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第七十二話「廃屋の思い出」
2009年8月4日 14時0分の記事
 
◎近世百物語・完全版
 第七十二話「廃屋の思い出」



 子供の頃に住んでいた街には……まだ、戦争中に使っていた施設が、そのまま残されていました。

 中でも、一番、目立つのは、陸軍の監視塔です。
 それは、戦争中に……爆撃機が来るのを監視する為に、建てられたものです。
 ただの巨大な、コンクリートの塔で……内部は、螺旋の階段が続いています。
 そして、一番上の部屋の、大きな窓から……外が見渡せるたけのものでした。
 私が、それに登って遊んでいた頃は……すでに、廃屋《はいおく》になっていました。
 多くの他の監視塔は、すでに倒れていて……まるで、巨大なイカの輪切りのようにも見えました。
 それが倒れると……途中で、いくつもに割れて、中の螺旋階段が、壊れます。
 そして残った残骸は、リング状にちらばって行くのです。
 それが、あちらこちらで、倒れていました。
 街の中で、最後まで、倒れずに残っていた監視塔は……とても、私のお気に入りでした。
 時々、その塔の上まで登ると、街の全体が、見渡せたのです。
 そして、その内部の暗い螺旋階段は……ジメジメしていましたので……幽霊が出るのに、ピッタリする雰囲気でした。


 ある夏の暑い日も、そこに登って涼んでいました。

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はじめまして、播磨陰陽師の尾畑雁多《おばた・かりんど》です。

 陰陽師には京都系統の「都《みやこ》陰陽師」と、播磨の国の「播磨陰陽師」の二種類の系統があります。  播磨陰陽師は、応仁の乱の時に京の都から播磨に戻った陰陽師達の子孫のことですが、播磨の国はもともとの陰陽師達のふるさとでした。

 播磨陰陽師には、夢に関してや、武術のことなど様々な伝承を持ちますが、今回はその中から「不幸のすべて」に関するお話と私が体験した不思議な体験「近世百物語」をお届けさせていただいております。



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