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The wish to the glass
[単体]
2009年10月25日 18時34分の記事

■ハイデッカー単体:SERIOUS■
まさかまさかのハイデッカー単体です!
こんな話も無きにしも非ず…。
あると思います!(by天津)

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神羅カンパニーも世代交代をし、随分とシステムが変わった。
新しい社長であるルーファウスは、派手な外見をしているくせに社内での倹約を物凄いスピードで進めている。

まあ確かに、今迄は豪華すぎたのだと思う。
幹部はその甘い汁を吸いながら、上から怒鳴っていればそれで良かった。それだけで役割をまっとうできた。そういう時代だったのだ、プレジデントの時代は。

しかしルーファウスの掲げる政策の中では、そういう今までの体質は通用しないようだった。それが証拠にルーファウスは幹部一人一人に対しても改めて能力を測るということをし始めている。もしその調査でルーファウスの期待する数値が出せなかったら、きっとこの座は失われてしまうのだろう。

「全く!昔は良い時代だったのにな!」

言葉通り“良い時代”を過ごしてきたハイデッカーは、夜な夜なアルコールを煽り、そう愚痴を零している。

面白いもので、人は自分に都合が良い場合を“良い時代”と称するらしい。だから、システムが変わり自分がそれについていけなくなると途端に現在を否定して“最近は物騒だ”とか“昔はよかった”だのと現代批判と過去崇拝が始まる。そういう言葉の大概は、戸惑っている自分が発するSOSであることに気づかない。

ハイデッカーもその一人である。
彼の場合、この新時代についていけないというか、もうきっぱり排除されるのではなかろうかということを危惧しているのだ。何故かといえば、彼にはその心当たりがあるから。

“お前は上役として雇うのだ。堂々としていればそれで良い”

かつて、神羅カンパニーの社長は自分にそう言った。
だからこそハイデッカーは神羅の治安維持部門というところの統括として収まったわけだが、実際のところ他部門の統括―――例えば兵器開発のスカーレット、都市開発のリーブ、科学のガストや宝条、のようにその位相応の高い能力地を持っているわけではなかったのである。

とはいえ、まるで何もないところをスカウトされたわけではない。
勿論普通の人間よりは戦闘能力に長けていたし、ローカルとはいえ地域治安保全の担当をしていたことだってある。そういう理由で口がかかったことは確かだが、しかし他部門の人間に比べれば大した能力ではないと自分でも分かっていたのだ。

そもそも、ソルジャー自体既にハイデッカーよりも能力値が高い。
彼らは魔晄を浴びた特殊人間であり、生身のハイデッカーがそれにかなうはずがないのである。その上、その頂点を極めているセフィロスなどは化け物並の強さときている。まさか、その上に位置をおく自分が、本当の能力値を示すわけにはいかないではないか。

「俺の時代も終わりだ!ガハハハハハ!」

ハイデッカーは酒を仰ぎ、笑った。
嬉しいからじゃなくて、笑うしかなかったから。



誰だって―――――最初から堕落しようなんて思ってない。




神羅に入った当初。
大企業に発展するだろうそこが自分のフィールドになると分かり、ハイデッカーは頑張ったものである。それこそ、新入りの兵士に本気で教えを説いた。

戦う時の基本はこうだ。
守る時の基本はこうだ。
地域の人間を守るときにはこうするべきなのだ。
身を徹して守ることには素晴らしい意義があるのだ。

そのどれもが、信じられないほど真摯で美しい論の上に出来上がっていた。そしてその論は、当然しっかりと兵士達を育てていったのである。彼らはハイデッカーに感謝したし、尊敬もしていた。笑顔でありがとうございます、と礼も言った。当然ハイデッカーは嬉しかったし、それを誇りに感じていたものである。

けれど、ハイデッカーの育てた兵士たちは、戦争に身を投じ次々と死んでいった。

もっと強い兵士が必要だ。
誰かがそう提唱した。
そこでソルジャーという特殊な兵士が誕生し始める。
彼らはハイデッカーが育てるまでもなく特殊な能力を有しており、鍛えるまでもなく強靭な体力を縦にしていた。

――――――ああ、何だ。
俺など、必要が無いのか。
そう、思った。

その頃から、ハイデッカーは上役に徹するようになった。ただ上にいて命令を下し、部下の訓練などには一切触れず、ただ怒鳴り、ただ馬鹿笑いをする、そういう人間になっていったのである。


“あの統括は最悪だ”
誰かがそう言う。
――――はん、言ってろ!
――――それでも俺は統括だ。


“絶対についていきたくないよな”
誰かがそう言う。
――――勝手にしろ!
――――それでも俺は統括だ。


そうだ、統括は偉いんだ。それだけで価値がある。誰も逆らえない。誰が何を言おうと、この統括という位置にいる限りは誰も俺には逆らえないのだ。

ハイデッカーはそう思いながら、統括という肩書きを利用して神羅のOKするままに豪奢で身勝手な振る舞いをしてきたものである。
しかし、それも今や終わりに近づこうとしているのだ。

自分を最悪だと、絶対についていきたくないと、そう罵った兵士たちは、きっと喜んで嘲ることだろう。やっぱりな、と腹を抱えるに違いない。

――――ざまあないな。全く無様だ。
そう思ったが、ハイデッカーは酒を煽りながら笑った。笑うしかないと思ったから。

「ガハハハ!ガハハハ!」

しかしその笑いも、何だか段々と空しくなってきた。
一体自分はいつクビになるのだろう。
明日?それとも明後日?
誰からも呼び止められず、それどころか歓迎されて、神羅を後にするのか?

「ガハハハ!ガハハ…」

誰だって―――――最初から堕落しようなんて思ってない。

本当は、多くの兵士たちに教えを説いて、その兵士たちがこの町を守って、星を守って、皆が誇れるような、そういう部門にするつもりだった。そういう志を持ってこの場にやってきたのだ。
プレジデントには“堂々としていればそれで良い”と言われたけれど、そんなお飾りじゃなくて、やってやろうと思っていたのである。

それなのに、一体何故こんなふうになったのだろう?

ソルジャーができたからって、それが何だというのだろう。彼らだったら、自分よりももっと上手く町を守ってくれるかもしれないと、どうしてそう考えられなかったのか。そう思えていたらきっと、この馬鹿笑いも、このアルコールでさえ、要らなかったはずなのに。

「ガハ…ハ……はは…」

いつの間にか、あの象徴的な馬鹿笑いが消失していた。その代わりに、泣き笑いのような声が漏れてくる。
一体自分は何を悲しんでいるのだろうか?
ハイデッカーはそう自問自答した。

クビになるかもしれない事に?
嘲笑されるかもしれない事に?
豪奢な生活ができない事に?
それとも―――…。


いつの間にか歪んでしまった自分の気持ちに?




すっかりアルコールに酔い潰れて眠りこけてしまったハイデッカーの頭上で、若い男の声が響いていた。彼らは神羅の治安維持部門に所属する兵士たちである。町の警護をしている夜番の兵士だ。

「統括、また潰れてるよ。しょーがないなあ、全く!統括がこれだからこっちがしっかりしなくちゃいけなくて困るよな」

「ホントホント。でもさ、統括って安心できるとこでしか爆睡しないだろ?要するに此処は安全地域だってこと。結構分かりやすいよな」

ここら辺の地域は、治安維持が保障されてるんだ。兵士の一人はそう言うと、まだまだ夜間が危ないとされている地域の名前をずらりと並び立てる。

「統括、多分次は違う地域まで出向いて飲むんだぜ」

「何でそうなるんだよ?」

「統括って飲むふりして殆ど見回りしてるんだってさ。これ、夜番の奴しか知らないんだけど」

「へえ。何だ、うちの統括って結構いい奴じゃん」

「だろ?」

夜番の兵士たちは、一番近いホテルを手配して、そこまでハイデッカーを運んでいった。その間、ハイデッカーは鼾をかいてすっかり眠りこけていたが、その目じりにはうっすら涙が浮かんでいた。



END

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