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第三部 13話【兄の思い出】
[ハラベエさんの犬星☆猫星(第三部)]
2013年2月11日 8時19分の記事

ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第三部 13話【兄の思い出】
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☆【第0部】
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☆【第一部】
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☆【第二部】
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☆【第三部】
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ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第三部 13話【兄の思い出】



兄が、東京の大学で、空手道の一方の旗頭「松涛館」の流れを汲む空手部の一員として修業しているという噂を聞きつけ、同好の士の青年が、秋田市を初め近郷近在から蝟集してきました。
一家の住まいは、雄物川の河口に近い河川敷の古い造船所を改造した、仮設引揚者住宅「雄物川住宅」、の一室です。
中央の通路を挟んで向かい合わせに二十軒並んだ、八畳の和室に、四畳半大の板の間での生活は、ハラベエさんが新制中学で学んだ三年間、続きました。
兄は帰省の度に、若者達の中心になって、空手の稽古に没頭していました。
住宅の近くの河川敷に、草競馬の競馬場があり、その馬場の一部を道場にして、体を鍛え抜く若者達の発する気合いが、連夜響き渡っていたものです。
父は、八郎潟と日本海に挟まれた海辺の寒村で、代用醤油の研究と人工甘味料ズルチンの製造に没頭しており、兄も東京暮らし。
幼い頃から父が留守がちで、生活を共にする機会が少なかったこともあり、
兄は父に懐かなかったようでした。
実の父がある日突然姿を消し、その身を横たえていた寝具が片付けられた後、生まれ育った家を母と二人追われるという、およそ三歳やそこらの子には理解しがたい環境の変化、まして突然現れた見知らぬ男を、父と呼べといわれてもこれは無理な話。
兄の生真面目な、自説をあくまでも押し通す頑なな性格はこの頃から既に芽を出していたようです。
「……は?」「……が」などという、主語抜きの会話で終始しました。
気を遣った母が父を「お父さん」と呼ぶように説得しましたが、結局、大学卒業に至るまで、態度に変わりはありませんでした。
留守がちで滅多に顔を合わさぬ父に、殊更に甘えるハラベエさんと違い、兄は顔を合わさずにすむのを、むしろ好都合だと思っていたようです。
一方父は、義理の息子の屈折した感情を察知することなく、いや知ってたとしても、知らぬ振りをしてたのでしょう……小さいことにこだわらぬ性格でした。
父母の間で諍いは頻繁にありましたが、いつも勝つのは母、というより負けてやるのが父だったようです。
退職して数年後、父が亡くなったとき、付き合いも激減していたにもかかわらず、お通夜や告別式の参列者は予想を遙かに超えました。
役所・病院関係、製薬会社の社員、父が先頭に立って奮闘していた薬剤師会の面々に加えて、父の世話になって一人前に育った親類縁者の男達、一際目立つのが、父が政府から表彰されるきっかけとなった、満州からの引き揚げ者、あの看護婦達でした。
その他、全国に散らばっている父の、友人・知己・後輩が弔問に訪れ、お悔やみやお香典は引きも切らず、何ヶ月も送られてきたものです。
『上手だったんだよ……人をいい気持ちにさせるのが……口はそんなに達者でもないのにね……特別な関係がある女の人と睨むと、まだ赤ん坊だったお前をおんぶして、文句云いに行ったけど、この人を悪く云う人はいなかった……皆、褒めるんだよ』
と、もうもの云わぬ父の手を取ってさすりながら、女性の多い弔問客を見回して、母は云っていた。
鷹揚で女好きな父と、完全主義者で口うるさい母、なのに妙にバランスがとれていた二人でした。
兄に譲り渡した生真面目で頑なな性格は、母の内部にも健在でした。
いい例に、母が生涯手放すことのなかった桐の箪笥があります。
初婚の折の嫁入り道具、夫の死後,追われるように婚家を去るとき、自らの手で解体し、持ち出したのだそうです。
勝ち気だった母の、女の意地のようなものが垣間見られます。
その後、引っ越しの度に、母の手で解体と組み立てが繰り返されました。
因みに、引っ越しの回数と経路は、下記の通りです。
?宮崎県小林市(母、誕生の地)→→?埼玉県川口市→→(知人宅預け)→→?神奈川県鎌倉市片瀬→→?神奈川県藤沢市西片→→?宮崎県田野町→→?宮崎県飫肥町→→?秋田県秋田市雄物川雄物川住宅→→?秋田県秋田市久保田国立病院官舎→→?秋田県秋田市手形→→?秋田県羽後本荘市石脇国立療養所官舎→→?秋田県羽後本荘市石脇→→?宮城県仙台市一本松(母、終焉の地)
よほど腕のいい指物師の作品だったのでしょう、こんなに素人が解体を繰り返したのに、寸分の緩みもずれもないそうです。
これほどの移動も、父は仕事で不在、母だけの宰領だったようです。
指折り数えると、ハラベエさんの人生は、一周六年の周期で刻まれているようです。
先ず誕生からの六年を江の島。
田野の国民学校入学から、飫肥町での卒業間での六年。
秋田市での新制中学入学から、新制高校卒業までの六年。
一浪と、大学留年とで六年。
東京での演劇活動、文芸部・俳優、二足の草鞋の六年。
文芸部員としての六年。
作家、演出として独立。
以後、多少のこじつけ、牽強付会有りで、六年周期となす。
四柱推命に当てはめると、浮沈や盛衰が見事に合致します。
父の代用醤油は、大豆の替わりに昆布を主材料としたものですが、カビが生えやすく、防カビ対策の研究を重ね、試行錯誤を繰り返し、漸く理想の形に漕ぎつけましたが、皮肉にも、同時期に大豆の統制が解除され、代用醤油の製造は頓挫します。
年齢もあり、父は起業家としての将来に見切りを付け、収入の安定している国家公務員を選びました。
国立秋田病院薬局長、以後、羽後本荘市の国立療養所に転勤はしましたが、一貫して定年までの生涯を病院勤務で過ごし、若い頃と同様本因坊と称される囲碁の実力と人付き合いの良さとが相まって、訪問者も多く、ここでも母の面倒見のいい性格が、遺憾なく発揮されていたようです。
兄が、義父を初めて「お父ちゃん」と呼んだのは、父に兄事する、高級官僚のコネもあって、厚生省への入省が内定した兄が、内輪で祝杯を挙げるために帰省したときのことでした。
母に、支度が出来たと呼ばれて、ハラベエさんが茶の間に入りかけた時。
何やらくぐもった声が聞こえました。
何気なく聴いていると、
『……でした……これまで……いろいろ……有り難うございました……』
と、切れ切れに兄の声、
『うん……まんず、いがった……がんばれ!』
と、これも切れ切れに父の声、
『はい!……あ……有り難う……お父ちゃん……』
と、微妙な(間)があって、突然!母の激しい嗚咽。
ハラベエさんの、胸を突き上げるものがあります。
いきなり、障子が開きました……兄です。
兄は、ハラベエさんの涙が溢れんばかり眼を見つめると、照れ隠しなのでしょう、はにかむように頬をゆがめ、右の拳を正拳に固めると、弟の眉間で寸止め、洗面所に走りました。
ハラベエさんは奇声を上げると兄に続き、涙を洗い流している兄の尻にむちゃくちゃな拳や蹴りを、お見舞いしました。
この夜は父を兄のように慕っている、隣の官舎に住む歯医者の家族や、薬局の調剤助手、日頃から父が可愛がっている看護婦、若い医師達や事務職員達が
大勢で訪れ、深夜まで笑い声が絶えませんでした。
 宴の主役は、何故かどんなときでも、その場の中心人物に祭り上げられる父と、日頃は慎ましやかな母も、今日は特別な日だからと周囲に押しきられて手にした酒杯をぐいぐい呷っていたものです。
こういった情景を眼にするのが苦手だった兄も、機嫌良く席に連なっていたばかりではなく、以後、何かと父の話し相手になるいい息子に変身しました。
ところが、好事魔多し、いいことばかり続くものではありません。
厚生省入省の直前、兄が病に倒れたのです。
華奢な体に肉体労働が主の、過酷だったアルバイトが直接の病因であるかどうか別として、皮肉なことに実父の命を奪った結核菌に蝕まれていました。
当然、厚生省入省は夢と終わり、兄は失意の身を、父が勤務している結核療養所に委ねて、肺葉切除の手術に引き続き療養生活に入りました。
療養中に、兄は自ら受けた手術の体験を元に、ラジオドラマを執筆、NHK秋田放送局のコンテストに応募、『いのち』と題した一編は見事入賞、同局から放送されました。
えてして療養生活は、退屈極まりないものとされますが、薬局長の息子で、東京の大学を卒業したばかりの患者は、田舎の療養所には珍しい存在として、看護婦や女性患者にちやほやされたようです。
一方、所内の新人の看護婦や若い職員を対象に開かれた、教養講座の講師に招かれたりして、常任の講師だった父共々、結構人気があったようです。
秘められた恋物語もあったりして……兄は全快、体力の恢復を待って、秋田市の地方裁判所に勤務したが、数年後、青森県弘前市の国立病因に転職しました。
大学を出るまでは、一向に懐こうとしなかった義理の息子の成長を、二十有余年黙々と支えてきた父にとって、同じ畑に兄を迎えた感慨は一入のものがあったでしょう。
その後兄は、東北の何カ所かの病因・療養所の事務長を歴任し、最終的には、「東北医務局」なる国立の病院・療養所を監督する役所の、医師の局長に次ぐナンバー・2の監督官として退職しました。
退職後、その能力を買われて数カ所で、事務長に天下りし、仕事の傍ら東北一円の川という川を跋渉し、空手以外の唯一の趣味、オパール原石の収集に没頭し、完全休養に入って、オパールを摘出する日々を楽しみにしていました。


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〜OGUNI・WORLD〜
地域:大阪府
性別:男性
ジャンル:趣味 漫画・小説
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シーズの愛犬BEEとハラベエを取り巻く生き物たちとの、
出会いと別れを描いた感動、ファンタスティック・ノベルです。

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