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擬人の夢・前編
[コードLP(SF小説)]
2018年7月21日 17時23分の記事

自作SF小説「コードLP」第70話。

第三章1話です。

すんません、この程度の小説しか書けません。



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「あなたの擬人コードと正式名称は?」

「擬人コードLP1145SS、ユキ」

「あなたは戦いに何を懸ける?」
「あなたには守るべきものがあるのか?」

「何もない」
「私には何もないよ」
「守るべき先駆者もいない」
「戦ったこともない」
「私は製造されたばかりだ」
「まだ記憶クリスタルチップに多くの思い出を記憶していない」

ビィ

ズドン!!

ビリビリビリ・・・

擬人宇宙権利・・・人間が宇宙で生き抜くためにある権利を、擬人ロボットにも適用した権利。
擬人LPのユキにもその権利は保証されていて、このファーム星系を自由に旅できるほど。
まだこの時代の宇宙旅行は一部の金持ちの特権。
文明圏の電子マネーはボディ内部のクリスタルチップに課金されていて、生活に困ることはない。
一生(何百年でも)遊んでいても誰も文句は言わないが、ユキにも知性と本能が組み込まれている。人を守る本能。

はじめて戦いに志願した日、私の愛した人が死んだ。順番は逆だが、その日の朝、その人は死んだ。
高齢からくる寿命だ。人間、178歳。延命措置は効かなかった。
その人「マリ」はこの世界を愛していた。私はマリの教え子。師弟が師を愛するのはいけないことかしら。



惑星チーズ、南部歴0653、6月4日、28時53分。
人間は機械化師団との生存競争に疲弊していた。
今は戦う事に疲れた人間の代わりに擬人ロボットが機械軍団と交戦している。
最前線ウィルダネスフロント、ここには自由はない。擬人が戦うだけの物資とガラクタでにぎやかになっている。
建造物が並ぶ基地の地下、通路にはいくつもの切断されたチューブと配線がむき出しになっている。
医務局、薬品と擬人用パーツであふれかえるこの部署は、賑やか。

「ユキ!」

「何ですか人間様の軍医殿」
「そもそも擬人は軍隊雇用ではないはずですが」

「いやそんなことはどうでもいいんだ」
「問題はカルテに書かれている君のスペックだ」
「特定の条件下で発動する任意の機能、とは何のことだ」

「そう、ですね」
「・・・・」
「あなたを私色に染められたら、憎い現象も発生しないのに」
「と言ったところですか?」
「急いでいますので、失礼」

ドンドンドン!

ビリビリビリ・・・

しばらく狭い真っ暗な道を歩き、真っ黒色の中に「乙」の漢字がかすかに見える入り口の前で止まる。

バシュ

オートトラックドアを抜けて入るその部屋は、乙女の園。
ぬいぐるみが無数に敷き詰められ、花柄のクッションがいくつも出迎えてくれる。
ここには検閲の波は来ない、擬人が唯一乙女らしさを保てる場所。

造花が敷き詰められたベッドにうつぶせに倒れる。

ばふっ

「う・・・」
「なんで擬人て不便な体に出来てるんだろ」
「生理はなくて、食事観念も排泄機能もない」
「そのくせにこの世界を感じる感受性は人一倍あって・・・」
「私は詩人になった擬人を知ってるわ」
「産まれてきた義務を放棄してまで夢を追いかける気分はどんなもの?」
「きっとそれも擬人の生きる生きがいだよ」

「ぷっ」
「あっははっはは」

「何ですか!」
「独り言を聴いて笑いものにする気ですか」
「リンネ」

擬人シスターのリンネが椅子に座って私の独り言を聴いていた。趣味が悪い。
リンネは黄色い肌に長い黒髪をおさげに結っている。額の真ん中で二つに髪を分けて。
白い花柄の洋服に長いスカート、ピンク色の靴下を履いている。
私ユキは赤毛のショートヘア。白い肌で中肉中背。

「ああごめんねユキ」
「あなたが詩人なのはよく知っているわ」
「理想のために命を懸けていることも」

「ふん、だ」
「リンネがいつも書いている秘密の日記を」
「大公開したらどう?」
「愛しの誰かさんに気づいてらえるように」

「まあ!」
「趣味が悪い」

呼集サイレンが鳴っている・・・今は非常時だ。擬人が無休養で働けるから、交代要員がいつも待機している。休養と給料の話だが、それは与えられる。擬人宇宙権利に乗っ取って給料は支払われる。

待機所に擬人8名が集まる。衣服を着替え、装備を整えてブリーフィングルームへ入る。
ユキはセパレーツの軍服を着ている、民間企業が市販しているレプリカの軍服だ。
リンネはおさげのまま半ズボンとTシャツの普段着。その上にベストと腰ベルトを着けている。
擬人部隊は正式な軍ではないから、統一されたユニフォームはない。
ユキの隣に座る擬人が話しかける。

「初めまして!」
「ジュディです」「擬人コードLP3333AAです」

「私はユキ」
「擬人コードLP1145SS」
「よろしく」

ジュディは金髪のボブヘア、白い肌の長身の擬人。

「おはようございます」
「今は夜中ですが、皆さんはよくお休みになられたようなので」
「戦闘指揮官のノリコです」
「いいですか?」
「単独プレイは部隊を全滅させます」
「連係プレイをシュミレートしてきたはずですから」
「皆さんの頭脳サーキットに構築されている演算を試してください」

軍服を着ている戦闘指揮官のノリコは、黒髪にのおかっぱ頭にノーメイクの、旧世界の女学生のような感じ。

「この戦区Dのポイント2が補給ラインです」
「皆さん忘れないように」
「我々の部隊は進軍しますが、機械化師団の本部まで距離がありますから」
「そこから20キロ先に前線を拡大します」
「今は戦いのときです」
「ここから先は関係のない話ですが」
「私たち擬人の先駆者、トリンを知っていますか」
「50年間、たった一人で機械化師団と戦った英雄です」
「奇跡のような話ですが事実です」

知っている。
トリン、擬人コードLP300TT、宇宙の英雄だ。
私もこのボディで感じたい、駆け抜ける命の輝きを。

リンネが手を挙げた。

「私も知っています」
「彼女は悠久マザーベースで今眠りについています」
「愛プログラムはどの公式データベースにも文献にも記載されてはいませんが」
「彼女が見つけたこの宇宙次元の希望です」
「知性と叡智を求める私たち擬人の好きそうな話ですね」

8時間後、戦場にて。

機械化師団の斥候が来るまで一休み。
高地に陣取るわれらは、下方からくる敵に備える。
塹壕を掘り、土嚢を積んで、レーザーパルスライフルを持つ。
大口径レールガンも支給されている。

指揮官のノリコにユキは声をかけられる。

「ユキ」
「あなたは初陣だったよね」
「どう戦場の匂いは?」

「わかりません」
「でも・・・」

「でも?」

「怖いんです」
「逃げ出したいくらい」
「戦闘エーアイの教育は済んでいるのに」

「擬人の特性」

「特性?」

「高度な知性を持つ擬人は、防衛する対象を見つけるごとに強くなってゆく」
「この戦場であなたがそれを見つけることは無いだろうけど」
「あなたの永いライフがスタートしたのよ」
「何度だってやり直せるよ」

「はい」
「ありがとうございます」

「広域レーダーに反応」
「機械化師団きます!」
「歩兵大隊」
「機甲小隊」
「フライングハイ小隊」

ノリコが叫ぶ。

「いくよみんなあ!」
「愛すべき人間様に生きていてもらわなきゃあ」
「私たちは製造された意味がないんだよお!!」
「絶対防衛!!」

「絶対防衛!!」

一斉に現場にいる擬人、34体が叫ぶ。
交戦は始まった。

「会敵!!」

チュンチュンチュン!!

チュチュ!!

ドッドーーン!!

空が青い。青すぎる・・・雲一つない青空。
ユキの隣でジュディが叫ぶ。

「ユキさん!」
「パルスライフルが速射できない!」

「ジャムだよ!!」
「レーザガンを使いなさい!」
「火薬式の自動小銃でもいいから」

ドンドンドン!!

「ギャーー!!」

ユキたちの前方に陣取っていた擬人4体が戦車の大口径高出力レーザキャノン砲に消し飛ばされた。
レーザーの焼ける匂いと火薬とオイルと電子部品の匂い。血の匂いがないだけ私たちは幸せなんだろうなと思う・・・

「駄目だ」
「駄目だよ・・・」

リンネが言う。

「まだまだ私たちの耐衝撃エネルギーシールドは純度が足りない」

リンネのベストは真っ黒にすす汚れている。

ノリコは反論する。

「いえ!」
「クリスタルチップの純度の法則はまだ検証されてはいないよ」

「じゃあ何でシスタートリンは50年も機械化師団相手にたった一人で戦えたの!!」

その隣でパルスライフルを連射している擬人が言う。

「今は議論している時間じゃないよ!」
「ほら!」
「歩兵3体が取りついてきたよ」

「ミーヨ!」

ミーヨと呼ばれた擬人が身を乗り出して電子グレネードを投擲する。

ズッドーーン!!

炎の周りに磁場が発生する。

バチバチバチ

混戦状態になって来た。擬人部隊は計画していた連係プレイが出来ていない。白兵戦。
レーザーブレードを抜いて機械化歩兵に切りかかるノリコ。
破壊された機械化歩兵の頭部が胴体を求めるように笑っている。

「ひいっ!」

ユキは思う、ここは地獄なんだと。いつ破壊されるかもしれない恐怖と会話する。
勝利の女神か悪魔の微笑みか?
至近弾をまともに喰らって無事な機械化兵士はいない。破壊される前に擬人に抱き着いて自爆する機械化歩兵。

「キャー!!」

ユキの目の前で発砲していた擬人、ジュデイが破壊された。

「!!」

目の前でバラバラに飛散してゆくジュディのボディパーツ群が、ユキの網膜レンズに投影される。
スローモーションのように・・・

「あ・・・あ・・・あ・・・」

「ユキ・・・ユキ」

ユキの隣でリンネが話しかけるが、ユキはショックを受けたようだ。
ユキに抱き着こうとした機械化歩兵をリンネがレーザーブレードで払いのける。

シュン

ボクッグワン!

「ユキい!!」

ユキの軍服が焼け落ちる。半裸状態になりながら、ユキは混乱する。
大きく口を開け、かっと眼を見開き絶叫する。レーザーパルスライフルがその場に落ちた。

「うわあああああああああああ!!!」

「ユキ!」
「ノリコ指揮官!、ユキがあ!!」

ユキはその瞬間、発狂し、意識を失った。土の上にうつ伏せに倒れる。顔とボディが泥まみれになった。
青空がユキを悲しく見つめている。





ユキ・・・ユキ・・・

マリが呼んでる。

懐かしい記憶、今は亡きマリと語り合ったSS悠久ベース内あの夕焼け空の下。
ローブを着た白髪のマリが居る。ユキはブレザーの制服姿。
マリはしわくちゃの顔をくしゃくしゃにして話す。
温かい・・・

「あなたにも分かる日が来ます」
「守るべき防衛目標を見つけた時、あなたは産まれ変わる」

「はい」
「でもマリ」
「私はあなたを守りたい」

「あははは」
「マリはもうババアですよ」
「愛すべき人を見つけなさい」
「ユキ、運命はあなたに味方していますよ」

マリ・・・・


2018.7.21

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