土地の価格を推測する指標としては?公示地価?路線価?固定資産税評価額――の3種類があります。公示地価は、国土交通省が毎年1月1日付の標準地での価格を3月に発表します。国土交通省のホームページ(HP)から都道府県別、市町村別に決まった標準地が定められています。つまり、同一地点の毎年の変化を定点観測できる指標です。
また、相続税路線価は、国税庁が毎年1月1日時点の土地の価格で、7月を目安に発表しています。土地の前面道路の価格から土地の価格を見積もるので、路線価と言われるゆえんです。路線価は、公示地価の8割であり、路線価で試算した土地の価格を0.8で割り戻せば、公示価格を試算できるようになっています。
最後に、固定資産税評価額。固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税などの算定基準となる指標で、市町村が3年に1回、1月1日現在の土地の価格を3月までに決定しています。市町村は、土地の所有者が交付の申請を行うと、評価証明書を交付することになっています。
後は、都道府県が調査する都道府県地価調査価格がありますが、公示地価とほぼ同じ内容で、基準地が公示地価の基準地と異なっています。同調査も定点観測なので、毎年の地価の変化が分かるようになっています。
それでは、不動産会社は土地の査定を行う際に、どの指標を利用しているのか――当事務所の場合は、これまでの経験上から「相続税路線価」を基準にして価格査定を行っています。金融機関の融資査定も担保価値から逆算しており、おおむね相続税路線価が取引に際しての妥当なラインと考えていいでしょう。
一方、地価公示は高めで、買い手の食いつきはよくないという現実の壁に突き当たります。土地の価格の査定で地価公示を用いて試算、売値にしたところ、どこからも見向きもされないという現実が待ち受けています。売り主の方には、公示地価で試算した値付けだとなかなか売れない実態を十分に説明する必要があるでしょう。
固定資産税評価額は、公示地価の7割の価額に相当します。この評価額を土地の価格の査定に利用するケースはほぼありません。実勢に比べ廉価になり、売り主側の不利益になるからです。それと「売値が安くなる=仲介手数料が目減りする」という生々しい話になるので、固定資産税評価額は使いたがりません。
売り主側、買い主側の仲介会社が異なる場合、双方の仲介会社間で綱引きを行います。この綱引きは、売り主側も、買い主側も知りません。要は「結果オーライ」なわけです。
売り主側にしてみれば、「高めに売却できればよかった」と思えればいいわけです。一方、買い主側にしてみれば、「安く買えてよかった」と思えればいいのです。その折り合いを仲介会社間の交渉で落としどころを探るわけです。
双方の仲介会社間で行う協議手法が、「売り手の希望価格と買い手の希望価格を足して2で割った価格」で落としどころを探る方法です。希望価格間で格差がありすぎると協議のテーブルにもつけませんが、どちらも納得がいきそうな価格帯であれば、交渉がまとまりやすくなります。
ただ、なかには「本当に売りたいのか?」「本当に買いたいのか?」的な荒唐無稽な希望価格を上げる方もいます。その場合は仲介会社は3種類の指標を利用して、3通りの査定価格を試算、提示した上で、「改めて再検討された方がよろしいのではないですか」と言い、お引き取り願いケースがあります。
さて、建物の査定についても触れておきましょう。賃貸住宅で算出する減価償却を用いて概算の査定を行うケースが多いですね。後は、建物外壁の傷み具合や室内の汚れ、床の傾き加減、散らかし具合で査定者の心象が悪いと、低めに試算します。要は、再販する際に「いくら掛けなければ売り物にならないのか」という算盤を弾きながら、建物の査定を行っています。
ところで、裁判所の競売物件は、最近の傾向として落札価格がやや高めで推移しているようです。占有者の退去や管理滞納などという「曰くつき」物件です。ただ、遺産分割協議がまとまらずに相続税資金の調達策の一環で競売に回った物件もあります。
見分けは、住宅ローンが支払えずに競売になった案件は物件番号の前に(ケ)が入ります。一方、遺産分割協議がまとまらずに競売案件に回った物件は、物件番号の前に(ヌ)が入ります。できれば、(ヌ)号の物件を狙うのが賢明でしょう。
また、不動産会社が仕入策の一環として、競売物件を競落するケースが目立っています。しかし、占有者の退去金や管理費滞納、建物の内外装のフルリフォーム費などを積み上げていくと、あまり利益が出ないのではないかという物件に出くわす場合があります。
具体的には、フルリフォーム費を掛けて販売活動を行っても、なかなか売れなければ販売価格を引き下げざるを得ません。そうこうしているうちに、売れた際には「実際には100万円くらいの利益しか出なかったよ」というような事態になっているケースもあります。
近いうちに、「応札していい、是非とも落札したい競売物件の見分け方」を解説したいと思います。
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