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〔助太刀兵法29〕室の津奇譚(2) (無料公開)
[【時代小説発掘】]
2013年7月21日 9時30分の記事


【時代小説発掘】
〔助太刀兵法29〕室の津奇譚(2)
花本龍之介 



(時代小説発掘というコーナーができた経緯)


梗概
 薩摩藩の先のり役・伊集院たちから無理難題を仕掛けられた藤森新兵衛は、ことを荒立たせては藩が迷惑すると判断して、怒りを押さえて相手の言いなりになった。しかし内心は不快な思いをしていた。折もおり早船飛十郎から、遊女が漕ぐ室の津名物のおちょろ舟乗って、酒を呑まないかという誘われる。気分転換のため承諾した新兵衛は、飛十郎とともに小舟にのって夜の海に乗り出した。酒と揺れる波に心地よく酔った二人は、剣術談義に花を咲かせたあと遊女から聞いた不思議な伝説と、港の美しい夜景に陶然として、浮世の悩みを忘れて楽しむのだった。


 【プロフィール】:
尾道市生まれ。第41回池内祥三文学奨励賞受賞。居合道・教士七段。
現在、熱海に居住している。


これまでの作品:
[助太刀兵法1]鎌倉しらす茶屋  
[助太刀兵法2]人助けの剣
[助太刀兵法3]白波心中
[助太刀兵法4]おとよの仇討 
[助太刀兵法5〕神隠しの湯
〔助太刀兵法6〕秘剣虎走り
〔助太刀兵法7〕象斬り正宗 
〔助太刀兵法8〕討ち入り象屋敷 
〔助太刀兵法9〕夜桜お七
〔助太刀兵法10〕夜桜お七 (2)
〔助太刀兵法11〕柳生天狗抄 (1)
〔助太刀兵法12〕柳生天狗抄 (2)
〈助太刀兵法13〉柳生天狗抄(終章)
〈助太刀兵法14〉山の辺道中
〈助太刀兵法15〉山の辺道中(2)
〈助太刀兵法16〉十五夜石舞台
〈助太刀兵法17〉五夜石舞台 (2)
〔助太刀兵法18〕大江戸人形始末)
〔助太刀兵法19〕大江戸人形始末(2)
〔助太刀兵法20〕大江戸人形始末(3)
〈助太刀兵法21〉尾道かんざし燈籠
〈助太刀兵法22〉尾道かんざし燈籠(2)
〔助太刀兵法23〕尾道かんざし燈籠 (3)
〔助太刀兵法24〕尾道かんざし燈籠 (4)  
〔助太刀兵法25〕 尾道かんざし燈籠(5)
〔助太刀兵法26〕尾道かんざし燈籠(6)
〔助太刀兵法27〕尾道かんざし燈籠(終章)
〔助太刀兵法28〕室の津綺譚

猿ごろし




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【時代小説発掘】
〔助太刀兵法29〕室の津奇譚(2)
花本龍之介 



一 堪忍侍

 薩摩側が必要のない禄高の話を持ち出したのは、相手が小藩とみくびって同じ先のり役でも格が違うとばかりに、七十七万石の威光で新兵衛を捻じ伏せるつもりであろう。薩摩の腹を見てとった新兵衛は、これは怒った方が負けだ。何があっても腹を立てぬぞ、と決心した。
「ほう。用件を聞きたい? なあに簡単でごわす。この本陣を、おいどんらに引き渡してくれれば、いいだけのことじゃ。たいしたことではなか」
 伊集院の口調が、新兵衛を露骨に見くだしたものに変わった。島津家中で五十石と言えば、最下級の武士から二番目に位置する。あとは足軽と中間しかいない。
「これは、異なことを申される。それがしは、祖父の代から板倉家の先のり役をうけたまわっているが、このような無体な申し出をされたのは初めてでござる」
 白扇をぱちりと鳴らすと、新兵衛は涼しげな顔で目の前の四人を見廻した。
「なんじゃと! おはんは、おいどんらの言い分を、無体といいもすか」
 二階堂琢磨が、色をなして片膝を立てると、横に置いていた大刀を左手に持ちかえた。「さよう」
 ひと言答えて、二階堂を見返すと新兵衛も右膝の刀を左手で持った。両者とも、ただちに抜き打ちが出来る構えである。
「待て。斬るのは、いつでも斬れる。その前に、この五十石の先のり役の藤森どんの、ご意見を聞いてもよかじゃあなか。言っておきもすが西郷をのぞく三人は、いずれも示現流の使い手じゃ。そのつもりでな」
 そう言いながら二階堂の腕を押さえた有村義介は、ほかの三人にくらべて気味が悪いほど肌が白い。躰付きも他の者と違い、上背があって痩せている。そのため冷静に見えた。「では。それがしも、そのつもりで話そう。無体のその一は、半年も前に明日は室の津の本陣を使うと当藩より申し入れているのに、無理に横から割り込んで、われらを追い出そうとなさっていること。無体のその二は、武士にむかって禄高を聞き、当方が小身と知るや見くだしたような態度に変わったこと。その三は、板倉家が小藩とみてあなどり、大藩の威をもってごり押しなさろうとしていること。これが無体でなくて、なんでござるか」 口調は厳しかったが、新兵衛の表情に咎める色は無かった。
「う、うむ……」
 唸り声を上げると、伊集院は意外そうに二階堂と顔を見合わせた。二人は板倉家の先のり役を怒らせて喧嘩に持ち込み、斬らぬまでも袋叩きにして本陣から放り出す腹積りだったのだ。
「おはん、おいどんらに妙な言いがかりをつけもすな。二万石は、いかにも小藩ではごわさんか。くらべて薩摩藩は七十七万石でごわす。誰がどう見ても大藩ではごわさんか」
 いらだたしげな語調で、伊集院が言った。
「そうじゃ、そうじゃ。おいどんらは小藩を小藩と言っただけでごわす。それに侍が交渉相手の禄高を聞いてはならん、という定めは武家諸法度のどこにもなか」
 二階堂が尻馬にのって、新兵衛を睨みつけながら語気荒く捲し立てる。この男は、剽悍熱血で短気な薩摩隼人を絵に描いたような人物だ。
「たしかに、禄高を聞きもしたが、こちらの禄高も教えもした。おたがいの身上(しんしょう)を知っておるほうが、話がしやすいではなか。そうでごわさんか?」
 有村が、新兵衛におとらぬほど冷静な口調で言葉を継いだ。
「なるほど」
 新兵衛は唇の端しにわずかに苦笑を滲ませると、末席に連なる西郷吉兵衛を見た。ずんぐりした大きな躰をすくめるようにして、目の前の畳を見ている。
――そうか。西郷という小身侍をのぞく三人は、どうあろうと難癖をつけて、おれを逆上させ喧嘩沙汰に持ち込んで本陣から追い出そうおいう魂胆らしい。よかろう、ならばその手にのらぬだけだ……
 そう思ったとたん、新兵衛の腹がすわった。
「これは、それがしが悪うござった。たしかに、わが庭瀬藩は誰が見ても折り紙つきの小藩。それに二階堂どのと有村どのがいわれるように、おたがいの家禄を知っていたほうが話の通りがようございますな。は、はは、いや、まったく」
 廊下に立ったまま様子をうかがっていた名村屋理左衛門が、笑い声をきっかけにほっとして茶椀をのせた丸盆を持って座敷へ入ってきた。
「お茶が遅うなりました。まずは喉をしめらせ、ご一服なさってはいかがでしょう」
 如才なく愛想を振りまきながら、理左衛門が四人の膝の前に茶をくばって廻る。
「名村屋。おいどんらは、この藤森どんと明晩どっちの藩がこの本陣を使うか、大事な交渉の真っ最中でごわす。これには武士の面目が、かかっていもす。のん気に茶など飲んでいる暇はなか!」
 二階堂に一喝されて、理左衛門は蒼惶(そうこう)として退散した 。
「さてと」
 四人の薩摩隼人に目をやると、新兵衛は落ち着きはらって言葉をつづけた。
「その交渉でござるが。それがしが、どうあっても先約をたてに本陣をゆずらぬと申したら、おのおの方はどうなさいます」
「しれたことでごわす! そのようなことになれば、太守さまへの申しわけに、おはんの目の前ですぐさま四人が腹をかっさばいてお見せもす」
 新兵衛の言い草が、よほど小憎らしかったのか、伊集院が吼(ほ)えるような声で言い放った。
「ほう。さようでござるか」
 何が嫌いと言って、すぐに切腹、切腹と騒ぐ田舎侍ほど新兵衛の嫌いなものはない。あくまでも約定を楯にして本陣をゆずらず、威張り返った伊集院と二階堂と有村に腹を切らせるのも面白い。そんな考えが、ちらりと頭をよぎったが、やはりそうはいかなかった
「さすがは天下に名高き薩摩武士、よいお覚悟でございます」
 三人が切腹しても、すぐさま新兵衛が追い腹を切れば、おのれ一人の身の始末はつく。だが薩摩藩は、それでは引っ込むまい。幕府に強力に働きかけて、庭瀬藩を取り潰しにかかるかもしれぬ。
 新兵衛の脳裡に、やさしいが気の弱い板倉摂津守の顔が浮かんだ。
――ままよ……
 ある覚悟を、新兵衛は決めた。
「腹など切られては、当方もはなはだ迷惑でござる。そこまでお役目を大切に思われているならば、よろしいでしょう。武士は相身たがい、本陣をおゆずりいたしましょう」
 初手からそう出てくれればよいのだ。といった顔で、伊集院と二階堂と有村が横柄に頷ずいて笑い出す。
「あは、はは。いや、けっこう。これで話がつきもしたな。おいどんらも、今宵はうまい酒が呑めるというものでごわす」
 礼ものべず、あやまりもせず、七十七万石が出れば吹けば飛ぶような小大名は、一も二もなく引き下がるお信じて疑わない三人の態度であった。
「あのう……、藤森どん」
 それまで黙りこくって成り行きを見守っていた西郷吉兵衛が、末席から遠慮がちに声をかけてきた。
「なんでござるかな」
「あ、いや、その……。おいどんたちに本陣を明け渡して、藤森どんは、どげんなさるつもりかな、と思いもして」
 何を言い出すか、と三人は横目で西郷をじろりと睨んだ。
「西郷どのは、それがしの身をご心配くださるか。お気使い、まことにかたじけのうござる。新兵衛、礼を申す」
「ほんとうに、心配なかでござるか」
 頭を下げた新兵衛を見ながら、気がかりそうに西郷が言った。軽輩者がよけいなことを言い出す。と三人はますます不機嫌な顔になる。二階堂は大きく舌打ちをして、そっぽを向いた。
「大丈夫でござる。それがしの藩は、貴公の藩とちがって近うござる。すぐに使いを出し、江戸への行列の出立を一日遅らすようにするつもりです。さすれば、わが殿がこの室の津へまいるのは明後日でござる」
「おお、明後日ならば、ご太守さまが立たれた次の日。安心でござるな」
 西郷が安堵したような声を出した。
「そうと決まれば、ぐずぐずしとらんで一刻も早う、門前の関札と定紋幕を取りはらうようお願いしもす」
 少しでも早く島津の丸に十の字の幕を張り巡らせたいらしく、二階堂が唇をゆがめて言った。
「手が足りなければ、薩藩の者を出して、おいどんたちが張り変えてもようごわすぞ」
「あいや、それには及びません。それがしも、わずかながら供を連れてきております。すぐに取りはずしますゆえ、暫時(ざんじ)お待ちくだされ」
「そうでごわすか。おいどんたちは、そのあいだ本陣の各座敷を検分してまわることにしもす」
 袴の裾をはらって伊集院が立ちあがると、二階堂と有村も後につづいて意気揚々と座敷から出ていった
最後に立った西郷吉兵衛だけが、気の毒そうに目礼して去った。
 四人の足音が廊下を遠去かったとたん、襖がさっと引き開けられて刀の鯉口を切った柏木宮内と、柄を握った仲蔵が座敷に飛び込んできた。
「よう、我慢が出来ましたなあ新兵衛さま。てまえなぞは、途中で刀を抜いて斬り込もうとしたぐらいでございます」
 宮内が真っ赤な顔で、歯ぎしりした。
「馬鹿なことをいうな」
 新兵衛は、うんざりした声を出した。
「みどもが、ならぬ堪忍をしているのだ。お前たちが切れてどうする」
「てまえは侍の頭数にも入らぬ、足軽風情でございますが。それでも柏木さまと同じように斬りかかるつもりでしたぞ」
「仲蔵、お前までそんなことを申すか。よいか、みどもだとて薩摩っぽを斬り捨てれば、どんなに気がせいせいしたか知れぬ。おのれの気はそれですむ。だが、主家はどうなる。板倉家が取り潰されるのは必定、ではないか」
「ま、まことに……」
 宮内と仲蔵は、頬を流れる悔し泪を拳でぬぐった。
「よいな。ここは、こらえてくれ。武士の面目をいうなら、これをしのぐのが侍の意気地というものだと、みどもは思う」
「ですが、武士道とは死ぬことと見つけたり。と申しますぞ」
 柏木宮内が、膝の上の拳をかぶるぶる振るわせながら言った。この男、侍にしては少し書物に溺れて、理屈を言いすぎる欠点がある。
「その言葉は、みどもも耳にしたことがある。だがな宮内、その場合の死ぬという意味は、戦場において主君の馬前で討ち死にすることをいうのだ。このような本陣あらそいごときで斬り死にするなど、まさに無駄死にだぞ」
「なるほど、それもそうでございますな。しかし、襖ごしに聞いていても腹が立って、腹が立って……。新兵衛さまは、よく辛抱なさいましたな。いい歳をしていながら、思わず飛び出しそうになった自分が恥ずかしゅうなりました」
 柏木宮内は、新兵衛の家来ではない。伯父から借りてきた者である。そのため、おたがいに遠慮というものがあった。
「この本陣は、島津家にゆずることに決まったのだ。二人とも、いろいろ思いはあるだろうが、ここはみどもにまかせてもらいたい」
 新兵衛は膝に両手を置くと、頭を下げた。
「顔をお上げくだされ、新兵衛さま。ようく、わかり申した。すべて、あなたさまの下知にしたがいます。のう、仲蔵」
 聞いた宮内にむかって、仲蔵も大きく頷ずいた。
「わかってくれたか。よし、ならば槍持ちの権次も呼んで、一刻も早く定紋幕と関札を取りはずさねばならん」
 その口振りとは裏腹に、べつに慌てるふうもなく、新兵衛は静かな足取りで座敷から出ていった。


二 本陣騒動

 室の津の港と、海と、山の景色を眺めるのにも飽きた飛十郎は、畳の真ん中で思う存分両手両足を広げて目を閉じた。すぐに心地良さそうな、寝息が聞こえはじめた。と思ったのもつかの間、廊下を駆けてくる慌ただしい足音がして、いきなり障子が開くと弥助が顔を覗かせた。
「のん気に昼寝している場合じゃありませんよ。旦那、妙なことが始まってますよ」
「う、ううむ……。どうした弥助、室の津へ大砲を積んだ異国船でも入ってきたか」
 にやりと笑って起き上ると、飛十郎は大きく伸びをした。
「そんなことが起きたら、妙なことじゃすまないでしょう。ちがいますよ、あたりが騒々しいでさあ」
「妓楼が夕刻になれば、騒がしくなるのは当然だ。何の不思議もない」
 腰骨のあたりを拳で叩きながら、気のない返事をする。
「それが、騒がしいのは、この室津屋じゃなくて本陣なんで」
「なんだと、本陣がどうした!」
 飛十郎は、刀をわし掴みにして立ち上がった。
「いえね。旦那が昼寝をしている間に、あっしは町を見物しておこうと思って、本陣の前を通りがかったんでさ。昼間出会った藤森新兵衛さまを筆頭に、お供のふたりと槍持ちの権次さんまで総出で、門前の幔幕やら札やらを、汗だくになって取りはずしていなさるんですよ」
「ふうむ。そいつは、ただごとではないな」
 無精髭をひとこすりすると、飛十郎は刀を帯に差しながら廊下を歩き出した。
 弥助を従えて階段を降りる飛十郎を見て、賄い場から出てきたお福が目を丸くして声を掛けた。
「あれ、仕出し屋から届いた料理とお酒を、持っていこうと思っているのに、どこへ行きなさる?」
「どうやら本陣で、揉めごとが起きたようだ。ようすを見にいってくる」
 草履に足を通すと、飛十郎はぶらりと本陣にむかって歩き出した。その後を弥助があわてて追っていく。
 飛十郎が本陣の門の前まで行くと、柏木宮内と中間の仲蔵が取りはずした定紋幕を折り畳んでいた。権次が槍ならぬ関札を、肩にかついで中へ運び込もうとしていた。
「どうした、槍持ち。どこかへ引っ越しするのか」
 にやにやしながら、飛十郎は顎をこすった。
「おう、こりゃあ昼間会ったご浪人さま。笑いごとじゃあねえですよ。島津のご家来衆が乗り込みなさって、いろいろと難しい談判があって、おらたちが本陣を追い出されるはめになっちまったんだよ。こんな無体なことはねえだよ」
 権次は腹ただしげに、関札を取り付けた角材で地面を打った。たとえ日雇いの駄賃槍持ちでも、薩摩のやりようには憤りを感じたようだ。
「やはりそうか。浜の茶店で丸に十の字の御用船を目にした時から、ひと揉めあるかもしれぬと思っていたが……。勘が当たったようだな。藤森どのは、どうした」
「新兵衛さまなら、さっき名村屋の旦那と台所でなにやら話していなすったが。ああ、きなさったよ」
 権次が指差す先を見ると、脇門から出てきた新兵衛が、すたすたと飛十郎にむかって歩いてきた。
「藤森どの、大変ですな」
 呼び掛けながら飛十郎は、東にむかってゆっくりと流れていく幾筋もの茜雲に目をやった。
「なに、たいした問題ではござらん」
 新兵衛も、つられたように空を見上げた。
「や。まことに、美しい夕空でござるな。お役目の忙しさにかまけて、海や空や雲に気がつくことなど、あり申さなんだ」
 鬢(びん)のほつれ毛に吹きつける海風に初めて気付いたように、新兵衛はあたりを見廻した。
「その役目のことだが。聞けば本陣を出て行くそうだが、そのあとはどうするおつもりですかな?」
 新兵衛は、驚いたように目を見張った。
「これはまた、早船どのは耳が早うござるな。先ほど急飛脚を出しましたから、ご主君の行列は一日遅れで出発なさるはずです。よもや島津公と板倉公が、この室の津で鉢合わせすることはあるまい。それがしと供の者は、町はずれの寺に泊めてもらうつもりでござる」
「仕事とはいえ、宮づとめもなかなかつろうござるな」
 気の毒そうに飛十郎は新兵衛の顔を見た。
「なに、これしきのことで弱音を吐いていては、先のり役はつとまらぬ。さほどの苦労ではござらん」
 平気な顔で、新兵衛は言い放った。
「それを聞いて安心した。どうです、てまえは今宵の酒は舟の上で楽しむつもりだが、藤森どのもよかったら、おつき合いくださらぬかな。気分直しには、もってこいだと思うが」
 意外な飛十郎の誘いに、新兵衛はしばし考え込んだ。
「……時刻は、いつ頃でござろうか」
「そうさな。およそ、五つ(午後八時)がいいと思うが」
「波の上で盃を交わすのも、一興でござるな。で、それがしは何処へいけばいいので」
 新兵衛は、頷ずくと微笑を浮かべた。
「この室津屋の二階にいる。新兵衛どのの、都合のいい時にまいられるがよい」
「わかりました。供の者と夕餉をすませたあと、必ずいきます」
「よかった。くるまで、お待ちしていますぞ」
 うれしそうに頭を掻くと、飛十郎は室津屋へ引き返していった。


三 遊女花筏

 あたりが薄暗くなるにつれて、船頭や水夫(かこ)や船旅の町人たちで通りが賑わってきた。
 飛十郎が新兵衛と別れて帰ってくると、何処に隠れていたかと思うほど大勢の遊女たちが見世先へ出て、声をあげて男たちの袖を引いていた。
「聞きしにまさる繁昌でございますねえ、旦那」
 弥助が驚いてあたりを見廻した。
「うむ。江戸の吉原とは、また違った味わいのある遊里だ。潮の香りが立ち込めて、いちだんと野趣がある」
 お福も、七尺ゆたかな巨躯の浜蔵という男衆も、飛十郎たちが帰ってきたのはわかっているが、遊客を案内するのが忙しく構っていられない。
「早船さん、お酒と肴は座敷へ運んでおいたからね」
遠くから声を掛けるのが、せい一杯のようだ。
「気にするな。勝手にやる」
 そう答えて飛十郎は、遊女の尻について階段を登っていく。早々と船乗りたちが酒盛りをしているらしく、あちこちの座敷から三味線や太鼓の音が響いてくる。
飛十郎は座敷の障子を、からりと引き開けた。行灯の左右に夕餉の膳が二つ置いてある。「よし。やるか、弥助」
 膳の前にあぐらをかくと、飛十郎はすぐさま盃を取り上げた。銚子を持つと、盃になみなみと酌いで、うまそうに口に運んだ。
「う、うむむ……。こたえられんな。五臓六腑に浸み渡るとは、このことだ」
「そうでございますか。では、あっしも手酌で」
 弥助も銚子を取り上げると、盃に半分ほどそそぎ入れる。
「遠慮せずに、もっと呑め。今夜は少し酒が入っているほうがいいぞ。といっても、あまり呑みすぎてもいかんがな」
 にやりとした飛十郎の顔を、首をひねって弥助が見た。
「へ。そりゃまた、どうしてでございます?」
「今にわかる。ふ、ふふ、もう一杯呑んだほうがいいぞ」
 飛十郎のふくみ笑いをしながらの言葉が終る前に、障子の外で女の声がした。
「ごめんくださいませ。今夜のお相手をつとめます、花筏でございます」
「そうか、まあ入れ」
 涼やかな衣ずれの音がして、静かに障子が開いた。立兵庫に結った黒髪に、珊瑚の簪(かんざし)と鼈甲の櫛と水晶の笄(こうがい)を差して、裾長の単衣に裲襠(しかけ)を羽織っている。
「旦那さま。一夜の縁(えにし)で、お情けを頂戴いたしとうございます」
 そう挨拶すると、花筏は細っそりとした白い指を畳について頭を下げた。
「おぬしは、京の生まれか」
 柔らかな話し振りが京言葉のように思えて、飛十郎は盃を乾しながら花筏の顔を見た。「へえ。そうどす」
「京の都で生まれた女が、どうしてこんな所で遊女をしている」
「ほ、ほほ、話せば長うおす。のどが渇いて往生してます。旦那さま、お流れをちょうだいしとうおす」
 白魚のような指を口元に当てて、ひとしきり笑うと花筏は立ち上がって飛十郎の横にすわった。
「その旦那さま、というのはよせ。尻がむずむずしてくる。おれの名は早船飛十郎だ」
 手酌酒を口にふくむと、飛十郎は花筏の立ち姿に心底から感嘆していた。
 名高い京の島原や大坂の新町の遊女はまだ見ていないが、吉原で見た花魁(おいらん)の裲襠は金糸銀糸で色どり鮮やかに縫い取りがしてあった。くらべて花筏の単衣と裲襠には、梅、菊、蘭、竹の四君子が墨絵で描いてあるだけだった。その墨一色の絵の中で、梅の花弁だけが紅を散らしているのが、なんとも艶めかしいものであった。
「では早船さま、わたくしにも一盞(いっさん)の盃をたまわりとうおす」
 飛十郎の盃を奪うと、甘えるような風情で酌をうながした。
「いける口のようだな。よかろう、いくらでも呑め」
 朱塗りの銚子を持つと、波間に鴛鴦(えんおう)を描いた大盃に、飛十郎はあふれんばかりに酒を注いだ。
「おおきに。遠慮しまへんえ、早船さま」
 盃を押し戴くと、花筏は三口で呑み乾した。これは一夜ながら、三三九度を交わす心意気であろう。その鮮やかな呑みっぷりに、酒が苦手なだけに憧れの目で弥助が花筏を見た。
「ご返盃を。この室の津のしきたりで、早船さまも三口で乾してくだされませ」
「いいだろう。ただし、おれが訊いたことを話してもらうぞ」
 念を押すと、飛十郎は素直に花筏が言った作法で盃をあけた。
「遊女の身の上話でおすか。わたくしは、京の西陣の織元で生まれました。早船さまは、行かれたことはおますやろか」
「いや。都は三条あたりと、四条河原と、東山しかまだ知らん。西陣は不案内だ」
「織元も、ぴんからきりまでおます。生まれた家は機織(はたおり)が二台。ととさんと、かかさんが帯地や錦地を織っていやはりました。わけても、ととさんは帯地の名人といわれてましたのや。けど、ある年の夏に流行り病で、あっけなく亡くなりました。残されたかかさんも躰が弱く、幼い妹や弟をやしなうために、すすんで身を売ったのどす。けど京で遊女になるのは、幼なじみや顔見知りが多うて悲しゅうおす」
「そうだろうな。わかるような気がする」
 頷ずいた飛十郎に、花筏はにっこりと笑いかけた。
「それで、この室の津まで落ちてきて、ようやく安らかな気持ちで身を売っております」 卑下する様子もなく、明るい口調で花筏はさらりと言った。
「その稼業、おれには想像もつかないが。つらくはないのか」
「……つろう、おます」
 花筏の目の奥に、一瞬暗い影が走った。
「いつも早船さまのような、お客はんばかりやおへん。乱暴や下品なお人でも、お金さえ出せば断わることは出来まへん。そんなおりには、わたくしは伏見の土人形になるのどす」  
 花筏は、悲しげな顔をした。
「伏見の土人形だと。なんだ、それは」
「伏見稲荷名物の、泥で作った人形どす。これぐらいの大きさの」
 左右の指を三寸(十センチ)ほど広げて見せた。
「姫さんや、お公家さんや、嫁入り人形もおます。わたくしはこんな境遇どすさかいに、一生花嫁さんにはなりまへん。そやよって嫌な客に買われた時には、土人形になった気いで天井を見上げて歯を食いしばるんどす」
 盃の酒が、ふいに苦い味になった気がして、飛十郎は顔をしかめた。
「もし、おれが嫌な客なら、土人形になるにはおよばん。どうだ花筏、このまま朝まで呑み明かそうではないか」
「なにを、おいいやす。早船さまが、嫌なお人なら、こんなことは明かしまへんえ」
 なじるような目で、花筏は飛十郎を睨んだ。
「そうだな。いや、おれが悪かった。すまん」
 飛十郎は盃を置くと、膝に手を置いて頭を下げた。
「およしやす。かりにもお武家はんが、遊女ごときにあやまることはおへん。お腰の刀が泣きますえ」
 きっとした顔で、たしなめるように花筏は言った。
「それは違うぞ。武士であろうと町人であろうと、間違いをおかせば、あやまるのは当たり前だ」
「ま。早船さまは、風変りなお武家はんどすなあ。これまで、いろんなお人にお逢いしましたけど、こんなん初めてどすわ」
「は、はは。武士が遊女に頭を下げるのが、それほど珍しいか。もっとも刀こそ差しているが、町人に毛が生えたような浪人者だがな」
 笑いながら、飛十郎は無精髭をこすって見せた。
「そんなことは、おへん。これまで、お逢いした中には、お歴歴といわれる身分の高いお武家はんも、いやはりましたけど早船さまのような、すがすがしいお人は見たことがおへん」
 飛十郎は驚いたように、盃を口に運ぶ手を止めた。
「馬鹿な。おれとは、さっき顔を合わしたばかりではないか。初対面で人間の中身までわかるものか。こう見えても、とんでもない悪党かもしれんぞ」
「そんなことは、おへん」
花筏は何ともいえない温かい微笑を浮かべて、顔を横に振った。
「早船さまは、困ったお人を見逃すことなど出来ない、やさしいお方どす。これだけは、間違いおへん」
 きっぱりと言い切った花筏を見て、飛十郎は困惑したように頭を掻いた。
――まてまて、これが名高い遊女の口説というやつかもしれぬ。いい気になったら、あとでえらい目にあうぞ……
 飛十郎は気を引き締めるように、そう腹の中で思っていた。
「ふん。どうして、そんなことがわかる」
 怒ったような顔で、飛十郎は聞いた。
「どないしてか、わかりまへんけど。幼い頃から、人さまを見抜く力がおした。それが他人さまと閨(ねや)を共にするようになって、その感覚がえろう研ぎ澄まされてきましたのや。今では顔を見て、ひと言ふた言話しただけで、お人柄がわかるのどす」
「ふうむ……、不思議なことだな。だが広い世間には、そんなこともあるかもしれんな」 うなるような声を出すと、飛十郎は盃を花筏にむけた。
「まあ、いい、呑め。ところで花筏おぬしは、おちょろ舟をだすことが出来るそうだな」「へえ、ごくたまにどすけど。月の美しい夜には、風流を解するお客はんにたのまれて、小舟を出すことがおます」
 ひと口呑んで、盃を膳の上に戻した花筏を見て、飛十郎はうれしそうに頷ずいた。
「どうだ花筏。今宵、おちょろ舟を漕ぎだしてくれないか。もっとも風流のためではなく、おれのはただの物好きなだけだが」
「それはかまいまへんけど、舟に乗りはるのは早船さまだけどすか」
 盃を飛十郎に手渡しながら、花筏は小首をかしげた。
「うむ。さすがに勘がいいな。じつは、相客がひとりいる。藤森新兵衛といってな、ある大名の先のり役をしている侍だ。これがなかなか出来た男でな、おぬしも逢えばひと目で気に入ること必定だ」
「藤森はんなら、ようぞんじておりますえ。いまどき珍しい武士気質をお持ちのお人どす。ちょっと時代
のお侍はんやけど、好きどすえ」
「は、ははは、時代おくれの侍はよかったな。そうか、考えてみれば本陣とこの室津屋は目と鼻の近さだ。藤森どのは、よく遊びにくるのか」
「とんでもありまへんえ。藤森はんは、お役目だいいちの立派なおかたどす。室津屋はおろか、この町の妓楼へは、まだ一度もお揚がりになったことはないはずどす」
 藤森新兵衛をよほど気に入っているのか、花筏は憤然として言った。
「おい花筏、あまり耳が痛いことをいうな」
 苦笑すると、飛十郎は指で耳を摘まんだ。
「おれなぞは、行くさきざきで平気で妓楼に揚がるからな。藤森どのとは人間の出来がだいぶ違うかもしれんな」
「そんなことは、おへんえ。人には、それぞれ違った良さがあると思うております。藤森はんのように女には見向きもせんような、四角四面な男はんの真面目さにも女は強うひかれます。早船さまのように、ご身分にこだわらず誰とでも分けへだなく、気さくにおつき合いになられる洒脱(しゃだつ)な男はんにも、女はひかれるものどす」
「ふ、ふふ。べつに無理をして、なぐさめてくれなくてもいい。それにしても、弥助の敵娼(あいかた)はどうした。えらく、遅いな」
 ふいに自分の名が出て、弥助は持っていた箸を落としそうになった。
「そうどすなあ。この座敷へくる前に、朝霧さんは湯うに入るいやはってたから、もうそろそろお越しになるのやおへんか」
「ふむ。その朝霧というのは、どんな女だ。弥助の相手をするのだからな、顔はどうでもいいが心根のやさしい女でなくては困るぞ」
 顔はどうでもいい、と言われて弥助はうらめしそうに飛十郎を見た。
「そんな憎らしいことをいやはって、いけずやなあ早船はんは。朝霧さんは、それは可愛らしいお顔どっせ。せんだっても、嵐のあとの浜辺で岸に打ち上げられた小蟹をひろうてきて、大鉢の中で飼わはったほど、やさしい気性をしてはりますえ」
「なんだと、蟹を飼っている女だと。まさか、蟹のような顔ではあるまいな」
 蟹のような女だ聞いて、弥助は一段とうらめしげな顔になる。
「もう。いけずも、いいかげんにおしやす。お連れはんが、かわいそうやおへんか」
 綺麗な二重の目尻を、きっと張って飛十郎を睨んだ。
「いや、冗談だ。ゆるせ、弥助」
 左右の手をふところに入れると、閉口したように飛十郎は首をすくめた。
「ほら。噂をすれば、なんとやらどすえ」
 軽い足音がして人の影が差すと、すっと障子が開いて、女が座敷に入ってきた。
「おそくなりました。朝霧でございます。皆さまよろしゅう」
 蟹に似ているどころか、花筏と違って丸顔だが愛敬のある顔立ちをしている。花筏より格が下なのか、裲襠はなく薄紫の地に菖蒲(あやめ)を描いた友禅を着ている。座敷を見渡すと、心得たように弥助の横にすわった。
「その男は弥助といってな、江戸の深川で鰻屋をしている気のいいやつだ。今夜は、よろしく頼むぞ。おい弥助、ぼやっとしていないで朝霧の盃に早く酌をしてやれ」
 名を呼ばれた弥助が、顔を真っ赤にしながら銚子を取り上げる。その手をやんわりお押さえて、弥助に盃を持たせると、朝霧は酒を三回に注ぎ分けた。
「は、はは、このように気のきかぬ男だ。大変だろうが朝霧、万事よしなに引き廻して、弥助を一人前の男にしてやってくれ」
「おまかせくださいまし」
 にっこり笑って胸を押さえると、朝霧は弥助が乾した盃から、三口で自分も酒を呑んだ。
「弥助さまは、深川で鰻屋をなさっているんですか。あのあたりには両親と一緒に舟でよく出かけました」
「ほう、朝霧さんは深川の生まれかね」
「いいえ。江戸の近くの葛飾郡の柴又の生まれです。弥助さまは?」
「備後の尾道の生まれだよ。たのむから、その弥助さまはよしてくれ。なんだか背中がむずむずしてなんねえよ」
 朝霧にむかって弥助は、拝むような仕草をした。
「それじゃあ、弥助さん。まだ尾道へは行ったことはないけど、この室の津より何倍も賑やかな港町だそうですね」
「ああそうだよ。尾道はここより何十倍も大きな港町だよ。なにしろ寺院が六十もあるんだからね。朝霧さんも、一度行ったほうがいいよ」
 生まれ故郷の尾道のことを聞かれて、弥助はうれしそうに朝霧を見た。これほど綺羅を飾った美しい遊女を、真近に見るのは生まれて初めてのことだろう。うっとりとして顔を眺めている。
「早船さま。どうやら、心配おへんえ。ふたりは意気投合していやはります。えろう話がはずんでおりますえ」
「そのようだな。案ずるより生むがやすし、とはこのことだ。さてと、おちょろ舟のことだが、出来れば五つを過ぎた頃に浜を離れたいのだが」
「へえ。こちら何時でもかまいまへんえ」
 さらりと答えて、花筏は窓の外へ目をやった。
「今宵の月は、どのような形かな」
「きのうの夜は、まるで鎌のような月どしたえ」
「三日月か……。その昔、奈良の宝蔵院の寺僧・胤栄は、水面(みなも)に写る三日月を見て、鎌槍を考案したと聞いている。おれも波間に光る月を見て、新しく居合の技を思いつくかもしれんな」
 おもむろに腕を組むと、剣の道に思いをこらすように飛十郎は半眼を閉じた。
「おお怖い。月を眺めながら人を斬る技を考えるなんて、そんな不風流なお人を乗せるのは嫌どすえ」
 聞きたくない、というように花筏は耳を押さえた。
「ゆるせ、冗談だ。遠方より友きたる、また楽しからずやと申すではないか。藤森どのと波の上で酒を酌み交したいだけだ」
「ほんなら、よろしゅうおすけど。藤森さまは、本陣にいやはらへんのどすか」
 花筏は不思議そうに聞いた。
「いや、いるはずだぞ。さっき門の前で逢ったからな」
「おほらしい。ほんなら遠方でも、なんでもないやないの。すぐそこやおへんか。早船さまは、藤森さまを以前からご存知どすか」
「いや。昼間、この町の入口で逢ったのが最初だ」
 とぼけた顔で飛十郎が言う。
「なんや、ほんなら友だちでもなんでものうて、顔見知りに毛が生えたようなもんやおへんか。ほんまに変なお人やなあ」
 花筏はあきれたような顔をした。
「まあ、そういうな。知っているだろうが、茶の湯に一期一会という言葉がある。たとえ生涯に一度きりの出逢いであっても、友人知己のごとく茶をふるまう。茶祖・千利休が残した茶の心だ」
「藤森さまとの出逢いも、その一期一会だといやはりますのか」
「そうだ。男と男というものはな、ひと目見たとたんに肝胆あい照らし、百年の知己のごとくなることがあるのだ」
 いやに力を込めて、飛十郎は言い切った。
「それなら、ようわかります。女と男の仲にも、ひと目惚れいうのがありますさかい」
しんみりとした口調で言うと、花筏は飛十郎の顔をじっと見つめた。
「だが、その逆に、ひと目見ただけで怖気(おぞけ)をふるうほど嫌いになる。というのもあるがな」
 「そうどす。けど男はんに生まれはったら、親のためとはいえ怖気をふるうような客に、抱かれることはおへんやろ」
 恨みがましげな花筏の顔に、返答に窮した飛十郎は黙ったまま、盃の底に残った酒を乾した。夜風が木の葉を揺らす音が聞こえた。
「風が出てきたな。どれ、少し腹に喰い物を入れておくか」
 盃を置いて箸を取ると、里芋の煮っころがしを口に放り込んだ。
「ちょっと風がありますけど、まだ波頭が白くなってはおりまへん。大事おへんえ」
 立ち上がって窓から海を見ていた花筏が、振り返って言った。
「なにしろ小舟だ。飛沫が散って小袖が濡れることもあるだろう。まさか。それを着たまま沖へ漕ぎ出すのではあるまいな」
「いいえ、このままの姿どすえ」
「しかし、その小袖は手描きだろう。いずれ名のある絵師に頼んだものだろうだが、せっかくの見事な柄が波に濡れては、だいなしではないか」
「まあ。そんなに、この着物の柄がよろしゅうおすか」
「ああ、美しい絵だ」
 飛十郎は花筏の立ち姿にぴたりと決まった、四君子に見とれながら言った。
「ほ、ほほ、早船さまにほめられて、花筏はうれしゅうおす。小袖の絵は、わたくしが描いたのどすえ」
「なに。その絵は、おぬしが描いたというのか。ううむ……、信じられぬ」
「さっき言うたはずどす。小路(しょうじ)の奥の小さな店どすが、織元の娘どすえ。帯や着物の下絵ゆうもんは、たいていは西陣の問屋の旦那衆が描かれてお持ちになります。その絵を手直ししたり、自分で下絵を描くこともおますのえ」
「つまり、門前の小僧習わずとも経を読む。ということか」
「へえ。まだ言葉もろくに話せんほど幼い頃から、ととさんの横で絵筆を動かしていたそうどす」
「血筋というやつか。なるほど、うまいはずだ」
  感心したように言って、飛十郎は花筏の小袖を見直した。
「そういえば高名な尾形光琳とかいう絵師も、西陣の呉服屋の出だと聞いたことがあるな」
「ようご存知どすなあ。だいぶ昔のお人やけど、光琳はんと弟の乾山はんは京の雁金屋といわはる大きな呉服問屋の出どす」
「そうか。着物の下絵を心得ていたのが、画業の助けになったのだろうな」
 話しながら膳の上の料理を平らげていた飛十郎は、最後に飯をかき込んだあと満足げに腹をなぜた。
「そろそろ藤森どのがこられる刻限ではないかな。もっとも五つと約束はしたが、都合のよい時にといったから遅れるかもしれないが」
「そうどすな。ちょっと、下へおりて見まひょ。ついでに、台屋はんに酒と肴を注文しときます」
 言いながら廊下へ出た花筏の背後から、飛十郎の声が追ってきた。
「海へ乗り出して月を眺めても、その二品がなければ何にもならん。酒は、たっぷりと頼むぞ」


四 早船流

 花筏が竿の先で雁木を、とんと突くと舟は音も無く岸を離れた。
「いや、これは……。まことに、よい心持ちでござるな」
 飛十郎と向かい合って座っていた新兵衛が、星空を見上げながら感嘆の声をあげた。
「藤森どのは、舟の上で酒を呑むのは初めてですかな」
 新兵衛の盃に酌をしながら、飛十郎が聞いた。
「さよう。一度でいいから舟遊びというものをしていたいと思ってはいたが、御用繁多で機会がなくてこれが初めてでござる」
「では、一杯だけ」
 そそがれる酒を盃に受けると、飛十郎はうまそうに呑んだ。
「ま。えらそうに言ったが、舟遊びは品川とこの室の津の二回だけだが」
「品川といえば、江戸の入口にある宿場ですな」
「というより、遊女町といったほうが早いでしょうな。夕刻ともなれば、千人以上もの飯盛りたちが止め女となって、旅客の袖を引きますからな」
「そうですか。それがしは行列の先に立って通り過ぎるだけで、ろくに見物もいたさなんだが」
 新兵衛は銚子を持って酌をしようとしたが、飛十郎は盃の上に手を置いて顔を横に振った。
「酌は最初の一杯だけで、けっこう。あとは、おたがい手酌でやりましょう」
「ほう、手酌で」
 新兵衛は、とまどった顔をした。庭瀬藩では銚子が空になるまで酌をするのが作法である。
「そうでござる。そのほうが好きなように呑め、相手に気を使わず楽でしょう。てまえは昔からそうやって呑んでおります。ま、いわば早船流ですな」
 一瞬、息を止めた新兵衛は、飛十郎のすました顔を見て弾(はじ)けるように笑い出した。
「あは、ははは。早船流とは、愉快でござるな。いいでしょう。これからは裃(かみしも)を脱いで、ざっくばらんにお願いしましょう」
 それまで堅苦しく正座をしていた新兵衛は、膝を崩すと大胡坐(おおあぐら)をかいた。
「手酌、おおいにけっこうでござる。早船流でやりましょう。そのかわり、藤森どのはおやめいただきたい。これからは飛十郎さん、新兵衛さん、でいきましょう。お願いいたす」
 早船流で自分で盃に酒をつぐと、楽しげに呑み乾した。手酌で酒を呑みながら語り合っている二人の姿を、花筏は艪を漕ぎながら微笑を浮かべながら見ている。よく舟を出している、というだけあって慣れた艪さばきである。笹の葉の形をした、おちょろ舟は波の上をさして動揺することなく滑るように進んでいった。
「早船流は酒のことでしょうが、飛十郎さんは剣のほうは何流でござるかな」
「無双直伝英信流を少しばかり。もっとも、たいした腕ではないが」
 頭を掻きながら、飛十郎は答えた。
「ご謙遜にはおよびませんぞ。目のくばり身のこなしを見ると、なかなかの腕をお持ちのようだ」

「買い被り、かいかぶり」
 飛十郎は迷惑そうに手を横に振った。
「刀のような重いものを振るのは、真っ平ごめん。たまには抜くこともあるが、次の日に手の筋や足腰が痛んでかなわん」
 顔をしかめると、飛十郎はぐいと盃を乾した。
「おれのことより、新兵衛さんは何流ですかな」
「神道無念流です。父が道場を持っていたので、幼少の頃からやらされましたよ」
「ほう、お父上が道場主を。それでは相当使えますな」
「それが、とんと不肖の倅というやつで、さっぱり上達しませんでした。父もべつに藩の指南役というのでもなし、ただの剣術好きが小さな道場をやっていただけですから。なにしろ家禄五十石ですからな。おしてしるべきでしょう」
 悪びれもせず言うと、新兵衛は頭に手をやりながら苦笑した。
「そのほうがいい、生兵法は怪我の元。なまじ剣が使えると、とかく天狗になって抜きたがるからな。刀は、鞘の中から抜かぬうちが花だ」
「なるほど。それで居合の極意を、鞘の内というのですな」
「さよう」
 にやりと笑うと飛十郎は、ふところ手をして山のほうを見た。
「おう。ようやく月が出たようだぞ」
 その声に、新兵衛と花筏が顔をめぐらせた。
「ほんまや。お月さんが恥ずかしそうに、ちらりと顔を覗かせていやはる」
 町並みの背後に連なる山のむこうに、三日月の鋭い先端が見えた。花筏が漕ぐおちょろ舟は、帆と碇を降ろして停泊している帆前船の間をたくみに抜けていく。
「室津屋から見るとたいしたことなかったが、すぐ傍で眺めると檜垣船というのはたいした大きさだな」
 巨大な船影を見上げながら、飛十郎は驚いたように言った。
「千石は、ゆうにありますやろ。大きいはずどす」
 船腹に夜目にも白く見えるのは、へばり付いた貝殻だろう。湾の真ん中に、ひとかたまりになって碇を降ろしている船の群れをくぐり抜けると、急に視界がひらけた。
「室の津にきた時から気になっていたが、港の外に見える三つの小さな島は何という名だ」
 行く手に見える島影を指差しながら、飛十郎が聞いた。
「へえ。手前から地の唐荷島、中の唐荷島、沖の唐荷島ゆう名どす」
「そうか。唐荷というからには、その昔中国へむかう大船が立ち寄りでもしたかな」
 波のために左右に揺れ動いているような三つの島を、飛十郎はまじまじと見つめた。
「なんでも、ずっと昔に唐からはるばる海を越えてやってきた船が、この沖合いで嵐のためにひっくり返って、たくさんの死骸や積み荷があの島に流れ着いたゆうことどす」
「うむ、誰か住んでいる者はいるのか」
 興味を覚えたのか、新兵衛も伸びあがるようにして島を見ながら聞いた。
「とんでもありまへん。一番大きな地の唐荷島でさえ、周囲が三百間(五百八十メ−トル)あまりしかおへん。ひとりも住んではいまへんえ」
「そうかな。昼間見たところ、緑の木々が生い茂っているところなんぞ、なんとも住み良さそうにみえるがなあ」
 酒を呑みながら、飛十郎が無責任なことを言う。
「飲み水もないし、無理でっしゃろな。何百年も前には、抜け荷買いや瀬戸内の海賊やらが、悪いことのために使いはったゆう話やけど」
「そいつは面白い。おれも江戸を喰いつめて海賊にでもなったら、あの島を利用させてもらうとするか」
 なんの屈託もなく言い放って、盃を傾ける飛十郎を新兵衛はうらやましそうに見た。
「それがしは五十石の家に縛られて、なに一つ好きなことが出来ぬ。老いた母と妹、それに親類たちに気がねして、わずかな家禄を捨てることも出来ぬ情けない男でござる。大空を自由にゆく鳥のような飛十郎さんを、うらやむだけでござる」
「まった。それは違うぞ」
 手を上げると、飛十郎は盃を置いた。
「人は、それぞれだ。江戸の裏長屋で独りわびしく暮らす、おれのような浪人者から見ると、新兵衛さんのように決まった仕事があって母上や家族がいるのは、じつにうらやましい。貧しくとも肩を寄せ合って、一つ釜からめしを喰えるなどは、まこと極楽ではござらんか」
「ほんまに、そうどすえ」
 艪を押しながら、花筏がしみじみと言った。
「わたくしのような身の上から見れば、お二人ともうらやましゅうおす。三人三様、極楽かと思えば極楽、地獄かと思えば地獄ではございまへんか。ぜんぶ、心の持ちようでおます。どんなつらいことがあっても、幸せと思うて毎日を生きております」
「苦界か……。よそ目に見れば、天下の美味を食し、贅沢な衣裳を身にまとい、毎夜のごとく美酒が呑めるという、うらやましい境遇だが。口は出せぬ苦労もあるのだろうな」
 しんみりした飛十郎の口調に、新兵衛も盃を置いて肩を落とした。
「さあさあ、しめっぽい話はもうやめまひょ。室の津名物の、おちょろ舟に乗りはったのに、陽気にいかなあきまへんえ」
 艪を離して、手を打ちながら花筏が明るく言った。
「そうだ。せっかくの月見酒だ。浮世のしがらみは忘れて、新兵衛さん呑もう」
 なみなみと酒をつぐと、三日月にむかって飛十郎は高く盃を上げた。
「そうですな。よし、呑みましょう」
 新兵衛が答えた時、帆前船の船縁(ふなべり)で人影が動いた。
「おおい。そこの、おちょろ舟、この船へあがって、ひと稼ぎせんか」
 花筏の手拍子が波間に響いて、寝ていた船番を起こしたのだろう。船行灯に、ぼんやり照らされた船番の顔は年老いていた。
「なつかしいのう。銭ならあるぞ、銭が駄目なら米で払うてもええが、この船は樽廻船じゃ。なんなら酒もわけてやるぞ。どうじゃ?」
「おおきに。そやけど、このおちょろ舟は、お侍さん二人が貸し切りなさっとるのや。また室の津に寄ったおりに声をかけておくれやす」
 船上に声をかける花筏の顔が、三日月の淡い光に照らされて、美しく見えた。
「それは残念じゃ。わしは明日の朝、出港するんじゃ。次にここへ寄った時は、かならず姉さんのとこへ行くよ。どこへ行ったら逢えるんかの」
「尾野町へ行って、室津屋の花筏ゆうてもろうたら、じきにわかりますえ。おこしやす」 片手で艪を動かしながら、花筏はゆっくりと樽廻船へ近付いていった。陸からは酔客と遊女たちが唄い騒ぐ声がかすかに聞こえてくるが、海に上は静かである。船腹を打つ波の音が飛十郎の耳に心地よく聞こえた。
「風流とは、まさにこのことではないかな、新兵衛さん。おちょろ舟の遊女と、名も無い船番が月に照らされながら言葉をかわす、江戸に居てはとうてい味わえぬ旅ならではの境地だな」
「まことに。一幅の絵とは、このような情景を申すのでしょうな」
 二人が陶然となりながら、花筏と老いた船番のやりとりを眺めていると、樽廻船の舷(ふなべり)から網にくくられた一升徳利が、するすると降りてきた。
「のう花筏さん、これは手附けじゃ。伏見の下り酒じゃから、味は天下一品じゃと思うぞ」
「へえ、おおきに。遠慮なくいただきますえ。船の名と船番さんの名まえを教えておくれやす。お礼に航海のご無事を、そこに見える賀茂明神さんへ祈りますさかい」
「わしは、梵天丸の佐吉ゆうもんじゃ。かならず室の津へ戻ってくるからのう」
 花筏は結び目をほどくと、一升徳利を飛十郎に手渡した。
「おう。これは、ありがたい。このあたりの地酒も悪くはないが、伏見酒とくれば最高だからな」
 飛十郎は、受け取った酒徳利を船番にむかって、うれしそうに振って見せた。
「お侍さんや、せっかくお楽しみのとこを邪魔して悪かったの。それは、ふり袖ゆう上酒じゃ。わびのしるしに三人でゆっくり呑んでくれや」
 綱を引き上げながら船番の佐吉が笑った。それを合図に、花筏が艪をひと漕ぎすると、舟はすうっと樽廻船から離れていった。
「どうどす、早船さま。おちょろ舟の風情は?」
「さすがは、音に聞く室の津のおちょろ舟。思っていたよりも、何倍も素晴らしい。それに、汐の香りと、つぶやくような波の音が、また何ともいえずにいいもんだな」
 抱きかかえた徳利を、撫ぜながら飛十郎は言った。
「あの佐吉と申す船番、わびに酒を寄こすとは、なかなか粋なことをする男でござるな」「ふ、ふふ。それにこの酒は、おれが江戸で呑む酒の中で、もっとも好きな銘柄。こんなところで巡り逢えるとは、まことに夢のようだ」
 うれしげに飛十郎は、また徳利の腹をひと撫ぜした。
「たしか、ふり袖とかいう名でしたな」
「京生まれのわたくしも、まだ呑んだことのおへん酒どす」
「ならば、ぜひ新兵衛さんと、花筏に呑んでもらおうか」
 一升徳利を持ち上げると、宝物を扱うような手付きで新兵衛と花筏の盃につぎ分けた。「ほんまに。喉ごしが軽うて、すいすい呑めますなあ」
 いける口なのか、呑み乾して花筏が感心したように頷ずいた。
「これは、うまい。たしかに、いくらでも呑めそうですな」
「そうだろう」
 船板の上に、どっかと徳利を置いて、飛十郎は目を細めた。
「月もよし、酒もよし、女もよし、とくれば男冥利(みょうり)につきるというものだ」
 ふり袖を口にふくんで三日月を見上げると、飛十郎は晴れ晴れとした顔になった。
「まことに」
 と答えて、新兵衛も月を見上げた。
「花筏、悪いが沖の唐荷島と中の唐荷島のあいだに舟を入れてくれないか」
「へえ、お安い御用どす」
 盃を置くと、花筏は力強い艪さばきで舟を動かして、飛十郎が注文した通りに島と島の間に舟を乗り入れた。
「どうだ、新兵衛さん。ここから眺める室の津の町あかりも、なかなかでしょう」
 おちょろ舟の舳先が廻ると、新兵衛の目の前に町の灯が、波間に明るく写って見えた。深く入り込んだ港の狭い海を取り囲むように、ぎっしりと建ち並んだ遊女屋や商家の窓あかりが、ゆらゆらと灯火(ともしび)の尾を揺らしている。
「それがしが室の津にまいる時は、いつも陸路ばかり。こうして海上から町を眺めるのは初めてだが、港の夜景がこれほど綺麗だとは、うかつにも気がつかなかった。まことに一生の思い出でござる」
 頷ずきながら夜景を見ていた飛十郎が、驚いて新兵衛を見た。
「なにを大袈裟な。新兵衛さんは、庭瀬藩の先のり役。お殿様が江戸へのぼりくだりするたびに、この室の津へ立ち寄る身ではないか。来年もこの港へまいって、花筏におちょろ舟を出してもらえばいいだろう」
「へえ。藤森はんのお頼みなら、いつでも喜んで舟をお出ししますえ」
「そう出来ればよいが……。武士というものは常住坐臥、つねに死ととなり合わせ。とくに先のり役は、藩を代表することもある重い役目でござる。一つ間違えれば、ただちに腹を切る覚悟でなくては、つとまらぬ。鬼が笑うではないが、この新兵衛、一年後のことなどとうてい考えられません」
「ふうむ。いや、これは、恐れ入った」
 頭を掻きながら、飛十郎がしゃべりかける前に、花筏が口を開いた。
「そのお考えは、ちょっと固すぎますえ。もう少し肩の力を抜いて、やわらこうならな、あきまへん。悪いことばかし思うたら、夜も眠れんようになります。これから先は良いことが待っていると、楽天的に考えるからこそ、皆んなぐっすりと寝れるんやおへんか」
「肩の力を抜いて、やわらかくか。道場で、父によくいわれた言葉だ」
 新兵衛の顔に、苦笑いが浮かんだ。
「花筏のいう通りだ。このおれなぞ、先のことを気に病んだら一日たりとも生きてはおれん。お先真っ暗というやつだ。で、すべからく、よけいなことは考えぬようにしている。自慢ではないが、極楽とんびの飛十郎といえば、深川・海辺大工町あたりでは有名なものだ」
 肩をゆすって酒をひと呑みすると、飛十郎は無精髭をなぜ廻した。
「ははあ、極楽とんびですか。なるほど、その呼び名は飛十郎さんにぴったりですな」
「人間、今を楽しめばいいのではないかな。明日のことは、夜が明けてから考えればいい。花筏のいうように、やわらこう生きたらどうかな。そのほうが、楽でいいぞ」
 腕組みをして聞いていた新兵衛が、顔をあげて頷ずいた。
「では、それがしも飛十郎さんを見習って、少しのんびりと生きていこうと思っています。はたして出来るかどうかわからないが」
「なあに、出来るとも。おれにやれることが、新兵衛さんにやれんわけがない。ところで花筏、おぬしの名は珍しいが、なにか由来があるのか」
 話を変えるつもりか、飛十郎はふところ手になると、胸元から出した指で顎の先を摘まみながら花筏を見た。


五 室君伝説

「由来は、おます。今から九百三十年ほど昔の醍醐天皇の頃やそうどすが、この室の津に花漆といわはる、それは美しい室君(むろぎみ)がいらはったそうどす」
「室君だと? なんだ、それは」
「遊女やゆうことどすが、うちらと違うてただの遊女やおへん。なんでも町一番の長者の娘やそうどす。それが自分の意志で遊女にならはったんやから、財力もあり、学問もあり、おまけに輝くほどの美貌やそうやから、おいでになるお客さまのほうも、お大名がたをはじめ都の豪商や、お公家がたや、親王さんまで来なはったそうどす」
 微笑を浮かべながら、花筏がはんなりとした口調で言った。
「親王だと。親王といえば、帝の皇子ではないか。そのような貴人が、こんな辺鄙な港町へまいったというのか」
「という、伝説どす。花漆はんは、それはそれは美しゅうて、まるで天女のようだったそうどすから、千分の一でも万分の一でも綺麗になれるように、その名にあやかって花の字をもろうて、」
「花筏という源氏名にしたわけか。それにしても輝くような美しさといい、公家や大名がきそって逢いに
来たことといい、まるで竹取物語のかぐや姫のようではないか」
 何処で聞きかじったのか、珍しく飛十郎が蘊蓄(うんちく)を披露した。
「なるほど……、まさしく竹取物語でござるな」
 盃を持ったまま、新兵衛は三日月を振りあおいだ。
「この伝説には、まだつづきがおます」
「ほう、どんな話があるのだ」
 飛十郎が興味ありげに身を乗り出した。
「備前岡山の書写山で修業をきわめた僧侶が、生涯に一度でいいから生身の普賢菩薩を見てみたいと思いつめて、一心に祈りはったそうどす。満願の日の夜、夢枕に立たはった菩薩さまは、この地より西南の室の津に住む白拍子の花漆こそが普賢菩薩なり。と告げて、たちまちかき消えたそうどす」
 花筏は、ゆるやかに艪を動かしながら、二人の顔をみて微笑した。
「そいつは面白い話だな。その坊主は、もちろん室の津へきたんだろうな」
「へえ、おいでになりました。船でこの港にくると、すぐに花漆さまの館へ行かはったそうどす。めったに人と逢わない花漆さまが、この時ばかりはすぐにこの旅僧を座敷に通したそうどす」
「ふむ、ふむ、そうか。おそらく花漆とかいう遊女には、その坊主の目的がわかっていたんだろうな」
 せわしなく徳利から盃へ酒をつぐと、飛十郎は喉を鳴らして飲み乾した。
「そうどっしゃろなあ。花漆さまは、お坊さんに酌をし、琵琶をひき、ついには舞いまで見せはったそうどす」
「なんと、公家や大名まで気がむかねば袖にするという女が、たいへんな歓迎ぶりではないか」
 感じ入ったように、飛十郎は膝を叩いた。
「そのお坊さんは最後に花漆さまを伏し拝んで、あなたさまは普賢菩薩とうかがっております。どうか一度だけ、お姿をお見せくだされ。といって取りすがりはったそうどす。困ったような顔をしなはったそうやけど、ついには根負けして手にした扇で月を仰ぎはると、輝やく光の中から巨大な白象があらわれたゆうことどす」
「なに。巨大な象が月から座敷へおりてきたと申すのか」
 これには驚いたらしく、新兵衛は目を丸くして飛十郎を見た。
「いや、不思議はないぞ。たしか普賢菩薩は象に乗った姿のはずだ」
「そうでしたかな。それがしは、どうも仏像のたぐいには、うといもので」
「まてまて、それからどうなった。花筏」
「へえ。そのまま花漆さまは、しずしずと白象に乗りはったそうどす」
「そうか、花漆は象に乗ったか。その時には、もう普賢菩薩になっていたのだろうな。そのあと、坊主はどうした坊主は」
 顎を突き出すと、飛十郎は意気込んで聞いた。
「もちろん遊女から、菩薩さまのお姿に変わらはったそうどす。お坊さんは目に泪を浮かべて、ありがたいお経をとなえて伏し拝んでおられたが、いよいよ白象と菩薩さまが座敷から出ていかはる時には、もう辛抱たまらんようにならはったんやろなあ。いきなり象の尾をつかまえはったそうどす」
「なんと! 大胆にも尻尾を握ったというのか、巨象の」
 ごしごし髭をこすると、思わず飛十郎は声を上げた。
「そうどす。その尻尾が切れて落ちた場所が、ほれ花漆さまの館があったという尾野町どすえ。室津屋のある」
「ふむ、なるほど。尾の落ちた町が、すなわち尾野町でござるな」
 妙に興奮している飛十郎と違って、しごく落着いた態度で新兵衛は感心した。
「と言うことは……。おれと弥助は尾道を出て、はるばる尾野町へやってきたわけか。なにか因縁を感じないか? おのおのがた」
 にやりと笑って駄じゃれを言うと、飛十郎は月を見上げた。
「たしかに、奇妙な偶然でござる。だが、おかげで、それがしは飛十郎さんに逢えた。ありがたいことだ」
 生真面目な顔をして、新兵衛は頭を下げた。
「とんでもない。ありがたいのは、こっちのほうだ。新兵衛さんとも、こうしてうまい酒が呑めたし、花筏のおちょろ舟に乗って綺麗な三日月がおがめたんだからな」
「なにもかも、ご縁どすなあ……」
 花筏も艪を押しながら、溜め息のような声を出した。
「そうだな。それで、その尾を失くした白象と、尻尾を掴んだ坊主はどうなったんだ」
「伝え話によれば、菩薩さまが乗った白象は、そのまま月にむかって、すうっと飛んでいかはったゆうことどす。お坊さんのほうは、尾を持ってお寺へ帰りはったゆうことや」
「その書写山とやらにある寺に、まだ尻尾が残っていればおもしろいのだがな。そこのとこは、どうだ花筏」
「さあ、知りまへん。おそらく今まで誰も、そのお寺へ行ったことがないのやおへんか」「そうか。いや、まあいい。とにかく、面白い話だった。まあ呑め、花筏」
 なみなみと酒をつぐと、飛十郎はその盃を花筏の前に突き出した。
「おおきに。そやけど早船流とやらで、他人さんには酌はしないのと違いますか」
「珍しい話を聞かせてもらった礼だ。なあ新兵衛さん、おちょろ舟に揺られて浮世ばなれした話を肴に、三日月を眺めていると夢と現実の狭間の、うつつのごとき気分に落ち入らぬかな?」
 花筏の盃に酌をすると、月に照らされている新兵衛の顔を、覗き込むようにして飛十郎は言った。
「さよう。波に揺られる舟の動きと、心地よい酒の酔いに、まるで夢幻能でも見ているように、それがしには思われる」
「なに、能だと」
 能楽など見たこともない飛十郎は狼狽した。
「世阿弥が作りあげた、夢幻能でござるよ」
 酒と舟の酔いが入りまじった、とろんとした目で新兵衛は飛十郎を見た。
「な、なるほど……。たしかに花筏の話は、夢幻能のようであったな」
「わが殿は、ことのほか能がお好きでしてな。祝いごとのある時は、京や奈良から能役者をお呼びになられる」
 飛十郎が能楽が苦手なことなど、つゆ知らぬ新兵衛は、よほどこの道が好きとみえて陶然として言葉をつづける。
「殿は、とくに松風をはじめとする夢幻能がお好きでな。ほかには天女が舞う羽衣や、竹生島をよくご覧になられる」
「お能どすか。京にいた頃、祇園さんや北野の天神さんや賀茂のお社(やしろ)で、よう薪能を拝見させてもろうとりましたえ。普賢菩薩と花漆さまの言い伝えは、ほんまにお能に出てくるみたいなお話どすなあ」
 花筏の言葉を聞いて、ますます飛十郎は顔をしかめた。これで能楽のことを何一つ知らないのは飛十郎だけになった。
「ま、能のことなぞ、どうでもいいではないか。月を見ろ、月を。また、それを取り巻く星の群れが、じつに見事ではないか。それに室の津の町あかりが、なんともいえず綺麗だな。うん」
 まくし立てて頷ずくと、手酌の酒をぐいとあおる。徳利の底で酒音がしたところをみると、残りは少ないようだ。
「三日月とお星さんが満天をうずめて、ほんまに綺麗おすなあ。それに海に写る窓の灯がちらちらして、まるで夢で見る景色みたいや。あ、賀茂明神さんの高燈籠が、あんなに近う見えはるわ」
 いつの間にか風がやんで、波が消えた海は絹の布を張りつめたように平らに見える。船が揺れなくなったことに飛十郎は気付いた。
「風がやんだようだな」
「へえ。瀬戸内の風は、昼間は海から陸地ヘ、夜は陸から海へ吹きます。夕暮れどきと夜半の今頃は、ぱったりと風がのうなる凪(なぎ)になるんどすえ」
「ふむ、もうそんな時刻か。そういえば三日月が、あんなに高くなった。酒をたいらげて、おひらきにするか新兵衛さん」
「さようでござるな。明日は庭瀬ヘ引き返すだけの、ゆるりとした出立だが……」
 薩摩藩との揉めごとを思い出したのか、新兵衛の声が小さくなる。
「しかし、今宵はまことに楽しかった。おかげで、気にかかる嫌なことを忘れることが出来た。すべて飛十郎さんのおかげだ。藤森新兵衛、心より礼を申す」
 律儀に正座すると、深々と一礼した。
「やめてくれ、礼などいうな。ひとり淋しく舟に揺られるところを、思いがけなく当節めずらしい武士らしい武士と酒をくみ交わすことが出来た。さ、堅苦しい挨拶はやめて、一杯やろうではないか」
 閉口したように無精髭をこすると、飛十郎は徳利を取りあげて新兵衛と花筏の盃に酒をついだ。酔いのために早船流は忘れたらしい。最後に自分の盃に酒をそそぎ入れると、徳利を逆さにして、底を手で叩く。残りの一滴まで飲み乾すつもりだ。
「や、これは恐縮。それでは、月にむかって乾杯いたそうではないか」
 新兵衛の音頭に、飛十郎と花筏は三日月にむかって盃を上げた。
「じつに、おいしい酒でござった。もうこれで思い残すことはない。花筏どの、そろそろ舟を岸に着けてくれぬか」
 残してきた家来のことが気になったものか、盃を置くと新兵衛は花筏に声をかけた。
「そうだな。酒がなくなっては、月見舟の宴もおしまいだ。おれも、ほどよく酔った」
 おくびを一つもらすと、飛十郎は船首にもたれて船着場へむかって動き出した船縁から手の平を海水に突き入れた。
「おう、これは気持がいい」
 手は水面を切りわけて、すいすいと流れるように進んでいく。指先に何かが触れたよう気がして、飛十郎は手を上げた。
「おい。今、おれは鯛の背鰭にさわったぞ。こいつは縁起がいい、なにか良いことが起きるかもしれんな」
「おほ、ほほ。魚にはさわりはったやろけど、この暗い夜の海で鯛やらなにやら、わかるはずがおへんえ」
「馬鹿いえ、あれはたしかに鯛だ」
「ちがいます。ほかの魚どす」
 むきになって言い合う二人を、新兵衛は楽しげに見ていた。力強く漕ぐ花筏の艪の動きにつれて、おちょろ舟は船着場の雁木石段にむかって一直線に進んでいった。

             了 〈助太刀兵法30・室の津奇譚−終章−につづく〉






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