FOMC開催後のメッセージは、これまで残してメッセージを踏襲する格好で、極めて明確でした。「いったん利上げを行い、ゼロ金利という異常な状態からまずは脱却する。しかし、今後は極めて慎重に利上げを行うから安心してほしい」という部分です。
この主張は、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の記者会見にも如実に現れていました。同議長は、米経済の回復基調を挙げてはいますが、労働市場は質的な回復の余地が残っているとみているようです。
労働市場に一抹の不安を残しながらも利上げを行った背景には、景気の大幅な過熱を受けた急激な引き締め策の実施を避けたい意向が大きく働いたことをイエレン議長が自ら吐露しています。
現段階で利上げを実施して米経済が弱含みになるリスクと、景気が過熱して急激な引き締め策を実施した際に、経済全体が大きく落ち込むリスクのどちらを選ぶのか――天秤に掛けた結果、経済の弱含み推移を選択したととらえることができます。
特筆すべき事項としては、FOMCでの利上げは、投票権を持つメンバー全員の一致で決定したことにあります。
FRBのタルーロ理事やシカゴ連銀のエバンス総裁など一部メンバーは、これまで年内利上げに慎重な意見を出していました。しかし、ふたを開けたら全員一致――慎重派も「今後の利上げペースを緩やかにする」との注釈に賛成したとみるのが一般的です。
利上げのペースはどうなるのか――2016年に4回、四半期に1回のペースで利上げ実施となる可能性は大きいでしょう。過去の利上げはFOMCの開催ごとに実施していたこともあります。
ただ、今回はかなりなスローペースで利上げを行う可能性が大きいことを示唆している点が異なります。しかも、経済の状況次第では必ずしも四半期ごとに利上げを行うわけではないとの含みを持たせている物言いが窺えます。
FRBは、利上げを決定しましたが、大規模な金融緩和政策から正常化への転換は第一歩を踏み出したばかりです。今後、どのような方向に向かうのか不透明な部分が残っています。
FRBも2016年の1年間は、想定外の事態が発生する可能性も視野に入れているようです。事の大小はどうあれ、危機的な状況を踏まえた対策を今後講じるであろうことは目に見えています。
イエレン議長が「経済が想定通りに進展しなければ、我々は確実に利上げを休止する」と記者会見で言い切る辺りは、身長はメンバーの意を汲んでの発言でしょうか。
金融政策の正常化に向けた動きは緒に就いたばかり。今後、ボラティリティの高いマーケットになる可能性はあります。
しかし、危機が訪れる度に米金融当局が適切な政策を実施することにより、市場での信頼感が増せば、マイナス面を極力抑えることができるはずです。来年はあらゆる局面が投資機会となる可能性を秘めている年になるかもしれません。
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米政策金利の利上げで、ダウ平均、日経平均とも好感となり、株価は上げ潮ムードになりました。ただ用心しなければならないのは、上り詰めれば後は下るしかないということです。
それが急なのか、緩やかなのか――日本の金融は、米の金融に首根っこを完全に押さえられてしまったような印象を受けるのですが、考えすぎでしょうか。
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