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【No.1 ファイル サーカス団長殺人事件】-聞き込みと視力-
[名探偵K No.1 ファイル]
2006年10月15日 4時28分の記事

事件当夜、楽しいはずのサーカスが血塗られた惨劇に変わった。
容疑者にされた泉の汚名を晴らすためKは捜査を進める。
果たして、犯人は誰なのか?そして、おぞましい事件のトリックとは?そして動機は?
事件を暴くには、まず聞き込みである。
その前にKの秘密を述べておくべきであろう。・・・

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俺の名前は「K」。
ケーって読んでくれてもかまわないし、
面倒くさければ、呼ばなくったっていいさ。
名前なんて、一種の記号のようなもんだ。


事件2 聞き込みと視力

事件当夜、楽しいはずのサーカスが血塗られた惨劇に変わった。
容疑者にされた泉の汚名を晴らすためKは捜査を進める。
果たして、犯人は誰なのか?そして、おぞましい事件のトリックとは?そして動機は?
事件を暴くには、まず聞き込みである。
その前にKの秘密を述べておくべきであろう。
諸君はご存じないと思うが、Kは多重人格者である。それを知るのはKのみであるが。
彼にはKという人格の他に、もう一人の人格が存在している。
常人にはとても及ばない洞察力と観察力を持つKであるが、あまり人に接することを得意としない。
そのマイナス面を補う人格がいつの頃からか彼の中に存在するようになったのだ。
Kのマイナス面を引き受けるその人格の名前は「D」である。
彼らは力を合わせ、数々の難事件を解決してきたのだった。今回とて例外ではないだろう。
彼がなぜKの中に存在するようになったのかは、いずれ解るときが来るはずだ。
KはDへと人格を変え、捜査の基本、聞き込みをするべく容疑者の待つ楽屋へと向かう。

まず、Kと泉が向かったのは事件当夜、中木が撲殺される前に言い争っていた清掃員「大川」の元である。
この事件が起こったテントの裏にサーカス団員用の仮宿舎がある。
宿舎といっても間に合わせのキャンピングカーもどきのつたないモノだが。
各地を渡り歩く団員達にとってはまさにここが彼らの家である。
Kと泉はまっすぐに大川の待つ宿舎に向かった。

「おじゃまするぜ。大川さんはいるかい?」
重たい鉄のドアを開け、声をかけるK(人格はDだが)。
(あらやだ。またKのヤツ口調が変わったわ。まぁ毎度の事ね。この強いところも素敵なんだけど。ウフ。)

「はい、私が大川ですが。何か用でしょうか?」男はどうやら本を読んでいたらしい。
その本をたたみ、そっと本棚に返す。

「読書中の所すいませんが、中木さん殺しの件に関しましてちょっとお伺いしたいことがありましてね。もしよろしければご協力願いたいんですけどねぇ。よろしいですか?」
Kが大川に歩みよる。大川はかなりKを怪しんでいるようだ。

「あんた、刑事さんかい?もう全部話したろうよ。もう答えられる事は何もないよ。」
どうやら大川はKを現場検証に来た刑事と間違えているらしい。

「いえね。私は刑事じゃないんですよ。ただ、ここにいる泉が容疑者になっていまして。
私にはどうしてもこいつがそんなことをするヤツだとは思えないんですよ。出来れば
大川さんにも協力していただいてこいつの汚名を晴らしたいんですよ。」 

「刑事さんじゃないのかい。じゃあいったい誰なんだい?あんたは?」
急に態度が大きくなる大川。相手が刑事でないと知って安心したのだろう。

「探偵をやってる者でして。それで・・」
Kがさらに話を進めようとしたが・・

「早く帰れってんだ!お前らに話なんかねぇよ。その女が疑われてるんなら、その女が犯人なんだろうよ!!まったく人の迷惑も考えないで部屋に入って来やがって!何様のつもりだ!!全く、俺は何もしらねぇって言ってんだ。帰れ!!かえ・・うぐ!!」
大川の首元をKの手がしっかりと押さえている。大川は突然の出来事に息をのんだ。

「あまり、はしゃぐな。お前も容疑者なんだ。知っているぞ。
お前、中木が殺される前にヤツと言い争っていただろう。何が原因なのかは知らないが、それだって立派な動機だな。どうだ?」そっと、腕の力を緩めるK。

「ゴホ、ゴホ、ゴホ・・。な、何でそれを知っているんだ?」首をさすりながら大川はKに聞く。

「私が見ていたのよ。あなた達が激しく言い争っていたのをね。」泉が口を開いた。
「お、俺じゃねぇよ。確かに団長とは、言い争ったかもしんねぇ。だけど殺すなんて・・。なぁ、信じてくれ。俺じゃねぇって。」懇願する大川。

「あいつが俺に言いがかりをつけてくるから・・。」ボソッと大川はつぶやいた。
「言いがかり?言いがかりって何だ?」Kが大川に詰め寄る。
「団長のコンタクトレンズを俺が盗んだって・・。俺しらねぇよ。コンタクトなんて・・。」
「なるほどね。それでカッとしたあなたは中木を・・。」泉の推理が暴走する。
「ホントに違うんだって。きっと市川の野郎だよ。あいつ団長の座を狙ってたから。」
「じゃあ、犯人は市川ね。団長の座を欲しいばかりに・・」またまた、暴走する泉。
「とりあえず、市川の元に行くとするか、泉。大川さん、また何かあったらご協力お願いします。 では、読書を楽しんで下さい。」
大川の元を後にして、Kと泉の2人は市川副団長の元に向かう。

市川の宿舎に向かう間、2人は今回の事件について話をしていた。犯人は大川か市川。
それ以外には考えられない。動機は怨恨か?その辺はまだ何とも言えない。
ただ、解っているのは、今回の事件はやっかいなトリックが鍵になっているということだ。これを解明しなければ犯人は分かっても、事件解決とはならない。
迷宮入りだけは避けたいところだ。

5分と経たずに2人は市川の宿舎前に到着した。
どうやらドアノブが開いているようだ。そっと中をのぞき込むK。
中からつぶやき声が聞こえる。
「・・これで、団長の座はMEのものに・・」
2人は中に踏み込む。あわてる市川。
「おっと。あわてないで下さい。私は私立探偵のKと言います。
 実は中木殺しの容疑をかけられたこの泉の為に捜査を行っているのですが。
 2、3お聞きしてもよろしいでしょうか?なぁに、お時間は取らせませんよ。」
優しく話しかける。隣りには泉が立っている。

「いいですよ。MEが捜査に協力できるならば何なりと。お嬢さんもさんざんですね。」
そっと、近くにあるいすに座る市川。
「あなた達も座ったらどうですか?」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。」
そばにあるベットに腰掛けるKと泉。そしてKが質問を始める。
「市川さん。事件当夜に中木さんと最後にあったのはいつですか?」とK。
「さぁ、あの日は忙しくて・・。そうそう、楽屋に行くといってみんなに伝えておくようにと、彼は言ってました。」

「と、言うと中木さんが楽屋に行くと知っていたのはあなただけということになりますねぇ。今の発言はちょっとまずかったのでは??」

「いえ、その時は何人かは私の周りにいましたから。知っているのが私だけだとは断定出来ないですね。」笑みを絶やさない市川。

「まぁ、その件はもういいとしまして。先程大川さんの所に行きましてね、非常に興味深いことを聞きました。あなた、中木さんの目が悪いことを知っていましたか?」
ちょっと間をおいてからKの質問に市川が答える。
「いえ、全く。目が悪いからって・・それが何か?」
「彼の出し物の、空中ブランコでは相手をしっかりと見ることが出来なければ命取りになりますからね。
 どうも、そのコンタクトが公演中になくなったみたいなんですよ。
 その件について中木さん、何かおっしゃってませんでしたか?市川さん?」
「・・さぁ、気づきませんでしたね。それに団長は普段サングラスをかけていましたから
 近眼だとは思わなかった」
(あら?大川さん、そんなことまで言ってたかしら?)首をかしげる泉。
「そうでしたか。どうもお手間を取らせました。では、失礼します。行くぞ。泉」
部屋を出ようとするK。耳元で泉がささやく。
「ちょっと、まだ聞きたいことがあるんじゃないの??いいの?ヤツがきっと・・」
泉の腕を引っ張り、無理矢理外にでた2人。
「ちょっと!!どういうこと?あんなんじゃ、市川のヤツ!!」
カッカする泉。
「そんなにHOTになるなよ。泉。ヤツは重大なミスを犯したんだから。」
「重大な・・ミス??」

さぁ、読者諸君。そろそろKの登場だ。
思考回路はDのものからKのそれへ。
Dが手に入れた情報により、Kの洞察力がさえ渡る。
Kの体内の光回線にエナジーがみなぎる。
「後は頼んだぜ、K。俺は一休みさせてもらう。」
今、Kが全ての謎をひとつにまとめ真実を導き出す。

「泉君。みんなをサーカスの楽屋に集めてくれないかい?」

事件2 聞き込みと視力  了

次回予告
多重人格ディティクティブ K 【No.1 ファイル サーカス団長殺人事件】
事件3 大団円

あらゆる角度からこの事件を調査した結果、Kは犯人を市川とにらんだ。
しかし、彼が使ったトリックとはいかなるものなのか?
果たして、Kは事件の迷宮入りを防ぐことが出来るのか?
市川と事件のつながりを確信したKは、ついにそのトリックを暴く!
市川を追いつめるKと泉。
事件解決の日は近い。

お楽しみに!

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