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隠密廻り同心・磯貝真六2 「伊助の別れ火」
[【時代小説発掘】]
2010年8月1日 11時24分の記事


【時代小説発掘】
隠密廻り同心・磯貝真六2 「伊助の別れ火」
佐藤 高市(さとう たかいち)



(時代小説発掘というコーナーができた経緯)


梗概:
 隠密廻り同心・磯貝真六のシリーズ2である。幕末の江戸の治安を守る隠密廻りたちの痛快で粋な物語。

プロフィール: 
佐藤 高市(さとう たかいち)    
酉年でも喧嘩鳥の生まれ年で単純明快 東京都生まれ 
小説「谷中物語」で茨城文学賞受賞
江戸を舞台の小説「入梅」が韓国の常緑樹文学に翻訳掲載
江戸の歴史研究会会員 

これまでの作品:

隠密廻り同心・磯貝真六 「お多勢八幡」


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【時代小説発掘】
隠密廻り同心・磯貝真六2 「伊助の別れ火」
佐藤 高市(さとう たかいち)


             
(一) 迎え火

 磯貝真六は、先祖の霊に読経を上げていた。今日から祖霊を迎え、追善供養をする盆の入りの朝であった。
「旦那様、本日は、ご先祖をお迎えしまして、門口に焚火をいたします。明日は、駿河台のご主人様が、お線香を上げにお越しくださるとのことです」
 治平が、朝の茶を出しながら、そう言った。 駿河台の主人とは、磯貝真六の亡き父親の歳の離れた弟であった。この浦辺光正は、剣の腕と正直な性格を認められて、御家人の浦辺家に婿養子に入っていた。
 磯貝真六の剣の腕をいち早く見抜いたのは、叔父の浦辺光正であった。そして、浦辺は、剣術の稽古を知人の白幡賢資に頼んだ。
 磯貝は、幼少の頃より白幡の道場に通った。
「そうか、叔父上様がいらっしゃるか。治平、よい酒を頼むぞ、肴は、天ぷらがよいな。ただ、嫁の話しになると困るが……、そうだ、向島に行く用事があるので、治平には、長命寺の桜餅を買ってこよう」
 磯貝真六は、普段、酒は飲まなかったが、甘いものには目が無かった。所用の先に名物があれば、供の中間に買って来させていた。
 治平は、回り髪結の伊助を部屋に入れた。
 毎朝、伊助は磯貝真六の月代や髭を剃り、髪を結うのだった。鬢付け油は、伊助自慢の上方のものだった。部屋は、鬢付けの甘い香りがしていた。
 磯貝真六は、夏でも菅笠をかぶらず、粋な小銀杏の髪を結い、磯貝が通り過ぎると、ほのかな甘い香りがした。それが、市中の女たちの噂になるほどであった。
 伊助は、髪を結いながら、市中のできごとを磯貝に伝えていた。伊助は、磯貝の隠密廻りのために、働いていた。
 磯貝は伊助に、先月に日本橋の大店に押し入った由井正雪の一派と名乗る盗族について、詳細に調べ上げるように命じた。
 伊助は、磯貝真六の指示を甚吉に伝える。磯貝真六を支える下っ引きたちは、すぐさま、それぞれの役目のために動くはずだった。
 支度の整った磯貝は、透き目を作った涼し気な紋付羽織を着て、奉行所に出仕する。定廻り同心として、江戸の治安を守っていたが、実は、先代からの隠密廻り同心であった。
 磯貝真六は、きれいに剃った月代の青さを見せて、じりじりした夏の日差しを扇子で除けながら、奉行所に向かった。江戸には、しばらく雨が降っていなかった。後ろには、供の者たちがついていた。
 市中のあちらこちらで、物売りたちの声がする。今夜の迎え火のための麻がらを売るものや霊棚に供える野菜売りたちだった。
 笠をかぶった僧侶が、鉦を叩きながら、念仏を唱えている。長屋に住む者たちは、こうした流れの僧を呼び止めて、先祖への読経を頼んだ。
 先祖の霊は、明日の十四日の明け六に人界に降りて来るが、気の早いおかみさんたちは、自分の宗派でなくても、通りがかった僧に手短に読経をお願いして、布施を渡した。
 その頃、治平は、仏壇に線香をあげて、手を合わせていた。八丁堀で、逸材と言われる磯貝真六が、妻を娶り、磯貝の家の跡継ぎを授かるようにと祈りにも力が入った。
 そして、先代の願いである磯貝真六を幕府の与力に出世させる。治平は何としても叶えさせたかった。
「磯貝、日本橋の大店に押し入った由井正雪の一派と名乗る盗族だが、その後、調べはどうであるか」
 江戸市中では、由井正雪の一派を名乗る盗賊の被害が続いていた。特に、大店ばかりが狙われていた。
磯貝真六はその場に平伏した。
「はぁ。当日の調べはついておりますが、盗賊の足取りはつかめておりません。甚吉たちに探らせております」
「ごくろうである。盗みに入っても、ひとりも殺さず、攘夷のためであると言って、借用書を残して、立ち去ったということだが、磯貝はどう見る」
「はぁ。恐らく、攘夷をかたる浪士かと存じます。幕府に対して、謀反をたくらむ輩と存じます」
「磯貝、ごくろうであった」
「は、はぁ」
 磯貝は、奉行に平伏した後、いつものように、与力と年寄同心との評議に向かった。
 その頃、回り髪結の伊助から、磯貝真六の指示を受けた伊賀の忍びの甚吉は、鋳掛屋の三五郎と共に、袖ケ浦の海辺に面した薩摩下屋敷に向かった。
 江戸市中は、辻斬りや強盗などが続き、騒然としていた。攘夷を唱えて、豪商の家に押し入り、金子を奪っていくのだった。
 世のために借用するとのことだったが、金は決して返ってはこない。井伊直弼が、勅許を待たずに、アメリカと条約を結んだことから、攘夷の動きは激しくなった。
 奉行所からの帰りに、磯貝真六は、深川にある知り合いの住職の寺で、読経を上げていた。亡き父親の供養のために経を上げ始めたが、幕府の進む先を考えると気が重く、薩摩が江戸幕府の味方か敵になるかを推し量っていた。
 それでも、蝉が鳴く声の聞こえるのどかな寺にいると、少しずつ心が落ち着いてきた。
 この住職との出会いは、修業のために、甚吉と諸国を旅しているときに、野武士に斬られた六十六部の残した経を納めるためであった。
 磯貝よりも少し年上の住職の日昇が茶をたててきた。
「因果具持というお言葉がございます。未来を見ようとするなら、現在の因を見よという教えでございます。従いまして、現在の果は、過去の因によるという教えでございます」
 磯貝は、住職の言葉を静かに聞いていた。
「ご住職、死はすべての終わりでございますか」
「いえ、今生の仮諦の成就でございます。そのように、仏はおっしゃっています」
住職の日昇は、磯貝の問いに即座に答えた。
 磯貝真六は、月に一度の寺の講には、顔を出した。講が終わると、寺の離れで、遅くまで二人は語り合った。
「明日は、磯貝様のお屋敷に伺いまして、ご先祖様の追善供養をさせていただきます」
「日昇様、お忙しい中、申し訳ございません。お迎えの籠を用意させていただきます」
 磯貝は、寺を出た。中間と槍持ちを共にしていた。夕闇で先をゆく中間が提灯に明かりを灯した。どの家の門口にも火が炊かれていた。盆の火であった。
 磯貝は、今の寺の宗派には、島津の殿様とその養女の篤姫が帰依していた宗派であることが不思議に思われた。
 江戸幕府に仕える身が今、世情を騒がす薩摩と深い縁のある寺でつながっていた。この寺もまた、幕府の隠密が見張っていることも知っていた。
 
(二) 西からの黒雲

 磯貝は、川岸の薮に蛍の光が見えた。橋が架かっている手前の柳の下で、水菓子売りの屋台につるした風鈴が川風に鳴った。店先には西瓜が切られていた。
 蛍狩りの親子が、水菓子の切った西瓜を買っていた。頬かぶりをした水菓子売りは、よく見ると磯貝真六の手下の稲荷親分だった。稲荷は、白粉を塗り、夜鷹にも化けたことがあった
 磯貝の手の者が、江戸市中で由井正雪の一派を名乗る盗賊の動きを張っていた。
 その頃、上野不忍池の弁財天様近くの料理屋には、磯貝の手の者の八千代がいた。八千代が率いる一座の芝居で、『お多勢八幡』が大当たりをして、江戸で人気が出ていた。
 八千代は、芸者姿で御座敷に出ていた。座敷では、雄藩の侍たちの宴席であった。
「いい女だ。こっちにこいよ。江戸は退屈な町だが、女だけはいい」
 下品な顔をしている侍たちが、芸者たちをまるで遊女を見るような目で見ていた。芸者の尻を触ったり、手をにぎったりする無粋の侍たちに、芸者たちは嫌がっていた。
 八千代は、侍たちの酒に酔って騒ぐ姿を見て、得体の知れない不気味さを感じていた。侍たちの目には、殺気があった。
 それは、幕府や時代に切り込んでいく、侍たちの怨念が渦巻いていたのだった。その思想の元は、外国人を打ち払うことを命じる大君の存在であった。
 浦賀に現われた外国の軍艦に江戸は騒然としていた。外国船を打ち払えという声は、西南の藩から起こっていた。八千代は、侍たちの話しを聞きながら、酒を注いでいた。
「異人は斬らねばならぬぞ、キリシタンは、邪法であるから、上陸させてはならぬ」
「そうだ、外国船には、異人の流行病がついていて、日本に上げてはならぬ。攘夷である。一刀のもとに斬り捨ててやる」
 やがて、三味線が鳴り、八千代たちの踊りになった。
 浪士たちは上半身裸になって、腹におかし気な顔を描いて、三味線の音に合わせて、腹で踊った。天下国家を語りながら、酒に酔ってドンチャン騒ぎをする。
 その日の深夜、磯貝真六の屋敷には、甚吉、稲荷親分、それに八千代が集まってきた。鋳掛屋の三五郎は、薩摩屋敷に近い高輪の寺で、賊の動きを見張っている。
「若、薩摩下屋敷を見張っていますと、十人以上もの虚無僧が裏口から出てきました。目黒白金あたり向かって、大名屋敷の通りで、数人ずつで散っていったのです」
 甚吉は、手短に告げた。
「そうか、虚無僧の姿で、夜になって落ち合うのだな。目黒不動あたりに賊が隠れているかも知れぬ。そして、夜陰に紛れて、市中を襲うのであろう」
 磯貝真六は、江戸市中の図を見ながら、手の者の配置を考えていた。
「稲荷、首尾はどうじゃ?」
「はぁ、旦那様、今日一日、湯島から上野辺りを探索しておりましたが、通りに面した大店に攘夷を声高にして、主人をゆする侍の姿がありました」
 稲荷は、薬種問屋亀甲堂に上がり込んで、主人の孫兵衛に借金を申し込む侍を追っていた。孫兵衛は、立ち去ろうとしない侍に小判を包んで、帰ってもらう。
 侍は、鼻歌交じりに、往来を肩で風を切って歩く。やがて、根津権現近くの水茶屋に入り、やくざ風の男たちと酒を酌み交わしていた。
 稲荷は、男たちの中で見たことのある顔があるのに気がついた。それは、数年前にゆすりたかりで江戸所払いになったばくち打ちの弥次であった。
 稲荷は、手下に弥次の居所を調べさせ、夕刻には上野のなめくじ長屋にいることが分かった。稲荷の手下は、引き続いて、弥次の動きを追っていた。
 八千代は、上野不忍池の弁財天近くの料理屋での侍たちの騒ぎについて、磯貝に詳しく話しをした。
 侍たちは、大君という言葉を漏らしていた。八千代は、侍たちが雄藩である薩摩や水戸の侍であると睨んでいた。
 磯貝真六は、臣は君のために忠誠を尽くすのであり、そのことで、雄藩が大君のために攘夷を押し通すことがあれば、この幕藩体制が根底から覆されてしまうと危惧していた。
「ごくろうである。由井正雪の一派を名乗る賊に対しては、徹底的に調べ上げよ」
治平が油揚げとネギをのせたうどんを作ってきた。湯気を上げるうどんに、磯貝真六の手下であった良太郎の浅草唐辛子をかける。
「これはうまい、治平の作るものは、本当にうまい」
 磯貝に、ようやく笑顔が戻った。
「浅草唐辛子を作った良太郎は、蘭学の修業で長崎に行っておるが、まもなく江戸に下がって来ると聞くが」
「はぁ、来年の春には、戻るということを聞いておりまする」
 甚吉は、良太郎からの文で、江戸に戻ることを知っていた。
 磯貝の下に、蘭学医を修めた良太郎が戻ることは、良い知らせであった。

(三) 策略
 
 翌日は、曇り空であった。家々の門口には、迎え火の燃えがらがあった。この日ばかりは、磯貝新六は家にいなくてはならない。
 巳の刻(午前十時頃)には、僧侶の日昇が磯貝真六の亡き父親のために、供養の経を上げに来る。
 叔父の浦辺光正も同じ時刻に線香を上げに来ることになっていたので、治平や使用人たちは、早朝から起き出して、庭先を掃き、門口に打ち水をして忙しく働いていた。
 磯貝真六も使用人たちより早く起きて、いつものように庭先に出て木刀を振った。殺人剣を仮想して、八相大上段から得意の三日月の剣を振り下ろす。一撃の剣であった。 そして、剣の修業がすむと、汗を拭いながら、着物に着替えて、魂棚飾りの前に座って読経を上げた。
 父親が亡くなって五年目が経っていた。磯貝家は、自分の代で終わってしまうことが、心苦しかった。
 だが、役責の重さを思うとそれも仕方の無いことであると、磯貝は、自らに言い聞かせていた。
 治平は、しじみの味噌汁を作り、瓜の糠漬とつくだ煮を朝の膳に乗せた。磯貝は、こうして白米が食べられることに感謝する。東北の修業の旅では、農民たちは、餓えていた。それでも、磯貝真六と甚吉に、山村に住む村人は、雑炊を振る舞ってくれたことは、今でもありがたく思っていた。
 雪の最上川の美しさが、厳しい修業の思い出とともに、感謝の思いはいつもかたわらにあった。磯貝真六は、手を合わせてから、白米を口に入れた。
 治平は、膳を片付けながら、回り髪結の伊助を部屋に入れた。伊助は磯貝真六の月代や髭を剃って、髪を結う。磯貝は、本日の探索について、手短に伊助に指示をした。
磯貝家と懇意にしている商家から、清酒や切り花が届けられた。治平は、使用人たちと、赤飯を炊き、野菜を切り、忙しく働いていた。
 そのうち、八千代が訪ねてきて、盆棚のまわりを掃き、治平の手伝いに台所に立った。
 磯貝真六の父は、知己にしていた火付盗賊改めからの依頼で、火事で焼け出されたた八千代の里親を探し、猿若町の里親の芝居茶屋には、手土産を持って、度々出かけていった。
 八千代は、谷中の磯貝家の墓地を訪れては、線香を上げてきた。芝居小屋で一座を持つまでになっても毎月の墓参は続けていた。
「八千代さんが、この家に来て貰えれば、旦那様も喜ぶでしょう」
 治平は、江戸で『お多勢八幡』の芝居で評判になっている八千代が、化粧気の無い顔で野菜を洗う姿に微笑んだ。
「あら、うれしいわ。でもね、旦那様には、お武家のお姫様がお似合いでしょう」
 八千代は、幕府のために、もののふの家に生まれた磯貝真六が、お役目のために、命を差し出す覚悟があることを知っていた。
 駿河台の主人と呼ばれる浦辺光正が、磯貝の屋敷を訪れた。磯貝真六の剣の師であった白幡賢資も一緒であった。
 僧の日昇が読経を上げに来るまで時があったので、三人は茶を飲みながら世間話をした。
「世間を騒がす由井正雪の一派を白幡様はどう見るかな」
 浦辺光正は、久し振りに会う長年の友に言葉を向けた。
「由井正雪の一派とは、騙りでしょう。異国船の出現で世間が騒いでいるのに乗じたものでしょう」
 白幡は、道場を開き、全国から剣の修業に訪れる侍たちから、世情のことについて聞くことが多かった。
「それで、誰が得をするかじゃ」
「おそらく、それらは、攘夷を目指す者たちが、江戸の太平を乱すものと思いまする」
 白幡は、浦辺の問に答えた。
「盗賊どもは、一網打尽にしてまいりますが、問題は、それらを指示する者がいるということです」
 磯貝真六は、その雄藩の名を言おうとしたが、少し考えて自分の胸にとどめた。
「まぁいい、本日は亡き兄上もこの屋敷に戻られた。難しい話しはなしじゃ」
 浦辺光正は、そう言うと笑った。浦辺は、度量が大きく快活であった。
 そのうちに、僧の日昇が駕篭に乗ってきた。日昇は、魂棚飾りに向かうと読経を始めた。連れの若い僧侶が、日昇の後ろで読経に加わった。部屋には、線香の煙が立ちこめ、蝉の鳴き声とともに、夏の日差しが指してきた。
 八千代は、日昇の後ろから団扇で風を送った。
 供養が終わると、治平は家の使用人に言いつけて、食事を運ばせた。
 浦辺は、東下りの清酒を運ばせてきていた。酒も膳に出すのだった。磯貝真六と日昇は、酒を飲まずに麦湯を飲む。
 浦辺と白幡は、無類の酒好きだったので、座は盛り上がった。
 実は、浦辺光正は、磯貝真六に縁談の話しを持ってきていた。後家人の娘を磯貝家に嫁がせるものだった。
 この娘は、恋の病にかかっていた。江戸市中を見廻る磯貝真六のさっそうとした粋な姿に惚れたのだった。
 だが、浦辺は、しこたま酒に酔ってしまい、そのうち、磯貝は急な役向きで、屋敷を出てしまった。
 浦辺と白幡は、治平の作った肴を堪能しながら、由井正雪の一派を話題にして盛り上がっていた。
 その日の夕刻であった。三五郎は、高輪の寺の門前にいた。三五郎は、穴の空いた鍋をしろめを火に溶かしていた。
 いつもだったら、おかみさんたちが集まってきたが、盆ということもあって、ひとり身の職人たちが、鍋や釜を持って来るばかりであった。
 三五郎は、手が空いていたので、好きな煙草をつけた。辺りは、盆の線香の香りが漂っていた。
 往来の向こうに、稲荷の姿があった。水菓子売りの格好をしていた。
 稲荷も又三五郎に気づいて、三五郎のいる場所の隣に水菓子を並べ始めた。
「やはり、薩摩であったぞ。薬種問屋亀甲堂に上がり込んで、主人の孫兵衛に借金を申し込んでいた侍は、下屋敷に入っていった。後は、遊び人の弥次を引っ張る手筈になっている」
 その頃、甚吉は虚無僧を追っていた。十数人の虚無僧が、薩摩下屋敷の近くで、数人の組みに分かれた。
 甚吉は、海沿いの道を急ぐ者たちを追った。芝の増上寺裏の林に差し掛かった時であった。林を抜けるときに、急に横から虚無僧たちが、短刀を抜いて斬りかかってきた。
 甚吉も短刀を抜いて、虚無僧たちをにらみつけた。それが、甚吉の策であった。甚吉の配下の忍びの者たちが、虚無僧たちを囲んでいた。
 そして、磯貝真六の姿もあった。不穏な賊の動きを察知した伊助が、磯貝に知らせたのであった。
 その時、甚吉は目の前にいる虚無僧から殺気を消えているのを感じた。虚無僧たちは、うすら笑いを浮かべながら、急に短刀をおさめ、その場に平伏するのだった。
「御用だ、御用だ」
 捕り手たちは、虚無僧たちを捕縛した。
 磯貝真六は、白い鉢巻きをとって、虚無僧たちの後ろ姿を見ていた。あまりにも簡単に、虚無僧が捕縛されたことに、磯貝は合点がいかなかった。
 白い胴締めに白いたすきをかけた磯貝真六は、与力にこの事件を詳しく述べるのだった。与力は、虚無僧たちを牢屋に入れておけば、じっくりとことの真相を調べればいいと命じた。
 翌朝のことであった。日本橋の裏通りでは、読売を売る者がいた。読売には、由井正雪の一派が捕縛され、それらを召し捕った同心の姿が描かれていた。
 八千代は、読売を磯貝の所に持っていった。それには、白い鉢巻を締め、細い鎖をつなぎ合わせた鎖かたびらを着て、紺の足袋を履いた姿は、まさに役者のようであった。
その涼し気な顔は、磯貝真六と分かるものであった。家紋の鶴丸もあって、隠密廻り同心と読売には書かれていた。
「これは……、謀られたな」
 磯貝は、八千代が持ってきた読売を見て、すぐにそうつぶやいた。
「若、これは、何者かが、召し捕りの一部始終を見ていたことになります」
 甚吉は、くやしそうにつぶやいた。
「すると、召し捕られた賊も放免されるかも知れぬ」
 磯貝の予感はあたった。召し捕られた虚無僧たちは、昨夜のうちに、所払いとなっていた。追放刑の中でも最も軽いものであった。
 奉行は、老中からの指示であるといって、詳しいことは言わなかった。又、
 老中からは、磯貝真六が隠密廻りとして知った巨大な力が動くので、気を付けるようにとのお達しがあった。
 それは、磯貝真六の命が狙われていることを意味していた。
「望むところだ」
 磯貝は、そうつぶやいた。

(四) 伊助の別れ火

 稲荷は、遊び人の弥次を追っていた。上野の山で、後ろから斬られた遺体が見つかり、それは弥次であった。
 稲荷親分は、遺体を検分しながら、殺された理由を考えていた。小悪党の弥次は、薬種問屋亀甲堂に上がり込んで、主人の孫兵衛に借金を申し込んでいた侍と関係があった。悪事の口封じで斬られたものと思われた。
 弥次には、女房と昨年産まれた子どもがいた。女房は、旅籠で働きながら弥次と所帯を持ったのだった。
 弥次は、一時は、真っ当になろうとして、籠かきになった。だが、肩をけがしてかせげなくなると、昔のやくざ仲間と交わるようになった。
「いつも、弱い奴ばかりが、犠牲になる。こんな馬鹿でも、かわいい女房と子がいるのによ、父御を亡くして、残された子どもがかわいそうだ」
 稲荷親分は、そう言って、手下の者に弥次の女房に知らせるように言った。手下を行かせるときに、稲荷はいくばくかの銭を懐から出して、弥次の女房に渡すように言った。
 磯貝真六は、稲荷からの知らせに、由井正雪の一派を騙った者たちが、口封じのために、野次を斬ったことを知った。
 虚無僧たちの所払いは、巨大な力が幕閣に及んで、軽い措置になったのだった。
 その場にいた髪結いの伊助は、すぐに甚吉たちに知らせることなる。
 磯貝は、久し振りに、本郷にある白幡賢資の道場に出かけた。
 外は、雲一つない青空であった。物売り、大八車で荷を運ぶ者や馬を引く者たちが通りには溢れていた。
磯貝真六が通りを歩くと、立ち話をしていたおかみさんたちが、話しを止めて磯貝を見た。知り合いの商人たちが、読売を見ましたと声を掛けてきた。
 読売に書かれた隠密廻りが、磯貝の実の姿であることを江戸市中の人たちが知ることになった。
 磯貝は、昨日までとは違う世界がそこにあった。そして、隠密廻りとして知られた自分の命を何者かが狙っていることを知った。
 白幡賢資の道場は、本郷にあった。水戸の屋敷が近くにあったので、以前から白幡道場には、水戸の侍たちが、剣の稽古に通っていた。
 白幡賢資は、磯貝真六を待っていた。この日に、磯貝が剣の稽古を所望したのだった。白幡は磯貝の心中を察していた。
 それは、磯貝真六の叔父である浦辺光正からも、巨大な組織に磯貝真六が狙われていることを白幡は聞いていたのだった。
 磯貝真六は、道場にいた。幼少よりこの道場で剣の修業を積んでいた。雪の日の寒稽古で、素振りをしながら見た雪の降る景色が思い出された。
 磯貝の前には、白幡賢資が上段の構えで木刀をにぎっていた。すさまじい殺気があった。磯貝真六は、雑念を捨てて得意の八相・大上段に構えた。
 白幡には、八相・大上段からの三日月の剣がその時見えたのである。
 白幡は、木刀をおさめていた。そして、弟子が自らよりも高いところで剣の道を極めていることに心が熱くなっていた。
 磯貝真六は、白幡を前にして、自分の迷いと向き合っていた。今まさに、江戸市中で自分が隠密廻りであることが白日のもとにさらされ、これからどうやって役目を全うすればいいのか、悩んでいた。
 磯貝は、井戸水で濡らした手拭で身体の汗を拭って、着替えると少し気持ちが晴れてきた。白幡は、麦湯を磯貝に勧めて、水戸の侍たちが『尊攘』という言葉を崇めていることに触れた。
 天皇家と関係があった水戸藩では、尊王の気風があった。いつか、水戸の血気盛んな侍たちが、尊王の大義で事を起こすことを白幡は心配していた。
 白幡は、道場に来る水戸藩士の剣には、ただ人を殺すだけの空疎な剣を感じるだけであった。
 白旗道場を後にした磯貝真六は、根津権現裏の林にさしかかった。この道を通ることは、髪結いの伊助にだけ知らせていた。
 磯貝は、自分の手下には、伊助を通じて、指示を与えていた。自分の動きが見えない敵に読まれているとしたら、考えたくはなかったが、手の者の中に裏切っている者がいることになる。
 それが、回り髪結の伊助だと磯貝は見ていた。毎朝、伊助は磯貝真六の月代や髭を剃り、髪を結う。磯貝は、細かな指示を与えて、江戸の秩序を乱す者たちを取り締まってきた。
 伊助は、甚吉と同様に伊賀の忍びであった。磯貝はこれまで、寸分の疑いを伊助に対して持ったことはなかった。
「隠密廻りの磯貝真六とは、貴様か?」
 桜の大木の後ろから、背の高い瘠せた男が姿を現わした。そして、その後ろには、相撲取りのような大男がいた。
 磯貝真六の背後に、もう一人いた。それは、白幡道場から、ずっと磯貝の後を追ってきたのだった。
「力のない幕府にしがみつく犬侍よ、幕府が弱腰だから、異人に攻められるののだ」
 磯貝は、背後に人が近づくのを感じた。抜刀して、襲いかかってきた。
 磯貝真六は、長刀を抜いた。背後の男の刀が上段から降り下ろされる時に、甚吉が横から飛び出して、身体を男に預けて短刀で突いた。そして、稲荷親分が刺股で男の咽喉の所を地面に押しつけた。
 磯貝真六は、目の前の男を見据えて、長刀を八相の大上段に構えた。後ろから、相撲取りのような大男が磯貝の後ろに回り、懐から銃を出した。その時、大音声が聞こえた。大男がその場に倒れ込んだ。 銃を撃ったのは、三五郎だった。手製の銃の威力はすさまじかった。
 磯貝真六は、長身の男に向かって、静かにまわりを詰めていった。
「大君のために、尊王こそがこの国を豊穣にするのだ」
 男はそう叫ぶと、奇声を上げて、刀を降り下ろす。示現流であった。磯貝真六は、示現流に対しては、これまで修業をしてきたこともあって、相手の剣筋が見えた。
 男は、けさがけに斬られ、その場に座りこむように倒れたのだった。その時、稲荷は、稲妻のような三日月の剣を見た。
 以前にも、磯貝真六が宝蔵院流の鎌槍に対して、相手の呼吸が一瞬、荒くなった時に、三日月の剣がうなりを上げたことがあった。
 稲荷は、三人の遺体を検分するために、手下に遺体を戸板に乗せるように命じた。
 磯貝は、伊助の裏切りがあるかも知れないと思い、治平に命じて甚吉たちに知らせていたのだった。
 磯貝の策は当たった。白幡道場からの帰りに、根津権現の裏の林辺りで、敵が襲って来ることを思い描いていた。
 八千代は手下とともに、伊助を追っていた。夕暮れ時、浅草蔵前の、大川の川岸にある料理屋の二階で、伊助を見張っていた。
 伊助は、住んでいた長屋から、荷物をまとめて、料理屋の斜向かいにある船宿に潜伏していたのだ。
 伊助はその時に、磯貝真六の安否を知らなかった。だが、いかに磯貝が、剣の達人とはいえ、三人もの手練れの死客に狙われれば、無事であるはずがないと思っていた。
 磯貝真六のために働いてきたことが、ふいに大川の川面を見ていると、思い出されて悲しくなった。
 ある日、伊助のもとに叔父が訪ねてきた。火急の要件であった。叔父は、密命を受けて江戸に潜伏をしているという。
 伊助は、叔父の口からとんでもないことを聞いた。御下命により、江戸市中を混乱させる役目を与えられたという。
大君のためには、幕府をも力で倒さなくてはならない。それは、自分を育ててくれた養父からの頼みであった。
 伊助は、両親が流行病で次々と亡くなると、叔父に引き取られた。叔父は伊賀の忍びであった。徳川の中で特に水戸藩とのつながりが強く、そのために大君である天皇のために、働くことが天命であった。
 伊助は、悩んだ。だが、大義のためには、主人さえ裏切ることを是としたのであった。
 いまや、尊王の気運が高まっていた。その先にあるのは、天皇主体の国としての船出であった。伊助は御下命のとおり、由井正雪の一派を騙る一味に加担したのだった。
 由井正雪は、駿河由比の紺屋に生まれた。江戸に出て楠木流の軍学師となり、宝蔵院流鎌槍の達人の丸橋忠弥も由井正雪に同調して、三代将軍家光が亡くなった折、幕府転覆をはかったと言われる。
 だが、その裏には、徳川家康の子である徳川頼宣の姿があった。いわば、徳川家の世継ぎの問題も深く関わっていた。
 尊王派は、現将軍が紀州藩の出のため、由井正雪を騙ることで、紀伊徳川家の祖である徳川家宣を意識したものだった。
 尊王派は、手下の浪人たちに、由井正雪の一派を名乗らせ、商人たちから金を巻き上げることで、江戸市中を混乱させたのだ。
 そして、江戸庶民の混乱に乗じて、一気に幕府打倒を仕掛ける手筈であった。
 それは、関ヶ原の戦いで敗れた大名家の積年のうらみもあったのも事実であった。
 伊助は、大川の流れに浮かぶ小船を見ていた。荷を乗せた船から、男たちが荷を運ぶ姿があった。
 威勢のいい男たちの掛け声が辺りを活気付けていたその時に、急に襖が開いて、旅姿の男たちが姿を見せた。
 伊助は、言われたとおりに旅姿に着替えようとした。その時だった。小柄で太った男が、伊助の背後から短刀を抜いて体ごとぶつかってきた。
伊助は、そのまま前に倒れ込んだ。
 盗賊たちは、根津権現の裏の林で、刺客の浪人たちが斬られたことを知って、伊助が裏切ったためであると思いこんだのだった。
 盗賊たちは、風のようにその場を去った。店の者も気付いてはいなかった。伊助は、目の前が真っ暗になった。そして、耳にはすぐ近くで荷を運ぶ男たちの掛け声が聞こえ、やがて遠くなっていた。
 八千代は、旅姿の男たちが急いで店を出るのを見た。その中には伊助はいなかった。嫌な予感がして、船宿の二階に急いだ。心配したとおり、大川がすぐ下に見える手すりにつかまるようにして、伊助は絶命していた。
 主人を裏切った伊助の罪は深いと八千代は思ったが、伊助は毎朝、髪を結いながら、市中のできごとを磯貝真六に伝え、伊助の働きで、多くの事件を解決してきた。
 八千代は、ここまで追い込まれた伊助が哀れに思えた。亡骸を手下に命じて、検分のために番屋まで運ばせた。
 磯貝真六は、その夜、老中に事のてん末を説明していた。老中は、雄藩からの圧力があったので、磯貝真六を襲った侍たちに指示をした藩の責任まではふれようとしなかった。 そのため、伊助を殺害した盗賊たちの探索をしなくていいということだった。
 もはや、幕藩体制は、大きな雄藩の圧力によって、翻弄されていた。磯貝真六は、自分を狙った不気味な力に対して、幕閣の力も及ばないことを知らされた。
 その夜遅く、城を後にした磯貝真六は、堀端に狐火が燃えているのを見た。二八蕎麦屋の亭主が大声を上げた。
 磯貝真六は、供の者が持つ提灯をその狐火に向けさせた。槍持ちが磯貝の前に立って、槍を狐火に向けた。
「構わぬ。伊助の別れの挨拶じゃな」
 磯貝がそう言うと、狐火が上下に動き、一瞬、火が大きくなるとやがて消えていった。後は、闇だけがそこにあるのだった。
 伊助が、水戸藩とのつながりがあったことは磯貝は知っていたが、尊王の力で、信じていた手下に裏切られたことは、主人としては、辛い仕打ちであった。
 伊助は、今、磯貝真六の前に狐火として現われた。主人に許しを乞い、冥土へ旅立つのであった。 磯貝真六は、闇に向かって手を合わせた。そして、題目を上げた。

(五) 旅立ち

 翌朝であった。磯貝の叔父の浦辺光正が、供の者を連れて訪ねてきた。浦辺は白幡道場主の白幡賢資から、昨日、磯貝真六が根津権現裏の林で命を狙われたことに驚いて、早駕篭に乗って来たのだった。
 本郷界隈は、白昼の斬り合いや銃声で騒然としていた。隠密廻り同心が、浪人者を斬ったという話で、白幡賢資はそれが磯貝真六であると分かった。
 白幡は浦辺光正に知らせを送った。
「叔父上様、ご心配をいただきまして、ありがとうございます。これからも、お上からいただいた仕事を全ういたします」
 磯貝真六は、心配のあまり駆けつけた浦辺光正にそう言って、治平に朝餉の用意をさせた。
「真六殿、磯貝家のために嫁を貰っては、どうじゃ、実は、おまえ様によい縁談があるのだが」
 浦辺は、そう言って、笑いながら磯貝を見た。
 磯貝真六は、笑みを浮かべたが、疲れた顔をしていた。髭も剃られてはいなかった。
 いつもであったら、伊助が磯貝真六の月代や髭を剃り、髪を結っていたが、その伊助もすでにいない。
 伊助は、髪を結いながら、市中のできごとを磯貝に伝え、磯貝は、手下に隠密廻りとしての指示をしてきた。
 信頼していた伊助に裏切られ、磯貝はなかなか気分が晴れなかった。
 浦辺は、くれぐれも身辺には、用心するようにと磯貝に言って、駿河台の屋敷に帰って行った。
 浦辺は、待たせていた駕篭に乗り、磯貝真六の縁談の話しは、難しいと思っていた。
浦辺が帰って、程無くして、甚吉が磯貝の屋敷を訪ねた。
 伊助の遺体の検分が終わったが、引取り手がないということであった。このままであれば、伊助の遺体を早桶で江戸郊外の無縁塚に運ぶ。
 磯貝真六は、日昇に冥土送りの経を上げて貰うことを考えた。
 磯貝は、すぐに書状を書付て、甚吉に託した。政略の犠牲になった伊助をこのまま、早桶で無縁塚に運び入れることが忍びなかったのである。
 磯貝は、その前に、ねんごろに供養をして、冥土へと旅立たせたかった。主人を裏切った大罪を起こした伊助に、憎しみよりも悲しみの気持ちを抱いていた。磯貝真六は、日昇に狐火として現われた伊助の話しをした。
遺体のある番屋には、甚吉や三五郎、八千代、そして稲荷が集まった。
 磯貝真六は、線香を上げるときに、肩を震わせているのを八千代は気が付いた。江戸市中の治安のために、結束して磯貝を助けてきた。何故、伊助は裏切ったのか。集まった誰もが重く沈んだ気持ちであった。
 日昇の読経が終わって、伊助を入れた早桶は、江戸郊外の無縁塚に運ばれていった。無縁塚には、稲荷親分が手下を連れて待っているはずであった。
 その様子をじっと様子をうかがっている者たちがいた。幕府の役人たちであった。磯貝真六は、雄藩に関係する侍たちを斬ったことで、役人たちが自分を監視していることを知っていた。
盆明けの夕刻、迎え火と同じ場所で火を焚いて祖先の霊を送った。祖霊を送る火は、赤々と江戸の市中に灯っていた。大川には、祖霊を乗せて火を灯した数多の盆船が流された。それらは、海に向かう。
 その後、幕閣の動きは速かった。磯貝真六は、会津に公務のため遣わされることになった。
 ひとり江戸を離れる磯貝に遅れて、会津に興行に行く旅役者たちが磯貝の後に従った。
江戸市中の者たちは、『お多勢八幡』で有名になった八千代の一座を見送っていた。一座には、甚吉や三五郎もいた。空には、雲一つなく、静かで穏やかな日であった。

(了)




最終編集日時:2014年1月14日 13時7分

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