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ブラジルとアルゼンチンの『共通通貨構想』が意味すること
[日本の政治]
2023年1月24日 23時50分の記事

以下のロイターの記事では、ブラジルとアルゼンチンの『共通通貨構想』が報じられています。この共通通貨が今後どのように展開していくかはわかりませんが、現状において、一つだけ確定的なことがあると考えています。

・ 『ブラジル大統領、対アルゼンチン貿易促進で「共通通貨」構想を提案』(2023年1月24日 ロイター)

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この共通通貨のポイントは『二国間貿易促進のためにドル以外に「共有可能な決済手段」の構築』(1月24日 ロイター)です。この共通通貨によって両国の通貨であるレアル、ペソがなくなるわけではなく、あくまでも『貿易決済のための通貨』ということです。
これまでの世界では『貿易決済のための通貨』の役割を基軸通貨『ドル』が担ってきたわけです。ドルは原油の決済通貨となり、それをペトロダラー呼んできたわけですが、そうなることによって原油がドルの価値の裏打ちとなってきたのが、1970年代以降の世界経済のシステムであったわけです。
今後、このブラジル・アルゼンチンの共通通貨がいかなることになるかはわかりませんが、現状において最低限言えることは、このブラジル・アルゼンチンの動きは、これまでの基軸通貨ドル体制とは違う動きであるということです。はっきり言えば基軸通貨ドル体制は終わっているのです。
この基軸通貨ドル体制の終焉とそのことに対する動きは、決して新しいことではなく、最低限、10年程前からずっと起きてきたことです。そのことを数年前に書いていたザ・フナイの連載で何度も何度も書きました。また、直近、舩井勝仁さんとの対談をさせていただいた同誌2023年1月号〜3月号でのメインテーマでもあるのです。言ってみれば、このブラジル・アルゼンチンの共通通貨構想は、分析通りに当たり前の動きでしかないのです。
無論、これまでも貿易決済のための共通通貨構想は色々とあります。以下のように2019年に報じられたマハティール元マレーシア首相の東アジア共通通貨もその一つです。このマハティール氏の共通通貨も『貿易取引決済のための通貨』であるのです。要するにそれは基軸通貨ドルに代わるものです。

・ 『マレーシア首相、東アジア共通通貨を提唱 金に連動』(2019年5月30日 ロイター)


この動きは昨年もありました。ロシア・ウクライナ情勢によって、ルーブルがロシア産の天然ガスの決済通貨になりました。これも、これまで基軸通貨ドルが担ってきた役割をルーブルが担うという大転換なのです。
また、以下のように中国はサウジアラビアをはじめとする中東産油国と、原油取り引きを人民元で行なう方向に動いています。この動きも数年前からの動きです。ドル体制が終わることは何年も前から明らかであり、そのことを中心にこれまで世界が回ってきたのが、実相なのです。そのことを上記の数年前にザ・フナイでの47回に及ぶ連載でのメインテーマの一つとして書きました。無論、8年前の拙著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』(2015年 ビジネス社)でも、このことを書いています。

・ 『サウジ、「原油輸出を人民元で決済」構想』(2022年3月16日 日本経済新聞)

・ 『ドル以外の通貨での石油貿易決済、サウジはオープン−財務相』(2023年1月18日 ブルームバーグ)

・ 『習近平、アラブとも蜜月  石油取引に「人民元決済」』(2022年12月13日 遠藤誉)


上記3つの記事の一番下の遠藤誉さんの記事をみると、中露間において元・ルーブルでの通貨圏ができつつあることがわかります。ユーラシアがドル以外の通貨で回り始めているのですが、そういうところに中東産油国と中国との間での人民元での原油決済の方向性と言うことなのです。すでに、ロシア産の天然ガスや原油はルーブル決済にかわっているわけです。確実にドルの存在感は低下しています。
このようなことがユーラシアで起きている状況において、ドルの中核である英米が基軸通貨ドル体制に代わる新たな通貨覇権体制をつくるために、数年前からロシアなどに仕掛けて、戦争になっているのがロシア・ウクライナ情勢の本質です。ですから、このロシア・ウクライナ情勢は通貨戦争であり、第三次世界大戦なのです。
このような状況で、中露の通貨圏と欧州の通貨圏が合体することを英米は許さないでしょう。このこともロシア・ウクライナ情勢のもう一つの様相なのです。
そしてついでにいうのなら、こういうところに新型コロナウィルス問題があると考えるのも自然ですし、無論、この通貨戦争、第三次世界大戦を仕掛けている側にこの新型コロナウィルス問題の本源があると考えることも自然です。はっきり言って、そう断言しても良い。
話を戻しますと、日本のほとんどの方々は、これまでのドル基軸通貨体制がまだ続いていると思っていますが、それは認識の世界だけの話であって、現実は数年前からまったく違う方向に動いているのです。
日本はこういう現実をみないで逆行しているわけで、日本はほとんどの国民に認識がないままにこの通貨戦争・第三次世界大戦に巻きこまれ、英米に戦争の駒として使われようとしているのです。上述した中国元の動きを観れば、英米・ネオコンが、今度は、当然、東アジアがターゲットにして、中国、台湾、日本、朝鮮半島をこの通貨戦争の世界大戦の戦場にしていくことは、わかりきったことなのです。
現状、その危険性にほとんどの日本人が無頓着なのには、正直、驚きますし、呆れます。


○ 先の大戦も通貨戦争だった
通貨というのは軍事にそのまま関わります。基軸通貨を持っている国の軍は、その通貨があれば、基本的にどこにでもいけ、世界展開が可能です。それは軍事覇権を確立させることになりますし、同時にその軍事覇権によって、通貨覇権がより強固になるわけです。
軍事と通貨についてわかりやすい事例は、先の大戦です。日本は1931年の満洲事変以来、日中戦争など対中関係における泥沼にはまり、同時に米英ソ中蘭などに包囲されて、太平洋戦争に突入して、1945年に崩壊・滅亡するわけです。
先の大戦で日本は米国だけではなく中国に負けているのですが、そもそもこの大戦の問題は1931年の満洲事変などからの対中政策にあるわけです。
その中国は、1935年11月に国民政府の蒋介石が通貨改革を行ない、翌1936年にアメリカとの協定が成立して、中国通貨が米ドルとリンクし、ドル経済圏に中国が組み込まれることになるわけです。
そのドル経済圏と対峙したのが日本と満洲の経済ブロックで、すでにこのときから日米開戦は必至であったわけです。その根本は『通貨戦争』なのです。ハル・ノートで戦争が始まった云々の話は、あまりにも表層的な話でしかないのです。
1931年に日本が満洲事変を始めたことから始まり1945年に日本が滅びる15年戦争、アジア太平洋戦争の実相には、このような『通貨戦争』があったわけです。
むしろ、通貨戦争が、戦争において根本的な意味を持つのです。そして、このことは今も当然、変わりません。

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◎ 必読の書

○ 『餓死した英霊たち』

○ 『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』

先の大戦も、現在も日本国民を大切にしない政治。この2冊がそのことを雄弁に物語ります。

○ 『CIA日本が次の標的だ―ポスト冷戦の経済諜報戦』


◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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