傷病手当金制度は、高額療養費制度に比べ認知度が低い。利用していないケースが多い。東京都が14年5月に公表した「がん患者の就労等に関する実態調査」(=
概要18ページを参照=)では、回答者数の約4割が傷病手当金制度を「知らなかった」と回答した。一方、「利用した」回答者数の割合は約3割にとどまっている。
傷病手当金制度は、業務外の病気やけがでの療養で、仕事を休んでいることが支給の条件。具体的には、仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給される。待期期間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれており、給与の支払いがあったかどうかは関係ないのが特徴だ。
また、就労時間中に業務外の理由で発生した病気やけがで、仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算。つまり、就業時間中での病気やけがであれば、発生したその日から手当が支給されるわけだ。待期3日間の考え方は、「会社を休んだ日が連続して3日間」という意味で、2日連続で会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立しない。要は、続けて3日間会社を休めばいいのである。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6ヵ月。途中で仕事に復帰した期間があり、その後に再び同じ病気やけがで仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間は1年6ヵ月に含まれる。支給開始後に1年6ヵ月を超えた場合は、傷病手当金は打ち切られてしまうので注意が必要だ。
傷病手当金の支給額は、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額(1円未満は四捨五入)。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1で計算(10円未満は四捨五入)する。給与の支払があっても、給与が傷病手当金の額に比べ少ない場合は、傷病手当金と給与の差額の支給がある。
たとえば、標準報酬月額が300,000円(標準報酬日額は10,000円)の場合には 1日につき10,000円×3分の2=6,667円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げる)の支給を受けることができる。
それでは高額療養費、傷病手当金の両制度を活用して、医療保険をどのように組み合せば、医療費全体をカバーでき、家計からの突発的な出費を抑えることができるのか――。月額100万円の医療費が掛かった場合でのケースで試算する。標準報酬月額が28万円〜50万円の人であれば、高額療養費からの給付により、負担額は約9万円。医療保険の内容は、日額5,000円で十分に対応できることになる。
病室を個室にして治療に専念する場合は、差額ベッド代が保険適用外なので、医療保険金の支給日額を引き上げる必要がある。厚生労働省の調べでは、1人部屋の平均利用額は1日当たり約7,500円という結果が出ており、日額10,000円の医療保険に加入しておけば、懐具合を気にせずに治療に専念できることになる。
ここで気を付けなければならないのは、公的給付を受ける際の手続き。「役所の掟」として申請主義なので、支給を受ける側(患者側)が担当の団体に申請を行わないと支給されない。この場合は、都道府県の「協会けんぽ」が窓口になる。この窓口が分かりにくい上に、申請書作成の面倒さが傷病手当金制度の利用割合の低さに表れているのではないか。
ただ、高額療養費の申請の窓口と同じであり、申請書類を1通作成するのも、2通作成するのも手間はそんなに変わらないので、忘れずに申請を行いたい。協会けんぽは、申請があれば、高額療養費なり、傷病手当金なりの支給手続きを取ってくれるが、申請がなければ教えてくれもしない「お役所」なのである。