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アースルーリンドの騎士『二年目』 39 続く、襲撃 12
[★二年目 連載]
2013年4月7日 18時21分の記事





今日はフィンスとローランデのお話。

二人が出会ったいきさつは、実は作者も詳しく知らない。

シェイルとローランデは入学式の時校門で。

シェイルはヤッケルと同室で仲良く。

この辺りの話はしっかり出来ているんだけど

フィンスとローランデは多分大貴族用宿舎でだろう事しか

分かんない。

なのでこの話を書いた時

「なるほど」と思いました。

フィンスという友達が居なかったら

ローランデは皆に傅(かしづ)かれていたでしょう。

ディングレーのように。


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王冠2 イラスト入り登場人物紹介(まだ全部じゃありませんが…)
王冠2 アースルーリンドについて。国の紹介

恋の矢「二年目」を最初から読む恋の矢


 風呂から帰って来た二人は、フィンスに借りたのかガウン姿で、しかも
「たらふく食った!」
と明るく報告するレナルアンの言葉道理、食事も頂いたようだった。

二人の後にフィンスが来て
「ここの掃除、まだかかると思って」

ローランデは召使い達を見た。
箒を持った者が最後に出て来て、ローランデににっこり笑う。

つい、ローランデはフィンスの推し量ったようなタイミングの良さに、呟いた。
「ぴったりだ」

フィンスはにっこり笑う。
「部屋が出来たようだから、ゆっくり寛げば?」

言われてレナルアンはローランデを見るから、ローランデはしどろもどろって言った。
「休んでくれて、構わないから」

レナルアンは陽気に笑って頷き、ミーシャは生気の無い表情でそれでもローランデに、感謝するように目を向け、微かに頷き、もう一つの部屋の中へ消えた。

扉が閉まるとフィンスは真顔でローランデに告げる。
「ミーシャは疲れ切ってるようだ」

ローランデはフィンスに目で椅子を勧め、同時に向かいにかける。
そして問う。
「…どんな…様子?」

フィンスは肩竦めて言う。
「レナルアンはあの調子だ。
近衛に進む事についてちょっと聞いたら、方法は考えてないけど、身分無く、金も無く剣の腕も無い自分がここに入れたんだから、多分近衛でもやっていく方法がきっと、あるって」

「……………前向きだな」
ローランデの言葉に、フィンスも笑った。
が、また真顔になると、ローランデにそっと囁く。
「ミーシャは疲れ切ってる。
残して来たローズベルタと深い関係だったせいか…その事も気になるんだろう。ってレナルアンが。
ミーシャは黙って悲しそうな表情で、俯いていた」

ローランデが少し、厳しい表情をする。
「ローズベルタが…?
彼にそんな感情があるとは思えない。
自分専用の愛玩に逃げられ、激怒してる様しか思い浮かばない。
…本当にミーシャは、ローズベルタの報復を恐れてないのか?」

フィンスは無理も無い。と俯く。
ローズベルタは学年一乱暴な男だった。
さらりとした金髪の、目鼻立ちの整ったすらりと長身のいい男だったけれど、側に居る相手を理由無く突き飛ばしたり、蹴りつけたりする、傲慢で不遜な男。

幾度も、被害者に謝罪を求めるローランデと対立していた。
「…レナルアンが言うには…ローズベルタはミーシャだけは大切にしていたそうだ。
まあ最も元が乱暴者だから。
それ程繊細に扱ってた訳じゃないようだけど。
…ただ、自分専用の所有物と言う扱いは…してなくて、その………」

ローランデは目を、見開いた。
「まさか、恋人のように扱ってたのか?」
フィンスは頷く。
「レナルアンは二人が居る時、二羽の小さな小鳥が肩寄せ合って互いを護り合ってるように見えた。と……………」

ローランデが、動揺したように顔を、揺らした。
「………………………………………」

フィンスは俯いたまま沈黙するローランデを覗き込む。
一年の時、ローズベルタは先頭に立ち、シェイルを拉致してはグーデンに差し出した。

気づいて阻止した、ローフィスの惨状も見た。
血塗れでどこもかしこも殴られて、ひどい状態だった………。
ローズベルタは睨む自分に不遜に笑い返した…。

ディアヴォロスがシェイルに愛の誓いを、全校生徒の居る食堂で立てる迄…自分とフィンスはずっとローズベルタを見張り続け、幾度も…シェイルの拉致を未然に防いだ。

「…………シェイルがどれだけ怯えていたか…!
そんな…事が平気で出来る男なのに…?!」
ローランデの声が憤りで震えていて、フィンスはそっと言った。

「けど一学年最初の頃の話だ。
その後、ディアヴォロスがシェイルを護ると学校中に知らしめてから…まあ乱暴は止まなかったけど、シェイルを狙う事は無くなった。
その後…ミーシャと知り合って、彼も変わったのかもしれない」

ローランデはまだ…自分の憤る感情を必死に抑えるように、俯いていた。
が、握る拳の震えを止め、顔を上げる。
「…ミーシャがローズベルタに人間らしい感情を…呼び起こしたと?」

フィンスが、頷く。
が、ローランデは言った。
やっぱり声は震えていた。
「だがミーシャは逃げて正解だ!
ローズベルタは結局ミーシャ迄も!
グーデンに差し出し護ってなんか、やらなかったじゃないか!!!」

悲鳴に近い…フィンスはそう、思った。
護るべき役割を人生の最大の目的にする、北領地[シェンダー・ラーデン]の守護者、大公子息のローランデに取って…ローズベルタはただの、卑劣な卑怯者でしか無い。

ローランデはきっ!と顔を上げる。
「…済まない。これは君に言うべき事じゃ無い。
ローズベルタが私の前に現れ、ミーシャを奪ったと言いがかりをつけた時、私が彼に直接言うべき言葉だった!」

フィンスはローランデの…その潔さに惚れた。
もう惚れ尽くしてる。と思っていたのにまた、改めて………。
時折、ローランデには思わず頭垂れ、仕える価値ある大切な主人のように思える。

が、思わず頭、垂れかけるのをフィンスは止めた。
その時のローランデの瞳。
懇願するような、深い青。

…ローランデに仕える者は故郷に大勢居る。
だがここで彼が欲しいのは………。

ローランデの、どこ迄も青い瞳が告げている。
痛い程だ。
“頼むから…頭なんて下げないで“友達”で居てくれ…”

…彼がその地位でどれ程孤独か、思い知らさせるような青。
どんなものも手に入る身分の彼にとって、かけがえのない大切なもの…それが“友達”。

フィンスは自分の感情を、ぐっ…!とこらえて、ローランデに軽く頷き、微笑んで見せた。
ローランデがそれを見てどれ程…ほっと、した事だろう。

ローランデはその行動でどれだけでも仕える者を増やす。
北領地[シェンダー・ラーデン]で多くの大人達に“いずれ仕えるべき主”と傅(かしづ)かれている彼に取っては、教練の若輩の同学年達をそう思わせるのは、訳無い事だと思う。

でもローランデはそれを、望んでいない。
“特別扱いされたくない。ここで欲しいのは…友達だから”
言葉にならない声が、フィンスには聞こえた。

だから、大公子息。と頭垂れ、跪(ひざまづ)きそうな同学年達と違い、友達になろう。と思ってる自分に、彼は真っ先に声をかけて来た。

“ここ…って何か、息詰まるよね?”
彼のその言葉に、こう…答えた。
“デカい男だらけだからね”

ローランデはその返答が、気に入ったように笑った。
ほぐれるような微笑。
それを…フィンスは宝物にした。
裏切るまい。と思った。
せめて、自分だけは。

彼の配下で無く“友達”で居ようと。

扉を開け背を向ける。
振り向くと、ローランデが真っ直ぐ見つめ、言った。
「…ありがとう…………」

胸が、痛くなった。
同時に、くすぐったいような暖かい気持ちが沸き上がり、わくわくもした。
思わず笑い返すと、ローランデも輝くような微笑を見せた。




つづく。




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