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原発ゼロの国NZの地熱発電
 
2011年12月29日 5時34分の記事



第7回 原発ゼロの国NZの地熱発電
※日豪プレス2011年8月号掲載http://nichigopress.jp/nichigo_news/goleaks/25946/

東京電力福島第1原発事故後、太陽光などの再生可能エネルギーの開発に注目が 集まっているが、日本と同 様地震国のニュージーランドは、原発を持たず地熱な どの再生可能エネルギーで 電力をまかなう政策をとっている。環境に優しく安全な発電システムとして有望視される地熱発電をニュージーランドではどのように推進しているのだろうか ?

◇森の中の地熱発電所

牧草地と針葉樹林を通るなだらかな勾配の1本道を登り切ると、前方に吹き上がる白煙が見えてくる。工場から突き出る噴煙とは違い、水分を含んだ雲のようにふんわりと湧き上がるその煙は、ニュージーランド最大規模の地熱発電所から出る水蒸気だ。

ニュージーランド最大の都市オークランドから車で約4時間。NZ北島のほぼ中央のタウポ火山帯に位置するワイラケイ地熱発電所は、1958年に運転を開始した世界で2番目に古い商業用地熱発電所で、出力17万キロワット、約17万世帯に電力供給が可能だ。

発電所敷地内に張り巡らされた全長70キ ロに及ぶメタリック・シルバーのパイプの中には、摂氏約200度の熱水と蒸気が流れているが、特殊加工により外側に熱が放出されることはなく、実際にパイプに触らせてもらうと、ほどよい温かさで頬を付けることさえできた。



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地下1,000〜3,000メートルにあるマグマ溜まりに熱せられた地下水と水蒸気でター ビンを回転させ発電するこの地熱発電は、 福島第1原発事故後、ますます脚光を浴びる 発電システムだ。地球内部の熱の移動や放 射性物質の崩壊により生み出される地熱エ ネルギーは、膨大かつほぼ無限。燃料を地 上で燃やさないためCO2の排出量は極めて 少なく、発電に使った地下水は冷却され再 び地下に戻され、原発のように危険な使用 ずみ燃料を出すこともない。また、太陽光 や風力発電のように天候や気象条件に左右 されず24時間電力を安定供給することが可 能で、まさにいいことづくめの「再生可能 自然エネルギー」だと言える。

今年2月に発生したクライストチャーチ大 地震の記憶も新しい地震国ニュージーラン ドは、国内に原子力発電所を1基も持たず、 水力や風力などの再生可能エネルギーで電 力の7割以上をまかなっていて、そのうち地 熱発電は総発電量の13%を占めている。し かもNZ政府は、2025年までに国内電力の9 割をこれらの再生可能エネルギーに転換さ せるという目標まで立て、新しい地熱発電 所の建設も続々と推し進めている。

また、ワイラケイ発電所周辺には、日本の富士電機が地熱タービンを設置した単 機容量世界最大のナアワプルア地熱発電所 や、東芝が発電設備を受注した2013年開業 予定のテミヒ地熱発電所などもあり、多く のニュージーランドの地熱発電所に日本企 業の高度な技術が採用され、多大な貢献を している事実に少々驚かされた。同じ火山 国日本における地熱発電所の建設は、遅々 として進んでいないからだ。


◇先住民マオリも協力
写真:復元された先住民 マオリ族の温泉場

環太平洋火山帯に位置する日本の地熱資 源量はNZをはるかに超え、アメリカ、イン ドネシアに次いで世界第3位の2,347万キロ・ ワットで、原発20基分に相当するという。 しかし、日本国内の地熱発電所は大小18カ 所のみで、総発電量のわずか0.3%しか占 めておらず、2000年以後1カ所の新設もな い。

日本の火山地帯の8割が国立公園に指定 されているため開発が困難で、温泉源の枯 渇を心配する周辺の観光業者の反対などが 地熱発電所建設を推進できない主な理由だ というが、状況はニュージーランドでも大 して変わらない。山を切り開いてパイプを 張り巡らせたワイラケイ地熱発電所の景観 は、お世辞にも“美しい”とは言い難いし、発 電所の建設当初は、地元先住民マオリ族の 反対などもあった。

ワイラケイ地熱発電所の隣に「ワイラケイ・テラス」という温泉リゾートがある。リ ゾート周辺にはかつて先住民マオリ族の戦 士が傷を癒した「テラス」と呼ばれる河岸 段丘状の天然温泉があったというが、発電 所の建設による地盤沈下などで「テラス」 の大部分が消失してしまったという。しか し、今では珪石(Silica)の黄みを帯びた乳 白色の見事な「テラス」が復元され、真っ白い湯けむりの中から幻想的なその姿を現している。

発電所は、汲み上げた温水を地下に敷設したパイプを通して“お隣さん”のこのリゾー トに提供し“共存共栄”を図っているのだ。先 住民の歌と踊りのパフォーマンス・ショーも 行うリゾートの共同経営者で、マオリ族の ラエウィンさんは、「地熱地帯にはマオリ が聖地と崇める場所もある。心の奥底では発電所に反対しているが、電力会社とお互 い協力してやっている」 と、我々に話してくれた。

写真:温泉リゾート「ワイラケイ・テラス」

前回このコラムで、オーストラリア北部 のウラン鉱山開発に反対する先住民アボリ ジニの人々の話題を取り上げたが、NZでは 政府や電力会社が先住民の理解と協力を得 ながら発電所の建設などを進めている。発 電所を運営する電力会社は、近隣のエビの 養殖場や地元農家の温室、木材の乾燥、ま た病院の暖房などへの地熱の直接利用にも 協力している。

◇原発ゼロの国NZ

ニュージーランドが地熱発電など再生可 能エネルギー開発を積極的に推進している もう1つの背景に、この国が堅持するユニー クな「非核政策」がある。

1950年代からアメリカやフランスなど が南太平洋で繰り返し行った核実験は、ニュージーランド国民にとって脅威となり、当時の国際平和運動の高まりと相まって「反核」はNZ国民の悲願となった。

1985年には、フランスのムルロア環礁 での核実験に反対した環境保護団体の船が オークランド港に停泊中、仏の諜報工作員 によって爆破される事件が起き、NZ国民 の「反核」感情はますます高まりを見せ、 1987年ついに世界初の「非核法」が成立した。

NZの「非核法」は、外国の原子力艦船 の入港を含む自国への核の持込を一切禁止し、原子力発電所の建設も認めないという 徹底したもので、ワイラケイ地熱発電所から10キロ南の街タウポの住民に話を聞く と、全員が「原発反対」「非核政策賛成」 と答えた。

日本で起きた原発事故後に質問して「原発賛成」と答える人を探す方が苦労するとは思うが、アメリカとの軍事同盟に亀裂を生じさせてまでも毅然と「核」を拒絶したNZ国民の気概に、日本人として頭が下がる 思いがした。

気さくに我々のインタビューに応じたタウポのリック・クーパー市長も「NZ国民は “核エネルギー”を好まない。だから地熱など 別の方法で電力を得る必要がある」と、誇らしげに語った。

「核」の脅威から軍事大国の「核の傘」を飛び出し、「核の平和利用」とされる原発にも「ノー」を突きつけたニュージーラ ンドは、行く先乏しい化石燃料依存に終止 符を打ち、地熱などの再生可能エネルギーで、国内電力の大半をまかなうという壮大な挑戦を開始した。

羊の数が人間より多いと揶揄される人口430万人の農業国と人口1億3,000万人の工業立国日本を単純に比較するのは愚鈍の沙汰ではあるが、“フクシマ後”の世界がこの南半球の島国の動向に注目していることも確 かなのである。

※写真付の記事はこちらで
http://nichigopress.jp/nichigo_news/goleaks/25946/

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