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約束のない地で
[サンチャイルド(戦記小説)]
2020年1月27日 21時36分の記事

サンチャイルド11話です。

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「よーし、おろせー」

ガウン

ゴンゴンゴン

私はサダコ・コオロギ。コオロギ財閥の娘。
テーガ軍に肩入れするレジスタンスとして、軍事紛争に介入している。
今日も作戦があった。生還したHP(重歩兵)はたったの2機。
今日戦死した同志の顔が目に浮かぶ。生きたかったのだろうか?
死に急いだわけではなかっただろう。
ひい爺さまは生きる運命を望めと言う。例え死ぬ運命だったとしても。

いとしのサン殿。
出来ることなら平和な世界であなたに出会いたかった。
でも、戦争がなければあなたに出会うことはなかった。
だからこの醜い争いに感謝している。
火薬の神に魅入られた者たちの宴。それが戦。
火薬の神が欲する男、それがサン・チャイ。私が操を捧げると誓った男。
サン殿、あなたは今日も戦っているのですね。
人を殺して、殺して、殺されるまで止めないのが戦争ならば。
あなたの胸に刻まれた傷は、サダコが癒します。
私の胸で安らかに眠りなさい。
キナ臭いこの世界では、人の命がゴミのように扱われる。
生きるために産まれる命。

すぐ隣で作業しているレジスタンス同志に語り掛ける。

「ピートさん」
「HPの稼働率をもっと上げられないですか」

「無理です」
「闇ルートで手に入るHPには限度があります」
「コオロギ女史」
「味方は疲弊しています」
「今は同志の士気を高めてください」

「わかりました」

木箱の上に立ち、拡声器のスイッチを入れる。
精一杯息を吸い込む。

「いいですかあななたたち!!」
「マルスとの戦いに勝利することは」
「この地方にとって経済が潤う動機づけとなります」
「たとえ資本主義の犬と言われても」
「志を同じくする者」
「ともに戦い抜きましょうぞ!」


コオロギ邸に帰宅した。
愛車フォンドゥを運転して玄関に着ける。
召し使い達に交じってシズさんが玄関で出迎える。シズさんは私の唯一の妹。私が5女で彼女が6女。
学校帰りの紺色のブレザー姿。私はボロボロの軍服姿だ。
シズさんがあどけない少女の顔で涼しげに笑っている。

「お帰りなさいませお姉さま」

「シズさん」
「何か言いたいんじゃありませんか」

「いえいえ」
「私にはサダコ姉さまがうらやましいのですわ」
「一人の男と契りを交わす約束をしたお姉さまが」

「!!」

パシン!

シズさんの左頬を右手の平で思い切り叩いた。
彼女が下を向いて悔しそうな顔をする。
垂れた前髪に隠れて瞳が見えないが、きっとすごい形相で私をにらんでいるのでしょう。

「汚らわしい!」

私は吐き捨てるように叫ぶ。
そのままコオロギ邸別館に入る。別館に私の自宅部屋があるから。
私服に着替えて、大広間に入る。

「サダコ」
「まだキナ臭い仕事をしているそうだね」

「お父さま」
「お早いお帰りで」

サダコの御父上、テン・コオロギ。コオロギ財閥の当主。
お母さまのマリコ・コオロギは仕事でまだ帰ってこないらしい。
彫りの深い顔をしわくちゃにしながら微笑む。

「噂が流れてるぞ」
「男が出来たそうだな」
「もう身体を許したのか?」

私の頬がピンク色に染まった。

「お父さま」
「サダコももう20歳です」
「自分の花婿ぐらい自分で探します」

「ふむ」
「ところで」
「前々から催促のあった、HPの確保だが」

「はい」

「保留になった」
「今は戦時中だからな」
「民間の物資だって不足しているんだ」

「はい」

「お前は男勝りだな」

「はい」

夜は更けてゆく。
消費者の購買意欲を満たそうと、商売が乱立する。
紛争でさえ商売になる。
サダコルームで物思いにふける。
窓際のテーブル、椅子に座りダーガンティーを飲む。
テーブルに両手で頬杖を突く。
夜空に浮かぶ衛星バターを見つめながら。

「ふう」
「・・・」
「・・・」
「う・・・」
「じゅる」

なぜか悲しくなった。

「自分のことを振り返らなけれな」
「何も悲しくなんかならないのかな」
「世界は命で輝いているのに」
「人間は修羅だ」
「互いにとどめを刺すまで」
「憎しみの刃を納められない」



時間はその日の正午に戻る。
サン・チャイは戦闘中。平地の田園地帯。ところどころに林が並ぶ。
美しい緑色をした田畑。その田畑を荒らしながら戦闘は続く。
畑の作物を踏みつぶしながら田の稲穂をなぎ倒しながら、HP達は疾走する。泥が跳ねる。
サンが無線に語り掛ける。

「バングー大尉!」
「機体が被弾しています」
「即時撤退を」

「チャイ上級曹長」
「私はあなたを守り切らねばならんのですよ」

敵国マルス民主国の猛者、キム・ベクトル少尉のHP(ヒューマンプロテクト)が脅威となっている。
もう味方テーガ軍のHPが2機撃破された。
サンが一機撃破したが、いかんせん透明迷彩とステルスのせいで捕捉できない。
サンの愛機TT300の機体から蒸気が噴出している。

ゴウンゴウン

もう味方はバングー大尉の中級HPとサンの重量級HPだけだ。
サンのTTの右腕装備ガトリングガンが火を吹く。

バリバリバリバリ!

跳躍する。キム・ベクトルのHPも跳躍。地表にいるキムの僚機を狙い撃つ。僚機は上空にいるサンに威嚇射撃。金色の薬莢が飛散しまくる。

「ガトリングガンの照準誤差は左上1度」
「アクセルにタイムラグがコンマ3秒」
「跳躍時に右5度ふらつく癖がある」

ダンダンダン!

キムの僚機のコックピット装甲が破れる。鉄片越しに大量の赤黒い血液が噴出する。僚機のHPが原形をとどめたまま沈黙。

「!」
「おのれ悪魔めえ!」

二機対二機になったが、サンのテーガ軍はバングー大尉のHPが被弾している。
後部排気ノズルからオイルが漏れている。
ちょうど後ろにいた残ったマルス軍のHPがサブマシンガンを発砲する。地面のオイルのにじみに狙いをつけて。

バルバルバル!

ボウワ!

ドゥグー―ッン!!

オイルに引火して爆散した。

「バングー大尉いい!!」

サンの絶叫が響く。叫ぶと同時に右肩装備のカノン砲の準備をしている。この機体は膝を曲げなくてもカノン砲が撃てる。
バーチャルモニタ上の蛍光デジタルマーカーがいくつもはね踊っている。
ロックオンが間に合わない!敵HPが真横にホバリングスライドを開始。
右前方でバングー大尉のHPが炎上している。助からないだろう。

ズムン!

黄色い砲弾が敵HPの頭上をかすめてゆく。
無線が入る。

「ガガガ」
「サンチャイ上級曹長」
「味方は全滅しました」
「援護の部隊が到着します」
「お疲れさまでした」
「貴官は撤退してください」

「了解」

即座に振り返り、大跳躍をする。
自動飛翔に切り替えて、サンは安堵のため息をつく。

「どうせ自国に隠れていても、暗殺者に殺されるだけなんだよね」
「だったら、このHPの中が一番安全だ」

ヘルメットバイザーを外す。
ヘルメットを脱ぎ、詰襟のホックを外す。

「ふう」
「ミンミ」
「お兄ちゃんは今日も稼いでいるぞ」
「人を殺してな」


「キム少尉」
「敵の増援です」
「どうしますか」
「サン・チャイを追いますか?」

「やめておく」
「任務よりも自分の命のほうが大事だからな」
「生き残ったことに感謝せねばな」
「サン・チャイ」
「敵として出会わなければ」
「いい友達になっていたかもしれんな」

キム・ベクトル少尉の片方が斜めに上がった口角が、悲しそうに歪む。

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