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鏡の国のアリスより
 
2013年12月27日 0時57分の記事

「それは信じられないわ!」とアリス。

 女王さまは、あわれむような声で言います。「信じられない、ですって? もう一回やってごらんなさいな。はい、まず深呼吸して目を閉じて」

 アリスは笑いました。「やるだけ無駄です。ありえないことは、信じろと言われても無理ですもん」

 「言いたくはございませんが、どうも練習が十分でないごようすですわね。わたくしがあなたくらいの歳には、毎日三十分必ず練習したものでございますよ。ときには、朝飯前にありえないことを六つも信じたくらい。あら、ショールがまた風に飛ばされた!」



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「あなたなら喜んで雇ってさしあげますけれど! お手当は、週に二ペンスと、一日おきにジャムですわよ」と女王さま。

 アリスはついつい笑ってしまいました。「いいえ、遠慮させていただきます――それにジャムもいりませんし」

 「とっても上等のジャムなんでございますよ」と女王(クイーン)さま。

 「ええ、でもどのみちきょうはジャムはほしくないですし」

 「ほしくても、もらえやしませんよ。ジャムは明日と昨日――でも今日は絶対にジャムなし。それがルールでございますからね」と女王さま。

 「でもいつかは今日のジャムになるはずでしょう」とアリスは反論します。

 「いいえ、なりませんね。ジャムは一日おきですからね。今日だと、一日おいてないでしょうに」

 「よくわかんないです。とてつもなくややこしくて!」とアリス。

 「逆回しで生きてるとそうなっちゃうんですよ」と女王さまは優しく申します。「最初はみんな、ちょっとクラクラするみたいで――」

 アリスは驚きのあまり繰り返しました。「逆回しに生きる! そんなの聞いたこともないわ!」

 「――でも大きな利点が一つあって、それは記憶が両方向に働くってことなんでございますよ」

 「あたしのはぜったいに一方向にしか働きませんけど。何かが起きる前にそれを思いだしたりはできないから」とアリスは申します。

 「うしろにしか働かないなんて、ずいぶんと貧弱な記憶でございますわねえ」と女王さま。

 「じゃあ陛下は、どんなことをいちばんよく覚えてらっしゃるんですか?」アリスはあえてたずねました。

 「ああ、再来週に起こったことですわねえ」と女王さまはあたりまえのように申しました。そして、おっきな絆創膏(ばんそうこう)をゆびに巻きつけながら続けます。「たとえばいまなんか、王さまの伝令のこととか。牢屋に入れられて、罰を受けているんでございますよ。裁判は来週の水曜まで始まらないし、もちろん犯罪はいちばん最後にくるし」

 「でも、その人が結局犯罪をしなかったら?」とアリス。

 「それは実に結構なことではございませんの、ねえそうでございましょう?」と女王は、ゆびの絆創膏(ばんそうこう)をリボンでしばりました。

 アリスとしては、確かにそれは否定できないな、と思いました。「確かにそれは結構なことかもしれないけれど、でもその人が罰を受けたのは、ちっとも結構じゃないと思う」

 「なにはともあれ、それは大まちがい。あなた、罰を受けたことは?」と女王さま。

 「悪いことをしたときだけ」とアリス。

 「そして罰を受けて、いい子におなりになったわけでしょう!」と女王さまは勝ち誇ったように言います。

 「ええ、そうですけれど、でも罰を受けるようなことを最初にやったわけじゃないですか。ぜんぜん話がちがいますよ」とアリス。

 「でも、そういうことをやっていなかったなら、もっとよろしかったわけですわよねえ。ねええ! もっとずっとよろしかったですわよねええええ!」女王さまの声は、「ねえ」と言うごとにかん高くなって、最後はキイキイ声にまでなってしまいました。

 アリスは「それってどっかおかしい――」と言いかけましたが、そのとき女王さまがすさまじい叫び声をあげだして、中断するしかありませんでした。「あいたたた、いたたた、いたた!」と女王さまは叫びながら、手を振り落としたいかのように、猛然とふっています。「指から血が出てる! いたたたた、いたたた、あいたたた、いたた!」

 その金切り声は、蒸気機関車の汽笛そっくりで、アリスは両手で耳をふさいでしまいました。そして、口をはさめる間ができるとすぐに言いました。

 「いったいぜんたいどうしちゃったんですか? 指を刺したんですか?」

 「まださしてはおりませんことよ。でももうすぐ――いたたた、あいたた、いたた!」

 「いつ刺すつもりなんですか」とききながらもアリスはついつい笑い出したい気分でした。

 女王さまはうめきます。「こんどショールを止めるときですよ。ブローチがポロッとはずれるんでございます。あら、あらら!」そう言う間にブローチがパチンとはずれて、女王さまはあわててそれをつかみ、とめなおそうとしました。

 「気をつけて! 持ち方が曲がってます!」とアリスは叫びながらブローチのほうに手を伸ばしました。でも手遅れです。ピンがずれて、女王さまは指を刺してしまいました。

 「いまののおかげで血が出たわけでございますわね。これでここでの物事の起こり方がおわかりになったでしょう」と女王さまはにっこりしました。

 「でも、どうしていま叫ばないんですか?」アリスは耳をふさごうと、手をあげたままききました。

 「だって、叫ぶのはさっきたっぷりやったじゃござませんの。いまさらやりなおすこともありませんでしょう」と女王さま。

 そろそろ明るくなってきました。「カラスは飛んでっちゃったみたいですね。行っちゃってくれて、ホントにうれしいな。夜になってきたのかと思った」とアリス。

 「わたしもそんなふうにうれしくなれたらよいんでございますけどねえ!」と女王さま。「でも、やりかたを失念してしまったものでして。あなたはこの森に住んで、好きなときにうれしくなれて、さぞかし幸せなんでございましょうねえ!」

 「でも、ここはとてもすごくさびしいんです」とアリスはゆううつな声で言いました。そしてひとりぼっちなのを考えると、おっきな涙が二つ、ほっぺたをつたって流れ落ちました。

 「あらあら、ちょっとおよしなさいって!」とあわれな女王さまは、困り果てて手をもじもじさせます。「自分がどんなにえらい子か、考えてごらんなさいな。きょう、どれほど遠くまできたか考えてごらんなさいな。いま何時か考えてごらんなさいな。なんでもいいから考えてごらんなさいな、なんでもいいから、とにかく泣くのはおよしなさいって!」

 アリスは泣きながらも、これには笑わずにはいられませんでした。「陛下は、ものを考えると泣かずにいられるんですか?」

 「それがやり方なんですよ」と女王さまは、すごく確信をこめて申しました。「二つのことを同時にできる人はいませんからね。じゃあまず、あなたの歳から考えてみましょうか――あなた、おいくつ?」

 「ちょうど七歳半です」

 「『ちょうど』はなくてよろしい。それがなくても、十分に信じられますよ。さて、じゃああなたに信じられるものをあげましょうか。わたくしの年齢は正確に百一歳五ヶ月と一日なんでございますよ」

 「それは信じられないわ!」とアリス。

 女王さまは、あわれむような声で言います。「信じられない、ですって? もう一回やってごらんなさいな。はい、まず深呼吸して目を閉じて」

 アリスは笑いました。「やるだけ無駄です。ありえないことは、信じろと言われても無理ですもん」

 「言いたくはございませんが、どうも練習が十分でないごようすですわね。わたくしがあなたくらいの歳には、毎日三十分必ず練習したものでございますよ。ときには、朝飯前にありえないことを六つも信じたくらい。あら、ショールがまた風に飛ばされた!」



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