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道化師の見る夢
[セフィジェネ]
2009年10月30日 2時17分の記事

■セフィジェネ:SERIOUS■
途中小説救済第二弾!
こんなところで新規すみませんっ。
ずっとUPを狙っていたセフィジェネです♪


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道化とは、人を笑わせる身振りや言葉のことを言う。
つまり道化師とは、それらを観客に振舞う人間のことを示す。



少年は、憧れの存在と仲良くなりたいと願った。
しかし、その方法が良く分からない。
常にムッとした顔をしてつまらなそうにしているその憧れの存在は、一体どうしたら笑ってくれるのだろうか。

笑い話を持ちかけたが、憧れの存在はちっとも笑わない。女の話をしてみたが、ますますむっつりするばかり。何をしてもまったく動じないものだからさすがに疲弊したものである。

しかしある日、たまたま芸能者の真似事をしてみると、彼は突然ぷっと吹き出してわらった。こんな滑稽なことで憧れの存在は笑ってくれたのである。

その事実が、彼を勇気付けた。

それ以降、彼は悉く芸能者の真似事をしては憧れの存在の笑顔を誘ったものである。
売れっ子の舞台役者の真似事をすれば、憧れの存在は、笑う。
だから彼は言い続ける。
舞台の上の「セリフ」を。

『アア、君ヨ、コイネガエ―――』




ミッドガルで最も有名な劇といえば、ラブレスの右に出るものはなかった。
ラブレスはかの有名な抒情詩で、いつからかそれが舞台で演ぜられるようになったのである。それ以降は舞台の台本としても流通し、今では古典的な作品とされているほどだ。

誰でも、その有名な一説くらいは聞いたことがある。
何故ならば、有名であるからこそ多くの役者がそれを演じ、誰もが幼い頃からその演技を知らず知らずのうちにテレビなどで目にしていたから。
その叙情詩のセリフはいわば有名な格言と同意なのである。

誰だって知っている。
だから、突然そのセリフを口にしたところで、それは単に芸能者の真似事みたいに思われたのだ。またそんな役者の真似なんかして、と。

しかしどうだ。
そういった物真似というものは、ひょうきんな人間でこそ似合うというものである。
例えば生真面目を絵に描いたような人物がそれを行うと、最初はおかしくて仕方が無いが、段々とその熱も冷めていってしまう。こういう事態については、最早性格を呪うしかないのか。

「いい加減にしろ、ジェネシス」

「何故?俺は好きでこれを口にしている」

「気が狂ったのか」

―――――――――ほら、またこれだ。

ジェネシスは、隣で気難しそうに眉間に皺を寄せているセフィロスを軽く睨んだ。勿論、本気で怒っているわけではない。ただ、セフィロスがまるでジェネシスの“事情”を汲んでくれていないことに苛立ちを覚えているのだ。

「そんな芸能者の真似事をして一体何が楽しい?お前は兵士ではなく役者にでもなりたかったのか?」

だったら今からでも志願するんだな、などとセフィロスは言う。
まあこれはただの憎まれ口なのだが、実際に一度神羅の人間になってしまえばそんなことなど許されようはずが無い。だからそれは、無理に等しい話だった。

尤も、もしそれが可能ならば、それも悪くない選択だ、とジェネシスは思う。
民衆を守る振りをして殺めている神羅の兵士に比べれば、蜃気楼のようであっても夢を抱かせる役者の方が何倍も素晴らしいと思ったからである。

しかし、今はそんなことはどうでも良い。
今目の前にあるのは、この役者の真似事をセフィロスが嫌がっている、という事実である。最初は面白そうに笑ってくれたのに、今ではもう笑うことはない。

賞味期限が切れたのだ、自分は。

「昔ながらの抒情詩を口にして何が悪い?俺はただこれに心酔するのみ…それが悪いことか?」

最早、聖書か何かのように肌身離さず手にしている本「ラブレス」を、ジェネシスはパタン、と丁寧に閉じた。

今日は任務がなく、だから所在なげに一つどころに留まっている。
先ほどまでアンジールもその場にいたのだが、急な用事ができたとかでさっさと去っていってしまった。だから今はセフィロスとジェネシスだけ。
それはジェネシスにとって格好の空間だったが、しかしセフィロスにとってもそうとは限らなかった。

「…悪いが。俺はお前のそういうところが気に食わない。文学に傾倒するのは勝手だが、俺の気分まで害さないでくれ」

「気分を害す…、か。面白い言い分だよ、それは」

「何が言いたい?」

「いや…。ただ、俺は思う。もし今の俺と同じことを他の誰かがしたときに、お前は同じことを言うかな?―――多分、違うんだろう」

ジェネシスはそう言うと、部屋を出ていきそうだったセフィロスの脇をすり抜けて、自分が先にその部屋のドアの前に到着した。

セフィロスと共にある空間は限りなく嬉しかったが、どうやら今の会話で気分が落ちてしまったらしい。このままこの空間に留まるのは芳しくない。

自動のドアがシュン、と音を立てて開く。
そこで一歩を踏み出したジェネシスは、最後の最後にセフィロスを振り返り、

「気に食わないのは―――――俺の態度じゃなくて、“俺”だろう?」

静かにそう言った。




笑顔が――――――見たかったから。
その為だったら道化師になっても良いと思った。
いつか、この存在自体が道化になってしまっても、それでも良かった。
もしそれで笑ってくれるのならば。




道化の道具としてラブレスを選んだジェネシスは、その抒情詩を読むにつれ段々とその世界にはまっていったものである。しかし、ジェネシスがラブレスにはまったことには、ある大きな理由があった。それは、ラブレスにおける登場人物たちである。

ラブレスで描かれるのは主に三人の男で、彼らは固い友情で繋がれている同志だ。彼らは一つの目的に対して共に戦ってゆくが、途中でそれぞれの立場が変わっていってしまう。しかし最後には共に目指した目的に身を投じるのである。

ラブレスには様々な要素があったが、しかしジェネシスがその中で特に感じていたのは、限りなく完璧に近い友情だった。例え途切れることがあっても最後には必ず一つの線になる、そういう固い結束だった。

奇しくも、同じ「三人」。
ラブレスの中の三人のようになれればどんなに良いことだろうかとジェネシスは夢想したものである。しかし現実はそういうわけにもいかない。

友情があることは分かっているが、それは物語の中のように完璧に近いものではないし、実際にセフィロスは自分を嫌っている。ほかの人間より親しいのは確かだが、それが必ずしも親愛なる仲だというふうには言えないだろう。

「女神の贈り物…か。もし本当にそれがあるなら…俺は何を願うだろう」

自室にいたジェネシスは、窓の外に目を遣り軽くため息をつく。
ラブレスの中の三人が大切にしていた「女神の贈り物」は、三人に何をもたらしたか。ある意味ではそれは三人を親愛な存在にしたのだし、またある意味では三人を残酷な運命の海へと突き落としたのだろう。

もし「女神の贈り物」という目的を持たねば、残酷な運命など辿らずに済んだのに違いない。がしかし、それがなければ出会うことすらなかったのかもしれない。
そう――――――――目的など無ければ、出会わなかった。

“俺は決めたんだ。セフィロスみたいな強いソルジャーになるって”

そう決意したのは何故だったか。
それまで兵士などまるで興味などなかったし、どちらかといえば安穏とした生活を送っていたというのに。

アンジールが神羅の兵士になろうとしていたことは、確かにジェネシスへ大きな影響を与えた。しかし決意した理由はそれだけではない。本当は、神羅よりも大切なものがあったのだ。

“俺が頑張って作ったジュース、セフィロスにも飲んで欲しいんだ”

そう―――――――――原点はそこだ。

「…馬鹿だな、俺は。最初の目的を、俺は未だに果たせていない」

ジェネシスは自嘲するしかなかった。
だって、本当に目的を果たしていない。それどころか今やそれは難しいものになってしまっている。とてもじゃないが、この状況ではそんな子供だましの夢でさえ叶えることはできないだろう。

自分が作り出したバカリンゴのジュースを、いつかセフィロスに飲んでもらいたいと思っていた。同じ世代の男の子が世界の英雄として活躍していることに感激して、自分も頑張っていることを認めて欲しいと願っていた。

しかし、ジェネシスの願いは、ただそのジュースを飲んで欲しいということではなかったのである。飲むだけだったらば、誰がどうしたって同じことだ。

ジェネシスが欲しかったのは、セフィロスにそのジュースを「美味しい」と評価してもらうこと。そして、それによってセフィロスの心に喜びをもたらすことだった。

人は、嬉しいと笑うのだ。
人は、楽しいと笑うのだ。
だから―――――――セフィロスに笑って欲しかった。

しかしそれはすでに無理だと分かっている。賞味期限切れの自分は、最早元のものにも戻れず、聖書のように大事にしているラブレスを抱きしめ、道化者でい続けなければならない。

「…そうだな。俺はもう道化者でしかない」

ジェネシスは寂しそうな唇でその言葉を放つと、ふいと目をやったラブレスの表紙をそっと掌で撫でた。

「セフィロス…だから俺は、せめてお前に最高の道化を贈ろう。…もう、ジュースだなんて純粋に笑うことはできないのだから」



ああ、セフィロス。
そうしたらお前は――――――――、


また、笑ってくれるかな?




その為だったら喜んで道化になろう。
役者は揃っている。自分は悪役でも何でも良い。
憧れの存在がまた笑いかけてくれるのならば、喜んで「セリフ」を話し続けよう。演じ続けよう。
この「星」を舞台にして。



END

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