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「多剤耐性伝達とRプラスミド」(挿入配列 IS ・トランスポゾンTn )
 
2016年2月2日 12時57分の記事

薬剤耐性プラスミド
(R因子;Resistance factorまたはRプラスミド;R plasmid)

伝達性薬剤耐性プラスミド(Rプラスミド:drug resistance )



トランスポゾン (動く遺伝子) -近代遺伝学/遺伝学電子博物館
1960年代の後半に、大腸菌などの微生物でも発見され、転置因子 (transposable element ; Tn) と呼ばれた。これら原核生物の転置因子は一定の塩基配列をもったDNAで、大腸菌などの正常の染色体の構成成分として1細胞あたり1〜8個存在している。この因子は染色体に組込まれて存在するので挿入配列 (insersion sequence ; IS) とも呼ばれ、分子の両端に16〜38塩基対の反復した塩基配列をもっている。
「基礎遺伝学」(黒田行昭著;近代遺伝学の流れ)裳華房(1995)より転載



   ・・・・・・・・・・



細菌の逆襲 ヒトと細菌の生存競争』1995 吉川昌之介

(第三章 魔法の弾丸は今) (2)謎の赤痢菌 (P171〜189)


多剤耐性伝達現象の発見は 多剤耐性という性質が感受性菌に一挙に伝達されうるものだということを明白にし…引き続き 主として日本において多剤耐性遺伝子を伝達するRプラスミドの研究が進展…欧米の研究者も急ぎ参加し Rプラスミドの研究は世界中に広がり…結果 耐性菌問題という立場からいえば 現実の病巣に由来する耐性菌の発生機序としては 突然変異と選択よりも プラスミド性のもののほうが重要であることが認識され

他方 多剤耐性伝達現象の発見は その後のRプラスミドや病原性プラスミドの研究 さらに遺伝子操作技術におけるベクターや制限酵素など バイオテクノロジー時代の幕を開けさせた契機の一つとなった  P172〜176





【多剤耐性伝達とRプラスミド】

(R因子とはRプラスミドの古い名前)その分子としての本体が確定したため 因子とはいわず 以下プラスミドという

プラスミドは 染色体とは別に 染色体に比べ比較的小さなDNAで その細菌の生存に必ずしも必須ではない性質に関する遺伝情報をもち それ自身を細胞内に保持し 一定の調節された速さで自己複製し 分裂に際して娘細胞に分配し遺伝する能力を備えた遺伝体

いわゆるレプリコン(固有の自己複製能力をもった遺伝体)としての能力を備え 多くは環状であるが稀に線状のものも存在


プラスミドの中で、抗菌剤に対する耐性を決定する遺伝子をもち、細菌間の接合によって伝達する能力があるものを、Rプラスミドと最初は定義した。後になって、接合による伝達能、すなわち性因子の性質をもたないものもあることがわかった。これを rプラスミドという人もある。 rプラスミドそれ自身による伝達能はないが、共存する性因子の助けを借りて受容菌に伝達することがある。これを動員または可動化という。したがってrプラスミドも、性因子の助けを借りれば他の菌に伝播・拡散する潜在的な能力はもっている。
P176、7




【耐性菌の発生と伝搬】

(a)突然変異と選択
   
突然変異というのは 特に何の処理をしなくてもある一定の頻度で起こり 頻度はきわめて低くわれわれの眼に容易にはふれないはずだが 遺伝情報の変化は表現型の変化を生み

その結果一定の環境において生存の適・不適の関係が生ずるのが普通で 新たに生じた変異体がより適する環境では もとの親株に代わって優先的に増殖してくる…これを選択という

ある抗菌剤に耐性の菌が低頻度で発生したとき そこにその抗菌剤があれば 大多数の感受性菌の増殖が抑えられ、その抗菌剤に耐性の菌が優勢に増殖してくるのはその適例


(b)形質転換

供与菌から純粋な分子として取り出したDNAを受容菌と混ぜると 受容菌内にDNAが入り 供与菌の性質が受容菌に遺伝的に伝達されることを形質転換 transformetion という

淋菌や髄膜炎菌などグラム陰性球菌においては 死んだ菌のDNAが生きた菌に自然に入って形質転換を起こすほど効率がよく 耐性の伝搬にも関与している

形質転換は 肺炎連鎖球菌で最初に発見され DNAが遺伝情報の本体であることを確定するのに役立つ 次いで枯草菌やインフルエンザ菌でも形質転換が行われるようになり さらに大腸菌で成功するに及び 組み換えDNA時代の幕開けに大きな貢献をした


(c)形質導入

高等動植物のみならず細菌にも感染するウィルス…(バクテリオ)ファージ…ファージ感染の解析とファージ核酸の研究が分子生物学の発展に大きな貢献をした

一般にある供与菌でファージを増殖させ それを受容菌に感染させると もともと供与菌がもっていた遺伝的性質を受容菌が獲得することがある…これを形質導入 transduction という 

ブドウ球菌や連鎖球菌などグラム陽性球菌では 形質導入が染色体性抗菌剤耐性やRプラスミドの伝搬に重要な役割を果たしていると考えられている


(d)接合と因子

たとえば大腸菌 K12株において F因子と呼ばれる性因子を細胞質内で染色体に組み込まれていない状態でもっている菌(Fプラス菌-供与菌)と もっていない菌(Fマイナス菌-受容菌)を混合培養すると 供与菌から受容菌にF因子が伝達され 

さらに低頻度ながら供与菌の染色体の一部が伝達されて 受容菌の染色体との間に組換えが起こり 染色体遺伝子の組換え体が作り出される…Rプラスミドの伝達のメカニズムも同じである

FプラスミドやRプラスミドをもった菌は 生物学的にはオスに相当する…その意味で そのような能力をもったプラスミドを性因子と呼んでいる

グラム陰性桿菌における耐性の獲得は 主としてRプラスミドの伝達によって行われる


(e)トランスポゾンと動く遺伝子

1960年代に、ある種の変異が、変異部位に何か大きなDNA断片がはまり込んだために生じたことがわかった。そのはまり込んだDNA断片を挿入配列ISと名付けた。1970年代になって、挿入配列ISと同じようにDNAからDNAに転移し、転移に伴ってアンピシリン耐性が一緒にくっついていく現象が発見された。

それが トランスポゾンTn …挿入配列IS とトランスポゾンTn を区別しないでトランスポゾンTnと総称することもある…狭義のトランスポゾンTn は挿入配列IS から進化したもので 

抗菌剤耐性 毒素産生 病原性金属耐性 糖分解性などの生化学的性状にかかわる遺伝子を 2個のISが挟んだような構造をしている


一般に挿入配列IS やトランスポゾンTn は固有の大きさをもち、同一細胞内にある IS や Tn の与え手である供与レプリコンから、受け取り手である標的レプリコンに転移・挿入される。挿入配列ISやトランスポゾンTn は、標的レプリコンの挿入部位の塩基配列にあまりえり好みがなく、どこにでもはまり込む。標的レプリコンが耐性遺伝子をもっていないときには、耐性トランスポゾンTn の挿入によってRプラスミドや rプラスミドとなり、耐性の拡散・伝搬の原因となる。


そのように もともとRプラスミドをもたなかった菌種に トランスポゾンTnを媒介にして ほかの菌種からRプラスミドが拡散したと考えられる例がいくつか知られている

たとえば ブドウ球菌のエリスロマイシン耐性遺伝子とある種の連鎖球菌のエリスロマイシン耐性遺伝子とが同じか 非常に遺伝的ホモロジーが高いこと また 淋菌とインフルエンザ菌のもつアンピシリン耐性遺伝子は アンピシリン耐性トランスポゾンが腸内細菌から広がっていったために生じたこと などが示されている


挿入配列IS やトランスポゾンTn は、標的DNAに転移・挿入するのみではなく、近辺のDNAを決失させたり、逆向きにひっくり返したり、二つのレプリコンの融合を媒介したり、挿入に伴って遺伝子を不活化したり、DNAのいろいろな遺伝的作り変えを引き起こす。このような遺伝的作り変え機構を使うと、挿入配列IS 1個と耐性遺伝子が同じ細胞内に存在すれば、容易に耐性遺伝子をもったトランスポゾンTn を新しく作り出すことができる。

挿入配列IS はたいていの菌の正常染色体の構成成分であるから、この菌に耐性遺伝子があれば、この遺伝子はその挿入配列IS 2個の間に挟まれてトランスポゾンTn となる。したがって、ある抗菌剤に対して耐性の菌があるのに、その耐性遺伝子を担ったトランスポゾンTn がないことは、まずありえないと考えられる。これは抗菌剤耐性に限ったことではなく、遺伝子の存在が細菌にとって選択的に有利であるならば、その遺伝子はトランスポゾンTn となる可能性が大きい。


新しい抗菌剤に対する耐性遺伝子がそうして生じ 容易にトランスポゾンTn になるなら 挿入配列IS やトランスポゾンTn は Rプラスミドの生成・進化の過程でどのように関与してきたのか

P182 (ある多剤耐性菌Rプラスミドの構造を示す図)
(構造を見ると テトラサイクリン(Tc) クロラムフェニコール(Cm) カナマイシン(Km) ストレプトマイシン(Sm) サルファ剤(Su) アンピシリン(Ap) 水銀耐性遺伝子(Hg)が もともといろいろなトランスポゾンTn に担われていて それらが次々に一つのトランスポゾンTn の中にはまり込むことにより生じてきたことがわかる)


同じ仲間に属するRプラスミドの中には、この中のトランスポゾンTn3 とトランスポゾンTn55 のどちらか、または両方とももたないものがある。いいかえると、この仲間のRプラスミドの進化以前には、プラスミドとしての基本的な性質を決定する複製(Rep)と複製開始(Ori)部分がまず存在した。


(進化のごく初期に)トランスポゾンTn3 とトランスポゾンTn55 のどちらももたない耐性決定因子(図の挿入配列IS1 から ‐Cm Km Sm・Su Ap Hg‐ 挿入配列IS1 まで)がまずはまり込んで さらにトランスポゾンTn10 がはまり込んだ後 (進化が進むとともに)トランスポゾンTn3 とトランスポゾンTn55 がはまり込み ますます多剤耐性化したと推定することができる

事実 トランスポゾンTn3 とトランスポゾンTn55 のどちらか または両方とももたないRプラスミドと 両トランスポゾンをもったRプラスミドは いずれも トランスポゾンTn3 とトランスポゾンTn55 以外の部分の塩基配列が完全に一致することが明らかにされている

(示唆されるのは プラスミドの本体部分である複製と複製開始部分(レプリコン本体)が耐えうる範囲内で 今後もどんどん新しいトランスポゾンTn が加わっていくこと) (e)
P177〜183 
『細菌の逆襲―ヒトと細菌の生存競争』1995 吉川昌之介





入りこむようすですので もう少し追うと思われます




   ・・・・・・・・・・




相同性 あるいは ホモロジー (homology)
ある形態や遺伝子が共通の祖先に由来すること
外見や機能は似ているが共通の祖先に由来しない相似の対義語
-Wikipedia





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