第三次世界大戦の発火点――日本の関わり方 | |
[世界の読み方] | |
2015年11月24日 17時3分の記事 | |
半年前、ある講演会で第三次世界大戦の危機ということを述べたら、米国で勉強されたという方が「そんなことはない」と嘲笑してさかんに言っていました。この方は細かく世界情勢を分析していないなと思ったので、反論はせずにそのままにしておきました。 米国の雑誌、ナショナル・インタレストが11月21日、「How World War III Starts: 5 'Sparks' That Could Set the World Ablaze」(2015年11月21日 The National Interest/第三次世界大戦はいかに始まるか:世界を燃え立たせる可能性がある5つの発火点【筆者訳】)という記事を掲載しました。 ナショナル・インタレストは『フォーリン・アフェアーズ』と競合する外交などを扱う雑誌で、国際的な社会・文化・経済・歴史の差異に留意した編集方針をとると言われています。 「How World War III Starts: 5 'Sparks' That Could Set the World Ablaze」(2015年11月21日 The National Interest)
ナショナル・インタレストも現状の世界情勢を描写するとき、第三次世界大戦という表現を用いるわけで、先日も触れましたが、これはローマ法王フランシスコが同じ言葉を用いて世界を描写することと同じです。現在の世界がそういう状況であるのは、世界的には常識的なことです。 第三次世界大戦については本ブログ「フランスでの同時多発テロ事件――本質はテロとの戦いではない?」(2015年11月17日)などでこれまで述べてきましたが、この危機については既に2年以上前から様々なところで私は申し上げてきました。少なくとも2013年9月のシリア危機からその後の世界における事象はすべてこの脈略で捉えなくてはならないことです。 現状の世界情勢で最重要な事は、いかにその大戦が発火しないように対策をとるかということ以外にはありません。このような状況において、自衛隊が云々、安保法制が云々という次元で対処できるとは思えません。ひとえに巻き込まれないようにすることしか道はありません。武力によって世界大戦を止めようとすることは、世界大戦に参加するということなのです。 世界的な危機が生じている時、近視眼的に自国のことしか考えない防衛政策や安全保障政策が、世界大戦の誘因になることは当然起こり得ることです。この思考レベルの違いが世界大戦のために利用されることは当然起こりえます。 昨今の集団的自衛権はその典型といえるでしょう。第一次世界大戦は一発の銃声で始まりました。しかし、一発の銃声が大戦を引き起こしたのではなく、同盟など集団的自衛策で繋がれ一触即発の状態の世界(欧州)が、一発の銃声で一気に大戦へと雪崩れ込んでいったのです。一度、その関係に繋がれてしまえば、2000万人以上が犠牲となった大戦から逃れることはできなかったのです。それが第一次世界大戦です。現在、世界で第三次世界大戦が言われてい時に、集団的自衛権などといえば、それはその大戦に巻き込まれるだけのことは明らかなことです。もしくは、そこに参加しようとしているのかもしれません。積極的平和主義とは平和主義ではないと考えます。現状は「平和ボケ」から軽々しく戦争を始めることを考えないことが極めて重要な局面です。 このような世界大戦の時代では、軍人は英雄ではなく犠牲者にしかならないのです。もちろん言うまでもなく一般市民も同じです。 なぜ今なのか? そして構造は 現在、なぜ第三次世界大戦なのか。それは米国がプレゼンスを低下させているからでも、中露が現れたからでもありません。それは、現在が時代の切れ目であり、新しい世界的構造をつくろうとする動きがあるからです。この世界的構造とは世界秩序ではありません。そして、この動きの本質は国家単位で考えるべきことでもありません。200年以上前から世界大戦は既に国境を超えた動きです。戦争はお金がないとできません。そのお金がすべての中心で、そのお金の流れは既に200年以上前からグローバルです。そのお金の流れの実権を誰が握っているかが、戦争の構造です。このお金の動きと戦争について一般の人々は全く関係ありません。詳しくは拙書『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)をお読みください。 ナショナル・インタレストの記事は、秀逸です。特にその出だしの文は非常に良いものです。この記事では、世界大戦は7年戦争(1756年-1763年)から始まり、フランス革命戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と続き、今回は5度目の世界大戦という認識が書かれています。この認識は全く正しいでしょう。補足すれば、フランス革命戦争だけではなくナポレオン戦争も入るでしょうし、米ソ冷戦も入るでしょう。そして、すべて構造は同じです。 世界の発火点 この記事で第三次世界大戦の発火点として5つ上げられています。それは、シリア、インドとパキスタン、東シナ海、南シナ海、そしてウクライナです。昨年もナショナル・インタレストは、「5 Places Where World War Three Could Break Out」(2014年10月17日 The National Interest/第三次世界大戦が勃発させるかもしれない5つの場所【筆者訳】)という記事を書いています。今年が「第三次世界大戦はいかに始まるか:世界を燃え立たせる可能性がある5つの発火点」ですから、今年の方が明らかに切迫感があります。去年の記事では、北朝鮮、中国対インド(対パキスタン)、中東、ロシア対NATO、そして中国対米国(台湾、日本もしくは南シナ海)とあります。去年に比べると今年のほうがより具体的になっています。また北朝鮮が今年にはないのが一つの大きな特徴ですし、中国とインドの関係も入っていません。 今年の分析の詳細は記事をご覧頂きたいと思いますが、これらの発火点を一気に「発火させて」、第三次世界大戦というシナリオはあり得るものです。シリアで今、動きがあるので、このような状況ではこのシナリオは現実味を帯びてきます。尖閣で小競り合いと同時に南シナ海での戦争が始まるかもしれません。そうなった時、中東での戦火が拡大する可能性もあります。それはウクライナも同じです。このような状況の時、一番大切なのは戦争をしないということであり、それ以外の価値観はすべて戦争のために利用されます。 ナショナル・インタレストの記事では、南シナ海では核戦争になることが指摘されています。これも本ブログ「フランスでの同時多発テロ事件――本質はテロとの戦いではない?」(2015年11月17日)で指摘したとおりです。 日本の動き 上記5つの発火点で日本に特に関わりがあるのは東シナ海、南シナ海、そしてインドとパキスタンです。ウクライナや中東に関して日本は今年はじめ外交で動きましたが、今や情勢はその反対に動いています。いずれにせよ、これら3つを少し見てみましょう。 先日、APECやASEANなどが行われたアジア地域でしたが、以下の記事が報じられています。 「日・フィリピン、防衛装備の移転協定に大筋合意へ=関係者」(2015年11月16日 ロイター) 「首相 ASEAN諸国に海の防衛能力向上支援」(2015年11月22日 NHK) これらは武器輸出なども関わることでしょう。正に第三次世界大戦の発火点と言われているところに、武器輸出などをするのですから、点火する行為を日本がしているわけです。世界は確実にそう見ます。本ブログ「欧州情勢、中東情勢に関するいくつかのポイント 」(2015年11月19日)でも書きましたが、このような行いは、いずれ世界から戦争を起こした首謀者として見られることは確実です。それは、日本の国益を確実に大きく損ないます。また、軽々に南シナ海へ自衛隊を派遣するなどと首相が口走るようなことはもってのほかでしょう。平和ボケで危機感がなくなっているとしか思えません。 また、12月には安部首相はインドを訪問すると伝えられています。これまでの流れで考えれば、上記、東南アジアで行ってきたことをインドでも行うでしょう。軍事部門に投入されるODAなども確実に関わっていくものと考えます。 マスコミなどもしっかりと状況を把握して論調を立てないと大変な状況に日本を導く可能性があると考えます。 日本の選択肢 大変に恐ろしい状況にあるのが、現在です。しかし、一方で前向きな動きもあることも事実です。例えば、イランと米国の和解、キューバと米国の和解などです。これらはいつ第三次世界大戦になってもおかしくない現状において、確実に「発火点」を減らす方向での動きです。これらのお膳立てをしたのはバチカンです。この同種の動きは、今年の2月のウクライナ紛争調停です。ここでは独仏露が動きました。これも発火点を減らすことに確実に貢献しています。ただ、昨今、この三国の内、仏露ともテロにあっています。また、ドイツの航空機は墜落をしています。 現状は、リアリズムに徹して観て、平和にいかに導くかということが重要な時代です。日本人に残された選択肢は世界大戦に関わるか、それとも関わらないかだけです。これが唯一存在する価値観です。このこと以外の価値観は、取り扱いを注意しないと戦争を誘発する、もしくは引き起こすために利用される可能性があることは、絶対に忘れるべきではないでしょう。 | |
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