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第一部 12話 【ショウちゃんが語る犬星猫星のこと。】
[ハラベエさんの犬星☆猫星(第一部)]
2010年2月16日 20時58分の記事

ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第一部 12話 【ショウちゃんが語る犬星猫星のこと。】
更新しました(`・ω・´)ノ

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ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第一部 12話 【ショウちゃんが語る犬星猫星のこと。】

 公園の陽だまりでの語らいは延々と続きました。
 近所のコンビニへの往きかえりに目撃したEちゃんによると、ハラベエさんとショウちゃんは爆睡状態で、声をかけるのをためらったそうです。
 おそらく二人は声をかけられても、自分たちの世界にどっぷりつかっている状態で、反応はしなかったでしょう。
 ショウちゃんから脳波で送られてくる情報は、壮大な宇宙の叙事詩でした。
『ハテシナイウチュウノキボカラスルト……ワタシタチノホシナンカ……トルニタリナイチッポケナソンザイデス』
 そうです……宇宙の一地方、いうなればローカルな小さな星に過ぎません。
『ソノチイサナホシ……ソレゾレニショウチョウヲクリカエシテキマシタ』
 ショウチョウ?……ああ、消長か……盛衰を繰り返すということか。
 どうやら、脳波の会話にも慣れてきたようです。
『ヨンジュウオクネンニチカイチキュウノレキシ……クリカエスショウチョウノアイダ……ヒトノソンザイハツネニチュウシンニアリマシタ』
 それはどうして?
 応えるショウちゃん。
 そのカタコト風の言葉を、既にハラベエさんは自分の言葉として消化し表現できるようになっています。
 以下は、ハラベエさんが理解した、ショウちゃんの話の概要です。

星の消長によって繰り返された生命体の誕生と絶滅。
しかし、生命体のDNAは、星の胎内深く保存されます。
そして、再び芽吹くとき誕生する生命体に与えられるそのDNAによって、すべてが繰り返されることになります。
したがって、人の星はあくまでも人の星、流入した外来種もそれぞれ同じDNAを引き継ぐのです。
ただし、その生命体の進化には違いがあります。
今で謂う原始人の生活のまま終わったとき。
科学が目覚しい発展を遂げたとき……これは宇宙への展開が行われたことを意味します。
逆に、飽くなき欲求が、母体である星を痛めつけ、絶滅の時期を早めたときも……これは地球という星の近い将来を示唆しているようでもあります。
さまざま形態の誕生と絶滅が、繰り返されてきました。
しかし、星によってその周期に違いがあります。
犬星と猫星を例にとれば、ふたつはほぼ同じような周期ですが、人の星はその間に誕生と絶滅を頻繁に繰り返しているのです。
頻繁にといっても、何万何十万年単位ですが……。
この周期の差から、犬星猫星と人の星との絶妙な綾が織りなされることになります。
ある終末期、近い将来の絶滅を予知して、人類生き残りのプロジェクトが立ち上げられました。
ノアの箱舟の宇宙版です。
現在よりはるかに進んでいた宇宙科学が、その計画を可能にしました。
巨大な宇宙船が大量に建造され、矢継ぎ早に宇宙へ旅立って行ったのです。
乗り組んだのは若い世代が大半で、中年以上は特殊な技術者以外、地球で送る余生を選びました。
残念ながら、残留した人々のその後も、宇宙船の飛行記録も残っていません。
あるのは、犬星と猫星に到達した二つの宇宙船からの情報で……しかもたった今、ショウちゃんからハラベエさんにもたらされたのです。
気の遠くなるような話ですが、それこそ絵空事などでは決してないでしょう。
降るような満天下の星空を見上げたときのおののき。
広大無辺な宇宙の中にあって、ちまちまと生きている己が、いかにも矮小な塵のような存在でしかないと思い知らされます。
同時に想像力も羽根を広げます。
何光年何万光年のかなたから光を送り届けてくる無数の星の中には、地球とまったく同じ星があって、オレとまったく同じオレが生きているのじゃないか。
しかも、数限りのないオレガ、それこそ星の数ほどいるはずだ。
?……!
ショウちゃんの話は、宇宙での時間の経過について、それこそ天文学的な数字の連発になっていましたので、数字の苦手なハラベエさん、つい勝手に横道にそれてしまいました。
そうだ!
いろんな人生があるだろうな……いや、全部同じシナリオで生きているとも考えられるんじゃないか……確か、未来にタイムマシンで旅をして、ギャンブルの結果を先に知って大儲けの話もあったっけ……そうですそうです、こっちは宇宙中のオレに呼びかけて、競馬やロトの結果を……ヒッヒッヒ……?……時間が同時進行だとすると……無理か。
『モゴモゴ』
突然ショウちゃんが音声を発しました。
ハラベエさん、我に返ります。
ショウちゃんの脳波が語りかけてきました。
『チマチマシタコト……カンガエテマスネ』
 ごめんなさい、お見通しなんですよね。
『リカイムズカシイハナシ……キカナイ……ワルイクセ』
 はい、なんだか担任の先生みたいになってきたな……いえいえこっちの話で……どうぞ続けてください。
『モウオワリマシタ……ツギヲハジメマス』
 お願いします……先生。
『イヌボシネコホシニトウチャクシタウチュウセンニツイテ……ハナシマス』
 待ってました!
『オナジヨウナケイカ……ココデハイヌボシノハナシヲススメマスガ……ネコボシモオナジ……オモッテクダサイ』
 わかりました。
 ショウチャンは新しい展開を伝えてきました。 
犬星と猫星は共に、いくつかの海が散在している一つの大陸でした。
大気の組成も地球とまったく同じです。
北極と南極を結ぶ線を軸にして、自転しているのも同じなら、表面の風景も地球と違いはありません。
ただ陸地が海面に比べて圧倒的に広いのです。
例えば地球儀の海面を塗りつぶして、すべての陸地をつないだ地図を想像していただくといいでしょう。
地球からの宇宙船が到着した頃、犬星はいわば戦国時代、戦いに明け暮れていました。
在来種の犬類と外来種の動物は、長い間平和に棲み分けていました。
もちろん弱肉強食の世界ですが、食の連鎖のバランスがうまく保たれていたのです。
しかし犬類に、自分たちはこの星で最も優れた種であるという意識が芽生え始めた頃から、徐々に変化していきました。
征服欲が生まれてきたのです。
犬類は、、他の動物のテリトリイを侵略し、勢力を広げていきました。
それはもう、生きるための捕食ではなく、自らの力を誇示するための殺戮に過ぎませんでした。
長い長い殺戮の歴史は、犬星の動物たちを絶滅の淵に追い込んでいました。
そして……殺戮の牙は、同じ種の犬類に向けられるようになります。
何万年にわたる犬類の空しい共食いの繰り返しは、いまや終局を迎えようとしていたのです。
宇宙船で着いた人類は、地球に酷似したこの星を、第二の地球とすることにしました。
その旨を、地球および他の宇宙船に向けて発信しましたが、まったく反応がなく、諦めかけたときに入ったのが猫星から通信のみだったのです。
この通信で、猫星も犬星と同様な歴史を繰り返していることがわかり、お互いに意見を交換し助け合う協力体制をとることになります。

人類がまず始めたのは、衣食住の確保でした。
地球とまったく同じ環境ですから、持ち込まれた種苗は収穫のときを迎え、
畜産漁業も順調に、それぞれの故郷に似た町並みが整備されていきました。
乗ってきた巨大な宇宙船を解体して、二次的な目的の設計図どおりに組み立てなおし、この星の資源と併せて多種多様な研究設備を建設しました。
そして、同時に疲弊しきっていた、先住種の犬類を始めとする全動物の救済にあたったのです。
宣撫工作といいますか、平和を愛好するよう自覚させる洗脳にも成功。
は幾たびとなくを変え、悠久の時が流れます。
犬類が、元来この星の固有の種であったと知って、人類は意思を明確に伝える方法を開発しました。
『ソレガイマオハナシシテイルホウホウデス』
 なるほど……。
『チキュウノヒトカラワタシタチ……オシエラレタノデス』
 そうか……では、人間は誰でも犬類と会話ができるんだ。
『デハアリマセン……イマノダンカイデハ……アナタノヨウナトクベツナヒトダケデス』
 !……特別な人?……私がどう特別なんだろう?
『ソノケンニツキマシテハ……アトデセツメイシマス』
 どうして?
『モノニハジュンジョトイウモノガアリマス』
 そうですか、じゃあなるべくマキでお願いします。
『わかりました』
 陽は西に傾き、陽だまりは移動して、ベンチはだんだん長くなる樹木の陰に覆われながら、ショウちゃんとハラベエさんの会話は続きます。

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〜OGUNI・WORLD〜
地域:大阪府
性別:男性
ジャンル:趣味 漫画・小説
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シーズの愛犬BEEとハラベエを取り巻く生き物たちとの、
出会いと別れを描いた感動、ファンタスティック・ノベルです。

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