アースルーリンドの騎士『二年目』　49　それぞれの時間　13

オリジナル小説「アースルーリンドの騎士」
「二年目」のミラーサイトに成っちゃいました。
昔はこっちが本家だったんですが………。

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アースルーリンドの騎士『二年目』　49　それぞれの時間　13

[★二年目　連載]

2014年3月29日 21時39分の記事

ギュンターがローランデを口説き始めるのに

後一ヶ月くらいを要すこの時。

グーデンらと全面対決直前。

ギュンターは入学当時のがりがり、ひょろひょろの体格を

少しでもディングレー、オーガスタス級にしたいのか。

ともかく、食べるギュンターは、半端ぢゃない。

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やがて、それぞれに付いた大公家の男達が、後ろから注文を聞き、それに見合った品をテーブルへと、運び始めた。

ただ、ギュンターだけは背後のワゴンに山盛りの料理が用意され、給仕は空になった皿をさっ！と下げては、新しい皿をテーブルに乗せ、その皿が置かれる前にギュンターの手は伸び、フォークで突き刺し口へと運んでいた。

皆の、喉がごくり…！と鳴る。
背後の料理はゆうに三人分。
そして重ねられた空の皿は、もうかなり高く積まれていて、二人分は確実に在った。

皆、注文した料理にロクに手も付けず、ひたすら掻き込むギュンターと、すかさず空の皿を下げて新しい皿を差し出す、給仕の連携プレーを見守る。

マレー、ハウリィ、アスランの三人は大人しく端で小声で話し、他のオーガスタスとディングレーを除く、ほぼ全員が、話し始めても直ぐギュンターの異常な食事風景に引き戻されて、視線を背後のワゴンの残る分量と、ギュンターの食事スピードを見比べた。

オーガスタスはとうとう、ギュンターに視線が釘付いてロクに食の進まない皆に、ぼそり。と告げた。
「今夜は特に、腹が減ったようだ。
いつもは…もう少し、量が少ない」

言ったものの、オーガスタスは今度は自分が言葉発した途端、さっ！と皆の視線浴び
『まずったかな…』
と心の中で呟いた。

ローフィスが横でぼやく。
「…そりゃ俺だって、奴が酒場でスープ皿口に当て、そのまま煽ったのは見てる。
行儀は良くないくらいは、知ってる」
オーガスタスはその言葉に、頷いた。

ローランデが言おうかと思ったが、シュルツが先に言った。
「…背後の重なった皿の上の料理、本当に彼一人で全部、平らげたんですか？」

口開き言い返そうとするが、皆がじっ…と見つめ来るのを、オーガスタスは意識した。
「………………(困ったな。どうしよう？)」

ローフィスがすかさず口挟む。
「オーガスタスが半分以上食ってる」
…この辺りでそこら中から、緊張解かれた安堵の吐息が聞こえたが、ローフィスは容赦無く言葉を続ける。
「…と言いたいところだが、後ろのワゴンの料理は全部、ギュンターに用意された物だ。
オーガスタスが食った空き皿は、とっくに下げられてる」

その場が、一瞬で凍り付いた。
そして皆の視線が、婦人が混じれば八人程の分量の料理が、既に半分近く消えているワゴンの上を喰い入るように、ただ無言で見詰めた。
…その間も惜しまず食べ続けるギュンターと、皿を入れ替える給仕の、連係プレーは続いていた。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう

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