くる天 |
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プロフィール |
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飯島浩樹 さん |
シドニー通信員の『豪リークス』 |
地域:海外 |
性別:男性 |
ジャンル:ニュース 世界情勢 |
ブログの説明: オーストラリア在住 某民放局シドニー通信員からの情報。 |
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アジアカップと国際的アジア人 |
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2011年1月30日 13時56分の記事
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日本の劇的な勝利で幕を閉じた2011サッカーアジアカップ決勝戦。オーストラリアに居を置く者としては、豪州国民にはいささか申し訳ない気持ちもあるが、半ばPK戦にもつれ込むことを覚悟したところにまさかのゴール。豪州サポーターを前にして笑顔で喜んでしまった。
キックオフは、シドニー時間(豪東部夏時間)で日付が変わって30日(日)の午前2時。とんでもない時間にもかかわらず、シドニー市内のスポーツパブには多くの人が集まった(すべてがサッカーファンというわけではないが..)。
試合開始から押し気味にゲームを展開する豪州代表。今では大ベテランとなったエースFWキューエルが、初っ端からエンジン全開。バンバンシュートを日本ゴールに放ち、それをGK川島がスーパーセーブすると、悲鳴のような叫び声がパブ全体に響き渡った。
日本のスポーツニュースでは、このアジアカップ決勝の話題で持ちきりだったようだが、29日の土曜日の夜、オーストラリアでは全豪オープンテニスで素晴らしい活躍をした1人のアジア人女子選手に注目が集まった。
中国人として初めて4大大会シングルス決勝に進出した李娜だ。
サッカーアジアカップ決勝戦は90分で勝負がつかず、15分ハーフの延長戦に突入。 延長戦も後半に入り、両軍さすがに疲れの色が見え始めた。 老獪なキューエルはもうピッチにはいない。 2006年ドイツ開催のワールドカップで日本を苦しめたケーヒルも往年のスピードと鋭さはない。 若手とベテランの混合チーム豪代表、さすがに集中力が途切れ始めた。
そこに我慢に我慢を重ね、果敢に左サイドに駆け込みながら、鮮やかなパスを入れ続けていた長友の蹴ったボールがドンピシャのタイミングで相手DFのマークが外れた李忠成に合う。 李の放った左足ボレーは、ゴール左隅に吸い込まれ、名GKシュウォーツァーが一歩も動けなかった。
頭を抱え込む豪サポーター。試合後は時間も時間であったが、三々五々と静かに家路についた。 試合途中酔っ払った若い女性客が汚い言葉を発したが、ボーイフレンドが彼女を静かになだめていた。
天下分け目の大一番にもかかわらずイエローカードはわずか豪側の3枚のみ(1枚は異議によるもの)で、日本の警告はゼロだった。どぎついラフプレーはほとんどなく、日本の綺麗すぎる試合運びに(ちょっと物足りないが..)豪サポーターもフェアープレーで戦った両軍を称えているようだった。
試合後フェースブックなどのコメントを見ても、捕鯨問題のときのように日本を人種差別的にののしる言葉などはなく、逆に豪州の決定力不足を嘆く声が多かった。
ところで、同じ夜(正確に言えば土曜日の夜だが..)オーストラリア国民の目を釘付けにしたスポーツイベントがあった。 毎年この時期メルボルンで開催される全豪オープン女子シングルス決勝戦だ。 オーストラリアの“レジェンド”選手レイトン・ヒューイットの元婚約者としても豪では有名なキム・クライシュテルスに挑んだのは、中国人として初めて4大大会の決勝に進出した李娜。
今大会の大本命だった第1シードのキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)を準決勝で破り、ちょうど中国の旧正月が来週2月3日ということもあって、地元メディアでは連日CHINESE RISING STARとして大きく取り上げられた。
この李娜、胸元にハートと薔薇の刺青を入れ、上海で行われた大会では、「加油!」と大声で声援する中国人ファンに「シャラップ!」と英語で怒鳴るなど、かなりユニークな人物であることでも有名だ。
この日の試合でも、観客席で大きな声で“話す”中国人に気が散らされたと、主審に中国人観客を黙らせるよう訴えた(スゴイ…)。
決勝では、クライシュテルスのパワーの前に惜しくも敗れた李娜選手だったが、大勢の観客の前での表彰式のスピーチで、物怖じせず堂々と英語で謝辞を述べた。
その中で、観客席にいる中国系(?)ドイツ人の夫を指差し冗談交じりに「デブでも醜くても貴方についていくわ。I LOVE YOU!」と言い放ったのだ。
何という豪傑!大和撫子の伊達公子や杉山愛では絶対に言えないセリフだ。 こういう大胆さが、大陸的思考を持つ中国人の“強さ”なのかもしれない。
サッカーではアジア王者の座を守った日本だが、所詮アジアの王。
日本選手が世界の最高峰でトップになるには、いい意味で“厚顔無恥”で、大陸的“心臓”を持つ選手の育成が必要なのかもしれない。
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