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二年目。 61 第六章 スフォルツァの祈り
[★二年目 連載]
2010年8月6日 1時42分の記事



『幼い頃』連載ではアイリスは毒呼ばわり…。

でも無理在りません。

ここ迄スフォルツァを、のぼせ上がらせるんですから…。

強力で魅力的な毒に捕らわれた、スフォルツァの運命やいかに…。

ってトコですね。

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アイリスは呆れた顔をし、手を取り身を起こしつぶやく。
「今朝はいいのか?」
俺は、笑っていたと思う。

「今ならまだ朝食にも授業にも間に合う。
体の弱い君に朝食を、抜かせる訳には行かないだろう?」
そして、隣に立つ彼の背を促し耳元でささやく。
「今夜…それ迄、取っておくさ」

アイリスは不満そうに俺を見た。
「無茶は……!」
「させない。絶対」
アイリスはその時やっぱり、不満げに俺を睨み、頷いた。

昨日は地獄に居て、授業どころじゃなかった。
が二日目の今日は、夜が待ち遠しくて授業が全て、上の空に成った……………。

これ程一日が、長い。と感じた事は無かった。
が、今朝のアイリスに口付けた、唇の感触を思い描くと心が、弾む。

「…随分…機嫌が、良くなったね………」
ミーリッツはアイリスの、その美しい姿よりも彼の教科書に興味を引かれる変わり種だ。

隣のジャネスが袖を引く。
「お前…本当に、鈍いな………」
「なぜ?」

ジャネスは俺の視線を避ける様に、ミーリッツの袖を引くと上目遣いで俺を伺いながら、小声でミーリッツに告げる。
「朝、二人で彼の部屋に行ってからだろう…。機嫌が良く成ったのは………。

最初部屋から出て来た時は、声も掛けられない程不機嫌だったのに」
「…だから?」
ジャネスはここ迄言っても察しない、ミーリッツの鈍さに吐息を吐き出していた。


 乗馬の授業では遠乗りを、した。
直、このコースでタイムを争うから、道程を覚えろ。と。

がてんで、頭に入らない。
アイリスばかりを見つめてしまって。

その後の歴史の授業も、窓辺のアイリスの光に輪郭をぼやかした聖画のようなたたずまいに見とれ、講師に指されても答えられなかった。

「…幾らアイリスが美少年だろうが、授業は身を入れて聞くように」
そう言われ、クラス中の失笑を買った。

だが気にもならない。
当のアイリスの、呆れを通り越して俯き、ため息を吐く姿以外はてんで。

アイリスはチラ…と視線を、笑いを背後に抱え席に着く俺に投げる。
その濃紺の瞳に困惑が浮かび、俺は心に大きな亀裂が走ったように痛んだ。

彼に、失望されたのか?と気になって。
彼は直ぐ、講義室中の注目が自分に注がれるのを感じて顔を俺から背ける。

心がやはり、ずきずきと痛んだ。
今朝、言った通りだ。
皆に、宣言したい気分だった。
彼は俺のものだ!と。

だがそれが迷惑だからこそ今夜の約束を、取り付けたのだと思い出すと、心が鉛のように重く成った。

もうこの時点で俺はようやく自覚した。
どうしようもない程彼の事が好きで、彼にマジでのぼせ上がり、彼の一挙手一投足に一喜一憂する自分を感じて。

俺を、生かすも殺すも彼次第。
そんな危険な立場に今自分は身を置いていると言うのに彼を、忘れられたり出来やしない。




つづく。

ベルこの連載を最初から読む。
上のページを開き、下から順に
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新しいタブを開く。か
新しいウィンドウを開く。

で、別窓を開き、元のページは目次。として
開けたままにしてお読み下さい。


ベルこの連載をまとめて読む。
『北領地[シェンダー・ラーデン]の恋人』
の後の
『二年目』のタイトルからお読み下さい。



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