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第三部 11話【母の鼻歌】
[ハラベエさんの犬星☆猫星(第三部)]
2013年1月21日 21時33分の記事

ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第三部 11話【母の鼻歌】
UPしましたー見てね(。・ ω<)ゞ♪

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☆【第0部】
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☆【第一部】
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☆【第二部】
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☆【第三部】
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ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第三部 11話【母の鼻歌】


『お父さんの子供の頃の話が聴きたいな』
(何だ?急に)
『親子でも、知らないことって多いんじゃない?』
(そうだな)
親子の関係は、子供の全てを把握しているという親の錯覚と、子供も、自分の誕生以前の過ぎ来し方は、伝聞による不確実なものが多い、明らかな情報不足から成り立っているのではないでしょうか。
ハラベエさんにしても、幼少時のの想い出は、自分の視点で捉えたと云うより、その後の成長過程で、追加され補足された情報によって、ライブ映像として記憶に残っているのでしょう。
それと、自分の過去を、少し飾ってみたいのが人の常、記憶は、何となく変貌を遂げていき、最終的には当初の形態・内容とは打ってかわった様相を示すこともあります。
造られたお父さん像が、そこにはあります。
BEEは、そんな造られたお父さん像を見たいとは思わないと云うのです。
ハラベエさんは、好奇心の塊だった自分が見栄もはったりもなく、日がな一日駆けずり回っていた幼少期を物語ることにしました。
宇宙船のカプセルは、ハラベエさんとBEEのカプセルを除いて、完全な睡眠時間に入っています。
ハラベエさんは、懐中深くからセピア色の写真を三枚取り出しました。
薬局の店先に立つ白麻の上下にパナマ帽の父、そして赤い三輪車と年老いた秋田犬……座敷に飾られた五月人形の前に五歳の兄とお誕生前の弟。
母親が時折口にした思い出話で、徐々にハラベエさんの脳裡に形作られ刷り込まれてきた出生地、神奈川県江の島の原風景の一部です。
 昭和九年六月十六日生まれ、平成二十四年に満七十八才になったハラベエさんは、誕生から就学前の六歳までの六年を江の島で過ごしました。
 当然のことながら、確たる記憶などある訳もなく、辛うじて五歳前後に体験した片々たる記憶の欠片に、頼るしかありません。
 果たしてその地に存在していたのか……と疑いたくなるほどの存在感のなさです。
 単に、幼かったからだとは片付けられません。
 自主独立の精神の欠如を責められるでしょう……馬齢を重ねること八十年になんなんとする今、己の人生を振り返ってみても、大地に足を踏ん張って、生きているという実感に身を委ねたことは皆無に近く、どうせこの世は仮住まい……とばかり、流れに任せた生き様に終始してきた、としか思えないのです。
何かに、誰かに、頼り凭れて過ごしたこの歳月。
いうなれば、居候で過ごした人生です。
何ともはや、人生を語るには、あまりにも弱々しいと思いませんか。
BEEの要望で、飾らぬこと造らぬことを第一義とするのが建前とは云え、どうにも締まりませんが、これから先も再々登場しますので、よろしくお願いします。
神奈川県藤沢市と鎌倉市を繋ぐ江の島電車、通称江ノ電は、藤沢を出てしばらくは、密集している住宅地や貸別荘の軒や生垣を掠めて走り、片瀬川を渡ると中間点の江の島駅に到着します。
江の島から鎌倉までは相模灘沿いの海岸を往きます。
「♪ 稲村ヶ崎名将の 剣投ぜし古戦場……(略)……」
などと唱われている名所古跡の多い一帯ですが、ハラベエさんの記憶にあって鮮明なのは、再々母に手を引かれてお詣りした、片瀬の名刹、竜口寺の敷地内にある七面さまのお堂か、片瀬から海に延びている参道を渡って、その先の名勝江の島を縦断した海側の岩場にある、観音さんをお祀りしている洞窟でした。
竜口寺の七面さまは、お堂を預かる高僧に帰依していたからだが、江の島の洞窟は、本尊の観音さんの立像に惹かれていたのだそうです。
片瀬側も江の島側も、連日観光客で溢れている中、お詣りを済ませた後必ず買ってくれる駄菓子を、鼈甲飴にしようか……乾燥バナナもいいな……鮑の壺焼きもいいけど身が少ないし……量なら椎の実か……おでんのこんにゃくもいいな、などと考えながら週に一度は歩いたものでした。
祭りともなると、江ノ電の電車道を地元の人達が埋めました。
「♪ ここ片瀬の竜口寺」と、門前町、腰越あたりの若い衆が囃し立てる歌詞の、
「♪ やんだやんだせに なんでさすだ
わたしゃしらずに ついさした」
の部分などは、幼いハラベエさんには理解不能だったが、リズム感が快く、子供心にも高揚感を味わったものです。
明治末期の生まれで、大正時代に少女期を過ごし、昭和初期に二児の親となったハラベエさんの母の鼻歌のベスト3は、

? 「♪ 真白き富士の根 緑の江ノ島 (以下略)」
(歌を聞きたい方は)→【 七里ヶ浜の哀歌
? 「♪ 逢いたさ見たさに恐さを忘れ (以下略)」
(歌を聞きたい方は)→【籠の鳥
? 「♪ 火砲(ほづつ)の響き遠ざかる あとには虫も声立てず (以下略)」だった。
(歌を聞きたい方は)→【婦人従軍歌

?は、江ノ島近海で発生した、中学校のボート部の転覆事故の犠牲者たちを悼み、

?と共に、広く愛唱された流行歌、

?は軍歌という範疇に加えるべきだろう、従軍看護婦を讃えた歌である。

物心ついた頃から、しょっちゅう否応なしに聴かされて育った所為か、何十年経っても、なにかの時に口ずさんでいる自分を発見して苦笑するハラベエさんです。
 母のレパートリイは広範囲に及んだが、愛唱する頻度数は、この三曲が抜群に高かった。
 人生について、こざかしくもあれこれ理屈をこね廻し始めた頃、
『……要は、同年代の男子中学生が、江ノ島の東の七里ヶ浜の沖合で、練習中のボートが沈んで何名かが溺死した悲劇に、涙を流した感傷的な思春期の女の子が、常々夢想し憧れていたのは、拘束されることのない自由な恋愛だったが、やがて独立心が芽生え、看護婦という職業を選んだ、そんなところだよね』
などと言ったものだが,作業の手を止め頬笑みを浮かべて聴いていた母は、
『随分薄っぺらな観察だこと……』と揶揄するように云うと、やりかけだった廊下のつや拭きに戻り……ややあって「真白き富士のね……」と聞こえてきたのを、昨日のことのようにハラベエさんは覚えています。
 その「真白き富士のね……」の江ノ島で、ハラベエさんは誕生から就学前までの数年を過ごしました。
 元々は縁もゆかりもない土地だが、横須賀に近い追浜にあった軍需工場に勤めていた、母の弟の夫婦が、鎌倉市の若宮大通り(?)に借家住まいをしていたのが縁とも云えないことはありません。
叔父夫婦は、ハラベエさん一家が九州に去った後、その住まいがあった藤沢市西片に、二階建ての百姓家を借りた。
この家は、ハラベエさん兄弟が共に東京の大学に学ぶ際に利用したが、両者の学びの姿勢は著しく違いました。
中央大学法学部に学んだ兄は、勉学に励みアルバイトに精を出したが、空手部に入り稽古にも余念がなかった。
元々小柄で痩身なので、何かにつけて舐められるのが口惜しくて始めた空手だが、神田の校舎中庭の一角にあった稽古場で、丸太に荒縄を巻いた柱に、拳や腕を叩き付けての鍛錬で、パーンパーンと乾いた音が校舎中に響きわたるのが快感で、特に女子学生が見ているときなどは、稽古場の場所とりで競い合ったそうです。
女子学生の件はともかく、兄の肉体は見事に鍛え上げられていきました。
夏休みに帰郷しても、鍛錬を続けていました。
頭上すれすれに一尺ほどの川石を荒縄でくるんで吊り下げ、その真下でとった直立不動の姿勢から、一瞬横捨て身の体勢をとり、石に蹴りを入れると元に戻る技など、魅入られたように畏敬のまなざしで見ていたものです。
ハラベエさん、興味は抱きましたが自ら鍛錬する根性はありません。
せいぜい、兄の練習を盗み見て覚えた型の演舞か、床柱の前に端座し紙片越しに、血に染まるまで打ち付ける拳の鍛錬を、見よう見まねで始めましたが、これが意外にも長続き、半世紀を経た現在も、身近に固い材質の家具矢立具があると……コツコツ、コツコツ始まります。
見る人が見れば、鍛錬していることは、一目で解るものなんですね。
関西出身で、大学時代から嘱望され、末は世界チャンピオンと期待された逸材が、怪我でボクシングを断念、俳優に転向して着実にスターへの階段を上り続けているAさん(※11 章末参照)。
そのAさんと、お芝居の仕事でご一緒した時、稽古が休憩になっての雑談で、武芸が話題になり、ハラベエさんは自分の拳を例に、話題の中心にいました。
やや離れたグループで歓談していたAさん、こちらの話が武道に及ぶと、そこは元格闘家、とたんに興味を示します。
『ちょっと……』
 と、ハラベエさんの手を取り、いじくり廻すと、
『……はあ……ようやってはりまんなあ』
とのご託宣……現金なもので、話半分といった程度に聞いていた、周囲の連中の目の色が変わり、以後ハラベエさんの話を真剣に聴いていたようです。
流石はプロの一言、と、影響力の大きさに感心したものですが、未だもって疑問を抱いています。
無責任な武芸談ともつかぬ、耳障りな法螺話にピリオドを打つための皮肉か……あるいは、見よう見まねであっても、長年にわたって鍛えた成果が、素直に感じ取られたのか……答えがでていません。
あのお人柄ですから、後者とは思いますが……。

(※11  Aさん   赤井英和さん)  

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出会いと別れを描いた感動、ファンタスティック・ノベルです。

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