』(1981年)とは?“武漢―400”というウイルスが登場!>
・私は今心が騒いでいます。
  またしても悪の闇組織イルミナティは自分たちの邪悪な計画に従って大罪を犯したからです。
 人工的な新型コロナウイルスを研究所や化学工場爆破によって、中国武漢からばらまき、世界中を苦しめています。
 多くの人は3・11東日本大震災、あの大国難が人工地震と意図的な複合災害であったことを今でも知らないのです。
 今日もマスクをして道行く人々は、やがて時間とともにワクチン開発で終息するであろう今回の新型コロナウイルス騒動について、またしても気付いていない。
 立ち止まって考えるべき重要なチャンスであるのに、全てを単なる陰謀論だと片付けてしまい、心に深く留めない。
 聖書預言では、こんな陰謀が世の終わりまで延々と行われると書かれているのです。

・本書で数々の状況証拠を提示したい。結論から言うと、今回の新型コロナウイルス騒動説は、サウジアラビア人男性から採取したウイルスをオランダ、カナダ経由で中国の産業スパイ3人が盗み出し、武漢ウイルス研究所で培養して遺伝子組み換え技術により毒性をさらにパワーアップさせたものです。

・本物の化学兵器は、細菌もすぐに消えて感染源も証拠も残らないのです。新型コロナ騒動は予行演習で、本当の生物化学兵器が2030年までに撒かれ、世界人口を現在の数から3分の1に人口削減したいようです。実にその数も聖書を真似た通りの想定数です。
ゼカリヤ13:8「全地はこうなる。主の御告げ。その三分の二は絶たれ、死に絶え、三分の一がそこに残る。」

・中国は、世界初の量子衛星打ち上げに成功済で、世界中で使われている数字ベースの暗号化を打ち砕くことが理論的に可能な強力な量子コンピュータの構築方法を研究していて、量子通信衛星の実現による電子的スパイ活動がまもなく可能になるまで成長しています。世界の軍事力を無力化されるまであと1年くらいでした。ですから、急ぎで闇組織は30憶人大移動の春節時期に合わせて、大混乱を招くように新型コロナをばら撒いたのです。

<アングロサクソン・ショック>
・「イルミナティ地球支配計画の目撃者による証言」
これは新型コロナウイルスのパンデミックが15年以上前から計画されていた有力情報です。イギリス人で長年、英国軍に勤務し、退役後はロンドン市で非常に高い地位についていた人物が、2005年6月にロンドンのシティでの上級メイソンたち25〜30人の集う会合に出席しました。

・「第三次世界大戦が計画されている。それは核兵器と生物兵器を用いた戦争となるであろう。それはまず初めにイスラエルがイランを攻撃することで戦争開始となる計画です。応酬として、イランまたは、中国のどちらかが、核で反撃するようにと仕向けられるでしょう。短期間での双方からの核攻撃の応酬のあと、停戦が持ち込まれるでしょう。世界中が恐怖と混乱の渦へと投げ込まれるでしょう。全てのことが彼らによって注意深く創出されるのです。緊張による極限状態が創り出され、全ての西側先進諸国で、厳しい社会統制、軍事統制を敷くことが正当化されるでしょう。そのための様々な準備計画が、すでに着々と各国で進行中です。核戦争の停戦中に、こっそりと中国で生物兵器をばら撒く作戦が計画されています。彼らは中国の国民を遺伝子的に標的にしたインフルエンザのようなウイルスを撒くつもりです。この生物兵器は初めは人種的に中国人をターゲットにばら撒かれるでしょう。これは山火事のように拡散するべく大量の中国人が罹患すべく計画されているのです」

・生物戦争はさらに広がっていくでしょう。西側諸国へと。拡散ルートは突然変異があるため予測不可能。そしてその結果、社会インフラは決定的に弱められるでしょう。これはほんの始まりにすぎません。このあと全面核戦争が引き起こされる可能性があります。つまり、第三次世界大戦です。破壊が広範囲に広がり、多くの命が失われるでしょう。以上のような事態の組み合わせにより計画されている人口削減は、現人口の50%減、とこの証言者は言いました。彼はこの数字が述べられるのをその会合で聞いたのです。まるでこの全てがまだ十分ではないかのように、この証言者は、「全ての準備は来る“地球物理学的できごと”を前提として配置されていっているようだ」と推測します。
 
・ホラーとサスペンス小説で名高い米国の人気小説家ディーン・R・クーンツ氏は、『ファントム』や『ファンハウス』など多くのベストセラーを発表しています。
 1981年の作品『闇の目』(The Eyes of Darkness)では、「武漢-400」(Wuhan-400)というウイルスに言及しています。39年も前の小説であるにもかかわらず、現在進行形の武漢から蔓延した新型コロナウイルス、そしてこれによる肺炎。現実とそっくりです。小説内容を抜粋すると以下になります。

・「ちょうど、そのころ、リ・チェンという中国の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この十年の間の中国で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。中国側はこれを“武漢-400”と呼んでいます。開発されたところが武漢市の近郊のRNAとDNAの実験室だったものですから、そう名づけられました。
 これはその武漢の研究室で作られた400番目の人工微生物の生存種なのです。武漢-400は完ぺきな兵器です。

・現在の低い死亡率や長い潜伏期間を持つ新型コロナウイルスと小説は違いますが、この細菌兵器の製造目的が以下の文章に表われています。
「武漢-400にはほとんど細菌兵器を上回る重要な利点が他にもいくつかあるんです。まず、ウイルスに感染してからわずか4時間後にはもう、他人にうつせるキャリアになっている。これは驚くほど短い潜伏期間です。
 一度感染すると、24時間以上は生存できない。12時間で死亡するというケースも多い。殺人率は100パーセントです。だから生きのびることができない。
 中国人たちは、いったいどのくらいの数の政治犯に試してみたことか。彼らはこれに対して有効な抗体も抗生物質も発見することができませんでした」

・この細菌兵器は「中国人たちの政治犯」を粛清するため開発され、実用化されてきたと書かれています。しかし、この小説の日本語翻訳版ではなんと、中国が「ソ連」と置き換えられて、武漢が「ゴーリーキー」と書き換えられています。
 それにしても、偶然とは思えない。これと同様に他にも小説や映画に表れた新型コロナそっくりの内容がありますので、さらにご紹介します。

<ロス・イルミナドスが生物兵器開発に関与⁉ 「バイオハザード」のケース>
・2002年公開のアメリカ・イギリスの合作映画「バイオハザード」というホラー映画シリーズにも、一連の疫病騒動をテーマに順番通り犯行予告しています。
 ピンポイントにあらすじをご紹介すると、製薬会社アンブレラ社で働いていた特殊工作員のアリスは地下研究施設を警備する任務でしたが、ウイルス兵器の研究が極秘に行われているのに気付き実態を暴こうとします。
 ある日、ウイルスが漏れる500人の研究員が死亡したが、T-ウイルスにより生き返り、死者たちはゾンビ化します。
 アンブレラ社の開発した生物兵器T-ウイルスの蔓延で街がゾンビ化した市民で溢れかえる異常事態のため、この巨大企業がラクーンシティという街全体を封鎖します。
 また、映画の原作となったゲームシリーズの4作目「バイオハザード4」では、カルト集団「ロス・イルミナドス」がこの生物兵器開発に関与していたとされています。「ロス・イルミナドス Los Iluminados」の意味は「イルミナティ」をそのままスペイン語にした言葉です。

<イルミナティカードもパンデミックを予告!>
<ビル・ゲイツが深く関わっている⁉>
・ビル・ゲイツはネット動画配信のスピ―チで、「パニックになる必要はないがウイルス対策を始めるべきだ。なぜならもう時間がない」と言っています。
 そして、実際にホワイトハウスを訪ねて当時の大統領顧問ボルトンにウイルス対策を取るべきと訴えていたようです。きっと、「もう時間がない」発言に込められた思いとは、近い将来の武漢発、新型コロナウイルスの感染拡大計画をよく知っていたのでしょう。
 なぜなら同じ闇組織の一員だったから。極秘情報は内部で幹部同士で相談して決めて共有します。ビル・ゲイツは過去に事もあろうに「ワクチンで人口削減できる」とまで不謹慎にも明言しています。子宮頸がんワクチンが不妊ワクチンであることを暴露していたのです。
 
<イルミナティカードは彼らの計画の犯行予告!>
・その日のことを事前に犯行予告していたのが、この武漢商貿職業学院の上空にコウモリが多数飛びかい、地を行き交うモンスターたちが描かれた気持ち悪い絵のイルミナティカードなのです。
 イルミナティカードは、闇組織によってつくられたカードゲームです。彼らは世界を卓にゲームして遊んでいる大富豪の連中です。富と時間を持て余すから、こんなことをしています。普通の精神ではないです。
 普通なら仕事が忙しくて、こんな危ない犯罪計画をやってられないし、もっとやるべき自由で明るい自分たちの楽しい時間があるはずなのに、悪いことばかり考えている。少なくとも1995年のカード発表時点で2020年に武漢から疫病発生、やがて死者多数と知っていたなら、それだけでも25年後を考えて大変気になるし、秘密を守り続けるのも疲れるし、夜も寝られないはずです。それを耐えて長年待ち望むから異常な精神です。カードは500枚以上。どれだけたくさんの悪さを秘密裏に考えているのでしょうか?
 ゲームには必ずルールがあるもので、彼らの定めた独自ルールは「今から自分たちのしようとしていることを人々に事前に知らせること」です。

<コウモリが感染源とする論文とカード>
・2020年2月15日、科学者向けのSNS「Research Gate」で一本の論文が公開されました。中国・華南理工大学のシャオ・ボタオ氏と同・武漢科技大学のシャオ・リーの連名で発表されたその短い論文は「The possible origins of 2019-nCoV coronavirus」と題されており、「武漢疾病予防管理センター(WCDC)」が、現在流行中の新型コロナウイルスの漏洩元ではないかと名指ししています。

・WCDCは、初期の感染者が集中していることから新型コロナウイルス感染の震源地と疑われている「武漢華南海鮮卸市場」と、わずか280メートルほどしか離れていません。
 論文によれば、この研究所では病原体に感染した実験動物や野生動物が飼育されており、その中には605匹ものコウモリが含まれていたという。
 これまでの研究で、新型コロナウイルスのゲノムは在来種のコウモリが保有しているコロナウイルスによく似ていることが指摘されています。研究所にコウモリが飼われているのは、ウイルスに特段強い動物のため、感染させることで長期保存や培養、各種の実験材料にふさわしいからのようです。

・また、WCDCは医療関係者への感染が最初に確認された病院にも隣接しているのです。
 武漢ウイルス研究所では2003年頃に流行したSARSを研究しており、SARSコロナウイルスを人為的に改変したキメラウイルスの作成も行われていたという。著者らは、新型コロナウイルスがこれらの研究所から流出した可能性もあると指摘する。この論文は現在、「Research Gate」から削除されており、アーカイブだけが残っています。著者らに何があったのかは不明です。

<今回の目標3300万人の削減も失敗している!>
<研究所爆発のカードには武漢経済圏が描かれている!>
・忌まわしい悪の枢軸イルミナティカードは、彼らにとって闇のバイブル。このカードには英語でLab Explosion「研究所爆発」と書いています。そして地図は武漢経済圏です。
 爆発の絵の中央部分、爆心の形は武漢と周囲に取り囲んだ隣接の街々を含んだ武漢経済圏の地図の縮図で形が同じです。探し物あてクイズのようですが、彼らはそうやって密かに楽しんでいます。
 カードは武漢研究所から爆発するぞという意味です。武漢市だけでなく周囲の街々も全部含めた地図がカード爆心と同じ形です。

<コロナウイルスはエボラ、SARS、エイズなどの人工的混合でつくられた!>
・以前、私の1冊目の人工地震本を見たレオ・ザガミなる自称イルミナティ幹部に頼まれて、英語でやりとりしながらヒカルランド社で彼の本を出版するように、つないであげたことがありますが、彼は、「日本は150年来、いつも彼らの組織の計画の邪魔をしている」と言っていました。彼だけでなく、闇組織の多くが日本を憎んでいるのがよくわかりました。
 ちなみに、私は普通のプロテスタント教会の牧師でメイソン・イルミナティ会員ではなく、闇組織に入れば有名な牧師となり、敵対者を巧妙に倒し、うまく金持ちになれる悪のルートまで縁あって知っていますが、今後も絶対に入りません。
 悪魔から一時的に利益を得て自分の魂を売ったら、後は永遠の地獄に落ちるからです。肉の欲目の欲、暮らし向きの自慢を通じて誘惑する悪魔に完全勝利した罪なき神の子、救い主イエス・キリストをほめたたえます。

・闇の反対勢力の陰謀に打ち勝って、日本の富士フイルム富山化学の製品アビガンが一般普及することを祈り願います。
 実はMERSやSARSの原因ウイルスは、今回蔓延中の「SARS-CoV-2」なる新型コロナウイルスと構造が似ています。
 なぜなら、MERSやSARSを組み込んで最悪のウイルスを人工的に培養したからです。
 タイ保健省は2日、新型コロナウイルスに感染した中国人女性に、インフルエンザとエイズウイルス(HIV)の治療に使われる抗ウイルス剤を混合して投与したところ、症状の劇的な改善が見られたと発表しました。新型コロナウイルス感染者の症状はエボラとSARSに似て、エボラとエイズの成分もハイブリッドしています。ですから、結論は、

新型コロナウイルス=MARS+インフルエンザ+エボラ+SARS+エ
イズ。
こうなると、あの武漢のカードに描かれた5色5種類のモンスターたちが成り立ちます。

<まだまだ出てくる! 新型コロナ・パンデミックの犯行予告‼ >
<漫画『カイジ』のギャンブル船エスポワール(希望の船)>
・1996年2月。上京後、定職にも就かず自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)は、ある日、金融業者の遠藤により、かつて自分が保証人になっていた借金を押し付けられ、法外な利息により385万円にまで膨らんでいることが知らされる。
 遠藤に誘われるままカイジは1か月後、負債者に借金一括免除のチャンスを与えるという、フランス語で「希望」の名を冠すギャンブル船「エスポワール」に乗り込む。

・この映画のカジノ船エスポワール号も、漫画の表紙のカジノ船も、現実のダイヤモンド・プリンセス号にそっくりです。

<犯行予告するさらに6つの映画>
・さて、新型コロナ攻撃に対する犯行予告はイルミナティカードだけでなく、治外法権のカジノ船ダイヤモンド・プリンセス号を模した賭博映画『カイジ』、ゲーム「バイオハザード リベレーションズ」そして以下の6つの映画にも表れていて、実はこれらすべての映画をミックスした複合災害だったのです。
 ちょうどかつての日本が東日本大震災のとき、地震以外に津波や放射能、爆発火災、風評被害、訪日客減少、汚染水、停電、食料難、株暴落、会社倒産などなど複合的に災害が襲ったようにです。

<「カサンドラ・クロス」>
・あらすじは、細菌を浴びた過激派がヨーロッパ大陸横断列車へ逃れた。車内には伝染病が広まり、機密の漏洩を恐れた軍は秘密裏に列車をポーランドへ運び隔離しようとした。

<「ザ・クレイジーズ」>
・あらすじは、街に防護服に身を包んだ兵士たちが現れ、伝染病の発生を理由に住人たちを強制的に連行し始めた、包囲された街の話。告知画像には「狂気が感染する――ここは細菌兵器に襲われた街。」と書いています。

<「復活の日」>
・あらすじは、猛毒の新型ウイルス「MM-88」が東ドイツの科学者によって持ち出されマフィアの手に渡る。マフィアの乗った小型飛行機は吹雪に遭ってアルプス山中に墜落し、ウイルス保管容器は砕け散る。やがてMM-88は大気中で増殖を始め、全世界に広まった。

<「ドゥームズデイ」>
・あらすじは、死のウイルスが数百万人の命を奪った2008年から27年後に、再び同じウイルスが蔓延。その直後、政府は27年前にウイルスを封じ込めるべく隔離した街に、いまだ生存者がいる事実を知る。治療薬の存在を確信した政府は、リーダー率いる一流のスペシャリスト・チームを隔離した街に送り込む。

<「コンテイジョン」>
・2011年のアメリカのスリラー映画。高い確率で死をもたらす感染症の脅威とパニックを描く。あらすじはこうです。香港への出張旅行を終えたベスが、空港で電話をしながら時折咳き込んでいました。風邪の引き始めのようにも見えるが、その2日後に突然はげしい痙攣を起こして意識不明に陥る。彼女の夫であるミッチは彼女を急いで病院に連れて行くが、未知の病気で劇症型脳炎を発症しており、そのまま死亡してしまう。

<「ミッション:インポッシブル2」>
・あらすじは、バイオサイト製薬会社の研究員である博士は、自身が開発した感染すれば20時間で治癒不可能となり死亡するキメラウイルスと、その治療薬であるベレロフォンを護衛のもとシドニーからアトランタへ旅客機で輸送するはずであったが、IMFメンバーに殺害され、強奪されてしまう。これに対しIMF本部はチームを組み盗り返す。キメラウイルスのキメラの語は、動物と人間が合体した偶像が多く出るギリシア神話に登場する生物「キマイラ」に由来する。



『日本と世界を知るためのファクト図鑑』
偏見や思い込みを排して世界を正しく解釈する!
佐藤優 監修   宝島社   2019/11/27



<キリスト教とイスラム教は近い宗教だからこそ対立する>
・(思い込み):現在、キリスト教国とイスラム教国が激しく対立していることから、両方の宗教はまったく異なる特質を持つ宗教なのだろう。)

・(検証):(キリスト教もイスラム教も聖典は旧約聖書)
・キリスト教とイスラム教にユダヤ教を加えた三つの宗教は、アブラハムの宗教といわれる。三つの宗教はともに中東に起源を持っており、預言者アブラハムを始祖と信じている宗教である。ユダヤ人はアブラハムの二人の息子の中のイサクの子孫であると主張する一方、イスラム教徒はもう一人の息子イシュマエルの子孫であると主張している。また、三つの宗教はともに旧約聖書を聖典の一つとしている。
(長年にわたる対立の歴史はいつ終わるのか?)
・イランをはじめとする多くのイスラム教国で、イスラム教以外の多くの布教活動は禁止されている一方で、キリスト教とユダヤ教は信仰を認められている。もちろん、そうした国ではイスラム教徒以外に選挙権がないなど、イスラム教徒と同様の権利を有していないが、特別待遇にある宗教だと述べることができる。

<死刑制度がある国は世界の約3割を占める>
(思い込み):(近年、日本では死刑廃止問題について活発な議論が行われている。また、EUは死刑の廃止を宣言しており、死刑がある国は遅れた国である。)
(検証):2018年現在、198の国と地域のうちで142の国が死刑制度を廃止・停止している。その割合は全体の7割を超える。だが、逆の側面から見れば、3割の国がいまだに死刑制度を廃止・停止していないという事実がある。さらに、通常の犯罪のみ死刑を廃止した8カ国と、制度として死刑はあるが過去10年の執行がない28カ国を、死刑存置国の56カ国・地域と合わせると92カ国となり、完全廃止した106カ国に迫る数字となるのだ。そのため、死刑廃止が世界の時流といい切ることはできない。
 死刑廃止の是非は一概にいえない問題であるが、死刑を廃止しない国がこれほど多い理由を考えた場合、一つには宗教的な理由が多い。
(死刑を望む国民感情 死刑を巡る心情的な問題)
・死刑が犯罪の抑止力になるという主張がされているが、その実証性は低い。だが、犯罪によって肉親を失った家族が、犯人に対して死刑を望む感情は理解できるものがある。

<世界でもっとも民主主義指数が高い国はノルウェー>
(思い込み):(世界の国でもっとも民主主義指数が高い国は、やはりなんといっても民主主義の象徴といっても過言ではないアメリカ合衆国だろう。)
(検証):(子どもの頃から国ぐるみで民主主義への関心を育てる)
・そのランキングで長年1位に輝いているのは、民主主義の代名詞ともいえるアメリカではなく、実は北欧のノルウェーなのである。なお、2018年の結果ではアメリカは25位、日本は22位だ。
 それでは、ノルウェーのどのような点が民主主義的なのだろうか。ノルウェーの人口はわずか533万人と国の規模は小さいが、民主主義への意識は比べものにならないくらい高い。たとえば、ノルウェーの教育現場では、小学校から民主主義の大切さを教えるだけでなく、各政党が子どものための政策をつくっているため、高学年の生徒は選挙小屋と呼ばれる施設を巡って質問をしたり、レポートをまとめたりする。
 また、ノルウェーの8割以上の高校では、生徒会が政党の代表を招いて討論会を催すという。こうした子どもの頃から徹底した教育が、民主主義への関心の高さを支えているのだ。
(政治参加のしやすさは日本とは雲泥の差)
・ノルウェーは選挙運動もユニークだ。ノルウェーでは選挙期間中、前述の選挙小屋が通り沿いに建てられる。選挙小屋はカラフルでかわいらしいデザインの小屋で、子どもから大人まで気軽に訪れることができる。

・また、選挙権および被選挙権は18歳以上と規定され、立候補の際の供託金もいらないので、なんとオスロ市議会には女子高校生の市議会議員ばかりか、高校生の国会議員候補までいるという。

<先進国では就労後に学び直すリカレント教育が一般的だ>
(思い込み):社会人になってから大学に入学して教育を受けるのは、日本だけでなく海外でも特殊な例である。
(検証):(諸外国では一般的な社会人の大学入学)
・リカレント教育とは、スウェーデンの経済学者レーンが提唱した教育の概念で、生涯にわたって教育と就労を繰り返していく教育のことをいう。日本語では、「生涯教育」や「回帰教育」、「循環教育」などと呼ばれる。

・しかし、諸外国では日本人の想像以上にリカレント教育が普及しており、大学入学者の25歳以上の割合はOECD各国平均ですでに約2割に達している。一方、日本における社会人学生比率は1.9%に過ぎない。
(日本でリカレント教育が定着しない理由とは?)
・諸外国では、大学入学時の平均年齢も高い。アメリカでは大学入学年齢の平均は27歳で大学進学率は74%、ノルウェーに至っては大学入学年齢の平均が30歳で、進学率は76%となっている。18歳で大学に入学して22歳で卒業して就職するというのが常識となっている日本の大学入学年齢の平均は18歳(2017年)だという。
 この歴然たる差は、大学というもののとらえ方の違いから来ている。北欧では、高校を卒業したら、まずは経済的に自立することが最優先される。就職して社会経験を積んでから、資格取得やキャリアアップ、知的好奇心の充足のために大学へ進むのが一般的なのだ。しかも、大学の学費は自国民も留学生も無料だというから驚きである。
 
・また、リカレント教育が盛んな理由の一つに、離職のしやすさがある。リカレント教育が特に盛んなフランス、ベルギー、イタリア、スウェーデンでは「有給教育訓練制度」がすでに立法化されており、教育や訓練を受ける目的で一定期間離職することが認められているのだ。

<アメリカは日本以上に学歴主義である>
・(思い込み):自由と独立精神を重視するアメリカ社会では、どのような人であろうとも、実力さえあればチャンスは平等に与えられている。
(検証):(アメリカの管理職のほとんどは高学歴)
・アメリカという国は実力主義の国であり、一人ひとりの人間が競争する社会であることは多く知られているが、実は日本以上の学歴社会である。個人の努力や実力以外の要素である学歴が人生における成功の鍵を握っているのだ。
 
・アメリカの大企業の部長の最終学歴を表す統計によれば、大学院修了の人事部長は61.6%、営業部長は45.6%、経理部長は43.9%、四年生大学卒ではそれぞれ、35.4%、43.5%、56.1%となっている。2012年の日本における従業員500人以上の会社での役員の割合は、大学院修了6.3%、大学卒67.8%となっている。管理職と役員の比較であるので正確に対応してはいないが、それでもアメリカ社会において学歴がいかに重要であるかが端的に理解できる資料である。
(ワスプから学歴重視へアメリカ社会秩序の変化)
・かつてアメリカでは、「ワスプ(WASP)」と呼ばれるアングロサクソン系の白人で、プロテスタントであることが社会的地位を築く上で、非常に重要なものとなっていた。その支配階級とも呼び得るワスプの師弟が通う学校が、ハーバード大、コロンビア大、プリンストン大などのアイビーリーグと呼ばれる名門校であった。

・このようにアメリカ社会では学歴が重んじられ、どこの大学のどの学科を卒業し、どこの大学院や博士号を取ったかが社会的に非常に重要なものとなっているのである。こうした状況は、アメリカ社会が平等な社会に見えて、実は保守的なシステムを持つ社会であると批判されている原因となっている。

<オーストラリアの国民の20人に1人は中国人だ>
・(思い込み):(オーストラリアは移民国家として知られているが、その多くが欧米諸国の出身者で占められているはずだ。)
・(検証):(オーストラリアに絶大な影響力を振るう中国)
・オーストラリアは、1970年代から、さまざまな文化を持つ人々が共存できる社会を目指す「多文化主義」の旗印の下で各国からの移民を積極的に受け入れてきた。2019年現在、オーストラリアの全人口の約29%が国外で生まれているという。その内訳を見ると、かつての宗主国のイギリスからの移住者ももちろん多いが、特筆すべきは中国からの移住者の割合である。
 2018年に発表された統計データによれば、中国からの移住者は2018年までの5年間で平均して毎年約7〜8万人増加しており、2019年現在、中国からの移住者の総数は130万人にも上ると推測されている。オーストラリアの人口は約2500万人なので、全人口のおよそ5%、20人に1人が中国人ということになるのだ。
(静かに侵食されているオーストラリア)
・ところが、中国人の移住者が増えることは、オーストラリアにとってメリットばかりではない。多くの中国人が投資を目的にオーストラリアの土地や不動産を購入したことで、国内の住宅価格が高騰し、オーストラリア人が住宅を買いにくくなるという現象が起きているのだ。

<アメリカにおける銃による死者は、独立戦争以降の戦死者を上回る>
(思い込み):(アメリカは大規模な戦争を経験しており、多数の戦死者を出している。その数はアメリカ国内の銃による死者とは比べものにならない)
(検証):(簡単に銃が買えるアメリカでは銃は自由の象徴の一つである)
・アメリカは銃社会である。自衛のための銃の所有を国民に認めている国はアメリカ以外にもあるが、西欧の先進国といわれる国で、国民が銃を所持できる国はアメリカだけだ。
 アメリカにある政治発言の信憑性をチェックするサイトであるパンディットファクトの2015年の記事によると、アメリカの独立戦争以降の戦死者の数は約140万人であり、1968年から2015年の間にアメリカにおいて銃によって殺害された人の数は150万人を超えているという統計がある。この数字はアメリカがいかに銃社会であり、銃による犯罪が多発している国であるかということをはっきりと示すものである。

・また、かつてはアメリカ市民であればスーパーでも簡単に銃を買うことができたため、アメリカの4割の家庭が銃を所持しているという統計もある。
(銃規制を阻止する強力な圧力団体の存在とやまぬ銃犯罪)
・毎年驚くほどの銃による犠牲者が出ているのにもかかわらず、なぜ銃規制が進まないのかといえば、政治的・経済的・社会的に強大な影響を持つ全米ライフル協会(NRA)の存在があるからである。この協会の会員数は約500万人、多くの著名人が加入しており、莫大な資金力があるといわれている。NRAは銃規制に関する法案が提出されるとすぐにアメリカ全土の会員による署名運動を行い、反対運動を展開する。

<アメリカでもすべての子どもが学校に通っているわけではない>
・(思い込み):先進国は学校教育が基本。公立にしろ、私立にしろ、学校での教育が必要不可欠であり、それはアメリカでも変わらない。
(検証):(教育は学校以外でもできるという考え方)
・アメリカにおいては50州すべてで、学校に通わずに親が家庭で勉強を教えるホームスク−リングという制度が認められている。
 アメリカ全土で2〜3%、つまりは、50人に1人以上の子どもがこの制度の下で勉強しているという現状がある。

・また、アメリカの大学入試では単に学力だけが問題とはならないため、どのような教育をどのように学んできたのかという点も重視されるが、ホームスク−リングを受けてきた子どもたちが、学校教育を受けてきた子どもたちに比べて入試が不利になるわけではないという点も重要である。
(社会集団の中にいることで背負うリスクも存在する)
・アメリカにおいて学校教育よりもホームスク−リングを行う家庭が少なからず存在している理由の一つとして、銃問題がある。

・このようにアメリカの学校は絶対に安全な場所とはいえず、しばしば悲劇的な事件の舞台となっている。そのため、危険な学校よりも子どもたちを自分たちで守ることができる自宅で教育を行ったほうがよいと考える親がいるのも理解できるだろう。

・また、日本にも同様に存在している問題として、いじめを理由としたものがある。なんらかの形でいじめを受けている学校で教育を受けている子どもが、いじめを受けている学校で教育を受け続けるよりも家庭内で教育を受けたほうが、学力が伸び、精神的にもよい場合が多々存在する。そうした理由によってホームスク−リングが選択されることもあるのだ。
 いずれにせよ、ホームスク−リングという制度がアメリカでは公的に認められており、そのことによって学力が伸びている子どもも間違いなくいることは事実である。

<2050年に世界人口の40%が深刻な水不足に陥る>
・(思い込み):温暖化で北極の水が溶け、海面水位が上がるほどなので、将来的に地球の水資源は豊かになるだろう。
(検証):(このまま行けば人類の4割以上が水不足に)
・我々は普段、水道から飲料として、または生活用水として当たり前のように水を得ている。水は、人間の生活にとっても、生命維持活動にとっても、絶対に必要不可欠な資源だといえる。しかし、その水が、将来的には地球規模で不足するかもしれない。
 OECDの調査によれば、2000年時点で世界の水需要は約3600k㎥だったが、2000年から2050年までの間に製造業に使われる工業用水が+400%、発電用の水が+140%、生活用水が+30%ほど増加し、水需要全体で55%も増加すると見込まれており、その結果として2050年時点で深刻な水不足に陥る河川流域の人口が、世界人口の4割以上である39億人にも達する可能性があるというのだ。将来的に人類が水不足に見舞われるかもしれないという予測は、OECD以外にもユネスコやアジア開発銀行なども発表しており、信憑性が高い。
(安定的に水を供給できる体制づくりが急務)
・今後、地球上の多くの人々が水不足に陥ることになれば、それが紛争の火種になる可能性もある。実際に2010年からナイル川の水資源を巡ってエジプトとエチオピアが対立を続けている。人類は、今後数十年をかけて地球上のできる限り広い範囲に対して安定的に水を供給できる体制を整備する必要がある。

<研究開発費の対GDP比率がもっとも高い国はイスラエルだ>
・(思い込み):(研究開発費のGDPに対する割合がもっとも高い国は、もっとも研究開発費の高いアメリカだろう。)
・(検証):(研究開発に巨額を投じるイスラエルの真意)
・国の研究開発費の多さを比べた場合、アメリカが毎年計上している額は5400億ドル以上に上り、約4960億ドルの中国と差が縮んだものの首位となっている(ちなみに、日本は約1760億ドルで3位。いずれも2017年の統計データによる)。しかし、研究開発費の対GDP比となると、その順位は大きく様変わりする。なんと首位は、イスラエルなのだ。イスラエルは、これまで研究開発費のGDPに対する割合がもっとも高い国に何度も選ばれており、2015年のデータによれば、研究開発費が対GDPの4.27%に上っていたという。
 研究開発費自体の規模は、2016年で130億ドル程度とアメリカや日本に比べればかなり少ないが、それでもイスラエルの人口がわずか902万人、国土面積は四国とほぼ同じ大きさしかないことを考えれば、イスラエルという国の予算がどれほど研究開発に傾斜しているかがわかる。
(世界中から研究者が集まる新規事業国家)
・また、イスラエルは「新規事業国家」としてもよく知られている。つまり、ゼロからイチを生み出すスタートアップ企業を多く生み出しているのだ。あまり知られていないが、私たちの身の回りには、イスラエルで生まれた技術が溢れている。たとえば、VR、自動運転車画像認識チップ、ZIP圧縮技術、CT診断装置、USBメモリ、ドローン、プチトマト、3Dプリンター、レーシックなどは、実はイスラエル発の技術なのだ。
 そのため、イスラエルには世界中から優秀な技術者が集まっているだけでなく、多くのグローバル企業が最先端の技術を求めてイスラエルに研究拠点を置いており、今やシリコンバレーにも匹敵する技術力を誇っているといわれる。
 イスラエルと周辺のアラブ諸国との間の緊張関係が続く限り、イスラエル国民は自分たちの国と民族を守るために、常に経済成長を続けて国力を維持しようと、小国ながらも人類の最先端を行く技術を生み出し続けていくのかもしれない。


<世界のCO2排出量は減っていない>
(思い込み):(国際会議の場でCO2削減問題が話し合われており、大気中のCO2量を減らすため、各国は最大限の努力をしている。)
・(検証):(急ピッチの工業化がCO2排出量を増やしている)
・世界のCO2排出量は増加し続けているが、その一例として気象庁が2018年に発表した岩手県大船渡市三陸町綾里における統計を展示しよう。綾里での1987年度のCO2量は351.4PPMであったものが、2018年には412.0PPMと過去最大の数値となっている。
 さらに、ほかの観測場所においてもCO2量は増加し続け、過去最大の数値となっている。もちろん日本だけではなく、この状況は世界でも同様である。大気中のCO2は温室効果ガスとして作用し、温暖化現象や異常気象を引き起こす大きな要因である。

・では、なぜこのようにCO2量が増え続けているのだろうか。その原因の一つとして中国やインドといった国の急激な工業化を挙げることができる。先進国によるCO2排出量が規制によって少なくなっても、今まで多くのCO2を排出することがなかった国がCO2を大量に排出するようになり、世界全体では排出量が増えているのだ。この状況を打破するためには新興工業国のCO2排出量の削減が絶対的に必要となる。
(十分な対策を取らずにCO2を大量に排出している国がネック)
・EUなどの先進諸国は地球環境問題に真剣に取り組み、CO2排出量の削減を行っているが、アメリカはトランプが大統領になってから、CO2排出量削減対策を放棄する方向に向かっている。
 さらに、中国、インド、ブラジルなどの新興工業国は急速な工業化のみを進め、環境問題を二の次にしている現状がある。

・だが、各国がエゴを押し通すことによってCO2排出量は確実に増加し、早急に世界的な対策を取らなければ取り返しのつかない状況に陥る一歩手前にあることを、我々はしっかりと理解しなければならない。

<2100年以降は、人口は増えない>
・(思い込み):(発展途上国がこのまま経済的に豊かになり続ければ、世界人口は際限なく増加するはずだ。)
(検証):(世界人口は2100年までに109億人まで増加)
・1927年には20億人だった世界人口は、その60年後の1987年には50億人に、2019年には77億人に達するというペースで急速に増え続けている。さらに国連は2019年に、世界の人口は2050年までに97億人、2100年までに109億人に増えるだろうという推計を発表した。この推計を聞くと、誰もが「増えた人口に耐え切れず、地球上の全資源は枯渇してしまう!」と一抹の不安を感じざるを得ないだろう。
 ところが、上述の国連による推計では、次のように続く。サブサハラ・アフリカでは2050年まで人口が倍増するが、世界人口は2100年頃にはピークを迎え、少子高齢化などの影響によって人口増加率はゼロ成長となり、その先は減少するようになるというのだ。
 ちなみに、その頃には、人口減の国や地域は約6割に上るようになるという。
 将来的にある時点から世界人口が減少し始めるのは間違いなさそうだが、だからといって安心はできない。2050年までの人口の5割超を、インド、ナイジェリア、パキスタンなどの9カ国の人口が占めるという。特に人口増加が著しく、21世紀を通じて人口が増え続けると見込まれているのは、サブサハラ・アフリカである。
(人口の増減は国によって偏りが生じる)
・つまり、サブサハラ・アフリカのような後発開発途上国の多くの地域では急速な人口増加が続く一方で、先進国においては少子高齢化の影響によって次第に人口減に傾く国が増えていくことになる。
 推計によると、2100年にはアフリカで人口が0.61%増加する一方、アジアは0.39%減、ヨーロッパで0.14%減となるという。その場合、人口が増え続ける途上国と、人口が減り続ける先進国との間の経済面や衛生面における格差をどうするのかという問題が浮上することになるのだ。

<電気を使えない人は全世界人口の約20%しかいない。>
(思い込み):(世界にまだ後進国も多く、いまだ電気を使えない人々が大勢いる。)
(検証):(電力消費量は一貫して伸び続けてきた)
・宇宙から夜の地球を眺めた写真を見たことがあるだろうか。夜の闇の中で、都市部や道路沿いが明るく輝いている映像だ。

・そんな写真を見たことがある人の多くが、世界にはいまだに電気を使えない人が大勢いるのだという感想を抱くかもしれない。しかし、実際には現時点で世界人口の約80%が電気を使うことができているのである。
(電気を使える地域にはいまだ偏りがある)
・世界の国や地域がどの程度「電力化」されているのかを見る電力化率はどうだろうか。
 先進国全体ではすでに99.9%が電力化されており、無電化地域に暮している人の数は100万人程度である。それに対し、南米は電力化率が95%で無電化地域人口が2400万人、中東は電力化率が91%で無電化地域人口が1900万人、アジアの発展途上国は電力化率が83%で無電化地域人口が6億1500万人、アフリカの北アフリカは電力化率が95%で無電化地域人口が100万人と、極めて高い割合で電力化されているものの、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)は、電力化率はわずか32%、無電化地域人口は5億9900万人にもおよぶ。実に、サブサハラ・アフリカの68%の人口が電気のない暮らしを余儀なくされているのである。

・特にサブサハラ・アフリカにおける電力化率の改善は、同地域における人口増加率や水資源の不足などと合わせて、人類にとっての大きな政策課題の一つとなっている。

<アメリカにおける政権交代は経済政策の違いから起きる>
・(思い込み):(アメリカでは大統領の力が強大だ。そのため、有権者は大統領候補者を基準に政治政党を決めている。)
(検証):(二つの政党の経済政策の違いが投票行動に影響を与える)
・アメリカの二大政党の経済政策はまったく異なる特徴を持っている。民主党の経済政策は基本的に経済に国家が介入し、経済的流れを政府がコントロールし、企業よりも国民一人ひとりの利益を優先する。それに対して共和党は政府が経済に介入することをなるべく避け、企業の成功が国家の繁栄につながると考える。さらに、経済格差は当然と考え、企業への統制は行わない政策を取る。
(自由経済優先の共和党と平等主義優先の民主党との差異)
・共和党は経済的自由主義を優先するため、国内の企業に対しても税率を低くし、経済発展を促そうとする。一方、民主党は税負担の公平を主張し、利益の上がっている企業はそれだけ多くの税を払い、貧しい国民はより少ない税で済むようにすべきであると考える。こうした違いは経済政策全般におよぶ。

・自由競争の勝者が個人として多くのモノを所有すべきであると考えるのが共和党の経済的自由主義政策である。それに対して民主党は自由よりも平等を優先するために、経済への国家介入を行って格差社会をなるべくなくそうとする。
 つまりは、共和党と民主党の経済政策の違いは、自由を優先すべきか、それとも、平等を優先すべきかという民主主義の二つの根本原理のヘゲモニー問題という側面もあるのである。

<教育を受けられる子どもは増加している>
(思い込み):(発展途上国ではいまだ学校に通えない子どもが多く存在している。)
(検証):(国連が掲げた就学率向上という目標)
・2000年9月、ニューヨークの国際連合本部で開催された、189の国連加盟国が参加した国連ミレニアムサミットにおいて全会一致で「ミレニアム宣言」が採択された。人類が21世紀を迎えるにあたって「平和で繁栄した公正な世界をつくり出すこと」や「貧困をなくすこと」などを目標として、世界各国が団結して取り組んでいくことが宣言されたのである。

・「ミレニアム開発目標」では、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」などが定められた。その中で、教育に関して定められたことは、「2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」というものだった。
 1991年時点では、初等・中等教育への就学率は先進地域で96.3%、開発途上地域で79.8%、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)地域で53.5%と、先進国と途上国との間には大きな隔たりがあったのだ。
(就学率は向上しているがいまだ課題も残る)
・しかし、国際的な努力の結果、世界の初等教育を受けられない児童数は着実に減っていき、2000年に1億人だった児童数は2012年までに5800万人に減少させることができた。開発途上地域全体の初等・中等教育への就学率は200年には83.5%だったものが、2012年には90.5%にまで上昇。約9割の子どもたちが初等・中等教育を受けられるようになった。
 また、特に劇的に就学率が向上したのがサブサハラ・アフリカ地域で、2000年には60.3%の児童しか初等・中等教育を受けられなかったのが、2012年には77.9%にまで上昇している。

<世界は殺人犯罪に溢れていない>
<世界人口の7割以上が神を信じている>
<カンガルーはオーストラリアでは害獣として駆除されている>
<世界でもっともプレーされているスポーツはサッカーではない>
・日本バレーボール協会によれば、全世界でもっとも競技人口が多いのはバレーボールだという。

・競技人口1位はバレーボールの約5億人、2位がバスケットボールの約4億5000万人、3位は卓球の約3億人、4位はサッカーの約2億6000万人。



『未来の中国年表』
超高齢大国でこれから起こること
近藤大介   講談社   2018/6/20



<2018年  中国でも「人口減少時代」が始まった>
・長年にわたる「一人っ子」政策が、少子高齢化時代を大幅に早めてしまった。しかも日本と違って、国の社会保障制度が十分に整っていないまま少子高齢化へと突入することになる。

(出生数が1786万人から1723万人へ)
・少子高齢化が世界で一番進んでいるのは日本だが、中国は日本に遅れること約30年で、同じ道を歩んでいる。

・ところが、全面的な「二人っ子政策」元年とも言える2017年に出生数は増えるどころか、63万人も減少してしまったのである。

(「子育てする20代女性」が600万人も減っている!)
・出生数が減少した主な原因は、ひとえに一人目の子供の出生数が減少したためだ。

・それにしても、一人目の子供の出生数が、日本の3年分近くに相当する年間約250万人も減少するというのは、尋常な社会ではない。いったい中国で何が起こっているのか?

(人口激増を懸念した搶ャ平)
・そして食糧を豊富にするためには、できるだけ多くの人々を、農作業に従事させる必要があった。古代から中国大陸において戦争が絶えなかったのは、一つは土地の争奪が原因だが、もう一つは人間の争奪戦だった。

・こうして中国は、憲法で家庭の出産数に制限を設けるという、世界でも稀有な国家となったのだった。

(日本の人口よりも多い「中国の一人っ子」)
・2010年の時点で、全人口13億3972万人中、一人っ子の数は、すでに1億4000万人に達していた。これは日本の総人口よりも多い数だ。

(親と祖父母が子供を徹底的に甘やかす)
・一般に、中国が日本を反面教師にしている事柄が二つあると言われる。一つは日本のバブル経済の崩壊で、もう一つが日本の少子高齢化である。

・特に、中国の人口規模は日本の11倍にあるので、近未来に人類が経験したことのない少子高齢化の巨大津波が襲ってくるリスクがあったのだ。

(激論!「二人っ子」は是か非か)
・こうして2016年元旦から、「人口及び計画出産法」が改正され、中国は全面的な「二人っ子政策」の時代を迎えたのだった。

(子供を生まなくなった3つの理由)
・@子育てコストの上昇、A公共サービスの欠如、B出産観念の変化(夫婦二人きりの生活を楽しみたい)

(病院の診察整理券を狙うダフ屋たち)
・私が北京に住んでいた頃は、病院の「挂号」(診察の順番を示す整理券)を確保するために夜明け前から並んだり、「挂号」を高く売りつける「黄牛」(ダフ屋)が病院内に跋扈したりということが起こっていた。

(貧富の格差が定着する)
・だが中国は、依然として世界最大の発展途上国であり、あらゆるものが未整備のまま、少子化に突入したのだ。

<2019年  首都・北京の人口もごっそり減る>
・自然減に加え、習近平政権の複雑な思惑と極端な政策により、この年から北京は大きく姿を変えていく。

(2万2000人の減少)
・21世紀に入って17年目にして、初めて北京市の人口が減少したのだ。

(北京の人口が減る本当の理由?)
・北京市の人口がマイナス成長に転じたことは、北京市の人口は発展の変動の趨勢にマッチしたもの。

(3億人の出稼ぎ労働者)
・「農民工」の都市部での悲惨な状況は、たびたび社会問題となってきた。

・彼ら全員に大都市の戸籍を与えていけば、大都市はすぐにパンクしてしまう。だがそうかといって、「現代版アパルトヘイト」と揶揄される中国の戸籍制度は、隣国の北朝鮮を除けば、世界に類を見ないものだ。

(「特大都市」「超大都市」への移転はより厳しく)
・北京市の戸籍改革計画では、「中心部6区の人口を、2020年までに2014年比で15%減らす」としている。

(自治体が住人を選抜する!)
・習近平政権による戸籍改革で、もう一つ興味深いのは、「積分落戸」と呼ばれる新制度の導入である。これは、「特大都市」及び「超大都市」の戸籍を取得したい中国人を点数づけして、自治体が選別するというものだ。

(「第二首都」誕生)
・一つめは、「第二首都」の建設である。

(「低端人口」の一掃が始まる)
・その出稼ぎ労働者たちのことを、「低端人口」(下層の人々)と呼んでいるのだ。

・「低端人口」は、北京市内に数百万人いるとも1000万人近くいるとも言われた。

(本地人と外地人の分断)
・「『低端人口』を追い出さないから、北京の街は汚いし、人騙しは跋扈するし、治安も悪い」

(「拆拆拆」される人々)
・これによって、合法と違法の間のような、道路に少し張り出した店舗やレストランなども、すべて撤去させられてしまった。中国語で「撤去する」という動詞は「拆(チャイ)」と言うが、「拆拆拆」という言葉が、たちまち北京で流行語になった。

(20年前にタイムスリップ)
・つまり、北京の街並みは、20年前にタイムスリップしたのである。

・「低端人口がいないと、ゴミの回収から宅配便の配達まで何もできなくなってしまうことが分かった。それが春節の後、彼らを黙認するようになった」

<2020年 適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す>
・適齢期の男性が適齢期の女性よりも圧倒的に多い社会が到来する。「剰男」(余った男)たちが選ぶ3つの道とは?

(「一人っ子政策」最大の副作用)
・だが、そうした歪みの中でも看過できない「副作用」が、男女比率の歪みである。

(女性100人に男性118人)
・嬰児の性別の話に戻ろう。中国の農村部では、女児が生まれた場合、役場に出生届を出さなかったり、間引いてしまったり、業者に売りつけてしまったりということが横行した。何と言っても、欲しいのは跡取り息子なのである。

・世界の出生数を見ると、男子が女子より多いのは各国に共通な現象で、国連では「102から107の間」を正常な国家と定義づけている。

・だが、時すでに遅しだった。中国は2020年には、結婚適齢期とされる20歳から45歳までの人口で見ると、男性の数が女性の数よりも、3000万人も多い社会となってしまうのだ。

(「持ち家のない男」は話にならない)
・中国の女性は、マイホームを買えて、「家を成せる」男性と結婚したいのである。

(国策ドラマだった『裸婚時代』)
・2011年春、中国全土で『裸婚時代』というテレビドラマが大ヒットした。「裸婚」とは、何とも意味深な漢字だが、「裸一貫(無一文)で結婚する」という意味である。つまり、究極のジミ婚である。

(「お一人様の日」で大儲け)
・それは、「1」が4つ並ぶ11月11日を、「お一人様の日」と定めて、結婚できなかったり、彼女や彼氏がいない若者たちに、24時間限定の大規模なセールを行ったのである。

(「超男性社会」の近未来)
・重ねて言うが、2020年の中国には、20歳から45歳までの男性が、同年齢の女性より3000万人も多いという、人類未体験の「超男性社会」が到来する。

・将来は「アフリカ系中国人」という人々も、普通に目にするようになるかもしれない。

(同性愛大国への道)
・近未来の中国で起こるであろう二つ目の現象は、男性の同性愛者の増加である。

・「人民解放軍の若い兵士たちの中には、大量の同性愛者がいる」

・社会主義国の中国では、例えば、人民解放軍などの組織では同性愛は禁止しているが、それでもいまどきの若者たちは、意外にあっけらかんとしている。そもそも中国人は他人に無関心なこともあって、同性愛の青年たちは徐々に表に出始めてきているのである。

(「空巣青年」の「孤独経済」)
・第三の現象は、「空巣青年」の増加である。

・日本語の「空き巣」とは無関係で、親元を離れて大都市で一人暮らしをしている若者のことだ。

<2021年  中国共産党100周年で「貧困ゼロ」に>
・北京から農村に追放されて貧しい青少年時代を送った習近平は、農村の貧困層の支持を盤石にし、長期政権を実現させるため、ありとあらゆる手段を使って脱貧困を目指そうとする。

(中国の「中流」「貧困ライン」の基準)
・長い演説の中で、これでもかというほど「脱貧困」を力説したのだった。

(3000万人の「最貧困層」を3年でゼロにする)
・貧困家庭が政府から生活保護を受けるには、地元の役場へ行って、年収が2300元(約3万9000円)以下であるという「貧困証明書」を入手しないといけない。この年収2300元という基準は、胡錦涛時代の2011年に定めた。「貧困証明書」の様式は各地域によってまちまちで、個人がいかに生活が苦しいかを記述し、役所がそれにハンコを押す。

・習近平主席が言う「貧困を撲滅する」という意味は、「貧困証明を取る人をなくす」ということである。「貧困証明書」取得者は2017年末時点で、約3000万人いる。そこで、2018年から毎年1000万人ずつ減らしていき、2020年にゼロにしようという計画なのだ。

(習主席の「貧困」体験)
・「私は前世紀の1960年代末、まだ十何歳で、北京から陝西省延安市近郊にある梁家河という寒村に派遣され、そこで7年間、農民をやった。貧困に喘ぐ村民たちとともに穴倉で生活し、土坑の上で寝た。何ヵ月も、一切れの肉さえ食べられないありさまだった。私はその村の党支部の書記になり、中国の庶民たちが何を求めているのかを理解した」

(毒食品問題の深層)
・胡錦涛時代に政権幹部から、「中国は1割のヨーロッパと9割のアフリカだ」という話を聞いたことがあったが、まさに言い得て妙だった。

・数年前に日本で問題になった中国産毒食品の氾濫は、まさに貧困の為せるわざである。

(「貧困地区の大開発」を利用して利権づくり)
・ともあれ江沢民政権は、西部大開発の名のものに、西部地域を巻き込んだ大規模なインフラ事業などを推し進めていった。

(「鬼城」が全国あちこちに)
・中国全土に点在するこのような「鬼城」は、大きな社会問題になった。さらに問題なのは、それらの建設費用の一部が、地方幹部の懐にキックバックされたことだ。

(農村を一変させた通販サイト)
・習近平政権になってから始めた貧困撲滅の試みを、二つ紹介した。一つはアリババが始めた農村版の「農村淘宝」である。

(最貧困地域をITの牙城に)
・貴州省のような貧困地域でも、3分の2もの地区で深刻な腐敗があったこと自体驚きだが、ともかく腐敗が蔓延しない監視システムを作った。
 その上でIT企業を誘致し、省の振興を図った。

(貧困を脱することができない村は潰す)
・脱貧困が可能と判断した村と、不可能と判断した村である。まず、不可能と判断した地域では、村人たちを早期に脱貧困が可能と思える地域まで引っ越しさせる。

(貧困層を養う5つの政策とは)
・第一に、インタ―ネット通販と農村を結びつける。第二に、1万の村の村民を100の都市の家政婦にする貧困層扶養計画。第三に、対外投資を行う企業に、農村の人々を海外に派遣する労働者として雇ってもらう。第四に多国籍企業に労働者として雇ってもらう。第五に、国境地域の貿易に貧困地域の人々を巻き込んでいくのだ。

<2022年  大卒が年間900万人を超え「大失業時代」到来>
・国が豊かになるにつれて大学生の数は今後も増え続ける。だが、高度経済成長が終わりつつある中、巨大な雇用を創出できなくなると…………。

(世界の大学生の2割は中国人)
・2017年9月現在、中国の現役大学生は3699万人に上り、世界の大学生の2割を占めるという。

(卒業生も日本の14倍)
・2022年に卒業生の数が990万人になれば、2017年時点の日本の16倍である。

・大卒者に対する社会の需要に対して、供給側の大卒者が不釣り合いに多いという意味だ。

(毎年1500万人の新規雇用が必要?)
・いくら中国が日本の25倍の国土を擁しているからといって、800万人もの卒業生に見合う職場など、あるはずもない。加えて、2017年には48万900人もの海外留学組が帰国している。さらに高卒や中卒を含めれば、毎年1500万人規模の職場が必要だ。これは東京都の人口よりも多い数である。

(新規就業者数1351万人のカラクリ)
・「2017年の都市部での新規就業者数は1300万人を超え、2017年12月の都市部の失業率は4.9%と、5%を下回った」

・一つは、「滴滴出行」という新興IT企業の存在である。別名「中国版ウーバー」だ。

(多すぎた運転手)
・そのため、大都市では戸籍を持たない運転手の進入を禁止した。この措置によって8割方の運転手が、再び失業してしまったのである。

(「1日に1万6600社が誕生」。だが、その大半は………)
・1日当たり1万6600社ということは、年間600万社!

・だがその一方で、100社創業すれば、そのうち90社から95社くらいは、いつのまにか雲散霧消しているのである。創業とは、死屍累々の残酷な世界なのだということを、深圳を視察して思いしった。

(「一流大卒」以外は結構厳しい)
・おそらく半数近くの大学卒業生が、自分が望むような職場を得ていないのではないか。

(エリートは国家公務員を目指す)
・当時は、学生たちに圧倒的人気だったのが国家公務員で、続いて国有企業だった。

(公務員「給与外所得」の実態)
・そもそも国家公務員が最も人気が高いのは、国有企業以上に安定性があるからだ。さらに、多額の「給与外所得」が見込めるということもあった。

(贈収賄で1日平均842人を処分)
・「この5年間で、154万5000件を立件し、153万7000人を処分した」

(究極の失業対策は「海外への人材輸出」か)
・今後も中国の大卒は増えていくことが見込まれるため、ますます「学歴通脹」(学歴のインフレ)が深刻になっていくのは自明の理だ。中国政府はこの問題を解決するため、海外への留学と海外での就業を奨励していくだろう。

<2023年  世界一の経済大国となり中間層4億人が「爆消費」>
・国際化やIT技術の普及によって、中国人が消費する金額・物量は驚異的な勢いで今後ますます膨らみ続ける。そしてそれは同時に、究極の監視社会にもつながるのか?

(1日で3兆円近くを売り上げるイベント)
(ユニクロもシャープも大儲け)
(悲願を達成した日)
・そして、2010年に日本を抜き去った中国が、次に見据えているのが、トップに君臨するアメリカなのである。

(その日は「2023年から2027年の間」)
(莫大な消費力――4億人の中間所得者層)
(「爆消費の時代」を予測する)
(中国人観光客の誘致は死活問題に)
(5年後の銀座の姿を知る方法)
・私が常々、念頭に置いているのは、「現在の韓国が、5年後の日本」ということである。

・つまり、5年後の銀座の様子を想像したければ、ソウルの明洞を見学しにいくとよいということだ。

(急成長を遂げる中国の「出前」ビジネス)
(クレジットカードは時代遅れ?)
(スマホ決済の履歴で個人に優劣がつけられる)
(『1984年』ビッグブラザーの恐怖)
・ただ、一つだけ警告しておきたいのは、こうしたスマホ決済から応用されるサービスの進化は、国家が国民のプライバシーをすべて管理する社会に直結するということだ。

<2024年  年間1200万人離婚時代がやってくる>
・純粋な愛情の問題から財テク目的まで、中国でさまざまな形の離婚が横行している。このハイペースが続けば2024年には600万人組ものカップルが破綻し………。

(華燭の離婚式)
(「別れ」から生まれる「出会い」)
(世界最大の離婚大国)
(「女性主導型」が多い)
(理由なき決断)
・「中国式離婚」の特徴の二つめは、ある日突然、離婚に至るケースが多いことである。

(地縁よりもカネの縁)
(偽装離婚でもう1軒!)

<2025年  「中国製造2025」は労働力減少を補えるか>
・「世界一の科学技術強国の実現」という野望を実現させるべく、人工知能(AI)・量子科学・自動運転車・次世代通信ほか、あらゆる分野で凄まじい投資と開発競争が行われている。

(中国がこれから傾注する産業分野)
(「労働力不足大国」でもある)
・その結果、中国の製造業における「用工荒」(人手不足)は、日増しに深刻になる一方だ。
(ホワイトカラーよりも厚遇のブルーカラー)
(日系企業の深刻な悩み)
・「慢性的な人手不足で、それはオートメーション化で補っていくしかない」

(李克強首相の檄)
(「創業」プラス「創新」)
・もう一つの質問、IT企業と共産党政権との関係だが、中国政府の資金は潤沢で、多種多様な補助や優遇策を実施している。

(世界最強のAI大国への道を模索)
(巨額投資でAI強国化を目指す)
(量子科学・自動運転車・次世代通信……)
・中国の「IT社会主義」の成否は、もしかしたら21世紀前半の人類を左右する最大のテーマになるかもしれない。

<2035年  総人口が減少しインドの脅威にさらされる>
・「日本を完全に追い抜いた」と確信した中国は、次なる仮想敵国を東から西へ、すなわちインドに定めつつある。労働力人口では今後インドが優勢に立つ。はたして中国はどう出る?

(紀元前から人口調査を行ってきた国)
(中華人民共和国建国後の人口推移)
(中国総人口のピークは2035年?)
・2035年の15億7000万人がピーク

(隣国インドが世界一に)
・さらに2050年になると、インドの人口は16億5897万人に膨れ上がり、中国より約3億人も多くなるのだ。

・そして2100年になると、中国の人口は10億2066万人と、なんとか10億人ラインをキープしている水準だ。これに対し、インドの人口は15億1659万人となり、中国の1.5倍の規模を誇ることになる。

(巨象が昇り、巨竜が沈む)
・中国で20世紀初頭に起こったマンションブームやマイカーブームが、インドでいま本格化し始めたことを勘案すれば、将来インド経済が中国経済を追い越す可能性は、十分あると言える。

(日本を超え、アメリカを超える)
・「2020年から今世紀の半ばまでを、二つの段階に分ける。第一段階は、2020年から2035年までで、小康社会(そこそこ豊かな社会)の建設の基礎の上に、社会主義の現代化を基本的に実現する。第二段階は、2035年から今世紀半ばまでで、富強・民主・文明・和諧・美麗の社会主義現代化強国を建設する」

(北朝鮮よりも緊迫している中印国境)
(「老いた金メダリスト」)
・その時、彼らが日本のことを「老いた金メダリスト」と呼んでいるのを聞いて、ショックを受けた。

(「中印戦争」の可能性は?)
・その意味でも、2035年までに中印が、アジアの覇権を賭けて軍事衝突――そんな悪夢のシナリオが起こらないとは言えないのである。

<2049年 建国100周年を祝うのは5億人の老人>
・日本とほぼ同じ速度で、日本の後を追うように急速な高齢化を迎える中国。ただし、日本と違って社会保障制度が整備されていないまま、しかも10倍の規模の超高齢化社会が誕生する。

(香港の完全返還で起こること)
・その2年前には、もう一つの祝賀行事が控えている。2047年7月1日をもって、特別行政区の香港が、完全に中国に組み込まれるのだ。

(「還暦以上が5億人!」)
・このまま進めば中国は2050年頃、人類が体験したことのない未曽有の高齢化社会を迎えるからだ。

(日本と同じ速度で高齢化)
・中国の高齢化は、日本に送れること30年ほどでやってくることを示している。

(日本の高齢化と異なる二つの点)
・ただし、中国社会の高齢化が、日本社会の高齢化と決定的に異なる点が、二つある。一つは、高齢化社会を迎えた時の「社会の状態」だ。

・65歳以上人口が14%を超える2028年まで、残り10年。中国で流行語になっている「未富先老」(豊かにならないうちに先に高齢化を迎える)、もしくは「未備先老」(制度が整備されないうちに先に高齢化を迎える)の状況が、近未来に確実に起こってくるのである。

・日本とのもう一つの違いは、中国の高齢社会の規模が、日本とは比較にならないほど巨大なことだ。

(「要介護人口」2億人?)
・実際、中国では、すでに高齢化問題が深刻化になり始めている。

(社会保障は一部でパンク寸前)
・それでは、中国の社会保障制度は、高齢者をきちんとカバーしているのか。結論から言えば、必ずしもそうなってはいない。

(正論を言って解任された財務相)
・このままでは中国の年金制度も、日本と同様、破綻に至るリスクは増していくだろう。それでも、「年金崩壊論」は、中国ではタブーになっている。

(「高齢化ビジネス」中国へ輸出のチャンス)
・ともあれ、2050年頃に、60歳以上の人口が5億人に達する中国は、大きな困難を強いられることは間違いない。製造業やサービス業の人手不足、税収不足、投資不足……。それらはまさに、現在の日本が直面している問題だ。

(人口不足を補うために台湾を併合?)
・だが、もし万が一、中台戦争が勃発して、長期の混乱に陥れば、「戦乱時に人口は減少する」という中国史が示している通り、逆に中国は大きな打撃を受けるだろう。

(2049年の中国社会を予測)
・それにしても、5億人の老人社会とは、いったいどんな社会だろうか?

・かつて「空巣青年」と呼ばれた自室でスマホばかりいじっていた青年たちは、「空巣老人」となる。この人たちは、生活にあまり変化はないのではないか。

・アメリカを追い越して、世界最強国家として君臨しているのか、それとも……。「2049年の中国」を、ぜひとも見届けたいものだ。






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