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ひょんなことから二つは繋がる?
[日本の政治]
2019年1月18日 0時21分の記事

世界の実相を見つめると、全く異なったものが繋がっていきます。

「NATO離脱、説得され矛収める トランプ氏が昨年」(2019年1月16日 朝日新聞)

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本ブログ「言葉のトリック」(2019年1月17日)で書いたように、トランプ大統領のNATO離脱発言についての報道において、上記朝日新聞においても「国際協調を重んじるマティス氏」(同上)という言葉がしっかりと使われています。上記本ブログで指摘したように朝日新聞の世界観も終わりを告げている米国覇権時代を維持して、緊張状態、戦争状態を温存しようとすることにポイントがあると考えます。
この朝日新聞の記事を読むと、欧州での米軍展開にNATO各国の負担と言われていますが、果たしてそれがポイントなのでしょうか? そもそもこれまで米国はその負担なくして、米軍の世界展開を行ってきたわけです。米国の財政赤字は2009年に比べれば2018年は約半分になっていますし、ここ数年、米国のGDPは右肩上がりになっていますので、むしろ米軍の世界展開にとっては良い環境になっているはずです。普通なら現状の米国の状態なら、シリアに留まることもできるし、欧州にも留まることができると考えられるわけです。もちろん東アジアにもです。
そうなるとこのようなNATO各国(及び韓国)の負担増が言われるのは、そもそも米軍の世界展開を支えてきた構造が崩れたからに他なりません。それが何かということが本当のポイントなのです。

構造の転換
これまでザ・フナイなどで指摘してきた崩壊した構造とは、基軸通貨ドルの流通とともに米軍の世界展開が可能となり、この基軸通貨ドルと米軍の世界展開が相互補完してきたと言うことです。この構造にドルが原油の決済通貨としてあることが加わります。だから原油本位制をとる基軸通貨ドル、そしてそれを守るために中東への米軍展開ということが必要になるわけです。そして、この中東への米軍展開は大西洋側からNATOを通じて、太平洋側からは日韓、シンガポールなどを通じて可能となっていたわけです。
しかし、そのドルの存在そのもの(金融構造)が変われば、当然、米軍の世界展開も変わります。原油決済も他の通貨で行われるようになります。米軍の世界展開を続行させるには、各国の負担が必要になるわけですが、そもそもそれは長期的には可能ではないわけです。それは米軍の世界展開を可能とさせる金融構造が崩れているからです。このような状態で、ザ・フナイで取り上げてきた、ここ数年になされた独仏の首脳が発言したもはや米軍には頼れないということになるわけですし、シリアからの米軍撤収やこのトランプ大統領のNATO離脱発言にもなるわけです。もちろん朝鮮半島も例外ではありません。
そもそもこの各国の負担というのも、ひとつの言い訳にすぎないと考えます。このような世界の構造変化があるからこそ、ザ・フナイなどでこのような構造変化が生ずることをこれまで予測できたわけです。
米軍の撤退というのは昨日今日の話ではないことはずっと拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015五年 ビジネス社)やザ・フナイで書いてきました。少なくとも10年前から始まっていることで、もっと前の今世紀初頭には既に動き始めていると考えています。
ただ明示的には、拙著やザ・フナイで私がそう書いているのですから、少なくとも4年前から既に常識的な話なのです。
このような大きな構造転換の中に日露問題、朝鮮半島問題、ウクライナ問題、シリアなどの中東問題、イスラエルの問題、そしてイスラム国の問題があるわけです。中東では主にイスラエルとサウジアラビアにとっては米軍の撤収は大きな死活的問題でなのです。両国はこの米軍の世界展開の構造に完全に依拠してきたからです。そして、このことは東アジアにおける日本(右翼、安倍政権)と韓国(保守派)にとっても同じで、この構造転換はその存立基盤を失う事態を招く大変な問題であるわけです。

ロシアのプレゼンス
また、上記の朝日新聞には以下のように書かれています。


最終的にマティス国防長官(当時)やボルトン大統領補佐官に「NATO離脱は米国の欧州での影響力を後退させ、ロシアを勢いづかせる」と説得され、矛を収めた。トランプ氏は会合後の会見で、各国が増額に応じたことを強調し、離脱を「必要ない」と語っていた。(同上)


記事では米軍の撤収はロシアを勢いづかせると書かれています。しかし、それならそれはシリアでも同じことです。シリアから米軍が撤収すれば、当然、これまでシリア政府とロシアを批判してきた欧州などの根拠は崩れ、同時にシリアとロシアを勢いづかせます。それでも米軍シリア撤収が行われたわけです。このシリア撤収はロシアのプレゼンスを容認しているのです。中東ではロシアのプレゼンスを認め、トランプ大統領はイラクで世界の警察官は続けられないと発言し、欧州ではロシアのプレゼンスは認められないと言うことは明らかに矛盾しています。
つまり、中東と同じことは欧州でもおこるということですし、東アジアでもおこるということなのです。実のところ、このようなロシア脅威論は適切ではなく、むしろ米国覇権時代の構造に利益があったものがその構造を残そうとしていることにその本因があるのです。そこにシリア問題やウクライナ問題が生じてきたわけです(イラン問題もこの中に入ります)。日本の報道を見るとどちらの問題においても反ロシアという姿勢が見え見えですが、それはこの米国覇権時代を残そうとしている、つまり緊張と戦争の構造を残そうとする方向でしかないわけです。それが日本での報道の本質です。日本でのロシアについての報道は一つのポイントです。

平和を形づくるための新しい構造
現状において生じていることの実相は、平和を形づくるために新しい覇権の構造へと変化させているということにすぎません。ただ、そうなってほしくない人々、即ちこれまでの構造に依拠してきた人々は利益のために、緊張と戦争の構造にしがみついているわけです。しかし、この新しい構造への変化は変わらないと考えます。
トランプ大統領の米国は既にそのように動き始めています。そうなると緊張と戦争の構造に依拠してきたものは困りますから、当然、米軍を留めようと緊張と戦争の構造を残そうという動きになります。中東ならシリア、ウクライナなどですが、またこのことは欧州と関係します。
同時に東アジアなら日本の動きに関係します。韓国は文在寅政権によって朝鮮半島融和など新しい構造へと動いていますから、東アジアで旧構造を残す動きになっているのは日本で、日本においては安倍政権もマスメディアもこの動きになっています。日韓の軋轢のポイントはここにあります。
以下の記事のように、1月13日、イスラエルのネタニアフ首相はシリアのダマスカス国際空港のイランの武器庫を攻撃したと発表しました。一方、イランはシリアでの軍事プレゼンスを否定しています。

「イスラエル首相、異例発言の背景 迫る選挙、米軍の動き」(2019年1月17日)

上記の朝日新聞の記事では、ネタニアフ政権のこのような行動は、4月に迫る同国での総選挙を意識していると分析しています。それは悪くない分析ですが、それなら選挙のために武力行使をするイスラエルを朝日新聞は徹底的に批判すべきです。そんな行動、普通の国なら許されることではありません。このようなことではイスラエルのネタニアフ政権に肩入れしている今の安倍政権へのチェック、批判に期待はできません。
このイスラエルの行動の本質は、戦乱を起こして米軍を留めるということと考えます。これまでシリアでの戦争がまさに米軍を引き留める装置となってきましたから、単にそれを踏襲しているにすぎません。
ただ、現状は米国が手を引いているので、シリアにおいてイスラエル単独の動きになってしまっています。これは大変に危険な動きで、この延長線上には間違いなくイスラエルの消滅という文字が浮かび上がります。このことは今の日本にも当てはまります。

本質は同じ
冒頭の朝日新聞の記事での「国際協調」という言葉の使用は、緊張と戦争の構造を残そうとするおきまりの表現と考えますし、現状、基本的には安倍政権と同じ穴の狢と考えます。
そう言う意味で、現状、朝日新聞と産経新聞は実は同じと言えると考えます。ただ、産経新聞は狂ったように安倍政権の擁護をしているいわけで、それは朝日新聞との違いとしてあります。ただ、この違いは国際情勢の動きの中ではたいした差ではないのです。はっきり言って世界観が同じなのです。
とは言え、産経新聞はそのように論調をたてないと、安倍政権が倒れた後、消滅の二文字が浮上するからと考えます。このまま安倍政権が続かないと困るという切迫した事情があるということが、記事から漂ってきます。だから、あのような論説を書くのだと考えます。
ただ、このことの意味することは、同紙は本質的に国民の方に向いていないということです。だから、売れなくなっているのだと考えますが、これは当たり前の滅びのコースということです。もう少し、国民のこと、特に弱者のことを考える姿勢があればと考えますが、弱者への論調を見ると、平気で同胞を見捨てるということしか考えられません。弱者は日本人ではないと言わんばかりですが、そのようなことは国民を向いているとは言いません。いずれ、国民より国家の方が大事と居直ると考えますが、それはまさにかつての軍国主義であって、国を滅ぼすことにしかなりません。
「ひょんなことから二つは繋がる?」(2019年1月19日)へ続く。

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内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐勇治(政治評論家) さん
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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