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便通商売・・・「18歳未満禁止」
[【時代小説発掘】]
2010年4月17日 13時46分の記事


【時代小説発掘】
「便通商売」
響由布子


 なお、本作品に限り「18歳未満禁止」とさせていただきます・笑

(時代小説発掘というコーナーができた経緯)

【梗概】:
出羽の山奥で修行を積んだ剣豪・麻田五兵衛が江戸に移り住み、奇妙な商売を始めた。
「用便の兵法」の極意に基づき、便秘を治すというのだ。
その五兵衛の前に便秘とは言えあられもない姿を晒してしまった美熟女・お美濃であった……

【プロフィール】:
響由布子:官能小説家。作品歴
初の官能長編「ゆうわく生活 -人妻に恋して- (竹書房ラブロマン文庫 ひ)」が出ました。

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【時代小説発掘】
「便通商売」
響由布子


 なお、本作品に限り「18歳未満禁止」とさせていただきます・笑

一 用便の兵法

 麻田五兵衛は齢三十三、巨体の素浪人である。
 夏冬構わず手入れの悪い月代に、粗末な木綿単衣といういでたちだった。
 柳原土手で仕入れてきたのか、柿渋色の着物は古着で大分くたびれている。
 だがきりりと締めた帯だけは新しい上等のもので、どんなに身体をひねっても決して緩ませない、緩まないのであった。
 五兵衛門は、今日も本所の裏長屋で、独りぼっちで漬物をおかずに冷や飯を食べていた。
 時は安永三年五月の昼下がりである。
 将軍徳川家治の側用人田沼意次が権勢を振るい、世の中は商売の活気に満ち溢れていた。
 五兵衛があんぐりと開けた口に沢庵を放り込もうとしたそのときである。
「麻田様、いなさるかね」
 しわがれた声と同時に腰高障子が勢い良く開き、小さな老婆が飛び込んできた。
「麻田様に診てもらいたいんだよう」
 お梅という名の婆さんは長屋の表店で煮売り屋をしていた。女手一つで先にぼけてしまった夫を養っている。
 とうに還暦過ぎたと言うのに毎日忙しく立ち働いて、それこそ便所に行く暇も無いほどなのだ。
 五兵衛は箸を置いて白湯を含み、目を細めて苦笑いをした。
「わかった。診てしんぜよう。そこに横になりなさい」
「あら、いやだよう。あたしじゃなくて、困っているのはお美濃さんよう」
 お美濃と聞いた五兵衛は思わず目をむいて身を乗り出した。
「それはそれはお困りでしょう。ではお助けいたしましょう」
 お美濃というのは長唄の師匠で、この先の一軒家に一人で住んでいる。
 猫のように美しい目をした婀娜な大年増だった。年は三十前後だろうか、さる大旦那に囲われていたが精を吸い取って衰弱死させたというもっぱらの噂である。
 これらの噂話も実はお梅婆さんから聞かされたことであった。
 近隣の男どもと同じく、五兵衛もひそかにお美濃に憧れていた。
 道ですれちがったときには首をすくめるようにして必ず挨拶をしているが、じかに話す機会には未だ恵まれていない。
「そうしてくださいよう。お美濃さん、もう随分長いこと、お通じが無いらしいんですよう。人助けだし、それにあんないい女のおいど(尻)をその手で好きにいじくるんだからねェ。いいお話だよう」

 五兵衛は『太陰神流』という兵法をおさめた芸者である。
 免許皆伝であった。
 太陰神流とは一体何であろうか。
 それは戦国時代に編み出された実践的な兵法のひとつである。
 平たく言えば「用便の兵法」であった。
 当初、師匠からこの兵法のサワリを聞いた五兵衛は面食らった。戦における用便の大切さなど、考えたことも無かったからである。
 そしてよくよく話を聞いたのち、五兵衛は己の無知を恥じ、願って弟子入りした。
 一体どのようなものであろうか。
 例えば果し合いのときである。
「事前に食事を摂るあたわず」、あるいは「白粥に梅干のみ静かに摂るべし」などの食事の摂取の作法や極意は、あちこちの流派で書かれている。
 だが「摂取」の対極にあり、本来なら摂取と同等に大切なはずの「排泄」は、なかなか表舞台には出てこない。
 悲しいかな「排泄」についてを詳細かつ真面目に論じた兵法は皆無と言ってもよかった。
 しかしどうだろう、決戦や果し合いに臨んだその時、激しい便意をもよおしてしまったらどうなることだろうか。
 せっかくの精神統一もはばかられ、思いは千々に乱れ、間違いなく戦意は喪失するであろう。
 太陰神流は、ともすれば忘れがちな排泄の大切さを切々と説き、戦の前には魂の入った按摩で腹と心を空にし、精神統一を図ることを真髄に置き、その上に剣術や戦術を学ぶ優れた兵法なのである。
 しかし、太平の世ではせっかくの兵法も宝の持ち腐れ。武士も町人も武道を軽んじ享楽に浮かれている。武芸に秀でているだけが取り柄の五兵衛は仕官もままならない。修行地である出羽の山奥から江戸へ出てきて、三年が経とうとしていた。
 嫁も貰うことあたわず、今は寺子屋の手伝いなどをしながら「用便の兵法」を用いて便秘治療の日銭を稼ぎ、五兵衛は細々と暮らしているのであった。

二 便秘開通

 お梅婆が十人ほどの噂話を要領よくまくし立てて去っていったあと、部屋は一気に静まり返った。
 五兵衛はそそくさと身支度して、お美濃の家に出向いた。
 お美濃の家は一人暮らしのわび住まいとはいえ、門があり庭があり池もある風雅なものだった。
 玄関脇から縁側の方へ、家の壁伝いに歩いて行くと、池のある庭が見え、池の向こうに離れが見えた。離れの濡れ縁からはちょうど灯篭の火を見ることが出来るようである。
―― お美濃さんを囲っていた旦那さんがまっことうらやましいものよ。命吸い取られるまではさぞや楽しんでいたことだろう。
 脳裏にお美濃の艶姿が浮かんだ。白い足袋の裾が乱れ、緋色の蹴出しの奥の足の重なり合いが陰影を作っている……。
 五兵衛は頭を振って襟元を正し、庭から縁側に向かって精一杯声を張り上げた。
「御免!」
 家の中から、弱々しい女の声がした。山彦の如く、遠くはかない声である。
「は、はい……」
「煮炊き屋のお梅殿から頼まれて参りました。麻田五兵衛と申します」
「どうぞ……」
 家に入ると、次の間からうめき声が聞こえる。
「む、どうなされましたか」
 うめき声はするが返事が無い。
「御免。開けまする」
 スルリと障子を開けてみると、お美濃が布団の中で脂汗を流してうなっているのが見えた。顔は紙のように青白く、触れると肌が蛇のように冷たくなっている。
 先程の応答が限界だったらしい。お美濃は美しい顔をゆがめて唇を噛みしめている。
「御免。これも治療ゆえ」
 はっと身を硬くするお美濃に構わず布団を剥ぐと、丸まって隠されたお美濃の腹部を無理やり伸ばして、上を向かせた。
 五兵衛は両手を激しくすり合わせ、摩擦の熱で手のひら全体を温めた。
 その手をお美濃の下腹、へその下に当て、独特の指使いでゆっくりと押し揉むのである。
 しばらく揉んで今度はお美濃の手を刺激した。蝋のように白くひんやりとした手のひらを両手で包み込み、指でゆるゆると圧迫するのである。
 何度か繰り返していると徐々にお美濃の腹が鳴り出してきた。どうやら腸が動き始めたらしい。
 便意をもよおしたのか、お美濃は慌てて起き上がろうとしたが、そこまでの力は入らないようだ。
 思わず五兵衛の手が伸びた。
「起こして差し上げましょう」
「も、申し訳……。お願い……」
 五兵衛は汗で浴衣がびっしょり濡れたお美濃を抱きかかえるようにして起こし、肩を貸そうとした。
 が、長時間苦しんでいたせいか、足腰がふらついて心もとない。
「御免」
 五兵衛は返事を聞きもせずお美濃をおぶい、立ち上がった。
 ふっくらと柔らかく豊かな乳房が五兵衛の背中を圧す。太ももを支える手には、じっとりとした熟女の脂の感触。
 久しぶりに女に触れたのがどうにも嬉しく、五兵衛は「なれなれしくしない」という決意も忘れて妙に張り切った。やたら元気な声でおぶさった女体に問う。
「雪隠はどちらでしょうか」
「ろ、廊下を、左……、突き当たり……」
 どすどすと歩き、雪隠の前でお美濃を下ろしたが、お美濃はまだふらついていて、どうも一人で用をたすのは無理のように見えた。
「僭越ながら付き添いましょう。便つぼに落ちられたら大変だ」
 返事が無い。顔色はますます青ざめ、息をするのもやっとという風情だった。
 便秘もここまで酷い状態は五兵衛でもめったにお目に掛からなかった。否も応もなく、五兵衛はお美濃をしゃがませて、寝巻きの尻をぱっとめくった。顔は奥の壁を向いているのでその表情は五兵衛にはうかがえなかった。
 くびれた腰から餅のように膨らんだ尻まで、真っ白い、新雪のように美しい肌だった。染みひとつない。薄暗い便所に咲いた一輪のホタルブクロのようでもある。
 五兵衛は、狭い雪隠の戸口側からお美濃の腰をしっかりと支えた。
「さ、いきみましょう」
 さあ、いざ、と準備が整っても、他人に見られてするのは、女人にとってはやはり恥ずかしいのだろう。お美濃はせっかくしゃがんだものの、なかなかいきもうとはしない。
 五兵衛の目の前に白い尻がちらつく。その奥に広がる草むらと生々しい赤貝の切れ端までが見えた気がして、五兵衛の心臓が早鐘を打った。
 五兵衛は自分にも言い聞かせるように言った。
「恥ずかしがることはござらぬ。拙者はこうした治療をなりわいとしているのだから、拙者にとっては珍しくもなんともないこと。珍しくもなんともない」
「で、でも……」
「こんなに酷く詰まっていては、下手をすると命を落としかねませぬぞ」
 五兵衛の脳裏には出羽の山奥で師匠から見せてもらった唐の時代の巻物が思い浮かんだ。便秘が酷くて腹が蛙の如く膨れ、命を落とした女の話が出ていたのだ。
 五兵衛は左手で背中を押さえ、右手をへそ下にそっと差し込み、挟みこんだ。
 お美濃は観念したようにいきみ始めた。だが出るのは声ばかりで一向にもよおさない。
 いつしか、いきみ声がうめき声になってしまっている。ひどく頑固な便秘のようであった。
 五兵衛はやむなく、太陰神流の「奥伝」を用いることにした。
 戦いの前に便を出しつくす、これすなわち太陰神流兵法の基本なのである。

三、 大便の秘儀。

 太陰神流奥伝に曰く
『尻穴に人差し指をやわやわと差し入れ、三寸ほどの前壁を強く押し、次いで左右の壁をなぞるように緩やかに押すべし』

 五兵衛はお美濃の尻たぶをぐいと開いて、真ん中に収まっている可憐な野菊を露出させた。
 お美濃のそこは小さくて、はしばみの色をしていた。こんなに小さくては、ひどく硬まってしまった便の通じは無理だろうと五兵衛には思われた。
「御免。これも治療ゆえのこと。許されよ」
 五兵衛はたっぷりの唾で濡らした人差し指をお美濃の秘菊に触れた。
「あっ、な、なにを」
「これは戦の前に用便を済ませ腹を空(くう)にして雑念を払うという兵法なのです」
「あっあっいけませぬ」
「腹に力を入れてはいけませぬ。尻穴の力を抜いてくだされ」
「そ、そんな……」
 お美濃はいやいやをするように頭を振った。五兵衛の指先が、秘菊の緊張を読み取った。
「ささ、息を吸って開いて」
 お美濃の尻が羞恥に震え、秘菊が意固地になってすぼまった。五兵衛は一旦指を外し、右手と左手でお美濃の腹部を挟み、再び揉みだした。
 今度は心地よかったらしく、お美濃はため息をつきながら全身の力を抜いた。
 五兵衛はその瞬間を見逃さなかった。
 お美濃の尻穴はさんざんいきんで開いたり閉じたりしていたせいか、野太い指をやすやすと飲み込んで行く。
 お美濃は最初だけ恥じらってじっとしていたものの、便秘の苦しさに勝てなくなって、再びいきみ始めた。
 作法通りに五兵衛が腸壁を押していると、やがてお美濃の腹が大きく鳴り始めた。
 生温かくて硬いものが、上から五兵衛の指に当たって圧して来る。
 なおも腸壁を押し続けていると、やがてお美濃の腹が大きくうなり始めた。そのあと、硬くて太い大便が指を押し出すようにして、体の奥から勢いよく出てきたのである。
「ううー、うーむむ……」
 お美濃は気の抜けたような低い声でうなり続ける。
――やれやれ、やっと出たか。
 しっとりと憂いを含んだ美しい女人からひり出されるこちこちの便は、まるで漆塗りのように艶やかであった。それを冷静な兵法者の目で見ながらも、五兵衛は奇妙な興奮を覚えていた。

四、はまぐりの味

 治療から2日がすぎた。
 昼下がりにお梅婆がやってきて、お美濃がすっかり元気になったことを伝えた。
「麻田様、たいしたもんだね」
「いやなに、元気になれば何より」
「お美濃さんからお礼を預かってきましたよぅ」
 菓子折りと一分銀を渡してきた。
 五兵衛には大金である。これだけあれば、好きな貸本をしばらく読めるだろう。思わず顔がほころぶ。人助けも良いが、金が一番ありがたい。
「他にもお通じで困っている人がいるんだけれど、治してあげてはいただけないですかね」
 どうやらお梅婆は五兵衛の便秘治療の腕を吹聴しているらしい。
「それはお困りでしょうな」
「みんな、きれいな女だよう。きれいな女はなぜ便秘が多いんだろうかねェ」
 お梅婆は五兵衛の下心を見すかしたように笑いながら言った。
「人助けでお金が入るのだから良いお話じゃありませんかねェ」
 五兵衛にしてみれば確かに悪い話ではない。
 昨今は庶民でさえ口がおごって、皆がうまいものを食べている。
 となると便秘になる人も多かろう。
 変な商売だが商売敵のいない商売でもある。月に一人ふたり治療すれば、今の暮らしには十分な稼ぎが得られる。
 それにしても兵法がこんな形で役に立つのも飽食気味な江戸ならではのことであろう。
 お梅婆はしばらく居座って四方山話をした後で、最後に言った。
「お美濃さんが今晩、麻田様を食事にお招きしたいってよう」
「ほう……」
「麻田様はむさいから、湯屋によってからお行きなさいよう」
 言い残すとお梅婆は帰っていった。

 夕方、七つ時になり、五兵衛はお美濃の家に出向いた。
 見違えるように元気になったお美濃が玄関に出て、三つ指をついて出迎えてくれた。
 白粉に紅、いつも通りの妖艶な顔に戻っている。
 夕焼けに照らされたお美濃は一層美しかった。
「どうぞ、こちらへお座りください」
 先日と打って変わって涼やかな声である。
 上座へ座らされて待つ。
 家の中は静まり返っていて、裏長屋の喧騒とは程遠かった。
 沈香であろうか。
 なにやら良い匂いのお香がたかれている。
 やがて盃を乗せた盆を持ったお美濃が入ってくると、五兵衛に向かって正座した。
「先日は難儀をいたしておりましたところ、お助けいただきまして有難うございました」
 作法どおりに折り目正しく礼を述べたあとで、まずはご一献、ということになる。
 さしつさされつ、和え物や焼き魚で酒を酌み交わしながら二人は四方山話をした。

 お美濃は葛西の出で、深川の芸者置屋で奉公し、その時に芸事を習ったのだそうだ。
 五兵衛は専ら聞き役にまわり、お美濃のプックリと膨らんだ唇が語る芝居の話を夢見心地で聞いていた。
 心づくしの膳のあとは吸い物の椀が出た。
 季節の蛤である。
 酒の味の染み付いた口中を上品な出汁でそそぐ。
 すさんだ独り身ではなかなか表現出来ない繊細な味付けであった。
 至福のときを五兵衛は貝の身と共にしみじみと味わった。
 静かな部屋と旨い酒と美しい女、他に何を望むだろう。
 すると突然、お美濃が切り出した。
「麻田様は風変わりな医術のおたしなみがおありなのですね。お腹のことをよくわかっていらっしゃる……」
 五兵衛はいぶかしげに椀を置いた。
 自分は敢えて先日のことを話題にしなかったのである。
 というのも、お美濃にとっては忘れたい話題であろうと思ったからなのだ。
「いえ、医術とは違います。あれは兵法なのです」
 言ったきり、後をどう続けてよいものか困ってしまった。
 しかし、お美濃は五兵衛の話を聞いていなかったように潤んだ目を向けた。
「お通じのたびに、あのときのことを思い出しています」
 こんな場合の対処の仕様は、さすがに師匠も教えてくれなかった。
 どう切り抜けたものだろうか。

 五兵衛があれこれと考えているうちに、お美濃が五兵衛の右手を握る。
 武骨な人差し指を白魚のような指でつまんだ。
「この指がお助けくださったのですね」
 言いざま、口に運び、ぷっくりとした唇にそっと押し当てた。
 香りがふわりと立ち上った。異国のものだろうか、良い匂いのする髪油である。
 五兵衛は言葉も無い。
 お美濃は指先をそっと口中に含んだ。
 五兵衛の指先が温かく柔らかい粘膜に包まれ、舌先にねぶられる。
 やがてお美濃はゆっくりと指を口から出し、手を戻した。
 しかし握った手を離そうとはせず、そのまま五兵衛の方へしなだれかかってきた。
「お美濃殿……」
「美濃、と呼んでくださいませ」
 か細い声で言うと、顔を傾け五兵衛の口をゆっくりと吸い始めた。
 五兵衛に今までこのような経験が無かったわけではない。
 しかし、正直に言えば、遠い昔の場末の遊郭でしか経験は無く、その後は人気の無い山奥にこもってむさい師匠と修行三昧である。
 ましてや素人といたすのは初めてなのである。どうしたらよいのか。
 五兵衛は頭が真っ白になり、思わずお美濃をだきしめた。
 すると、それを待っていたかのように
「どうぞ、奥のお部屋へ」
 お美濃が耳元でささやき、ゆっくりと五兵衛をいざなった。

五、女体堪能
 
 お互いを抱きかかえるようにして部屋を移る。
 そこには既に床が延べられ、行灯が灯っていた。
 香は麝香のようである。
 枕元には水差し、そして桜紙がある。
 お美濃は五兵衛をあっと言う間に下帯一つにしてしまった。
 そして、おもむろに自分の帯を解き、襦袢姿になった。
 無言のまま二人で床に入った。
 いくら経験の浅い五兵衛でも、据え膳状態のここからならなんとかなりそうだ。
 裸のお美濃をそっと引き寄せると、さっき口を吸われたように吸い返した。

―― 柔らかい。
 年増の女体の柔らかさは何にたとえれば良いのだろうか。
 この感触は武術や兵法をどんなに研鑽しても味わうことが出来ない。
「ああ……五兵衛様」
 五兵衛はお美濃の乳房の上に手を乗せる。
 ぷるぷると動くそれは手のひらに余る量感をたたえ、五兵衛のくちづけを待っているかのように息づいていた。
――落ち着け。眉間と丹田に力を込め深呼吸をするのだ。
 お美濃が喘ぎながら背中を反らす。
 大きな乳房の先端がこりこりと五兵衛の胸板に当たった。
 五兵衛は身を起こし、ぐみの実にも似た先端部分を口に含んだ。
「あ、あぁ……」
 お美濃が切なげな声を上げる。
 五兵衛は乳飲み子のように音を立てて吸いたてた。
「ご、五兵衛様、咬んで」
 歯を立てて甘咬みをした途端、お美濃が布団の端をぎゅっと握って歓喜の声を漏らした。
 五兵衛は硬く屹立した乳首の先を口中で転がし、再び咬む。
 へその上辺りに女のくさむらが当たっている。
 すべすべした両足が少し開いた。
 乳房から手を滑らせ、へそのわきを通り、ほかほかと温かいそこに、五兵衛は手を進ませた。
 しっとりと吸い付くような肌。
 なだらかな曲線を辿り、柔らかい春草の生い茂るそこに五兵衛の指が到着する。
 草むらを掻き分けなおも侵入を続けた。
 お美濃の秘処は蜜でぬくもっていた。
 五兵衛にとっては実に十何年振りの女陰である。
――温かく、柔らかい。それに妖しくうごめいている。
 指に当たるものがある。
 小さな小さな小石のような、硬い突起。
 突起の形状を確かめるようにうるみの中で指を動かすと、お美濃の反応が一層切なげになった。
「あ、ああもう、たまりませぬ……」
 五兵衛はなおも指を動かす。
 なぜか撫でなくてはいけない衝動に駆られ、五兵衛はひたすら形状をなぞった。
 指の動きに合わせてお美濃の腰がピクピクと跳ねる姿に五兵衛は夢中になった。
――女体とはなんと不思議なものよ。
 まるで魚(うお)のようではないか。

 次々とあふれ出る蜜は裏菊までをしとどに濡らし、布団にシミを作っている。
 行き来する指先が逸脱して尻穴に触れるたび、力強くすぼまる動きを見せるのが愛おしかった。
 五兵衛は先日の奇妙な興奮を思い出した。
 この可憐な尻穴を、黒々と照った太い便が通って行ったのを、まさにこの目に見たのである。
 股間の太刀は痛いくらいに怒張して先端から透明な液体を漏らしていた。
――これはいかぬ。漏れてしまいそうだ。
 五兵衛は体を起こし、お美濃の両足の間に腰を入れた。
 手馴れたようにお美濃が両足を広げ、自らの手で膝を押さえて熱湯に入れられた浅蜊のように開いた。
 怒張した太刀を、温かい肉の鞘にずぶずぶと埋める。
「ひっ」
 お美濃が喉をのけぞらせ、百舌のように啼いた。
 お美濃の内部はどろどろにとろけていた。
 温かい肉が何層にもみっしりと詰まっていて、五兵衛の太刀を心地よく圧迫するのである。
 五兵衛は額に汗をにじませゆるゆると腰を動かし始めた。
「あ、ふう……、五兵衛様……、美濃はあの日以来、ずっと、ずっと、こうしたかった」
「せ、拙者もだ……あの日以来、拙者もですよ。お美濃殿と、まぐわってみたくて……あのような立派なモノをひりだす女体のとりこになってしまった。お美濃殿の姿を思い浮かべて、何度手でしごいたことか」
「ああ、嬉しい」
 お美濃が五兵衛の首筋にしがみつくと同時に内部のやわ肉が動き出した。
 どろどろだった襞が急にざわめき始め、五兵衛のうぶなカリ首に絡み付き、引っ張り、奥へ奥へといざなうのだ。
 呼応するように、五兵衛は大振りな腰つきで力強く出し入れを始めた。
 豊満なお美濃の尻に五兵衛の下腹部がぶつかる。まるで腰全体で餅を搗いているような感触である。
「おお、なんと心地良い……俺の腰が砕けそうだ」
 五兵衛の感嘆にお美濃は下腹をピクピクと痙攣させる。
「五兵衛様……美濃は、美濃はもう……」
 息絶え絶えの様子。
 頬を染め眉間にしわをよせ、両手で自分の膝を引きよせたまま、腰をゆらゆらと動かし、上を向かせた肉壺で五兵衛の太刀先を翻弄した。
――もう持たない。出そうだ。
 五兵衛はお美濃の尻の下に両手を差し込み下から持ち上げた。
 そして上から腰を落とすようにして一層激しく叩きつけたのである。
 こりこりした奥の子壺と五兵衛の亀頭が激しくこすれあった。
 サネと五兵衛の陰毛が激しくこすれあう。
「ああっ、いいっ、ご、五兵衛さまっ」
 お美濃は嫋々と啼きながら淫らに腰を揺する。
「あーっ、いく、いきますっ」
 お美濃の全身がさざ波のように震えた。
 年増女の貪欲な締め付け、経験の浅い五兵衛にはひとたまりも無かった。
 獣のように吼えながら、お美濃の最奥に、溜め込んだ大量の精汁を放出したのである。

六、 甘美な裏の門

 明け方に五兵衛が目を覚ますと、既にお美濃の姿は無く、台所から軽やかな鼻歌が聞こえてきた。
 常磐津であろうか。ときどき口三味線も入る。室内には昨晩の匂いがかすかに残り、朝というのに淫靡であった。
 五兵衛も起き出して身づくろいをしていると、やがて、お美濃が次の間に粥を運んできた。
 部屋の障子がすっと開き、濡れ縁から新鮮な空気がなだれ込んだ。
「あら、お目覚めになったの?」
 一夜のことで言葉づかいも変わる。声色も甘やかなものに変貌しているのが五兵衛にとっては嬉しくもこそばゆかった。お美濃の肌は薄化粧を通してもツヤツヤと輝いている。
 昨晩よりも居心地のよくなった家で五兵衛はゆっくりと粥を口に含んだ。
 丁寧に作られたそれは、男所帯で作るような乱雑なものではなく、粒の一つ一つが艶々と際立っている。
 小鉢には濃い目に作って醤油で味をととのえ、とろみをつけた出汁が入っていた。熱々の粥に出汁をかけまわし、五兵衛は三杯もおかわりをした。
 食後の渋茶を飲んでいると、ためらい勝ちにお美濃が言った。
「あの……この前の、を、お願いしとうございます」
「まだお通じがないので?」
「いえ……そうではないけれども」
 とにもかくにも五兵衛に否はなかった。
 いったん豪快に開けた障子をお美濃は再び閉じ、そのまま二人仲良く奥の床へと向かった。
 それにしてもお美濃のどこか嬉々とした様子はどうだろう。
―― 解せぬ……。
 五兵衛が兵法の手順通り先ずお美濃の下腹を按摩しようとすると、お美濃が抗った。
「あの、人差し指で」
「しかし、先ず按摩をしないと」
「お通じは本当にもう大丈夫なの。だから、指だけを……ね?」
 言うや、お美濃は四つん這いになって尻をはしょった。
 脂の乗った真っ白い尻が現れた。
 みっしりと生い茂った黒い草むらが、亀裂に沿ってひじきのように張り付いている。
 昨晩は薄暗がりの中で夢中だったし、先日の治療中にはなるべく女陰を見ないようにかたくなに目線を外していたので気付かなかったが、お美濃は意外と毛深いようだ。
 焼き海苔の間から赤貝のような身がはみ出ているのがはっきりと見えた。
 昨晩の味わいを鮮明に思い出し、五兵衛の股間に納められた太刀がむっくりと起き上がった。
 陰毛の濃い女陰は匂いが強く、どこか淫靡である。
 それに、顔や姿の楚々とした感じと野卑な女陰の落差が五兵衛の劣情をそそった。
――いかぬ。昨晩あんなに満足したのにどうしたことだ。
 それほどまでにお美濃の女体が良かったということなのか。
 五兵衛は雑念を払おうと静かに目をつぶり呼吸を整え精神を統一した。必死で太刀の血流を戻す。
 それから静かに目を開け人差し指を唾でしめらせた。
 そして、少しずつ圧力を掛けながら、お美濃の尻穴にじわじわと入れていったのである。
 しっとりした粘膜が五兵衛の指を迎えた。
 昨晩指先を口中に含まれた感触を思い出した。
 後ろの穴は口中よりもずっと水分が無く、指先にペタペタとまとわり付くような感触がする。
 そして後ろの穴は口中より更に熱い。
 そしてうっ血しそうなほどに、締め付けがきついのである。
 五兵衛が前へ横へと指を使い始めると、お美濃は昨夜よりも大きな声でうめき始めた。
 お美濃は激しく喘いでいる。
 五兵衛の指は剣術の修行のせいか武骨に節くれだっており、その形状がなんとも言えない刺激を尻穴にもたらすようだった。
 関節の膨らみが尻穴の一番狭まったところを出入りするたび、お美濃は歓喜に震える陰唇から新しい蜜をしたたらせた。
「あン、切ない……」
「どうかなされましたか」
「なんだか切のうございます」
 五兵衛の指がまるで生き物に吸いつかれるかのようにキュウと引きずり込まれた。
 その生々しい動きにびっくりして引きずり出そうとすると、指にまとわり付いた粘膜が一緒についてくる。
「ああ……たまらない切ない」
 粘膜ごと半分ほど引きずりだした指が、もぐもぐと咀嚼をする尻穴の中に再び引っ張り込まれて行く。
 腹を空かせた何かの生き物のようであった。
 あまりにも貪欲で卑猥な動きに五兵衛の胸が高鳴った。
――これで締め付けられたら拙者の魔羅はひとたまりもない。
「うう……五兵衛様……。お願いでござります」
 五兵衛は指の動きを止めた。
「もっと、もっと、大きいもので、私めを満たしていただきたく」
「あいわかった」
 願っても無いことである。
 下帯から猛り狂った肉太刀をとりだすと、まず前の穴にずぶりと埋め込んだ。
「あぅぅ、そちらでは、ありませぬ……」
「わかっております。まずは湿らせてから」
 五兵衛は音頭を取るが如く、亀頭を子壺の口に打ち付けた。
 そのあとずるりと引き出す。肉太刀は十分すぎるほど濡れそぼち、湯気さえ立てていた。
 五兵衛はお美濃の尻の山を両手でがっちりと押さえつけ、ほんの少し割った。
 目の前に、薄茶色の門が現れた。指の痴戯によってそれはすぼまりが緩んで美しい肉を覗かせている。
 五兵衛はたけり狂った肉太刀をその中心にあてがった。
 そして指のときよりもさらにゆっくりと、体を倒して分け入らせたのである。
「ああ……」
 お美濃は甲高い声をあげながら背中を反らし、布団を握り締めている。
 しかし強い抵抗があったのはほんの最初の一寸くらいだけだった。
 一番狭くてすぼまったところを通り過ぎた五兵衛の太刀は、熱い坩堝に吸い付かれ、根元まで一気に飲み込まれていってしまったのである。
――こいつは凄い。
 五兵衛は危うく暴発するところだった。肉太刀が悲鳴を上げるところだ。
 そのうち強い締め付けに慣れてきた。腸が管ごとうねうねうごめいているのを直に感じる。ふぐりがきゅっと硬くなった。
 お美濃の尻をしっかりと押さえながら、ずるりと腰を引く。
「ああああっ」
「う、締まる……」
「あうう、だ、旦那様っ! ぐ、ぐうっ! もっと、もっとして!」
 お美濃の乱れようは激しかった。どうやら死んだ旦那とも、このようなまぐわいをしていたようである。
 カリ首が強く締め付けられ、いっときも逃すまいとするかのように肉太刀が奥に吸引された。その手馴れた様子、明らかにお美濃は裏門まぐわいの常習者であった。
 五兵衛の額には汗が浮かんだ。剣術者らしからぬ動転である。
 欲望の赴くまま五兵衛は女尻に向かって腰を激しく打ち据えていた。お美濃も拍子を合わせて腰を激しく衝突させる。
 お美濃の尻から大量の蜜が漏れ出した。陰唇から出る蜜と違い、水の如くサラサラしたものである。
 結合部から大量の尻蜜を飛び散らせながら、二人は身を焦がすような肛交の悦楽に酔いしれたのであった。

 足腰をふらふらさせ、昼過ぎに長屋へ戻ると、さっそくお梅婆がやってきた。
「麻田様、どうだったかねえ?」
 五兵衛は魂を抜かれてしまったかのように呆けていて答えられない。
「生き地獄じゃなくて生き極楽だったらしいねえ」
 お梅婆はワケありげににやにやしている。
「いや、飯をふるまわれただけです」
 やっとの思いで五兵衛が言う。
「ずいぶん楽しい晩ご飯だったようですねェ。朝ご飯までご馳走になるとは」
 と、妙にもってまわった言い方をした。
「そうだ、こっちも麻田様にお通じの按摩をしてもらおうかね。それとも婆さん相手じゃ食指がまるで動かないかえ?」
 五兵衛が顔を赤らめて俯いた。お梅婆は黄色い歯を見せて笑った。
「ま、私はさておき、また、次の人を紹介しましょうかね」
 五兵衛はぱっと顔を上げた。
「はて。他にまだお困りの方が?」
「隣町のご新造さんですよ。なるべく早く按摩に来て欲しいそうだけれど、どうしましょうか」
「お困りのようですから、さっそく参りましょう」
「そうしてもらえると、ありがたいけど」
「で、患者のお宅はいずこに」
 患者と言っても便秘であるから一刻を争うようなものではない。
 しかし、便秘の苦しみは日がたつにつれて増していくものなのである。
 家の所在を詳しく聞きとり、五兵衛はさっそく出発した。

七 問屋の侮蔑

 着いた先は、立派な紙問屋である。
 名を告げると離れへ案内された。
 妙にどす黒い顔色のご新造が臥せっていた。
 その傍らに年寄りと若い男が待機している。二人とも、地味だが上品な紬の着物を着ていた。
 年寄りが口火を切った。
「手前は若松屋市兵衛と申します。これは倅の秀助と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」
「はて、患者はご新造さんで?」
「実は……」
 舅の市兵衛によると、こうだった。
 息子の嫁が便秘で寝込んでしまい、倅が心配して付きっ切りで看病しているのだが、医者に見せても一向に治ず、かれこれ一月近くも便通が無い。困ったことである。
 息子の秀助が不審を隠さず話の腰を折り、膝を進めてきた。 
「按摩さんだと思っていたら、お武家様で驚きました」
 大事な嫁を、医者や按摩でもない見知らぬ浪人に触られるのが不安なのであろう。瞳に困惑が表れている。
 五兵衛は背中をそらし、堂々と言った。
「按摩ではござらぬ。兵法に便通の極意があって、それを使うだけなのだ」
 秀助は狐につままれたような顔をしている。
――まあそれも道理であろう。この私でさえ、太陰神流会得者でなかったら、そんな話は信じなかったに違いないから。
 気まずい沈黙が場を満たした。
 間がもたなくなった五兵衛は、さっそく、按摩を始めることにした。否も応も無い。
 例によって、温めた手のひらで下腹のつぼをやわやわと揉み、次に手のつぼを揉み、それを繰り返す。
 しばらくすると、新造の腹がぐるぐると鳴って来た。
 秀助は顔を輝かせ、
「さっそく女房を雪隠へ連れてまいります」
 新造を両手で抱きかかえるようにして連れて行った。
 五兵衛は後から付いていったが、さすがに、排泄中は雪隠の外で待つことになった。
 中からは新造のいきむ声が聞こえる。しかし、どうやら便通のきざしが無いようだった。
「これはいけませぬ、これ以上は、私の腹がはじけてしまいます……どうか、お助けくださいましと、外のお武家様に」
「しかしお前、親にも見せないこんな姿を」
「本当に私は死んでしまう。苦しうて苦しうて、つろうございまする……」
「だがお前だってお店の女将なのに、見知らぬ武家にこのような」
「人づてに聞いております。お美濃さんとやらも、たまりかねて雪隠でしてもらったと、それでいまは元気になっていると聞いております」
 押し問答のあと、浮かぬ顔をした秀助が雪隠から顔を出した。
「どうぞお助けください」
 五兵衛はしかめ面のまま中に入ると、おもむろに人差し指を唾でぬらし、むき出しの尻の真ん中にある穴へゆっくりと入れていった。
 嫉妬と怒りが入り混じり、秀助の語尾が震えた。
「何をなさいますか! 麻田様!」
 しかし、五兵衛は意に介さず、腸壁の按摩を始める。

『三寸ほどの前壁を強く押し、次いで左右の壁をなぞるように緩やかに押すべし』

 しばらくすると新造は青白い顔に珠のような脂汗を流し、うめき始めた。
 腹はちゃんと波打っている。
 手ごたえを感じた五兵衛はなおも指を動かした。
 黒檀のようなカチカチの大便が尻の穴から指を押しのけるようにして顔をのぞかせることになったのは、それから間もなくのことであった。

 手水で手を洗い、一足先に部屋に戻った五兵衛の後から、秀助が、精魂尽き果てたような新造を抱きかかえて戻ってきた。
 そして、喜びと怒りの混ざった声で、
「有難うございました。無事に終わりました」
 と告げた。
 それを聞き、大旦那が頭を下げ、礼を述べる。
「そうか、それは良かった。麻田様、有難うございました」
 秀助の浮かぬ様子に気付かず、大喜びである。
 秀助にしてみれば、まるで嫁が無理やり乱暴狼藉されたような心持ちなのであろう。押し黙ったまま気味の悪い目で五兵衛をねめつけている。
 これ以上の長居は無用と、五兵衛は挨拶もそこそこに辞去することにした。

八 夕闇の一番星

 帰る道すがら、五兵衛は湯屋に寄り、軽く酒を飲み天麩羅蕎麦を食べた。五兵衛にとってはなかなか豪勢な食事で、これも便通商売のおかげである。
 長屋に着き、日も暮れかけた頃、お梅婆が顔を出した。
「麻田様、大変だよう」
「どうしましたか」
「今日の御礼をさっき番頭さんが持ってきたよ」
 袱紗の中を五兵衛があらためると、なんと、小判三枚の大金である。
「よほど有りがたがられたようだねェ、麻田様よう」
「いや、そうではないと思います。おそらく、ご新造の亭主から、これ以上はかかわってくれるな、という合図なのでしょう」
 お梅婆は心配そうに
「なにか変なことをしなすったのかねェ」
 と言う。
 五兵衛は苦笑いをしながら
「いやなに。便通のことなので知られたくないのでしょう。因果な商売ですな」
 するとお梅婆さんさんも、なにやら思うことがあったように大きく頷いた。
「そう言えば、あそこの若旦那はやきもち持ちで評判だからねェ」
 五兵衛は小判を見つめた。内心嫌われて蔑まれながらもらう金の不快さがひっかかる。
「どうしたものか」
 お梅婆がすかさず答えた。
「人助けだから気にせず続けなさると良いですよう」
 確かに人助けには違いない。
 そしてどんな商売にするにせよ、誰かはそねむだろうし、誰かから煙たがれることだろう。
 それが人の世の習いなのだ。
 五兵衛の気後れを見透かしたようにお梅婆が言う。
「そうですよう。実は、麻田様にお願いしたいと仰る人が、あと二人ばかり……」
 五兵衛は思わず苦笑してしまった。
――お梅婆さんの言う通り、困っている人はあとを絶たないのだろう。
 五兵衛が己の行く先をぼんやりと考えていると、戸が叩く者がいる。
 出てみると、見慣れない小僧が、結び文を持ってきていた。
 お梅婆がさっそく探りをいれてくる。
「どなたからのことづてですかねェ」
 ほどいて広げると、水茎の跡もうるわしい文字が書いてある。お美濃から晩飯の誘いだった。
「いなやに、ちょっと出掛けてくることになりまして」
 照れを隠すような仏頂面で五兵衛がつぶやく。
「ほーら、良いこともある」
 お梅婆が童女のように屈託無く笑った。

 便通商売。
 嫌なことも多々あるが、人助けになり、金も儲かり、よい事もある。
 それで十分である。それで十分ではないか。
 五兵衛は自分にしかと言い聞かせた。
 太陰神流免許皆伝の剣客は、夕闇空にお美濃のあでやかな笑顔を思い出していた。


-了-





最終編集日時:2010年12月14日 13時50分

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1. charlie_muffin 2010年4月19日 16時5分 [返信する]
いやあ、巧みなプロットで
筆致もなかなか大したものですね。
私は、ちょっとだけ創作活動をしていますが
かねてより、時代小説も書きたいと
思うだけで・・・なかなか踏み出せません。
当時の言葉遣いから風俗習慣など
どこから勉強の糸口をさがせばいいのか。
それすら分からずに、往生しています。
響先生には、何かファンレターーならぬ
メールをお送りすることは可能なんでしょうか。


管理人:とりあえず、こちらにお送り願えましたら、転送させてていただきます。




 


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