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第1話もしくはプロローグ(になる予定)
[novels☆]
2008年5月5日 20時5分の記事

僕のコンパスを狂わせた人が僕の前に現れた日の話をしよう。

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腕時計を見ながら、僕は家路を急いでいた。
午後5時27分58秒
時計から顔を上げた瞬間に、僕は雑踏の中から突然現れた若い男に声をかけられた。
「なぁ」
騒がしいのに、はっきりと聞こえる静かな声で彼は問う。
「自分自身は、自分自身だと、確信できる?」
映画の1シーンみたいに、人の流れが残像のように見えた。
「できるさ」
続けて、彼は言う。
「じゃあ、君の記憶は本当に君の記憶かい?」
突然声をかけておいておかしなやつだと思いながら、僕はまた答える。
「そりゃそうだ」
ふむ、という顔をして彼は僕に言った。
「人に植え付けられた記憶じゃないといいね」
直後、彼の姿は雑踏の中に掻き消えてしまった。
腕時計を見る。

午後5時27分50秒

僕の中で何かが狂い始めた。

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