EU金融危機から始まる世界金融経済大恐慌シナリオに変更なしか?(2) | |
2011年10月27日 22時35分の記事 | |
昨夜未明から今日の昼にかけてのEU首脳会議、EU首脳たちが会場を後にしたのは現地時間の午前4時半とのこと、その中でも民間金融機関との50%免除交渉に8時間を要したとか、会議中にはEU首脳同士の怒鳴りあいもあったとか。 今回のEU首脳会議の主な協議事項は、EFSF拡充、銀行の資本増強、ギリシャ債務削減の民間負担の3つであったわけですが、その内容についてロイターが配信しています。
ユーロ圏首脳が危機対策で合意、ギリシャ債務減免50% 2011年 10月 27日 14:14 JST [ブリュッセル 27日 ロイター] 欧州債務危機をめぐるユーロ圏首脳会議では、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の実質的な支援能力をレバレッジにより1兆ユーロに拡大するという点で合意を得た。ギリシャ第2次金融支援をめぐる民間債権者との交渉では、債務減免(ヘアカット)を50%とすることで合意した。 8時間に及ぶ協議の末、民間銀行側はギリシャ債務を自発的に50%削減することで合意した。 首脳会議で協議された欧州債務危機の解決に向けた「包括戦略」は、EFSF拡充、銀行の資本増強、ギリシャ債務削減の民間負担の3つの柱からなる。 ギリシャ債務の50%減免で債務負担は1000億ユーロ減少し、現在160%の国内総生産(GDP)に対する債務比率は2020年までに120%に低下する。ユーロ圏も300億ユーロを負担する。詳細を年末までに決定し、ギリシャへの第2次支援に道筋をつける。 ギリシャ支援規模は1300億ユーロとなり、7月に合意した1090億ユーロから拡大する。 銀行側の窓口となった国際金融協会(IIF)のダラーラ専務理事は声明で、ギリシャ債務を額面で50%減免することでユーロ圏当局者と合意したとし、「自発的な民間関与の詳細は、今後関係者の間で合意され、即時実行される」と述べた。 EFSFは、レバレッジで「数倍」に拡充する。具体的には特別目的投資機関(SPIV)の設立と、新発債への部分的な保証付与の2つの方法を設定。ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領は「それぞれの選択肢は、最大4─5倍のレバレッジに相当し得る。資金的戦略を強化するため並行活用も可能だ。最終的に規模は1兆ユーロ規模となる見通し」と述べた。 レバレッジ化されたEFSFの具体的な運用方法に関する条件などについては、今後ユーロ圏財務相が取りまとめる。SPIVには中国など新興国からの投資も見込んでいる。フランスのサルコジ大統領は、数日のうちに中国の胡錦濤国家主席と話し合う意向を示した。 EFSFの規模は現在、4400億ユーロ(約6000億ドル)だが、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドへの支援分に加え、域内銀行の資本増強分を除いた利用可能額は2500億─2750億ユーロとされる。これが4倍に拡大し1兆ユーロ程度となる。 SPIVと保証が並行活用されることで柔軟性が増すと当局者らは指摘している。ファンロンパイ大統領は「市場状況や投資家の反応次第で、レバレッジは1兆ユーロ規模となる可能性がある」と述べた。 ユーロ圏首脳会合に先立ち開かれたEU首脳会議は、銀行の資本増強について、2012年6月末までに中核的自己資本比率を9%に引き上げることなどで合意した。欧州銀行監督機構(EBA)は、欧州の銀行が9%の中核的自己資本比率を満たすために必要な追加資本規模について、1060億ユーロとの試算を明らかにした。国別の必要な追加資本は、ギリシャの銀行が300億ユーロ、スペインの銀行が260億ユーロ。 ユーロ圏首脳会合ではまた、イタリアに対し年金改革の迅速な実行を求めた。イタリアのベルルスコーニ首相は、年金支給年齢を67歳に引き上げることを確約した。 欧州委員会のバローゾ委員長は「肝心なのは実行で、これが鍵だ。イタリアが措置を本当に実行しているのか監視することが必要」と述べた。 首脳会合出席者が会場を後にしたのは午前4時半だった。 転載終了 このように詳細についてはこの年末までに詰めるとのことです。 しかし、この合意内容でEUの金融危機は解決されるのでしょうか。 私は明らかに不十分であり解決策には程遠いと思います。 1. ギリシャのデフォルトの判断 民間金融機関の妥協でギリシャ国債の50%の減免とEU当局の減免の結果、ギリシャ国債残はGDP比160%が2020年に120%に改善される? この割合ではギリシャの体質からすると正常な財政収支の達成は到底不可能だと思われます。数年後にまたデフォルト状態に陥る危険性が高いと思われます。 それとこの減免処置によりデフォルトと見なされるかどうかということが非常に重要になってきます。今回は民間金融機関の自主的な減免処置ということにしていますが、実質的にはデフォルト(債務不履行)であり結果としてデフォルトと見なされると思われます。そうなると、ギリシャ国債に関わるCDSの発行残が1兆2000億ユーロあるとのことですから、この半分としても6000億ユーロがCDSを発行した金融機関の負担になります。その金融機関が全部EU圏内だとすると資本不足公称1000億ユーロ(ギリシャ対策分のみ)に加え6000億ユーロが必要となり、これだけで7000億ユーロの資本強化が必要になります。この7000億ユーロはあくまでギリシャ対策分のみです。 2. EFSF(EU金融安定化基金)の拡充策 ユーロ圏内でこれ以上の資金調達は各国の国債格付け低下を招く恐れがあるため難しく、そのためイギリス、中国、インド、ブラジル、日本などに支援を求めていますが、イギリスは断ったそうです。そして、中国には電話でサルコジ大統領が直接コキントウ主席に申し入れるとのことですが、中国は担保等の条件が整わない限り難しいでしょう。インド、ブラジルにしても同様と思われます。結局、日本だけが10〜20兆円程度をドブに棄てることになりそうです。 この結果、4400億ユーロから既に決まっている分を除いた残2500億ユーロと日本支援分を加え約4000億ユーロの4~5倍の1兆6000億〜2兆ユーロ程度になりそうです。 ただ、この場合のEFSF保証つきの国債はレバレッジを効かせているため実質的な保証が薄まるので数段階の格付け低下が見込まれ、金利も高く設定しないと売れないし、CDS値も高い設定なります。 それと、レバレッジを効かせたEFSFの保証は短期間であれば可能でしょうが、長期になるとどこか一カ国の財政収支に不備がでると、たちまちEU全体に格付け低下が起こり、即、EU危機に陥る危険性が高まります。そして、格付け機関に格好の攻撃材料を提供することにもなり得ます。このため、当初、ECBとドイツが反対していたのです。基本的にレバレッジとCDSはリスクを高めモラルハザードを起こす「悪魔の囁き」なのです。 3. その他のリスク ギリシャの当面の問題は今回の合意で解決できますが、その他の問題としては、CDSの問題、今後発生するイタリア、スペイン等の問題、円キャリートレードによる円建て住宅ローンの問題等々まだまだ多くのリスクが存在します。 以上により、今回のEU首脳の短期間での2回の会議、それも異常と言えるほどの長時間の協議を経て苦労して合意した結果であっても、その効果は短期間で終わる可能性が高いと思われます。問題はさらに先送りとなり、結果からするとEU首脳達は最大限の努力をしたとのポーズに終わりそうです。 続く | |
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