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10 ローフィス 9
[★二年目 連載]
2010年10月5日 7時36分の記事





今回長いです。途中切れませんでした。
実際、ローフィスの思いの丈を綴ると文ががんがん出て来て、彼の思いの深さを、作者の方が思い知らされます。
キャラの普段口にしない独白に成るといつも、作者の筆が追いつかない程走ります。もし隣で語られたら「もっとゆっくり!」と叫んでた事でしょうね…。

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 宿舎に戻る途中に、途端に始まる。
シェイルと過ごすと決まってその後、暫くシェイルのあの甘い喘ぎと、真っ白なしなやかな肌の感触、くねる姿が脳裏に繰り返し現れて離れない。

ローフィスはどれだけ歩き、夜風が冷たくても頭に浮かび続けるシェイルの肢体に心震え、自分を叱咤した。

どれだけ自分がシェイルに惚れ、囚われてるか。をこの時間が一番、思い知らされた。

宿舎の扉を開け、自室に駆け込む。
扉を閉め、はあはあ…と顔を下げて肩で息を吐く。

シェイルが、生きて幸せに成ってくれたらそれだけでいい。
義兄としてのそんな思いを嘲笑うように、甘やかな裸のシェイルをずっと自分のものにしたい。

そんな激しい思いは凶暴な獣に変わり、喉の渇いていた者が少し水を含んだ途端喉の渇きを思い出し…強烈な飢えに暴れ狂って水を欲してる…そんな風に、自分の事を感じる。

「…シェイルを、抱いたのか?」
落ち着き払ったその声に顔を上げると机の前にオーガスタスが、椅子に掛けてこちらを覗っていた。

不機嫌に顔を背け、つぶやく。
「居たのか…」
真っ直ぐ暖炉上の水差しに向かうローフィスに、オーガスタスは思い切り両手を広げる。
「こんなデカい俺の図体が目に、入らないんじゃ想像は付く」

ローフィスは一気に水を飲み干し、頭の中の…情事の時の艶やかなシェイルの…甘やかな美貌を振り払おうと試みて、結果失敗した。

オーガスタスは顔を歪める親友の表情に吐息を吐く。
「で?ローランデに逢ったのか?」

ローフィスは気づいて顔を、上げて親友を見、その時ようやく自分の馬鹿さ加減に気づく。
「先にシェイルに逢いに行ったのが敗因だ」

オーガスタスは、そんな当然の事を今更。と語気強く促す。
「ローランデには?」
ローフィスは一つ、吐息を吐くとつぶやく。
「同室のヤッケルが伝えた」

オーガスタスが、頷く。
「お前は会って、無いんだな?」
ローフィスはようやく親友を、真顔で見つめる。
途端、オーガスタスは苦笑する。
ローフィスは、言わんとする事が解って顔を、背けた。

ローフィスの、情けない吐息を耳に、オーガスタスは笑って椅子を立ち上がり、滅多に見せない厳しい表情の親友の、肩を抱く。
「そんなに余裕無い程惚れてんのか?」

顔を背け、出す言葉すら無い親友の様子に、それでも笑顔を浮かべ、陽気に誘いかける。
「至上の幸福は袖にして、現実のくだらなさを思い出しに行こうぜ!」

ローフィスは肩を抱いて強引に部屋の外へと連れ出す、大柄な赤毛の親友を、見上げ睨む。
「女を、抱けって?」

「最高にくだらなくて、足も地に着くぞ?」
そう笑う、オーガスタスの朗らかな笑顔を見つめ、ローフィスは不本意ながら、親友の良く知る対処法に、頷いた。

「巨乳が抱きたい」
言うとオーガスタスがバン!とその背を叩く。
力自慢の奴の喝。は流石に痛かったが、それがエールだと、知っていた。

“しっかりしろ!
自分に流されず、いつかシェイルの結婚式に、胸張って兄として出席するんだろ?”

そう言った奴に、いつか聞いた。
“そんな日が来ると、お前は思うか?”
がオーガスタスは肩を竦めた。
“俺に解るか?
お前次第だ。
お前が自分の欲望と独占欲を制御し、シェイルが一人前に、成ると信じ続ければいずれそうなる”

ローフィスはただ、頷いた。
吐息が漏れる。
この、自分の中で暴れ狂う、シェイルを自分に繋ぎ止め機会あらば何時でも腕に抱き止め、愛でたい。と切望する獣を、飼い慣らす事を考えると。

オーガスタスはそれを知ってるから決まって煮詰まってると連れ出し、俺好みの金髪巨乳に逢わせ、つぶやく。
「シェイルの代わりは誰にも出来ない。と思い知る、良い機会だが勃たなきゃ相手に失礼だろう?」

それで俺は自分を取り戻す。
まるで妖精のように綺麗な…すんなりとした白い平らな、胸を忘れる為に。

それを独り占めしようなんて馬鹿げた考えだ。
そう自分を諫める為に。
一時の慰めに付き合ってくれる、優しい女の、胸の谷間に顔を埋める。

シェイルの泣き顔が浮かぶ。
“俺を、忘れるのか?”

だってお前を、本当に愛してる。
俺の独占欲で縛り付け、窒息させたくない程に。

シェイルには解らない。
“だって俺に取ってそれは幸福だ”

シェイルは自分が男だと、忘れたい。
けど…俺は誇らせたい…。
そのままの…ありのままのお前の姿を、恥じることなく。

もしお前がいつか、自分が男だと…胸を張ってられる日が来て…それでも俺が欲しければいつだって応えてやる。

でもシェイル。俺は本当は、最高に幸福で辛い。
女に成り代わり俺に抱かれながら幾度も…自分が男だったと思い出す度自分を惨めな出来損ないだと、泣きそうに顔を歪め自覚するお前を抱く事が………。

それしか選択が無く…自分がまっとうな男として生きる道は閉ざされてる。
そんな風に、諦めてるお前を見る事が…。

頼むから…そんな泣き顔はよしてくれ…。
お前にそんな顔されると俺は…たまらなく辛く成る。

人並みの幸福に見放され後ろばかり向いていた。
それでもう、十分なのにまだ…自分を恥じている。

いいから胸を張れ。
綺麗な男で居ろ。
恥じる、事なんか何一つ無い。

ディアヴォロスのような最高な男を跪かせた男として、堂々と胸を張れ。

そして頼むから…女に生まれたかった。そう嘆くのは止めてくれ。
頼むからそのままの自分を受け入れ、愛してやってくれ…。

俺が愛したお前を…決して疎んじたり、しないでやってくれ……。

シェイル、お前は健気で愛おしい…。
俺は死ぬまでお前を愛し続ける。だから…愛してやれ。
本当の自分を。

そのまま…ありのままの…お前自身を……………。

そして…諦めるな!
死ぬ事が生きる恐怖から逃れるたった一つの幸福だと…そう思い込む死んだ心を蘇らせた今…例え男に女の様に抱かれようが、自分が男だと言う事を決して恥じるな!

誰よりも可愛く、何よりも愛しいシェイル。
俺の全部をお前にやる。

だから…胸を張って生きろ!



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つづく。

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