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【No.2 ファイル 壺の記憶】-家宝の壺に眠るのは・・-
[名探偵K No.2 ファイル]
2006年11月18日 12時26分の記事

俺の名前は「K」。
ケーって読んでくれてもかまわないし、
面倒くさければ、呼ばなくったっていいさ。
名前なんて、一種の記号のようなもんだ。
ところで、今回は実にやっかいな事件なんだ。
みんなは信じるかい?今回起こったこんな事件を・・。
そう、あの日は雨が降り注ぐ寂しい日だったな。

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俺の名前は「K」。
ケーって読んでくれてもかまわないし、
面倒くさければ、呼ばなくったっていいさ。
名前なんて、一種の記号のようなもんだ。
ところで、今回は実にやっかいな事件なんだ。
みんなは信じるかい?今回起こったこんな事件を・・。
そう、あの日は雨が降り注ぐ寂しい日だったな。




「多重人格ディテクティブ K」−【No.2 ファイル 壺の記憶】
事件1 家宝の壺に眠るのは・・



−とある村の、醤油(しょうゆ)問屋−
「全く、いつもこんな掃除ばっかしだな。家宝の壺がある蔵らしいが。こんなに壺があるんじゃどれがどれだかわかりゃしないぜ。」

今、この蔵を掃除しているのがこの村の醤油大問屋「窪之屋(くぼのや)」で働いている野村(のむら)である。彼はここに来てまだ間もない。彼が掃除している蔵には数え切れないほどの壺がある。中身はもちろん長年寝かすことにより熟成を行っている醤油だ。



醤油は長く寝かせば寝かすほど味に濃くと旨味が出てくるものだ。
寝かせた年数の長い醤油ほどその希少価値は高い。
野村は壺を見る趣味など持ち合わせてはいないため、この蔵に眠る壺の価値を知らない。最低でも数百万は下るまい。その中でひときわ輝きを放つ壺。
奥にある壺。中には何百年と熟成を行っている醤油が眠っている。
この大問屋がここまで栄えたのもあの壺のおかげとされている。
壺はなかなかその中身を見せない。
30年に一回盛大な祭りが行われ、その時にのみ、あの壺の中の醤油を少し味わうことが出来る。それほどまでに大事な壺と、貴重な醤油なのである。

「しかし、ここにある醤油はそんなに美味いのかねぇ?
ちょっと味見してみるか。どれどれ、この壺がいいかな。」
野村の手は家宝の壺にかかった。
彼はまだこの家のしきたりを知らない。
従ってこの壺の持つ意味など知るはずがなかった。
だから、不用意にその壺に手を伸ばしたのだ。

通常ならば、その行為はこの大問屋を首になるほどの事であったが、今回は違った。
彼がこの行為を行わなかったならば、向こう30年この事件は日の目を見ることがなかったであろう。変な言い方だが、彼のこの行為が事件を日の当たる場所へと導いたのだ。

野村はそっと上に積みかかっている重石をどけて、ふたを取り外した。
「どれどれ、味見をしてみるかな。・・うん・・?なんだこれ・・?」
真っ暗な壺の中の醤油に混じり見慣れたものが浮いている。これは・・?

「う・・うわぁぁ!!」

叫び声を上げ一目散に屋敷に駆け戻る野村。
漆黒色の醤油の中には、人間の死体。この窪之屋の主人、窪塚 崇(くぼつか たかし)が醤油まみれで沈んでいた。





−屋敷内−
「そうですか、わざわざ東京から。この雨ですから電車は全線不通ですしね。」
客人に向かいお茶を出しながら、話を進める婦人。

「すみませんね。私はKと言います。こっちは泉。・・いえいえ妻じゃないですよ。仕事上のパートナーです。実は昨日こっちの方へこいつの古い友達に会いに来ましてね。今日、東京の方に帰る予定だったんですよ。そうしたらこの雨でしょ。雨宿りを出来るところを探していましたらこの店を見つけましてね。それで・・というわけです。」

「まぁ、そうでしたの。ここら辺では私たちの店ぐらいしかないですものね。
この雨がやむまでゆっくりしていって下さいな。
昨日までの一ヶ月間は全く雨など降らなかったのに、いきなりこの雨でしょう。
騒がれていた干ばつの心配もなくなったわね。」
婦人は丁寧な言葉で返事を返した。

「ところで、ご主人の方はどちらの方にいらっしゃるのですか?出来ればご主人にもお礼の言葉を差し上げたいのですが・・。」
そう、Kが言いかけたとき、店の外から屋敷内に駆け込んでくる男の声が響いた。

「大変だぁ!!ご主人が!!ご主人がぁぁぁ!!」

あたりが急に騒がしくなり、Kの質問はかき消された。
すぐに地元の警察に連絡を取ろうとした一同であったが、なにぶんこの雨のため警察が来るにはまだ時間がかかりそうだった。

「まさか、あの人が死んでいるなんて・・。てっきり行方不明になったものと・・。」
そう婦人がつぶやく。

「待って下さい、奥さん。それは一体どういうことなんですか?不躾(ぶしつけ)とは思いますが、私とここにいる泉は実は東京で探偵をやっているものでして・・。何かの力になれればと・・。」とK。
「はい・・。実はあの祭りが会った日、つまりおとといですね。
祭りが終わったのと同時にあの人が急にいなくなってしまいまして・・。
それで警察にも捜索願いをですね・・。」

「祭り・・ですか。それはこの家で行われるのでしょうか?何か特別な意味でもおありで?」
そうKが尋ねると、婦人は家宝の壺をまつったお祝いが行われる事を述べた。


「はぁ。そうでしたか。気を落とさないで下さい。とりあえず私たちは警察が来るまで現場をそのままにしておく必要があると思います。と、言いたいところですが、警察が来るまでに何かあってはいけないと思いますので、私たちが現場に行って、様子をうかがってきます。よろしいですか?」
何を言われてもKは強引に現場へと向かうつもりであった。事件と聞くと頭では解っていても体が言うことを聞かないのだ。生まれつきの探偵・・まさにその表現がピッタリだ。

「ええ、わたしも行きます。これ野村、案内をお願いしますよ。他に残っている者はいますか?」
野村の顔をのぞき込み質問をするが、婦人の目は落ち着かない。そして野村が答える。

「いえ、今日は祭りの後の3休日ということで、
みなさん実家の方へ帰っていると思いますが・・。
いるとすれば私と奥様、
それに窪塚家のご子息“鶴太郎(つるたろう)” 様、
それにご主人の弟である松雄(まつお)様、
叔父に当たる清水(しみず)さまだけでございます。
すぐにお呼びします。」

―蔵付近―
激しい雨はまだその勢いを弱めない。傘を持ち、蔵の前で立ちつくす7人。
「みなさんは、どうぞここで待っていて下さい。
私と泉が中の様子を伺ってきますので。行くぞ、泉。」
家の者達を蔵の入り口に残し、2人は蔵の中へと入っていく。



中にはいるとそこは一面に壺だらけであった。
「どうやら、野村さんの話を聞くと、祭りの日に壺をここから出して、またここに戻したのが今から2日前。それまで今日になるまでは一度もこの蔵の扉は開けていないということらしい。しかも鍵はご主人が一つと、野村さんが一つのあわせて二つ。それ以外には存在しないらしい。となると、犯人は野村さんか?となるわけだが・・まさか自分の犯罪をばらすなんて事はないだろう。・・とすると密室殺人の線が濃いかもしれないな。」
とK。

「……………」しきりに泉が考え込んでいる。

「ザッと見回しても、窓の類はないみたいだしな。
おや?この壺は何だろう?こんなに水がたまってる。」
Kがふと横を見ると大きな壺のふたが開かれ中に水がたくさん溜まっている。大きさはちょうど人が一人入れる位のサイズだ。

これはいったい何のために使うものなのだろう?しかしその注意を泉が遮る。

「あっ!あそこを見て!K。」
泉が天井を指さす。そこには穴が空いており、そこから水が滴っている。どうやら天井には穴が空いているようだ。この長雨のためにそこから水が滴り落ちている。その水が瓶の中に溜まっているのだ。

「なるほどね、こうして蔵の中が水浸しにならないようにしているのか。おや?」
Kが泉をうながして瓶の中を指さす。

「こんなところに新聞紙がある。」
Kがそう言って瓶の中の新聞紙をつまみ上げた。

「これは3日前の新聞じゃないか。ちょうど主人が失踪したときあたりのモノかな?
 でもどうしてこんなところに・・?」

「とにかく死体を確認しに行きましょう、K」
そう言って泉が蔵の中へと進む。

Kと泉がゆっくりと窪塚の遺体のある壺へと近づく。
「この中に死体があるのか。どれちょっと覗いてみるかな。」とK。
「こいつはひどいな・・醤油付けじゃないか。うん?泉、ここを見てみな。妙な焦げ後がないか?ほら、この壺の中の縁(ふち)の周りだよ。」
そう言ってKは壺の中のその部分を指さす。壺の中が真っ黒に焦げている。

「あら、ホントね。なにかしら?
そう言えばこの蔵の中、ちょっと焦げ臭い感じがするわ」
泉は鼻をクンクンさせる。確かに蔵の中には何かを焼いた臭いが立ちこめている。

「そうだな。しかし、この壺の大きさじゃ人を押し込めるのは大変だぞ。ほら、壺の入り口は直径30センチぐらいしかないじゃないか。さっき居間でご主人の写真を見たが、かなり太めの感じがしたが・・。一体どうやってこんな狭い壺の中に押しこんだんだか?」

降り注ぐ雨は更にその激しさを増す。Kの耳にパトカーのサイレンが聞こえた。
「やれやれ。どうやらご到着のようだ。」

Kと泉は蔵を後にした。

−屋敷内−
屋敷内にはKを始め全員が集合していた。そこに現れた刑事達。

「おや?これはこれは、三田署殺人課の盛川(もりかわ)刑事ではないですか」
とK。

「おっ?そう言う君はKと泉君じゃないか!!」

 盛川刑事とKは先の事件だけではなく、数々の事件を共に解決して来た同士であるとも言えよう。

「で、我々が来る前に現場に立ち入ったというのは本当なのかね?K君」
 グッと顔を近付けてKに質問の答えを迫る盛川刑事。
 その目はまるで眠りを妨げられたドーベルマンの様でもある。

「いやぁ〜。実はちょこっとだけ現場の方に・・。」
 Kは刑事から目をそらす。盛川刑事は激怒するかと思いきや、Kを見て
「それで君は何か勘付いたのかね?できれば今回も協力を・・。」と言った。

「もちろんですとも。私と盛川刑事の仲ではないですか。」とK。
「そうか、そう言ってくれるならば心強いな。」と盛川刑事。

「所でナゼ刑事はこちらの方に?何か急な用事でも?」とKが問いかける。
「全く逆だよ。久々の休暇でこっちに来て、同期のここの署の警部に挨拶に来たんだ。
 そしたら、この事件だろ。ここの署は人数が少ないってんで、このざまさ」
 久々の再会をこんな所でしたくはなかったな、と刑事は小さな声で呟いた。

−現場検証終了後−
「それで、K君が気付いたことってのは?」ペンを持ちながら盛川刑事は訪ねる。
「まずは、あの蔵の中の匂いですね。焦げ臭い感じの。まるで何かを燃やしたような。
しかし、あの中でモノを燃やすなんて事はめったに無いでしょう?何か引っ掛かるんで
すよね。」と顎をかきながらKは答える。

「なるほどね。その辺もこちらで調べておくことにしよう。
あれは間違いなく殺人だろうね。
自分からあの壷に入って死ぬようなことはいくらなんでもね。
Kはどう思うかい?意見を聞かせてくれ。」
手元のお茶をすすりながら刑事は話を進める。Kはたばこに火をつけながらこう答える。

「ええ、殺人ですね。それもここ2,3日の間に起きてますね。
刑事さんもその辺の話はもうすでに?ええ、ええ、そうです。
例の祭り前には犯行は無理ですからね。
しかも、犯人の可能性としては身内の者である可能性が非常に高いですね。
使用人ならば犯罪後に行方を眩ませばいいことでしょう。ああ、はいはい、なるほど。
確かに刑事さんの言う通り部外者の可能性もあるでしょうが、得てしてこういった
殺人の犯人としては、部外者の線はかなり薄いものなのですよ。
向こう30年確実に犯罪を隠し通すその術(すべ)を思い付くには
一朝一夕とはいきません。

 長い間、考えを巡らせなければこれだけの犯罪を思い付くことはできませんよ。」
「では、Kの見解では容疑者はこの者たちと言うことになるね。え〜と」
 

1, 被害者「窪塚 崇」の嫁 窪塚 順子(くぼつか じゅんこ)
2, 被害者の息子      窪塚 鶴太郎(くぼつか つるたろう)
3, 被害者の弟       窪塚 松雄(くぼつか まつお)
4, 被害者の叔父      清水 明(しみず あきら)
5, 掃除夫         野村 亮太(のむら りょうた)
 

「本当に、この中に犯人がいるんでしょうか?あんな残酷な事ができる犯人が?」
泉は今回の事件の出来事をまるで信じられないようだ。そしてその犯人がこの中
にいるということさえも。そして時間は静かに経過していく。

「そうそう、K。検死の結果だが被害者の全身の骨が細かく砕かれていたそうだ。
どういうつもりなのかね。それにね、壷の醤油の中から焦げた新聞紙が出てきたそうだ。
何か・・たぶん新聞紙だろうが、焼いて、その後に死体を詰め込んで、
醤油で満たしたって感じか? 意味が分からないな。
しかし犯人は主人の巨体をあの壷にどうやって詰め込んだッてんだ?」

Kがあたりをウロウロとし始めた。泉が心配そうな顔で見守る。
Kの頭が事件を整理しはじめる。

??
密室殺人???
壷の中の死体?
不可解な死??
水瓶の中にあった新聞紙??
主人の死体の側にあった焼けこげた新聞紙??
砕かれた全身の骨???全身の骨を砕く??
壷の中に入れる??どうやって?
何か遠い昔に似たような事をしたことがあったようなないような??
はて、それは一体何??遠い昔の・・

「おい!K。だいじょうぶか?」盛川刑事が心配そうに尋ねる。
「顔色が悪いぞ。外にいって新鮮な空気を吸ってきたらどうだ」
と刑事が言いかけたその時、

「そうか!!泉、確か婦人は雨はこの一ヶ月全く降らなかったと言ってたな!」
「ええ、確かにそうだったわね。それが何か?」泉は素直に答えた。
「ということは!!ふふん!後は動機かな?いやいや証拠もか。まいったな」
「K!!何か分かったのね。」泉がKの腕にすがりつく。
「ああ、今回の事件の最大の謎はどうやってあの巨体の主人を壷の中に押し込むことが
出来たのかと言う点だ。それに比べて密室殺人の謎はほとんど謎じゃないね。
要は誰にそのチャンスがあったかだ。
犯人としては、やはり30年間身の保証を約束するあの壷への死体遺棄に
全てを賭けていたはずだ。その謎が解ければ、自ずと今回の事件のベールも
はげる事でしょう。つまり、壷の中への死体遺棄方法。
今回はここがしょうゆ、いやいやミソのようだな。
さて、とりあえずは聞き込みか。いくぞ、泉。」

「おいおい、俺を忘れるなよ。この盛川刑事様をよ。しっかし、ひどい雨だな。」
雨は更にその激しさを増しつつあるようだった。

果たしてクロは??

事件1 家宝の壷に眠るのは…  了



次回予告

事件2 名門であるがゆえに… 〜雨の歌〜

Kの聞き込みにより明かされる窪塚家の深い因縁。
ついにKたちの捜査のメスが窪塚家の深い闇を暴く。
果たして密室での窪塚殺害の手段とは?
そして、死体遺棄方法とは?
無数のリングが今、交差し1つの大きな輪となる。
御期待ください!

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