ご相談者としては、「自殺物件を所有したくない」一心で相談してきたのでしょう。説明では「警察の話では当初は事故死の線で調べていたそうですが、その後に遺書が見つかり、自殺ということで取り調べは終わったそうです」。
売却する際には、売買契約を締結する前の段階、いわゆる重要事項説明の段階で、「当該の部屋で自殺があった」ことを説明する義務があります。仲介を行う不動産会社としては、売買契約時ではなく、重要事項説明時に説明する必要があります。
自殺後にお寺の僧を招いてお清めをしたり、神主を招いてお祓いをしたりしていても、自殺物件は自殺物件として説明する義務が不動産会社にはあります。売主側が不動産会社に告知しないで売却し、後ほどに買主が事実を知った場合、不動産会社と売主を相手取り民事訴訟を起こす可能性は大きいでしょう。
その際に、不動産会社も調査の限界がありますが、管理会社に物件について質問書を送ります。内容的には、室内の程度や管理費・修繕積立金の滞納の有無、特筆すべき事項――などについて回答書を受け取る方式を書面で受け取ります。
その段階で、売主側の告知がなければ、知り得ない事項について告知を行わなかった場合、不動産会社は免責になる可能性は大きく、損害賠償の責任は売主だけが背負うことになっても仕方がありません。
具体的には、売買代金の一部を損害として認める判例もあります。賃貸マンションの場合、契約期間が2年が一般的で、自殺者の出た次の入居者には告知義務があっても、次の次の入居者には告知義務はないと考えられています。
また、自殺者の出た部屋の賃料の減額は、全体の不動産の原価率の1%程度だという判決内容です。不動産会社は、業者講習で「心理的瑕疵」物件の売買については、「買い手側や借り手側が忌み嫌うのであれば、何年経過していても瑕疵は瑕疵」というのを耳にタコができるくらい聞いています。
その意味で、売主側が勝手に判断するのではなく、あくまでも買主側が、瑕疵物件を買うのか買わないのかを決めることになるわけです。不動産会社には自殺があった部屋であることを正直に告知し、不動産会社を通じて買主側や借主側にきちんと伝えてもらうのが良策です。
後は、賃貸物件で多いのが孤独死です。死後数ヵ月経過した賃貸部屋を売却する際も同じ扱いになります。大掛かりなリフォーム工事を行っても、臭いがなかなか解消されないケースが多いのが一般的です。そういう物件を売却する際も、きちんと不動産会社に告知するなり、買主側や借主側に事実を説明する必要があります。最終的にそれらを承知で買ったり、借りたりするのは、買主や借主の自由意思になります。
不動産業界では古いテーマですが、必ずどこかで起きている事例です。投資物件で上記のような事態が発生した際には、買主側や借主側にきちんと説明する義務が不動産会社にはありますし、売主(貸主)は不動産会社に正しく告知する義務があります。黙っているのは、誠実義務違反となるから注意しましょう!
***********************************
「そうなんだ、気を付けなきゃ!」と思った方は、下のリンクボタンをポチッと押してください。
↓
人気ブログランキングへ