幽閉、若しくは彷徨 七十九 | |
[哲学 文学 科学 宗教] | |
2010年10月25日 7時45分の記事 | |
――渦巻くところのみ《生》在りし、か? ――それは今のところ何とも言ひ難い。だが、此の宇宙は《存在》の濃淡があるのは確からしい。例へば銀河は此の宇宙に蜂窩状、若しくは網の目状に分布してゐるのは確実だ。 ――それは二つの何かの流れがぶつかる処に銀河が生まれてゐるといふ事だらう? ――へっ、つまり、過去と未来の時間の流れがぶつかって現在といふ事象が銀河となって現はれるといふ事かもしれぬ、と言ひたいのだらう? ――ふっ、さうさ。流れがなければ渦は発生しない筈だ。 ――その渦が時間の流れだといふ証拠は今のところないぜ。 ――当然だらう。時間は《存在》に先立つだらう? ――時間が《存在》に先立つ? それは実存は本質に先立つといふ事の言ひ換へかね? ――さう捉へて構はない。 ――つまり、時間は実存に先立ち、実存は本質に先立つといふ事だね? ――さうさ。先づ、時間の流れが《存在》しなければ此の世は生まれるべくもなかったのさ。 ――そして、《存在》は絶えず時間に曝されて、やがては滅する宿命にある。 ――つまり、現在は過去からも未来からも決して遁走出来ぬといふからくりが此の世の本質に違ひなく、現在は絶えず未来へ遁れ行きつつ、過去を振り返る。 ――しかし、《個時空》といふ考へ方を持ち出せば、未来と過去は交換可能な《もの》といふ事だ。 ――へっ、それが何を意味すると思ふ? ――つまり、《存在》には必ず寿命が《存在》するといふ事だね? ――さう。去来現の総体は《存在》が《存在》する以前に、それが発生した時には寿命は決まってゐるといふ事だが、現在に《存在》する森羅万象は未来が見通せずに己の寿命は解からず仕舞ひだ。 ――しかし、ちぇっ、さうするとかうかな? つまり、或る一《存在》が去来現の総体を全うし、その寿命が尽きて滅するが、しかし、《他》が《存在》する故に時間の流れは《時代》へと、更には《紀》へと連綿と続く。 ――つまり、時間は《存在》によってのみ体現される何かさ。 ――すると、時間は時間のみでは《存在》出来ない、と断言してもいいかな? ――多分、それで間違ひない筈だ。だが、時間は実存に先立つ。 ――その時間を体現するのが《存在》といふ時間のカルマン渦といふ訳か――。ふむ。 ――だから、銀河もまた、《存在》のカルマン渦の一種に違ひない筈だ。 ――そして、銀河と銀河の衝突時にStar burstによって爆発的に星星が出現す事を考へると、遠い将来衝突するかもしれぬ此の天の川銀河とアンドロメダ銀河の中に《未出現》の星星が現在数多《存在》する。 ――それは矛盾した言ひ方だぜ。。《未出現》が《存在》するとは、一体全体何の事だね? ――つまり、未来が《存在》するといふ事だ。 ――なあ、銀河は渦を巻くとしてだ、さうすると、銀河団もまた、渦を巻いてゐる可能性はなくはない筈だといふ事かね? ――多分ね。 ――すると、大銀河団は渦の複合体かね? ――へっ、此の世の《存在》全てが渦の、ブレイク風に言へばMill(粉挽き機;私は敢へて歯車と訳す)複合体、つまり、ドゥルーズ・ガタリなどが言ふ機械といふ《存在》の様相を表象してゐるのかもしれぬのだ。 ――さうすると、此の世は渦のFractal(フラクタル)な時空間といふ事だね? ――さうさ。渦が何処まで行っても渦に自己相似し渦ばかりのFractalな時空間さ。 (七十九の篇終はり) 自著『審問官 第一章「喫茶店迄」』(日本文学館刊)が発売されました。興味のある方は、是非ともお手にどうぞ。詳細は下記URLを参照してください。 http://www.nihonbungakukan.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=4479 自著『夢幻空花なる思索の螺旋階段』(文芸社刊)も宜しくお願いします。詳細は下記URLを参照ください。 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-05367-7.jsp
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