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水の回廊〜フェアリィハミング・前編(コードLP第二部9話)
 
2020年9月25日 4時10分の記事

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「ウリュさん」
「あたくしの泳法を目撃なさって!」

「ステンねーさま!」
「そこから底が深くなるからダメですよお!」

ザッブーーン!!

「あーーっ!!」
「ウリュ副長、何で艦長を止めないのですか!」

「皆さん、ステンレス艦長を拾いに行きます!」
「早く格納庫にある海底潜航マルに搭乗するわよ!」

「ああ、イチゴちゃん」
「この船にはそんなものは搭載してません」

「ウリュさん!」
「呑気に何コイてんですか!!」

「良いのですよ」
「彼女は海とコンタクトを試みるんです」

「はあ?」


惑星チーズ。

西側大陸の海原。辺りは海しか見えない。海鳥が数十羽上空で旋回しながらこちらを伺っている。エサに成るか見極めている様だ。
海の海抜は、数百メートルはある。波は、なぎ。穏やかだ。乾いた海風も気持ちが良い。

私たちが乗艦するシップ「デンライ」は宇宙を飛ぶ軍艦でなく。
ただの海上船。軍艦で巡洋艦クラスだが。
この時代にこんな不便なものは、航海訓練用の船でしかない。
航海士候補生たちは、ほとんど擬人のLP姉妹が占める。

「時代は変わったのよ、ウリュさん」

ステンねーの口癖・・・

「あー、ステンねー今頃、海底で海のサチ食ってるのかあ?」
「艦長が航海訓練のスケジュール無茶苦茶にしてますけど」
「コンバットフライ五式2型を受領しに行くのに・・・」
「ブルーさんが怒るよ・・・あ、来た来た」
「ブルーさん」
「ステンねーさまが遊んでるから待ってて下さいね」



ゴボゴボ・・・

擬人たるロボットは宇宙人と違って酸素を必要としない。
食う寝るヤルを放棄できる利点がある。
だから宇宙空間でも海中でも、それこそスッポンポンでも可。
かと言って全裸では、あたくしも恥ずかしいから水着着用。
淑女らしくミントブルーのワンピース水着。サービス不足ですわ。
それにしてもこんな水圧が高い深さまで潜れるのは・・・

目を開きっぱなしで見ているあの向こう。
海底の砂地に何かが這っている・・・ウミヘビ?
いや違う。
もっと大きな・・・意思が見える。かたくなに守り続ける心が。

何一つ潜水装備を身に着けず潜るあたくしの腕と足を、何かが感じ取っている。

「目視カメラを望遠しても見えない・・・変ですわ」

「!」

何かがあたくしの脳回路の防壁を一瞬で突破してきた。外部侵入者用アンチウイルスが全て削除された。
脳回路防壁と思考プロセスを凌駕するこのプログラムは。
この果てしのない純度ルーチンは一体・・・


「あ・・・」

意識が飛んだ。気が何処かへ。クリスタルソウルが飛翔する。



「はい」
「皆さんいいですかあ?」

「良いでーす!」

「待って下さい、ユミは良いではなくて良くないですよ」

「ちょっとユミさん」
「その教科書は去年のですよ?」

「子ザルさんもあっちへ行ったのに」
「何で既にこっちに馴染んでいるのですか」

「ひっどいですうぅ!」
「サダコは子ザルじゃありません!」
「プンスカ・プンスカ!!」

「また今日も凸凹コンビの芸が炸裂していますね」

「あっはははは!」

「今日の歴史の授業は、この世界の宇宙についての勉学です」
「まず歴史教科書の一章黄色三色ページを開いて」

何この部屋は?
十代くらいの子供たちが大勢で勉学を積んでいる最中だわ。
少しの男と多くの女の子供が大人の師に伺っている。
惑星チーズの現実と少し違う・・・
いえ、それは確認を取らなければ解らないですわ。
制服と呼称する統一衣服が輝いて見えるのは、気のせい?



風の音・・・

違う光景に変わった。

水色の空と白色の雲。風が強すぎるのか、上空が全て遥かな前方の空へと吸い込まれてゆく。
刻一刻と空の景色が模様が色が変化を続ける。
見えていない前の一点が呼んでいる。

風が吹く。

「なんて気持ちがいいの?」

涙が流れ出す。何で?
黒い瞳から溢れ出した雫は頬を伝う。口の中へと入って来た。

「塩からい・・・苦い」

重力と酸素がある。

前方に存在するのは何?
ブラックホールのように全てを飲み込む自然?

「逆らう事が許されないのなら・・・受け入れてみるのかしら」

立ち上がって歩き出す。
乾いた追い風がまるであたくしを招き入れる如く吸い込んでいる。


「見えてきたわ」


あれは・・・

旧世界。
コンクリートのビル群の市街地は荒廃して、白い瓦礫の街。
血で黒く染まったアスファルト道路の上で。

誰かが泣いている。

その存在の目の前まで歩く。

長袖長ズボン、深緑とクリアイエローの科学素材のお洋服を着る。
子供の男の子。顔が確認出来ない。

「ぐしゅ・・・ぐじゅ」

「・・・・」
「ねえ?・・」
「あなたは何でこんな処で一人で泣いているの?」

「ずず・・・」

涙を両腕で拭いて、その子供が顔を上げる。
顔が涙でぐちゃぐちゃなのに・・・笑顔で笑っている・・・

「うん・・・はぐれちゃったんだよ」

「はぐれたって・・・ここの地名は何ですか?」

「ホワイトワン・シティ」
「ミサキさんはそ〜言ってた」

「ミサキ?」
「・・・遥か昔に存在した擬人のLPのことかしら」
「データベースに記録があるから・・・検索」

「おね〜ちゃんも擬人さんだね」
「真っ白いから幽霊と勘違いしたぞ?」
「何処から泳いで来たの」

「ええ、あたくしはステンレス・ノーマット」
「擬人コードLP8000JJ・・・ですわ」

「私はタイタン」

「まあ! あなた女の子だったの」
「今まで擬人たちと行動を共にしていたのですね?」

「うん」

あ、あれ?

「あなたの名前をフルでお願い」

「サダコ・タイタン」
「ジュニアハイスクールの優等生だぞ?」

あ、あれ?

まさか・・・

「ノリミィ・タイタンのご先祖様?」

「サダコだよ、サダコ・タイタン」
「タイタンの姓には由来があるんだぞ」

「ここでは血縁を調べる事は出来ないわ」

「何コイてんのだこの白い女は」
「良く聴くのである」

「遥かな異次元宇宙には、衛星タイタンと呼ぶ星があったそ〜な」
「そこにはその星系を統治する議会が所在した」

「さ、サダコちゃん?」

「しかし同じ星系の兄弟惑星アースの住人、物質宇宙人には理解が出来なかった」
「眼に見える世界が全てだと信じて疑わなかったのだ」


この子・・・何でこんなことを言えるの?
子供のイタズラではないよね。

「ステ猫!」

「きゃあ!」
「びっくらコイたわ。あたくしが猫と呼ばれるなんて」

「いいかいステ猫、ここを破壊していった機械化師団はまた来る」
「逃げて隠れてもレーダースキャンと暗視レンズに見つかるぞ」

「え、何よそれ」
「あなたは子供でしょう、武器を持って戦うつもりですか」

「是が非だ、殺さねば殺される」
「暴力を好む物質には、心を教える近道がないからね」

「あなた、ど〜みてもガキなのに大人に見えるのは何で?」

「来たよ」


ゴウン・・・ゴーー・・・


本当に来た!!

「ほれ・・・レーザーライフルだぞ」「受領せよユキンコ」
「基礎ゲインはチャージ済みだから、リロードパックもあるぞ」

ドッシ

「な、なんやこれ?」

遥か昔のレーザーパルス・ライフルだ。
攻撃力と速射性連射性すべて劣る、ゲイン回復に時間が掛かる。

「こんな装備で戦ったの? 昔の人たちは」


う〜んと・・・

確か、海上巡洋艦デンライの甲板から海へ飛び込んだのです。

それからどした?

ミントブルーの水着を着ている。何か恥ずかしくなってきた。


ドンドンドン!!

ガラガラガラ・・・

地響きと振動が近づいてくる。
数が多い。ふたりのパルスライフだけで戦える訳無いわ。

逃げなきゃ!

「もう回収のシップは来ないよ」

「はへ?」

言いながら彼女は瓦礫の壁を盾にしてレーザー射撃をしている。

「ちょ、ちょっとあなた」
「シールドもなしに、死ぬ気なの?」

「死ぬ気なら戦ったりはせんぞな!」
「ほれ、ナパーム弾と電子グレネード」
「後ろの郵便ポストの中に、無反動二重レーン砲が隠してある」

「ゲインチャージがバカッ早だから気を付けよ」


この子は一体何もの?

「あなた、さっきはなんで泣いていたの!?」

照射音と破壊音の中で絶叫。
レーザー帯が無数に飛んでくる中、残骸の壁に隠れて聴く。
あたくしは耐衝撃エネルギーフィールド・愛ウェイに守られているから平気。

「ひとりの時は泣くものだよ、ステン」

「・・・・」


ライフル射撃とゲインチャージの為に隠れながら女の子は叫ぶ。

とにかく、
この子がノリミィの先祖なら、死なせる訳にはいきませんわ。

まだ明るい空の下、白い瓦礫の街で破壊活動ですわね。
にしても、まだ白く細長い雲と薄い青空が、ひたすら北へ向かってものすごい勢いで流れてゆく。

目指す一点はこの子じゃなかったの?




後編へ続く


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