アースルーリンドの騎士『二年目』　36　一触即発　11

オリジナル小説「アースルーリンドの騎士」
「二年目」のミラーサイトに成っちゃいました。
昔はこっちが本家だったんですが………。

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アースルーリンドの騎士『二年目』　36　一触即発　11

[★二年目　連載]

2013年1月13日 11時12分の記事

ラナーンは本当は、とても気の毒な境遇です。

でも嫌なヤツでした。

ただギュンターはあんまりストレートで分かり易いヤツで

誤魔化しもしないから

内なる思い煩いを秘めた者らにとって

影響を受けやすい様です。

まあでも…。

内情をはき出す事は救われる第一歩。

自分を救うのは他ならぬ、自分なのですから………。

なんて、相手が相手だとギュンターの結構シリアス…？

ってギュンター、本当は薄幸の美青年…。

の筈ですが、やはり囲まれた環境は

皆がさつで貧乏で乱暴だけど、情は深いから

薄幸じゃないと、私は思うんですが………。

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王冠２

アースルーリンドについて。国の紹介

恋の矢

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途端、ラナーンがしゃくり上げ、ローランデは慌てて彼の椅子の横にしゃがみ込む。
「良く…耐えた君は…！
グーデンのひどい扱いに」

言われてラナーンは涙目で、ローランデを伺い見る。
「俺…あんたにさんざ、いい態度取ったのに…？
あ…んたのしんゆ…うのシェイルにだって！
ヤッケルは俺の事うんと…」

「ヤッケルだって解ってる。
彼はシェイルを庇ってるだけだ…！
君がもうシェイルに意地悪しないのなら…！」

「し…ない訳ないじゃないか！
ディアヴォロスが傅き…………。
庇…い…！
その上あいつにはローフィス迄居る！

…あ…んなに殴られて！
血反吐吐い…たって…！
ズダボロに殴られても懲りずに…たす…け…てくれ…る…兄が！
血…も…繋がってない…のに…！」

ギュンターはがくん…！と顎が揺れるのを自覚した。
ローフィスがシェイルの義兄だとは…オーガスタスの口から聞いていた。
シェイルが一年の時、グーデンに犯されかけた話も、人づてに耳に入った。
が………。

ローフィスがそこ迄して体張って護ってたと、知らなかった………。
ああだから…ディングレーにどれ程迫力あろうが…少しも怖じず意思が強いのは…そのせいなのか………。

「…シェイルが…羨ましい？」
ローランデに優しく聞かれ、ラナーンはその貴公子を見つめ…そして顔を、下げた。

「…ぼ…くには誰も居ない…。
誰一人………」
そして、しゃくり上げる。

「彼の母親は愛人で…父親に跡継ぎが出来ず引き取られ…グーデンの寵愛を得ろと、その父に命じられたそうだ」
言うギュンターに、ローランデが振り向く。

美しい白面(しろおもて)の眉が寄り、ローランデはラナーンに向き直って囁く。
「…なら…君はグーデンの元を去れない…。
どうして………」

が、ラナーンはしゃくり上げ言葉出ず、ギュンターが再び代わって答える。
「従兄弟がグーデン一味に居て、寵愛を失ったと…家族にバラした途端、扱いが冷たくなったそうだ」

ローランデは心から…気の毒げにラナーンを見つめ、そっと告げる。
「君の居場所は…自宅には無いのか？」

ラナーンは顔を上げて叫ぶ。
「引き取られた時点で！
厄介者だった!!!
男の子を産めなかったから…俺を引き取るしか無いと…養母は鬼のような顔で出迎え…その娘は………俺を毛虫のように見る！
顔を合わせる度…罵られなかった事等一度も無かったし…父が居ないと俺の食事は…犬の餌よりひどい！
………けど…グーデンの寵愛を得たと知った時、父は…俺を大切に扱えと家族に命じ…養母と義姉は…従うしか無かった………。
例え侮蔑していた俺に、犬の餌よりひどい食事を宛がわれようと!!!」

ラナーンはぶるぶると肩を震わせ叫んだ。
「けどもう…元の木阿弥だ！
グーデンのひどいお遊びに付き合わされたって…家に帰れば養母と義姉の、手酷い報復が待ってる！
以前よりもっと陰惨で惨めな…………!!!」

ラナーンががくがくとその、肩も手すり握る手をも震わせ、ひどく取り乱した。

だがローランデは静かに、それでもはっきりとした声で告げる。
「家を出たいなら…君の居場所くらい私が用意出来る。
君を養子に迎えたいと望む誰かを、探すことも出来る。
君がそう、望むなら」

ラナーンは俯きながら、涙で溢れそうな瞳を横に屈むローランデに向ける。
俯き、そしてまた………。
色白の貴公子の、澄んだ青の瞳を、涙で溢れたその瞳で見つめ返す。

ラナーンの…椅子の握りを掴んでいた手の震えが、止まり始めるのにギュンターは内心呻く。
ディングレーも…そうだったがローランデも、救いの手を差し伸べる。
それが、持てる者の務め。
そう言うように。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう

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 『幼い頃』

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