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コオロギ・ファミリー
[サンチャイルド(戦記小説)]
2015年3月18日 13時17分の記事

自作小説、サンチャイルドの6話です。



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「はい、サダコはここにおります」

「ええ、あなた最近、軍部の方たちと何かしてますわね」
「何をしようが勝手ですが、コオロギの名は汚さぬように」

「はい、一番お姉さま」

「よろしい。私は技研の方と面談がありますから」
「あなたが欲しがっているHPの情報も貰って来ますわ」

「はい、ありがとうございます」

一番お姉さま。リン・コオロギ。
この家の長女が大きな部屋から退出する。
派手な装飾とインテリア、金持ちの悪趣味のようなセンスが良い広い部屋に居るのは私だけでなくて。
次女と執事のサカキさんと家政婦の数名。
雇われ家政婦はみな若いムスメ。
この星では、貧乏は金持ちに支配されている。
代々受け継がれるコオロギ家は財閥ほどのテリトリを持つ。
見た目は質素に務めているが、やはり古臭い。何もかもが。
当家は昔から地元に貢献し、家の人間は様々な商売や紛争に関わってきた。
両親は経営の仕事で各地を飛び交っている。いつも不在です。
祖父母も、ご老体なのに慰問活動や宣伝活動で不在。
男兄弟は皆社会人です。軍隊に入ったお兄様もいます。
だからサダコも責任を自覚して勝手に育ちました。

「サダコ様」

「はい、サカキさん」

「シズ様が呼んでおります」「自室におられます」

「はい」

私は付き人を付けない主義。自由が欲しいからですが。
孤独なのは産まれた時からだからコレでいい。
このファミリーは大勢の人が団結して助けあって生きている。
筈なのだが、サダコの眼にはそうは映らない。
この世にはオモテとウラがある。
誰も教えてはくれないから、子供の頃は困った。
ここの家系も表面上は良い人を演じているが、腹は見えない。
目に見えないだけですが。
私の眼には、皆が紙芝居を演じている影法師に見える。
誰もが真っ黒な影法師。
泣いているのか笑っているのか怒っているのか、見えない。
本当のものを見るには、心の目が必要。誰も教えない。


「シズさん」
「サダコです、入りますよ」

「どうぞお姉さま」

ガチャン・キュゥゥ

紺色の女学生用制服を着ている彼女は学校から帰ったばかり。
シズは私の妹。コオロギ家は9人兄弟で、女が6人男が3人。
私サダコが5女でシズが6女、末っ子です。
だから彼女が唯一の私の妹。まだ学校に通う子供です。
女子用の制服が可愛すぎて、私は内心かなりくやしい。
サダコの学業は、あまり良い思い出はなかったから。
私は物心ついた時から、当たり前の事を疑ってしまう癖がある。
誰も気にしない事を気にしてしまう癖があるのです。
性格が暗いと思うから明るく振る舞うように努めていますが。
やはり若い娘の様に媚びを売ることが出来ません。

「サダコお姉さま、男を捕まえましたね?」

「!」
「シズさん、何で知っているの?」

「有名ですよ、虫も食わないサダコが惑星一番の男を喰った」
「うふふふ」
「私は今日学校で、同級生にバラしたくて」
「いえいえ、自慢したくて。早く家に逃げてきました」

私の顔が赤面している筈だ。可愛いだけと思っていた唯一の妹が、こんな発言をすることがショックだった。

「いいですか、シズさん?」
「この件は人類の命運がかかっている内容ですから」
「サダコとあの男性との恋物語は今始まったところです」
「くれぐれも妨害工作などなさらぬように」

私の目の前で笑いころげていた、
あどけない少女の首を両手で思いっきり締めながら言う。
サダコの眼はマジで殺意の眼です。半分は本気ですが。

「は、はひ・・・はひ」

シズが涙と鼻水とよだれを垂れ流して白目をむいている。
イケません、こんなメスのサルに本気になっては。
私は女姉妹たちの女らしい服装と違って、いつも汚い身なりをしている。男と間違えられることもあります。
唯一、黒い髪をオサゲに結っていますが・・・
お化粧はします、私も男に良く想われたいですからね。
しかし、可愛らしいおべべ(衣服)は戦闘には向いていないし。
レジスタンスの部下達の青年男性に示しがつきません。

シズにサン殿の救出作戦の帰りに買ったお土産。
ブヒブヒまんじゅうを手渡してから自分の部屋に帰る。

「いいですか、シズさん?」
「豚まんじゅうで口止めではありませんよ」

「うひゃひゃひゃひゃ!」
「お姉さま、豚まんじゅうじゃありませんよ〜?」



あかずの間。

と屋敷内で変なウワサがたっておりますが。
ひい祖父さまが住んでおられる部屋があります。
あの方はもう何十年も部屋を出ませんが、生きておられます。
家政婦以外は余り立ち寄らない場所ですが私は時々行きます。
いつも真っ暗な部屋でひい祖父さまは、何を見て居るのでしょう。
ものごころついた頃の記憶を今でも覚えている。
幼子の私を抱きしめて掲げてくれたあの日は、もう帰らない。

「ひいジジさま、サダコです」
「お入りして宜しいですか?」

「・・・・」
「・・・サダ」

ガチャ・・キィィ

真っ暗だ、今は昼間なのに何故こんなに暗いのだろう?
少しずつ眼が闇に慣れてくる、この慣れの時間は訓練で短縮出来る。
・・・あそこにひいジジさまの寝床がある。
サダコはいつも一方的に語りかけて、独りで満足して帰る。

「ひいジジさま、サダコですよ」
「また逢いたくて参りました」

暗闇にかすかに見えてくる。幼い私が見た愛する人。
誰も彼の青春を知らないでしょう。私だって・・・

「・・・サダちゃん」

「はい、ジジさま」

「サダちゃん・・・命は奪うものでないぞ?」

「・・・はい」

「命は救われている、それがこの世のすべての命じゃ」
「・・・何故わし等が生きているか判るか?」

「まだ判りません」
「サダコには、この世が信じられません」

「それで良いんじゃ、サダ・・・お前は変わった娘だな」

「はい、自分でも知っています」

ゴホ・・・ウゲ・・・

「!」
「ジジさま、家政婦さんをお呼びします!」

「少し待て・・・」
「・・・お前に言いたいことがある」

「はい、ジジさま」

私は部屋に入った入口で直立して会話している。
蒸し暑くて汗がしたたる。首筋のうなじとおでこ、洋服の中の背中で、上から下へ汗の粒がすべり落ちてゆく。身体が暑い。
何故この家の住人は、この名誉ある方をないがしろにするのでしょう。
サダコは理解したい、誰にでも青春があることを。

「死ぬ運命よりも生き抜きたいと願え、サダ」

「はい、サダコは人を殺しても自分は生きて居たいです」

「・・・そうじゃ、生き物じゃからな」

こんなにひいジジさまが私とお話ししてくれるのは珍しい。
サダコの気持ちを知っているみたいだ。

「お話しして下さってありがとうございます」
「もう退出します、サダコはひいジジさまが好きですよ」

「・・・・」

キィィ・・・ガチャン


サダコルームで作業着に着替えてから工房へゆく。
この面積が広すぎる旧屋敷で唯一の未来科学です。
あ、ここは旧屋敷です。新築した大豪邸が他所にあるんですが。
皆は嫌がってここの旧屋敷に住んで居ます。
流行の建築デザインを取り入れて見た目は格好良いと感じる。
やはり古い人間には落ち着かないと皆が言います。
旧屋敷は小高い丘の上にあるから下の住宅街からは隠れている。

執事のサカキさんに頼んで工房に整備士の方を呼んで貰います。

ガクンッ・・・ヒュゥ

「やっぱりサダコは油にまみれるバカな女です」

セパレーツのベージュ色作業着が使い古してもうボロボロ。
家政婦の娘さん達が、新しい作業着を用意してくれるのですが。
サダコはまだコレでイケます。と断っています。
広い工場の工房は、様々な工作機械と工具が並んでいる。
技術を教えてもらうのは自分の為にです。
自分から頭を下げてお願いするのは嬉しいくらいですよ。

まだ時間がありますね。彼の写真を見ます。

ゴソゴソゴソ・・・

サダコの免許証入れに隠してある彼の写真。
じっと見つめる。

「サン殿・・・」
「サン殿すぐに会えますよ。サダコが会いにゆくのですから」

私の薬指にハマっているシルバーリングに軽くキスをする。
リングに入っているのは想いだけです。
実はペアリングだなんて彼には言えませんでした。
出しゃばりだと思われるのは嫌ですから。

もう外は夕暮れでオレンジ色に染まる。
窓から入るオレンジ色の光が、工房を優しく包み込んでいる。


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